君のために 強くなる


By なーのん様


歩いてる道路がグラグラしてる。ビルやら街路樹やらが歪んで見える。
熱が高くなってきたんだな。
・・まったくなんで子供の体ってすぐ熱出るんだよ。
「コナン君・・また熱でちゃったの??」って蘭に言われちまう。
俺が熱をだすたび、不安そうな蘭の悲しげな瞳。
あんな顔させたくないのに・・いつだって新一のことで蘭のこと不安にさせて・・コナンのことでも・・。
今日はこのまま阿笠博士のとこにでも行くべきかな・・・・できるわけないくせに・・こんな時だから蘭のそばにいたいくせに・・。
頭の中でもうひとりの自分の声がする。
・・そうだよ・・俺はそういう男だよ。蘭の不安そうな顔はみたくないなんて思いながら、優しい蘭の看病を求めてる。
そんな自分勝手な・・最低な男だよ・・。
「ありがとうね、元太君。わざわざ送ってくれて。」
・・この風景は熱のせいなのか?幻影なんだろうか??
綺麗な夕暮れの光の中で優しく元太に微笑む蘭。
確か元太のやつ、今日は用事があるからってさっさと帰ったのに。
なんで蘭と一緒にいるんだよ・・。わざわざ送ってくれたってことは今まで一緒にいたってことか?
「あっ、元太君。今日のことはコナン君には内緒にしてね。」
なんだよ・・コナンには内緒って。・・って言うか何ムキになってんだ。
相手は元太じゃねぇか。小学生じゃねぇか・・。
それでも・・こんな気持ちになってしまうのは、熱のせい??
・・俺以外のヤツに微笑まないでくれよ・・蘭・・。
蘭が家に入っていったのを見届けて、俺も重い体をひきずるように階段をのぼる。
「コナン君、おかえりなさい。・・どうしたの??なんか顔色悪いよ??」
「・・蘭ねえちゃん・・大丈夫・・少し熱っぽいだけだから・・。」
「・・また・・熱あるの・・・??」
なんで・・そんなに悲しそうな顔・・当たり前か・・。
俺が熱だすたび、看病しなくちゃならないもんな・・。
いい迷惑だよな・・蘭にとって・・。
「ごめんね・・蘭ねえちゃん・・僕・・また蘭ねえちゃんに迷惑かけちゃうね・・・」
こんな俺・・蘭のそばにいちゃいけないのかもな・・。
「なに言ってるの、コナン君。迷惑なんて。」
「だって・・蘭ねえちゃん・・悲しそうな顔・・してる。」
「・・悲しそう??ちがうの、私・・自分の力不足が情けなくて・・私がもっとちゃんとコナン君のお母さんがわりできてればこんなに熱だしてコナン君に苦しい思いをさせることないのにって自分が情けないの・・本当のお母さんならコナン君の体のことをちゃんと考えたご飯とかつくってあげるはず・・・本当のお母さんなら・・コナン君のことちゃんと守ってあげれるんだろうなって・・・。」
そんなふうに思っていたの?俺の熱が自分のせいだって??
だから自分を責めて、あんな悲しそうな顔してたの??
バカ蘭・・なんでそんなふうに思えるんだよ・・。
でも・・それが蘭なんだよな・・優しい優しい蘭・・。
俺、やっぱり・・オメーのそばにいたいんだ・・迷惑かけても・・。
「蘭ねえちゃん・・がっこうの先生が言ってた・・子供が熱を出すのは強い体を作るためなんだって。熱が出るたびに免疫とか抗体とか作られていくんだって・・だから僕の熱は蘭ねえちゃんのせいじゃないよ。僕が強くなるためなんだよ・・・」
ひとつ苦しむたびに強くなる・・体も心も・・・。
誰のせいでもなく・・自分のためなんだ。
強くならなきゃいけない・・どんなに苦しくたって・・。
本当の自分自身を取り戻すために・・・。
「コナンくん!!!」
足下がグラリと大きく揺れた。その瞬間俺の体は蘭の甘い体に抱きしめられる。
大丈夫だよ・・蘭・・強くなるから・・守りたいから強くなる・・。


「だぁ〜か〜ら。ガキっはしょちゅう熱だすんだよ!」
この声・・毛利のおっちゃん・・。俺どうしたんだ・・ぶったおれて??
ぼやけていた風景がじょじょにくっきりしてくる。ここは車の中?
「お父さん、ちゃんと前むいて運転して!安全に急いで!!」
「安全にいそげぇ・・むちゃくちゃいうんじゃねえ!」
「蘭・・・ねえちゃん・・」
「コナン君、気がついたのね。大丈夫、もうすぐ病院つくからね。」
「病院いったら、ぶっとい注射うたれるからな。ビービー泣くんじゃねぇぞ。」
バーロー・・俺は高校生だ・・注射ぐらいで泣くかよ・・。
「子供が熱を出しやすいってわかってても・・元太君は元気だもん。体だって大きいし・・・。」
「だから、オメー・・わざわざ元太の母親に料理のレピシ聞きに行ったのか・・・」
「うん。あの元気の秘訣は小嶋家の食卓にあるんじゃないかと思ってね・・」
それで・・それで蘭・・今日元太と一緒にいたのか・・。
俺のためだったんだ・・。
「でもよぉ・・料理だけが子供の健康つくるわきゃーねぇぞ。それがすべてだったら・・オメーはそんなに健康に丈夫に育つわけがなかったハズだ・・・」
・・そりゃ言えてる・・あの蘭の母さんの作る料理のまずさときたら・・体壊す・・絶対・・。
「いや・・まてよ・・あの英理の料理が逆に蘭の健康体を作りだしたのかもな・・そうだ!毒も使いようによっては薬にもなるって言うしな。」
はは・・おっちゃんのいうことも当たりかも。毎日少量の毒を飲むことで毒のきかない体になるって言うし・・。
「お・と・う・さ・ん〜・・バカなこと言ってないで急いで!!コナン君が大変なことになってる〜。苦しいのに笑ってるの〜。」


FIN…….


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