黒の組織との最後の対決



By 白石早苗様



FILE:0 プロローグ〜桜の木の前に佇む男〜


春、夏、秋、冬。

通常は、4つの季節をまとめて言うと、【春夏秋冬】。

4つの季節の中で一番居爽やかな季節(じき)。



桜が咲き、たんぽぽが咲き、ランドセルを背中にしょった新1年生が、お母さんと手を繋(つな)いで嬉しそうに小学校へやって来る。

そこまで言えばお分かりだろう。

今年も春が来た。
帝丹小学校の校舎裏の桜も、去年と比べて少し遅かったが花を付け、心地よい春風がそっと肌を撫でる。

そんな春をあざ笑うかのように、コナン史上最大の物語(ストーリー)が静かに幕を開けた。


4月10日。


丘に立つ、1本の桜の木の前に長く長身の影があった。
全身真っ黒なカラスのような男。
いつものように殺意に満ちた凍りついた瞳(め)ではなく、何処か寂しいような、哀しいような表情(かお)をした男。
瞳(め)からは一筋の涙が頬を伝っていた。

「ジンの兄貴! こんなとこに居たんですかい?」

サングラスを付けた、少々小太りの真っ黒な男が歩み寄って来た。


「兄貴?」



ジンの兄貴、と呼ばれた男はハッと我に戻り、手の甲で涙を拭うと、何処か悔しそうに手をぎゅっと握り締めた。
長い爪のせいで、指のはらに血がうっすらと滲んでいる。


「……何でもない。行くぞ、ウオッカ」


ウオッカ、と呼ばれた酒の名前の男は、素直に従い、ジン、と呼ばれた男と静かに去っていった。




ジンとウオッカ。



この2人こそ、新一がずっと追い求めていた黒の組織だった。



To be continued…….





 FILE:1に続く。