いつも傍に…



By 佐倉井梢様



ここは剣道の近畿大会の会場
なんとか頂点まで上り詰めようと日々練習に励んだ者がここで戦う
出て来たもの達は皆、強豪と言っても過言ではない
そんな中、改方学園の剣道部に所属している服部平次の腕はピカイチで去年は準優勝の成績である
剣道着を身に纏い歩くと…



「あれ改方の服部やん」
「服部くんこっち向いてーv」



など色々な声が飛び交っている


平次と同じ高校に通う和葉はそんな平次の姿を見ながら溜息一つ…


平次が剣道している姿は推理している時と同じぐらい好きだった
幼い頃から真剣な瞳で目の前にいる相手に向かっていく姿がカッコ良くて仕方がなかった
でも…歩くだけで女の子の悲鳴の様な声が聞こえてくる



(もう…叫ばんでも分かっとる…)


耳を塞ぎながら内心思うのである


「相変わらずモテモテやなぁ、平次くんv」


溜息を付いている和葉の隣に最後の名前だけ強調しながらクラスメイトがやって来た


「そんな事…知っとる…」


和葉は先程以上に頬を膨らませて平次を見ていた


「アンタら付き合っとるんやろ?なら自信持ったらええやん」
「自信やなんて…」



平次は幼馴染みの時と今も接し方が変わらない…
それが不安で仕方がなかった…
いつか自分の元から離れて行ってしまうんではないかと…
せめて…「好き」という一言だけでも聞かせてくれたら…
色々考え泣き出しそうになった時下から声が聞こえた



「和葉〜」


平次に呼ばれ慌てて目元を拭いて下を見た


「どないしたん?」
「なんつー顔してんねん」
「へぇ?」
「下から丸見えやったで?真っ赤に膨れた顔がv」



ニヤニヤ笑いながら歩いて行った
平次の言葉に先程以上に真っ赤になる



「なんやvちゃんと見てくれてるやんv」


よしよしと和葉の頭を撫でた
ただ恥ずかしくて下を向く事しか出来なかった
しかし和葉はハッと頭を上げてクラスメイトの方を向き尋ねた



「なぁ、次の平次相手って…」
「勿論、沖田くんしかおらんやろ?」



やっぱりと思い、和葉は応援席から走って行った


「か、和葉っ!!」


クラスメイトが呼んでも耳を貸さず、彼の元に急いだ
平次は丁度頭にタオルを巻き終わった所だった
そこへ和葉がやって来て吃驚した



「なんやいきなり!」
「へ、へいじの相手って…」
「相手?沖田に決まっとる〜他にどなたはんがおる」



アイツは工藤みたいな顔しとるが、腕は確かやと言いながら意気込んでいた
去年は事件があったせいで沖田に優勝を持って行かれたらので今年は必ず…と拳を握った
時、和葉が袴を掴み、グイッと顔を近付け軽く唇を重ねた
和葉の行動にただ驚く事しか出来なかった
唇を離し、平次を見詰めながら言った



「沖田くんに絶対勝ってな?」


きっと前戦った時の傷も気に掛けながら言っているのだろう…
真っ赤になりながら見詰めてくる瞳に顔の温度が一気に上昇した
こりゃアカンと思いながら顔に手を当てて首を振る
そしてふぅ…と息を吐き、和葉に言った



「負けるワケないやろ?何心配しとんねん?」


人差し指でツンッと和葉の額をつついた


「ア、アタシは心配してっ…!!」


和葉が最後まで言おうとした時言葉が止まった
そこにはあのお守りを見せながら笑う平次がいた



「このお守りがある限り負けへし、それに…」
「それに…?」
「和葉も一緒におるみたいやしなぁ」
「えっ…」
「ほな、行こか!」



面を付け、竹刀を持って会場に歩き始めた


「平次っ!」


和葉に呼ばれ後ろを振り替えると真っ赤な顔で笑いながら叫んだ


「平次なら絶対勝てるっ!!」


和葉の言葉に面の下でニヤリと笑い、竹刀を振って答えた


会場に向かうと本日最後の試合で決勝という事もあり歓声が大きかった
目の前にいる相手を見てニヤリと笑った
そんな平次の表情を見て沖田も笑った



「随分ご機嫌やな?」
「お陰様でv今日負ける気しないわ」
「ほう…そら楽しみ」



お互い竹刀を構え、審判の合図を待つ


「始め!」


二人は言葉に一斉に竹刀を振るった


そんな二人の姿を和葉は見詰めた
平次からのあの言葉…夢みたいだった…
今まで不安だった気持ちが一気に吹き飛んだ気がした
単純かも知れない…



それでも良い…
彼が…平次が大好きだから…
試合が終わった後和葉の顔には満面の笑みが零れた



やっぱり平次は最高の剣豪で名探偵やっ!!




FIN…….


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