探偵と教授のコウスター



by 中村亮輔様



〔プロローグ〕



結婚してから約一年…工藤夫婦はイギリスの首都でホームズの聖地でもあるロンドンで友人夫婦3組と一緒に暮らしていた。
工藤新一と工藤(旧姓 毛利)蘭、その他3組の夫婦は全員ロンドンの同じ大学に通っている。



  ☆☆☆



〔1〕



「なあ、蘭。最初の講義って科目何だっけ?」
「もう…忘れたの?」
「ああ。」
「ああ。じゃないわよ、全くもう……考古学でしょ。」
「そうだっけ?で、講師は誰?」
「教授の名前まで忘れたの?ほんとにもう……エルシャール・レイトン教授。ナゾ解きがとっても大好きだってよ。どっかの大馬鹿推理之助と気が合いそうね。」
「放っといてくれ!…でも、ナゾ解きが大好きな教授か…気になるな…どんな教授なのか早く見てみたいぜ。」

時計が講義の開始時刻を告げた。
すると廊下から一人の若くてシルクハットのような帽子をかぶった男がドアを開けて講義室に入ってきた。
「みなさん。こんにちは。考古学を担当するエルシャール・レイトンです。みなさんには分かりやすい講義を心がけるのでよろしくお願いします。」
「あの人が例のナゾ解き好きの教授か。」
「噂には聞いてたけどやっぱり若そうだね。」
「ああ、そうだな。」
「では、講義を始めます。みなさん、レジェンドの5頁を開いてください。これは地中海、クレタ島にあった古代都市クノッソスのクノッソス遺跡です。クノッソス遺跡は1900年にA.エバンスによって発掘されました。エバンスにチェックを入れてください。遺跡内の中心部に位置する宮殿はラビュリントス伝説の起源といわれています。ラビュリントス伝説もチェックを入れてください。……」
「へぇー、結構詳しくて丁寧なんだな。分かりやすいぜ。」
「そうよ〜。格好良くて講義が分かりやすいって評判なのよ。」
その一言で新一はたちまちシャープペンシルを止め、憮然としてしまった。

新一が憮然としてしまったことに気付かず、蘭はレイトン教授のことを自分が聞いた限りのことを(嘘か本当か判らないことまで)話していた。

「〜なのよ。それで…って新一?どうしたの?」
「何でもねーよ。」
「嘘ばっかり。何か怒ってるでしょ。」
「怒ってなんかないっつってんだろ!」
その刺々しい声に蘭は少し怯えてしまったが、さらに訊いた。
「本当?」
「ああ。」
「私……何かした?」
と蘭は上目遣いで尋ねた。
すると新一は無言で顔を背けた。
その事で蘭は心を痛め、目を潤ませてしまった。

蘭の瞳が潤んだことに気づいた新一は慌てて
「ごめんごめん。泣くなよ。」
「だ、だって……し、新一が…呼んでも…応えてくれないし、何も言わないから…」
「ごめんよ、蘭。お前を傷つけるつもりはなかった。ただ…嫌だったんだ。」
「嫌って何が?」
「蘭が他の男の褒めるから…」
「もうっ。私は新一の妻なんだよ?浮気なんかしないよ。……だから…」
「だから?」
「新一も浮気なんかしないでね。」
「し、しねぇーよ!」
二人は自分達の世界に入り込んでいたので、周りの学生や講義のことはすっかり忘れてしまっていた。

「こらこらそこの君達。少し静かにしなさい。」
そんな二人を現実世界に引き戻したのは、教授の一言だった。
注意されたことに気づいた二人は慌てていたために、
「「あっ…ごめんなさい。」」
と一字一句綺麗にハモってしまった。



〔2〕に続く。




[後書き]
今回はパラレルではなく、原作に基づいたストーリーです。
最初のあたりに出てきた、「3組の夫婦」ってどういう意味か分かりますよね?
次回はその3組の中から1組が登場します。
どの夫婦が登場するのか予想してみて下さい。
見事、予想が当たった方には………何もありません。←(笑)
では、また。次回をお楽しみに♪(←なにこの某番組のパクりっぽい終わり方)



 〔2〕に続く。