Not lover, but precious


By maria様


「工藤君。」
小学校で休み時間。
教室で推理小説を読んでいると灰原が目の前に立ち俺の名前を呼んだ。
「ん?なんだ?灰原」
灰原は少し黙って・・・口を開いた。
「放課後、ちょっといい?」
いつもと様子が違う・・・なにかあったのか?
黒ずくめの男達と・・・。
「あ、ああ・・・。」
俺が、そう答えると灰原は自分の席に戻っていった。


それから、放課後まで俺はいつもと様子の違う灰原が気になっていた。
黒ずくめの男達に正体がばれたとか・・・?
そんなわけ・・・・。

キーンコーンカーンコーン・・・・


〜放課後〜

「今日用事があっから先帰っていいよ。」
と、少年探偵団に言うと三人は教室を出て行き、俺と灰原が教室に残っていた。
「・・・・・。」
「・・・・・。」
沈黙が続いた。
灰原が口を開かずにずっと何かを考えているようだった。
なんか、声掛けづらくなっちまうじゃねぇかよ・・・。
なんとか言えよ・・・。
と、思っていると灰原が口を開いた。
「・・・・アポトキシン・・・・解毒剤出来たわよ・・・。」
「え!?マジでか!?完成品なのか!?」
「・・・完璧に元に戻れるはずよ・・・高校生探偵さん?」
今まで下を向いていた灰原が俺の顔を見て悲しそうに笑った。
「灰原・・・?」
「はい」
と、灰原は俺に解毒剤を差し出した。
「あ・・・サンキュ・・・。」
と、解毒剤を手にすると灰原が呟いた。
「工藤君・・・・。」
「ん?」
俺の目を真っすぐ見た。
今にも泣いてしまいそうな瞳で。
「私・・・あなたのことが好きだったわ・・・。」
震えた声で言ってる間に、灰原の瞳から涙がこぼれ落ちた。
「・・・・・。」
俺は・・・・言葉が口から出てこなかった。
ただ、そこに立ちすくんでいるだけだった・・・・。
「なんてね・・・・・。」
灰原が涙を手で拭き取るがその涙は止まらなかった。
いくら拭いても、拭いても涙は止まらなかった。
「っ・・・・早く行って・・・早くっ・・・蘭さんの所に行ってよ!」
灰原は俺に背中を向けて叫んだ。
「・・・・灰原・・・・ゴメン・・・俺っ・・・・。」
何を言ったらいいんだろう・・・。
何を言えば・・・・・。
「俺・・・・・・灰原が居て嬉しかった。」
同じ薬を飲んで小さくなった奴が居て嬉しかった。
仲間が居て嬉しかった。
こんな状況理解してくれる奴なんて居ないと思ってたから。
灰原が来てくれて・・・・・・・嬉しかった。
「・・・・・・・ありがとう・・・・。」
灰原は小さな声で呟いた。
なんとなく聞こえる声で。
「俺も・・・ありがとな!」
と、教室を出て走った・・・・。



大切な存在だけど
恋愛じゃない
でも、とても大切なんだ


Not lover,
but precious


Fin.


戻る時はブラウザの「戻る」で。