雪の中の二人〜中学生編〜



By飛香里様



「おはよう、新一。 見て、雪よ! 雪が積もってる!」
いつもの登校時間よりも少し早く迎えにきた蘭が賑やかな声を上げる。
「でかい声出さなくても見りゃわかるよ。どうりで昨夜から寒いわけだ」
玄関から出てきた新一はうんざりした表情で周囲を見回し、首をすくめた。
「キレイねー。屋根も木も道路も真っ白! これなら雪だるまも簡単に作れそう」
「オイオイ、中学生にもなって雪だるまかよ。オメーはまだまだガキだな。
雪なんてどこがいいんだよ、寒いだけじゃねーか」
弾む気持ちを鼻で笑われ、蘭の頬がぷうっと膨らむ。
「何よ、新一こそ背中丸めて寒い、寒いって若いのにみっともない。
そんなに寒いなら毛布でもかぶって登校すれば? 私は先に行くから!」
スカートを翻してかけだしたその時、積もった雪に蘭の足が滑る。
「あぶねぇ!」
新一はとっさに彼女の身体を後ろから抱きかかえたが、支えきれずそのまま後ろにひっくり返ってしまった。
「きゃ! ご、ごめん! 大丈夫?」
慌てて起き上がった蘭が倒れたままの新一の顔を覗き込む。
「ああ、平気、平気。ちょうど雪がクッション代わりになってくれたからな。それより雪道は滑るんだから気をつけろよ?」
「うん、ごめんね」
俯く彼女を横目で見ながら、新一は自分の腕に残る柔らかな感触を思い出して内心でつぶやいた。
─やっぱ、雪も悪くないかも…♪



≪終≫




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