私って嫉妬深い?



By 白石早苗様



ピンポーン ピンポーン ピンポーン

蘭は朝、新一と一緒に登校する為、工藤邸のチャイムを何度も鳴らしていた。

「だーうっせぇなぁ! 一回鳴らしゃー分かるってーの!」

パンを加えた新一は、蘭に怒鳴り込んできた。


「ちょっと新一! 遅刻しちゃうよ!」

蘭は腕時計をチラチラ見ながら新一を心配する。

「悪ィ。もーちょいだから…」

中から新一の声がする。
新一が黒の組織を壊滅させ、APTX4869のデータを手に入れ、解毒剤で元の姿に戻ったのは1週間前のこと。
帰ってきて蘭に告白し、最近ようやく幼馴染から恋人になることが出来たのだった。

並んで歩いている最中、新一は蘭の機嫌を伺っていた。
そして思い切ったように口を開いた。

「悪ィ蘭。お詫びに明日、トロピカルランド行こーぜ?」

「えっ…」

トロピカルランド。
全てが始まった場所。

「あそこから始まった。だったら俺達の恋人としてあそこから始めよーぜ??」

ニッと笑いながら新一は歩く。
蘭が気になったのは別のことだった。

明日は蘭の誕生日だったのだ。
誕生日プレゼント?
もしかして…。
そういえば前に噴水見せてくれたっけ?

蘭はドキドキしながら明日を迎えることになったのだ。







その夜、蘭の携帯が鳴った。
メールだった。
その着うたは新一からのメールの着うただった。

『ゴメン蘭、明日事件で行けなくなった。この埋め合わせは必ずするから!』

たった一行。

蘭は目に涙を浮かべ、携帯をベッドの上に投げた。

「自分から誘ったんじゃない」

蘭は呟くと、深い眠りに落ちていた。






翌日。




蘭は新一と行けなくなったので園子を誘い、久々にショッピングを楽しんでいた。
喫茶店でおしゃべりに花を咲かせていると、佐藤刑事と高木刑事に出会った。


「あら、蘭ちゃん、園子ちゃん」

佐藤刑事は恥ずかしがらず、隣の席に着いた。

蘭は疑問を抱いた。
新一は事件、って言ってた。
でも何で佐藤刑事たちが…?!


「あの、今日事件じゃないんですか?」

「いや、今日は平和だよ。今のところね」

高木刑事が答える。
蘭は血の気が引いていくのがわかった。


「蘭?」

蘭の様子がおかしいのに園子は気づいたらしく、蘭を支えてとりあえず自分の家まで連れてきた。

「どしたの? 蘭。顔真っ青だよ?」

「園子…新一、事件だとかいって今日出かけちゃったの…トロピカルランド行こう、って約束してたのに…」

「ええっ!?」

園子は驚き、考え始めた。

「女が絡んでるわね」

園子お得意の推理を始めた。

蘭と園子は町中探し回ったが、結局新一を見つけることは出来なかった。






翌日、蘭は新一と下校中、思い切って聞いてみた。


「事件どうだった?」

「ばっちり!」

新一はピースをしてみせる。
何で嘘つくのよ…。

「嘘つき」

「は?」

「昨日は事件なんかない、って佐藤刑事たちが言ってたもん!」

そう叫ぶと蘭は新一を振り切り走った。


「待てよ蘭!」

新一は蘭の腕を掴み、向き合わせた。
もう涙顔で涙声だった。


「嘘は認めるよ。でも遊んでたわけでもないし、浮気してたわけでもないぜ?」

「何で」

何でそんなこと言えるのよ!

そう叫ぼうとしたのだろう。
言葉はそこで止まった。

新一の手の中には、キラキラ光る蘭の誕生石・エメラルドの指輪が光っていた。

「お前、昨日誕生日だったろ?本当はデートの時買うつもりだったんだけど、お前の誕生日一日勘違いしててよ。で、昨日渡すつもりだったんだけどなかなか見つからなくて…」

新一は照れくさそうに言う。




「だから…高校卒業したら…結婚してくれないか?」

蘭はもう涙を流していた。
うれし涙と悔し涙。
新一を信じてやれなかった自分が情けなくて辛くて悔しかった。


「はい……!」

にっこり綺麗に笑うと、蘭は通学バックを落とし、新一に抱きついた。

そして二人は高校卒業と同時にクラスメートから祝福される中、結婚式を挙げたのだった。




FIN…….



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