二人の時間



By 佐倉井梢様

         

暑い夏休み・・・・。
丁度他の家族や友達は海やプールに出かけていることだろう・・・。
だが・・・ここに住む工藤新一は違った。
毎日、毎日事件で追われていた。
一言言えば休む暇もなかった。
少し休んでいれば警察から電話がかかってくる。
受ければ断るわけにはいかない・・・。
新一にとって夏休みはなかった。
そんな新一にたいして蘭はなにも言わなかった。
文句も言わなければグチも言わない・・・。
新一の家にきて食事を作り家事をこなしていく。
新一はそんな蘭の後ろ姿ばかりを見ていた。
それがとても辛かった・・・。
本当は蘭も思いっ切り遊びたいはずなのに・・・自分についてきてくれる。
それが逆に辛かった。



ある暑い日のことだった。
今日はいつも異常に暑かった。
新一の家は冷房が効いていたが・・・中に居すぎると暑さの差がありそれは困る。
いつものように新聞を読みながらコーヒーを飲む。
丁度朝食が終わり後かたづけをしていた。

「なぁー蘭・・・」
「なぁーに新一?」

エプロン姿でクルッと後ろを振り返る。
それに少し赤くなりながら話を続けた。

「オメーさぁ・・・こんなことやっていてやじゃねぇー?」
「え・・?いきなり何を言い出すの?」

不思議そうに首を傾げながら問い返す。

「だってよぉ・・・オレの家まで来て家事をやってるンだぜ?イヤじゃねーの?」

その質問に蘭はニッコリ笑って答えた。

「イヤじゃないよ?いやだったら今頃ここに来てないよ?」
「だけど・・・」
「だって私は新一が好きなんだもんvv傍に居られればそれで幸せだよ?」
「蘭・・・」
「それにこういう夏休みも悪くないと想うのvv」
「へぇ!?なんでだよ?」
「だって・・・なんだか・・・・・」

蘭は赤くなりながら下を向いてしまった。

「なんだよ・・」
「もーう鈍感なんだら新一わ!!!」

そう言って台所に走っていってしまった。
そんな蘭を見ながら何だよ・・蘭のヤツと思いながら見ていた。
蘭はただ・・・新婚夫婦みたいだねと言いたかったのだが恥ずかしくて言えなかっ
た。
それを知らない新一は少し拗ねていた。
あとで絶対言わせてやると想っているだけだった。



蘭は片づけが終わり新一の居るところに戻ってきた。

「新一・・・今日は事件ないの・・?」
「あ・・ああ。なんか電話こなしな・・」
「そうなんだ・・」

蘭は新一が座っているソファーに座り込んだ。
新一は蘭に話しかけた。

「なぁー・・たまにはどっかいかね?」
「どっかって・・・何処よ・・・?」
「いや・・・お前に好きなところで良いよ・・」
「好きな所・・・」
「何処でも良いんだぜ?」
「じゃぁ・・久々にトロピカルランド行かない?」
「いいけけど・・・別に・・そこでいいのか・?」
「うんvvでもその代わり奢ってね?」

新一に微笑み返した。
その笑顔をみて目が点になった。
可愛いさもあったが逆に・・・怖さもあったのは気のせいだろうか・・・。

「わかってるよ・・それくらいのこと・・・」
「じゃぁ準備してくるねvv」
「ああ」

蘭は立ち上がって嬉しい顔をしながら二階に駆け上がっていた。
嬉しそうな蘭の笑顔をみてホッとした。
本当は辛かったのであろう・・・。



  ☆☆☆



そして数分かして準備ができた蘭は降りてくる。

「新一行こうvv」
「じゃぁ、行きますか?お姫様?」
「え・・・?」
そっと手を取り手の甲にキスをする。
「ちょ、ちょっと新一・・!!!」
「外国じゃ此が当たり前だぜ?まぁー正確には口付けだけど♪」
「し、新一!!!!」

顔を真っ赤にしながら少し怒り出す蘭をまあまあと止める。
そして玄関の扉を開けて外への世界の扉を開けた。
外は流石に夏と呼ぶに相応しいぐらいの暑さだった。

「相変わらず・・暑いな・・・」
「そうだね・・でもこの暑さもいいんじゃない?」
「そうかねぇ・・・」

溜息をつきながら暑そうに歩いている。
それをみながら笑ってあるいている蘭だった。



  ☆☆☆



そしてトロピカルランドに着いてみるとそこには沢山の人がいた。
多くは皆家族連れだった。
あとは観光客・・・または恋人達・・・。

「わぁ・・・凄い人だね・・・」
「でも・・多いな人の数・・・」
「でもいいじゃんvvきっと楽しいよvv早く!!!」

新一の手を握り走り始める蘭だった。

「そんな・・焦んなよ・・!!!」

一番始めに入った所は物語の衣装をそのまま着ることができ記念に写真を撮ってくれる場所だった。
蘭は何にしようか迷っていた。

「どれにしょうかなぁ・・・」
「何選んでるんだ?」
「あ、此に決めた!!!すみません、この7番の衣装でお願いしますvv」
「はい、かしこまりました。」

それを聞き上をみやげてみると・・・それは・・・。

「新一?早く着替えてね?」
「へいへい・・・」

渋々着替えに行く。



そして蘭は着替えが終わり出てきた。

「わぁー可愛い服vvアリスってこんな服着ていたのかぁ〜?」

クルッと回って鏡を見ていた。
蘭が選んだのは「不思議の国のアリス」だった。
新一はまだかなぁーっと思いそっと覗いてみた。
そこには白くて大きな耳・・・・。
眼鏡をかけて手には時計を持った真っ白なウサギがいた。

「きゃ〜〜新一可愛いよvv」
「そうか・・オレは・・・好きじゃねぇーけど・・」

少し機嫌が悪そうだったが、蘭のアリスの姿をみてご機嫌は直ったみたいだ。

記念撮影。


できあがった写真を見ながら笑っている蘭。
「可愛いね〜〜vv」

「別に可愛くないと想うけど・・・・オレは・・・」
「そうかな?白いお耳がよく似合ってましたよ、ウサギさん?」
「それはそれは光栄ですよ、アリス?貴女みたいな素敵な女性に会うことができて私
は幸せですvv」
「うぅ・・・」

気障な台詞を言われなにも言うことをなくした。
得意げな顔をしながら笑っていた。
ニヤッと微笑む。



  ☆☆☆



そしてなかしているうちに時間は過ぎていた。
いつの間にか夕方になっていた。
太陽は沈みかかっていた。

「そろそろ時間だし・・帰るか?」
「そうだね、帰ろう」

二人は歩き出した。

今日は確かに楽しかったけど・・・なにかものたりない・・・。
なんでだろう・・・。

「ねぇ、新一海に寄っていかない?」
「海に・・?なにしに?」
「うー花火でもしようかなぁーって想って・・・ダメ?」
「良いけど・・」
「良かったvvじゃぁやろうvv」

蘭は花火を手にもって海辺へ走った。
いつの間にか買っていたらしい。

「みて?すっごく綺麗だよvv」

火を付けて燃え始める炎・・・。
色々な色が沢山飛び散っていた。

「オレは・・・蘭の笑ってる顔の方が好きだな」

一言呟くと蘭は下を向いた。

耳まで赤い・・・。
それをみて思わず蘭の耳を食べる・・。

「きゃ!!!いきなりなにするの!?」
「そんなに恥ずかしかったのか?」
「そ、そんなんじゃ・・・」

慌てて耳を押さえる。

「じゃぁなんでだ?」
「私は・・・ただ・・・そんな風な新一が・・・好きだから・・・・」
「蘭・・・」
「本当はね・・・ずっと傍にいて欲しかっただけなの・・・」
「・・・・・」

蘭はそっと新一に抱きついた。
そんな蘭を新一は抱きしめた。

「ゴメンな・・・いつも淋しい思いをさせて・・・・」
「いんだよ・・そんなこと・・・」

回りは暗さが増してた。
新一は蘭の頬を手に取り口を近づけた。
そして重なる唇。

熱くなる・・・唇・・・。

「んんんっ・・」

愛するものと傍ににいること・・・。
それが一番の幸せだった。
そんな時電話が鳴る・・・。




“♪〜〜”




「音楽?」

携帯電話を見てみると事件の連絡だった。

「今日は・・・ナシ・・。すみませんね・・目暮警部・・」
「でも・・・」
「いって、今日は蘭とずっといるんだからなvv」
「新一・・・」
「オメーとの時間が一番大切だからな・・・・」
「新一・・・大好きvv」






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