First Love

By なーのん様

「また、この家の掃除にかりだされるとは思わなかったわよ・・」
なんで、この園子さまが新一くんの家の掃除してるんだろ。
しかも、当の本人は不在ときてる。
「ごめんね、園子。前に掃除してから随分時間経っちゃってほこりとか溜まってるから・・・・・」
前・・ね・・。あの時は確か、新一君が振った麻美先輩がこの家に新一君を訪ねてきて、大変な事件に巻き込まれたんだっけ。
まあ・・おかげで良いこと聞けたんだけど。
新一君の初恋。あの麻美先輩の言葉。誰が聞いても、

「俺の好きな女は蘭だ。」

って宣言してるようなもんなのに、蘭のやつってば全然わかってないんだもん。
それが蘭なんだろうけど・・
でも、早く新一君戻ってこないかしら。からかってやるのに。
「なに、ニヤニヤ笑っちゃって・・。」
「べつにぃ〜。ちょっと前のこと思い出しただけよ。」
「前って・・麻美先輩の事件のこと?」
「事件っていうか・・新一君の初恋のことかな〜。」
「またその話ぃ・・?・・ねぇ!そういう園子の初恋は!!」
「へっ??」



「お誕生日おめでとうございます。」
私よりもうんと大人のおじさんが私にペコペコ頭をさげる。
ううん・・私にじゃないわ。鈴木財閥に頭を下げてるのよね。
いくら「おめでとう」って言われても全然うれしくない。
ここにいる誰も心から私におめでとうなんて言ってくれやしない。
私は人の目を盗んでそっと抜け出した。
毎年恒例の私の誕生会。米花ホテルの最上階のパーティー会場を貸し切っての豪華なもの。・・でも楽しいなんておもったこと一度もないわ・・
だれもいないホテルの廊下。大きな窓から下をのぞき込むと車のライトやら街の明かりがキラキラ・・まるで宝石箱みたい。
いつか・・私がもっと大人になったら大好きな人と二人きりでお祝いするの。このお気に入りの白いドレス着て、心からのおめでとうを言ってもらうの。
「では・・今度のターゲットは「財閥のご令嬢」で。」
「そう・・。好奇心旺盛なお嬢様があやしげな男たちの密談を聞いてしまう。そこから彼女は狙われ出すんだ。」
廊下の向こうから誰かが話しながらやってくる。
・・・なんの話??財閥のお嬢様・・それって私????
「・・で、最後にそのお嬢様はどうなるんですか??」
ここにいちゃ、危ないわ。早くパーティー会場に戻らなきゃ。
・・だめ・・どうしよう・・足が動かない・・どうしよう〜。
「そうだなあ・・。やっぱり秘密を知ったものには死をー」
「やだぁぁぁぁぁ〜。お願い、殺さないでぇぇぇ〜」
「へっ?」
「へっ?」
「・・・・・へっっ・・・??」
腰を抜かした私の目の前に現れたのは、怪しげな男・・じゃなく、どこにでもいそうな小太りのおじさんと・・。
「おじさん」と呼ぶより「おじさま」と呼ぶことがふさわしいとても素敵なおじさま・・だった。
私の目はその素敵なおじさまに釘付けになってしまった。
黒のタキシードをスマートに着こなしている。眼鏡の奥の瞳は知的に輝いていて、口元には髭をたくわえて・・そう、これこそ

「大人の男の人」!!

殺されるかもしれないって言うときに私の胸はドキドキしてる。
「どうしたんだい、お嬢ちゃん??」
「!・・大川編集長・・ひょっとして先ほどの私たちの話を聞いていたんじゃ??」
「はっはぁ〜。そうか。そりゃ、驚かせてしまいましたな工藤先生」
工藤せんせい???編集長???
「お嬢ちゃん、さっきの話は小説の内容なんだよ。この日本屈指の推理小説家・工藤優作先生の最新作の。」
工藤優作??そういえばお姉ちゃんの部屋においてあった小説って・・確か・・
「まだ、お姫さまには早いかな?もう少し大きくなったら読んでくれるかな??」
その瞬間、私の体はフワッと宙に浮いた。気がつけば私は優しく抱き上げられていた。工藤先生の腕の中に。
なんだろう・・この感じ・・逃げ出したいような・・。
ずっと・・こうしていたいような・・変な感じ・・。
「し、失礼ね・・私、来年は中学生になるのよ。子供じゃないわ。」
「それはそれは。もう立派なレディだ。」
「来年中学生か・・。ってことは工藤先生のとこの新一くんと同い年ですね。」
「ああ・・すっかり忘れていたよ。私はその新一を探してこいと言われたんだった。まったくどこの世界に自分の受賞パーティー抜け出して、息子探しをする小説家がいるんだ・・。有希子のやつ『あなたの推理力をもってすれば新一の行方を探すなんて朝飯前でしょ??』ときたもんだ・・・。」
工藤先生は私の顔を見つめて、ふぅうとため息を落とした。
「男の子はつまらん。女の子がいいな・・。このまま君をさらおうか?殺しはしない。世界中を旅してまわるんだ・・」
うん、行きたい・・っておもわず口にでそうになる。行きたいな。
どこか・・うんと遠い所・・。
「さっ、そろそろパーティー会場に戻らないとね、君がいなくなってそろそろ大騒ぎになってるころじゃないかい?」
「えっ、ああっ〜・・忘れちゃってた・・」
あれ・・なんで私のこと知ってるんだろう・・それも推理力??
そんなことより・・なんだかとっても名残おしいのはなんで??
そんな気持ちのまま駆け出す私の背中に優しい声。
「お誕生日おめでとう!園子!!」
この日一番最高のおめでとうが・・私に届いた。



「園子??」
「へっ?」
「だ・か・ら!園子の初恋だってば〜」
口が裂けても言えないわよね・・新一君のお父さんの優作さんが初恋の人なんて・・。
燃えたわよねえ〜。うんと年上の、しかも自分と同い年の子供もいる・・でも、あきらめきれなくて・・。
あのパワーは自分でもびっくりだわよ。名門の私立女子校の入学けってさ、優作さんの息子さんが入学する帝丹中学に入って。
新一君の同級生として優作さんに近付くって作戦だったのに〜。
ロス行っちゃうんだもん〜。(TT)
「ちょっと、園子、答えなさい!園子の初恋。」
「きっと園子ねえちゃん・・好きになる人が多すぎて、誰が初恋かどれが初恋かわかんなくなっちゃったんじゃないのぉ??」
「なんですって!!ちょっとコナン!!?」
「あっ、コナン君、お庭の草取り終わったのね。」
「うん!」
なんのよ・・このクソガキ・・蘭と私とじゃあえらく態度違うじゃない。
「あっ!」
そうか・・そうゆーことかあ。
「ねえ、コナンくん〜」
「な・・なんだよ・・園子ねえちゃん・・・」
「私、わかっちゃった〜。」
「わ、わ、わかっちゃったってな、なにがだよ・・」
おーおー、焦っちゃって。可愛いじゃん。
「蘭、私の初恋よりコナン君の初恋のほうが興味なくない?」
「コナン君・・の・・初恋??いるの?好きな女の子?」
「ええええええええええええええ〜」
「もちろん、蘭ねえちゃん!・・だよね〜」


Fin…….