20歳のプロポーズ



By 泉智様



オレの名は、工藤新一。学生探偵だ。

今、オレが住んでいるのは、ロンドン。
そう、かの名探偵、シャーロック・ホームズの活躍した街だ。



16〜17歳。高2のおよそ1年間。
オレはとんでもない犯罪組織による事件に係わる羽目に陥り、世にも不思議な経験をする事になった。
その、世にも不思議な経験とは。
中身は高2のまま、外見は(オレの場合)10年ほど退行・・・平たく言えば、幼児化・・・してしまった、というモノである。

傍目には、“高2の工藤新一はこの世に存在しない”というこの1年間。
オレは子どもの、それこそあの時オレがなってしまった“みかけ”の年の頃には既に“想い”を自覚していた“想い人”の傍で、その想い人を偽り続ける苦しい日々を過ごしたのであった。

オレは、その偽りだらけの日々の中で、幸運にも数回、自分の本来の姿を取り戻したことがあったが。
そのいずれの時も、肝心なところで想い人に自分の真実を伝える事が出来ず。
イタズラに想い人の“蘭”を苦しめてしまったのであった。

オレは、彼女が夜、一人きりで、人知れず悲しく切ない涙を零し。
本当はもっと晴れやかで綺麗な笑顔を、オレの所為で曇らせてしまっていたのを、目の前で見続ける事しかできなかった。

さながら、それが、真実を告げないオレの罪・罰であると心に刻みながら。



あの偽りの日々。
蘭を泣かせている。・・・だからこそ、オレは必死だった。

いつになったら、奴らのシッポの端がつかめるかと焦って、時には苛立って。

もう、蘭の元には永遠に帰れないんじゃないか。
オレの事を忘れてしまった方が、もう、待ってほしいと縛らないほうが、蘭にとって幸せなんじゃないかと考えてしまった事もあった。

それは、結局、オレの弱さであり。
自分と蘭を信じきれず、何時まで続くか分からない絶望的な日々に自分が負けてしまいそうになっていたのだと。
そう気付くのに、大して時間は掛からなかったのだけど。






そんな偽りの日々ではあったが。
オレはその間に“工藤新一”という、本当の自分の存在を見かけ上失う代わりに、大きなモノを得た。

それは、“自分ひとりで何でも出来るんだ”という思い上がりに気付き、ソレを捨てられた事。
他人の協力を得るのは恥ではないし、それを当たり前と思わず感謝する心を忘れない事。
これだろう。



服部というかなりおせっかいで口うるさいけど、情に厚い親友。
自分ひとりで突っ走りがちなオレに、仲間・友情の大切さを教えてくれた歩美・元太・光彦。
だらしない大人の代名詞だと思ってたけど、情の厚さと大人としての懐の深さを見せてくれて。そして、イロイロやってしまったオレを赦してくれた・・・小五郎のおっちゃん。
放任していると見せかけて、本当は凄く心配して。でも、それをおくびにも出さず、オレを信じて見守ってくれた両親。
鉄砲玉なオレを、理解し、秘密を守り、オレがヤツ等と戦うための実質的な助けになってくれた博士。
そして、小さくなったオレのいう事でも、きちんと耳を傾けてくれた目暮警部・高木刑事・佐藤刑事ら、警視庁の皆。
同じヤツ等を追う協力者として、力を貸してくれたジョディ先生(スターリング捜査官)らFBIの人たち。



あのままあの事件に巻き込まれず、16歳・新進気鋭の高校生名探偵ともてはやされたままのオレだったら。
自分の力を過信したまま、なんでも自分一人で出来るんだとカンチガイして。
あの事件に巻き込まれることがなくても、いつかは大きなしっぺ返しを食っていただろうと・・・今は思う。





そして。
それより何よりオレが得たものは。

“同じチャンスは二度と来ない”という教訓を得た事だろう。



オレは、どうしても、目の前の事件に引かれて。結果、何度も蘭を待たせた。
あの時も。
待たせた挙句、あの事件に巻き込まれ。
結果、蘭を散々に泣かせ、心配させた。

数回、元の姿を取り戻せた時も、気持ちを伝えられずタイムアウト。
流石に蘭の心が壊れかかって、切れかかって。

涙にくれる蘭を見ていることしかできなかったオレは、つくづく自分の愚かさを呪ったものだった。



オレの巧みな弁舌も、蘭の前では全くの役立たずで。
素直な言葉の代わりに天邪鬼な憎まれ口。
優しい笑顔の代わりにからかいをこめたガキっぽい顔。
真剣な想いの代わりにそれを隠すごまかしの言葉。



もう、こんな自分は卒業しよう。
本当の姿を取り戻したら、真っ先に、今度こそ、何にもわき目を振らないで、オレの真実を蘭に告げよう。

そう固く決めて。
心に誓って。



オレは、最終的には、味方と信じられる皆の力も得て、デッドラインスレスレのところから、生還。
オレ自身を取り戻す事に成功した。








オレは、オレ自身を取り戻すと直ぐ、蘭に会いに行った。

蘭は、オレの姿を認めた途端。
泣いて、怒った。

オレは、蘭の涙にオロオロと戸惑い。
蘭の怒りは、オレが姿を消し、一方的に待たせ続けたからで。
オレは、オレの真実を話しても赦されないだろうと・・・勝手にそう思ってしまった。

しかし、それはオレのおおいなるカンチガイで。

蘭の怒りと涙の原因は。
オレがホントは傍に居たのに、それでも真実を告げようとしなかった事。
自分もオレの辛さを・苦しさを分けて欲しかったのに、そうしてもらえなかった悔しさと、そうされなかった自身が、オレにとってどれほどのモノなのかという不安へのモノだった。

必死に隠していたのに。
なのに、気付かれていた。

それに驚くオレに、蘭は当然だという顔をすると。
偽りの日々の、かりそめの姿である江戸川コナンと、オレの共通点をこれでもか!と並べ立てた。

そして、こんなオレに不満はあったけど。
それでも、オレが傍に居続けた事が嬉しいと・・・オレを赦してくれた。



オレは、蘭がどんな姿のオレでも気付いて、分かってくれていた事が素直に嬉しくて。
オレは、こんなオレに振り回されて辛かったろうに、それでも包み込むようにして微笑んで赦してくれた事が嬉しくて。

本当に素直に。
偽りの日々の中で深めていった自分の思いの丈を。
真っ直ぐに、精一杯の思いを込めて、蘭に届けた。






勝手ばかりしてきて。
心配をかけまくった、そんなバカなオレだけど。

蘭はオレの想いを受け入れてくれて。

オレ達の関係は、やっと幼馴染を卒業した。









蘭の元に帰ってからのオレは、色々な意味で大変だった。

何しろ、事情が事情とはいえ、高2課程のおよそ1年間分の出席日数が無いのだから。
流石に留年もやむなしかと思われたが。
幸いな事に、つい最近になって、高校在籍・休学中の生徒でも、高校に在籍したままで“大検”を受検できるようにシステムが変更され。オレは、ソレに合格すれば、アイツと一緒に卒業できるチャンスを得たのだった。

オレはこのチャンスを逃してなるものかと、誰もが驚く勢いで勉学に励み、難なく大検に合格。
無事、蘭と一緒に高校卒業をする立場を得る事が出来たのであった。



オレにそうするだけの力をくれたのは、勿論言うまでも無く、蘭の存在であり。
蘭の、日々こまめな日常的な生活のケアのお陰であり。
何より、蘭の、オレと一緒に卒業したいという気持ちだったのである。



勿論、警視庁関係からも事情が事情だから若干控え気味だったが、依頼は舞い込んできたし。あの事件の事後処理関係から、FBIやICPOからも声が掛かったりで、探偵として多忙だったのは確かだったが。

それでもオレがくじけずに気持ちを保てたのは、偏に蘭の存在のお陰なのである。





ともあれ。
大検合格を決めて、無事、蘭と一緒の卒業を決めたオレだったが。
今度は、進路(進学先)に、世間も学校も、そして、蘭も揺れた。



蘭は、オレが探偵を止められない事は理解していたから。
探偵として、高2の時と同じ轍を踏まない為に、オレがそれに相応しい勉強・経験・修行を必要としている事も分かっていたから。
同時に卒業は出来てもその先は、これまでの様に一緒にいられないだろうと思っていたようだった。

そんな蘭の想いと。
自分にとって探偵となる為に必要なコトは日本に居たままでは得られないと分かっていても、それでも蘭と絶対離れたくないオレの想いは、オレに行動を起こさせた。



オレは、蘭にオレの正直な想いを話し。
蘭を驚かせ、泣かせた。

まあ、“泣かせた”と言っても。
高2のあの時とは違って、今度は嬉し涙だったけど。


次におっちゃんとおばさんに話しに行った。
オレの話は、結論から言えば、おっちゃんがおばさんをおばさんのお父さんから攫った時よりも更に数年早いモノだったから、おっちゃんは酷く焦ったようだし、おばさんも驚いたようだった。
でも、二人とも、予想が付いていたのか、思いのほかアッサリと赦してくれた。
高2の時のような事態に陥って、二度と蘭を泣かす事が無い様に、と釘を刺すことは忘れなかったが。



その次に、オレの両親に話をした。
オレの両親は、大喜びし、アッサリと認めてくれたが。
やはり、おっちゃんとおばさんと同じく、オレに釘を刺すことは忘れなかった。



最後に、博士や園子ら、友人全部に話をして。
博士は手放しで喜んでくれ、園子は手放しで喜びつつ、蘭を泣かせたら承知しないとマジな声でオレに確約をとらせた。









それから2年。
オレと蘭は、ロンドンで学生として婚約者として、一緒に暮らしている。

オレは学生の傍ら、時折、事件探偵としての活動をこなし。
“ナイトバロン・工藤優作”の息子としてではなく、オレ自身の名前で、いつの間にかスコットランド・ヤードに一目置かれる存在となってしまった。
名前はEU関係者の耳にも達しているようで、ICPO経由で依頼が舞い込むことも無いわけではなく。
大学の授業と折り合いをつけながら、(日本に居た頃とは違い、報酬を貰って)探偵としての仕事を行なうそんなオレの相変わらずの鉄砲玉ぶりを、蘭は許容し、愛してくれている。









数ヶ月前。

園子から中学時代の担任の松本先生の結婚式の連絡が舞い込んできた。


松本先生といえば。
オレと蘭が、高2の。まだオレが“小さな偽りのオレ”だった時。
幼馴染の相手と式を挙げようとして、不幸な行き違いの結果、結婚そのものが破談になってしまった・・・という事があった。


それから約3年。
紆余曲折を経た二人は、もう一度、仕切りなおしの二人のスタートラインに立つ事が叶ったのだった。





「先生・・・。良かった・・・。」

蘭は、知らせを素直に喜び。
今度は“新一”の姿でお祝いに駆けつけられるね、と嬉しそうに笑って。
自分とオレの二人分。
“出席”にマルを付けて、招待状を返送したのだった。





それから何ヶ月かたち、来月、先生の仕切りなおしの挙式が行なわれる。

あの時も、ジュノーの祝福を受けるという6月だったが、今回も6月。

オレとしても、同じく“幼馴染”カップルだという先生の式だから、中学時代の嫌な思い出はあるけれど、この際ソレは水に流して。今度こそ幸せになって欲しい、そう思っている。



でも、本当は。
それよりも。

先生の式のおよそ1ヶ月前に共に20歳を迎えるオレ達の。
高2のあの時より、はるかに“確か”とはいえ。
高3からの“約束”だけの関係を。
変えたいと思うのは、オレの過ぎた望みだろうか。



国によって、成人と看做される年は違うけど。
大体は18歳。
その基準でいけば、年齢だけなら既に、オレ達は立派に“大人”だ。

オレ達の母国ではソレが20歳。
この年齢になれば、親の許可が無くても、入籍できる。
遠慮なく、誰はばかることなく、蘭の隣に在るのはオレだと法的に主張できる。

でも・・・直ぐこんな考えになってしまうオレは。
ただの独占欲が強い、ガキだろうか。
年齢だけ成人の、中身は伴っていない、つまんねえ男だろうか。



記念すべき20回目の誕生日を数時間後に控えて、そんな物思いに沈んでしまうオレを、蘭は、包み込むように穏やかに見詰め。
そっとオレの隣にやってきた。

「・・・蘭?」
「どうしたのかな〜って思って。・・・ティーンエージャー最後の数時間になっちゃったから。急に年齢をとるのがイヤになったのかな〜ってねv。・・・当たってる?」
「なっ?!バッ!!・・・は、20歳になるのがイヤなワケねーだろっ!20歳になったら、“今まで絶対に出来なかった事”が、出来るんだしっ!」
「クスッ、そうね。煙草は、このご時世(吸うことは)許されるけど(健康上)赦されない状況だし。お酒は、新一の場合、何を今更って思うけど?それに、R指定は2年前にクリアしてるしね。」
「/////!あのなあっ!煙草や酒やR指定って・・/////!オレが考えてたのは・・・・・ハッ!」
「考えてたのは?」
「〜〜〜/////!」
「コ〜ラ、新一。黙ってるなんて、イケナイぞ?私達の間に隠し事はナシv。“(新一が帰還した)あの時”からの、約束でしょ?」
「〜〜〜/////。・・・ああ。」
「・・・何よ。言えない事なの?」
「・・・・・別に。言えなくはねえけど・・・/////。」
「だったら、教えてよ。」
「〜〜〜/////。・・・まだ、あと数時間は、言えない。」
「・・・・・。あと数時間って・・・。どうしてよ?・・・まさか、今はまだ20歳じゃないからって言うんじゃないでしょうね?」
「・・・そうだよ/////。」
「・・・・・。う〜ん。“20歳じゃないと絶対に出来ない事”?・・・一体、何だろ。煙草もお酒も違うって言うし。う〜ん・・・。」

そのまま、考え込んでしまった蘭を隣にしたオレは。
ズバッと指摘されなかった事に安堵すると共に、指摘されなかった=思いつかれなかった事に対する一抹の寂しさも覚えていた。

我ながら、勝手な事だとは思うのだが。



  ☆☆☆



それから数時間後。
オレの誕生日の午前零時はあっという間に、静かにやってきた。



壁に据付けられたアンティーク調の壁時計が、振り子を揺らしながら朗々とした音を響かせ。
オレの隣に掛けていた蘭は、その音と共に考えていた顔を上げると。

「Happy Birthday新一。20歳の誕生日、おめでとう。」

極上の微笑を浮べ、綺麗な声で、オレに、祝いの言葉をくれた。

「ありがとう、蘭。」

そして、そのまま頬を寄せ合って、熱いキス。
オレは20歳の誕生日を最愛の人に、一番最初に祝ってもらう栄誉を、今年も手に入れた。

「・・・ところで、新一。」
「ん?何、蘭。」

熱い口付けの後、うっとりとした顔の蘭が訊ねてきたのは。

「さっきの謎かけの答え、一体何なの?」
「えっ/////?!」
「いくら考えても思いつかなくて。・・・ねえ、教えてよ。もう、20歳になったんだから、良いでしょ?」
「・・・/////。」

どうやら、マジで分からなかったらしい。
“20歳にならなきゃ絶対に出来ない事”の答えだった。

「・・・。はあ〜っ。マジで分かんねえのかよ〜。」
「うんv。だから、教えてv。」

無邪気かつ他意のない笑顔は、時と場合によっては非常に酷なワケで。

「・・・わ〜ったよ。」

オレは。蘭の天然ぶりにガックリきつつも、意を決して、口を開いた。

「・・・。」

蘭は、どんな物凄い答えが出てくるんだろうという、期待に満ちた目で、オレを見ている。

コレで、オレがこれからいう内容に驚いて、引かれたら・・・。
オレ、一生立ち直れねえな・・・。

そう心の中で溜息を吐きながら、俺は、恐る恐る答えを言葉にかえた。

「20歳になったらさ・・・。」
「うん。」
「・・・その・・・。」
「うん。」
「・・・つまり・・・なんだ。」
「うん?」
「・・・アレを出せるじゃん。」
「・・・アレ?アレってなあに?」
「・・・・・。アレって、アレだよ。だあ〜っ、たくもうっ!何で分かんねえんだよっ!」
「なっ?!何、イキナリ一人で怒ってるのよっ!大体、“アレ”だなんて、そんな言い方じゃ、分かるわけ無いでしょうっ!ハッキリ言いなさいよっ!」
「〜〜〜/////!だあ〜っ、分かったよっ!・・・あ、アレって言うのはなあっ!・・・こ、“婚姻届”の事だよっ/////!」
「えっ/////?!」
「オレと蘭。二人とも20歳になったら、俺たちの両親の許しが無くっても届出が出来るだろっ。オレも蘭も、今年20歳になるし。蘭さえよければ、きちんと届をだそうかなって・・・そう考えてたんだよっ/////!分かったかっ/////!」
「・・・ハイ/////。」
「・・・って////。あ、オレ・・・。」
「・・・/////。・・・・・・籍・・・入れるんでしょ?」
「あ/////。・・・ら、蘭さえ良ければ・・。」
「・・・誰が何時、新一のお嫁さんになるのをイヤだって言ったのよ。」
「蘭。」
「高3の時に、約束して。私達の両親から、お許しは貰ってるじゃない。私は、籍こそ入ってないけど。あの時からずっと“新一のお嫁さん”のつもりでいたけど?新一は違うの?」
「ち、違うわけねえだろっ!ただオレは、いつまでも“婚約者”でいるのもなんだから、そろそろきちんとしたいなあって思っただけで!オレだって、蘭以外の人を嫁さんに考えたことなんて一度たりとも無えぞっ!」
「(クスッ)・・・分かってるわよ、新一/////。」
「蘭/////。」

綺麗に微笑む蘭は、そう言って席を立つと、戸棚の引き出しから大きな茶封筒を取り出して戻り、新一に差し出した。

「?・・・・これは!」

不思議そうに書類を探った新一は、その内容物に目を見張った。

「私達の20歳の誕生日に、私達の両親から贈られたプレゼント。数日前に届いたの。」

それは日本の役所に届ける婚姻届の用紙と、こちらの役所に届ける為の必要書類。
こちらの大学に届ける、二人の関係と名前・ビザ関係の変更等の書類一式だった。

一緒に同封されていた双方の両親からの手紙には、新一の事だから、そう考えているであろう事が記されており。
改めて、自分達に異存は無い事。蘭と二人、絶対に幸せになるようにとのメッセージが添えられていた。

「・・・。はあ〜っ、お見通し、ってワケか。」
「みたいね。・・・・・で、どうするの?」

イタズラっぽくそう声を掛けた蘭は、この上なく綺麗な顔で微笑んでいて。

「/////!・・・決まってんだろ。」

新一は、書類をテーブル上に置くと、蘭の手を取り、真っ直ぐに蘭の目を見詰めて、口を開いた。

「毛利蘭さん。オレと・・工藤新一と結婚してくれますか?・・・愛してる。ずっと、一緒にいて欲しい。お前しか、考えられないんだ。」
「・・・はい。私でよければ喜んで。」

それに答える蘭は、新一が今まで見てきた中で、一番綺麗な笑顔だった。

「蘭。・・・愛してる。一生、いや、未来永劫、お前だけだ。」
「新一。・・・私もよ。」

そのまま自然と二人の影は重なり。
この日から、二人にとっての新しい時間が始まったのであった。






朝。

新一の誕生日から数日後の蘭の誕生日が入籍日になる様に、新一が大急ぎで書類を揃え。
万事に優先して手続きを済ませた事は、言うまでも無い。









それから約1ヵ月後の松本先生の結婚式の日。

新一は、披露宴の席の席次表を見て、目を見張った。

“工藤新一・工藤蘭”

「オイ、蘭。お前、あの後、名前の変更を依頼してたのか?」

何故なら、新一が20歳のプロポーズをするはるか前に、蘭は招待状に返礼を出していたはずだったから。

「ウウン、してないよ/////。」
「えっ/////?!」

この返しに驚いて目を見張った新一に、頬を染めた蘭は、恥ずかしそうに小声で答えた。

「だって・・・。先生のお式の時には、私達、20歳になってるんだもん。・・・だから、もしそうなったら、嬉しいなあって思って・・・。つい、そう書いちゃったの。」
「蘭/////。」

この返しに感激した新一が、場所を忘れて熱い口付けを贈り。

『新一君〜。今日の主役を奪っちゃダメでしょ〜っ。』
『ハハッ。・・・相変わらず、熱いなあ、工藤君。』

などと、久しぶりに会う友人・知人・警察関係参列者から冷やかされた事は、言うまでも無い。




The End



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