名探偵コナンAND・NOWシリーズ


高校生クイズスペシャル(2)




全国大会編。



(高校生クイズのオープングテーマソングを口ずさみながらお読みください。)


「今年も高校生諸君に熱い夏がやって来た!知力、体力、時の運を持った若人達よこの熱い舞台でその力を吐き出すが良い!!!ラ○オンスペシャル、第△回全国高校生クイズ選手権始まりであるぅ!!!!!」



 ☆            ★              ☆



千葉県、幕張メッセにて…。



「高校生の諸君、おはよう。」

福沢の声に参加者達も“おはようございます”と返した。

「眠そうだなぁ、諸君。眠気覚ましに気合をいれるぞぉ!!!」

参加者達はその一言で恒例の“あれ”をやるのだと感じた。

「高校生諸君、燃えているかァ!!!!」
「「「「「「「オー!!!!!!!」」」」」」
「他の誰よりも燃えていると言いきれるのかァ?!!!!!!!」
「「「「「「「オー!!!!!!!」」」」」」
「ファイヤー!!!!!!」
「「「「「「ファイヤー!!!!!!!!」」」」」」」
「ファイヤー!!!!!!」
「「「「「「ファイヤー!!!!!!!!」」」」」」」

高校生クイズお馴染みの光景で、皆のテンションが高まって行く中、妙に冷静なのが2人いた…。

それはもちろん…。

(これってある種の集団催眠やな…。)
(相変らず乗りが良いよな…。蘭の奴も…。)

「よーし!皆、身体が温まって来たので早速始めようか?これを見よ!!」

そう言って後ろを振り向いた福沢の動きに合わせて背後にあった黒いカーテンが落ちた。

そこには真っ黒な壁があった。
其処には扉が三つ有りそれぞれ、“知力”“体力”“時の運”と上にかかれてあった。
それを見た会場の者たちがざわつく中、福沢が続けた。

「ここにある三つの扉に各チームが一人ずつ入り、その中の試練を乗り越えて割符を手に入れてください。いち早く三つの割符を揃えた20チームが第2チェックポイントに進めます。」

その言葉に更にざわつく参加者達…。

「さぁ、これより3分間の作戦タイムを授けるので、各チームそれぞれ誰がどの扉に向うのか決めてください。スタート!!」

その言葉を聞くと同時に各チームがそれぞれのやり方で相談し始めた。
ちゃんと話し合う所、ジャンケンで決める所などさまざまなやり方で誰がどの扉に向うかを決めていた…。



改方学園の場合…。



「俺が“知力”に行くわ。」
「そやな。俺が行くより服部が行った方がええやろ…。」
「佐伯、それだけやないで。工藤は間違い無くこっちにくるからな…。アイツに対抗できるのは俺しかおらんやんか。」
「さよか。(このアホ如何にかならんか?)」
「どないしたん?遠山ハン、えらい元気無いけど…?」
「別に…。それで平次、後の2つは誰が行くん?」
「そやな…。」

平次が考える顔をした時、福沢の声が会場内に響いた。

「体力に限り女性にハンデを与えますのでその辺も考慮すると良いぞ。」

それを聞いた平次がポンと手を叩き、こう言った。

「それやったら和葉、お前が体力行け。」
「なんでや?」
「佐伯、こんな事言いたか無いけど、自分、一様女の和葉と体力測定の数値がそない変らへんやんか。」
「そら、えらい済まん事で…。」

(一様女ってなんやねんな…。)

「それやったらハンデが貰える和葉の方がエエやん。」
「そやな…。」

だが、なおも少しイヤそうにしている和葉を見かねた平次は更なる口説き文句を言い出した、

「何や?姉ぇちゃんと一緒に体力したないんか?」
「どういうことなん?」
「どう言う事って、工藤の所で体力の出来るの姉ぇちゃん以外おらんやんか…。」
「あ、そっか。ほんなら、アタシ体力行くわ。」
「これで決まりやな。佐伯、お前が運やで。」
「判ったわ。」



同じ頃、帝丹チームは…。



「新一君が知力で決まりよね。」
「そうね。」
「へーへー、判ったよ…。で、他はどうすんだよ?」
「体力は蘭ね。」
「えー?!何でよ?!園子?」
「何言ってるのよ?只のお嬢様の私より空手部女主将の蘭の方がよっぽと体力的に優れるじゃない。」
「そうだけど…。」
「まぁ、園子の言い分はともかく言ってる事は正しいな…。」
「言い分って、アンタ…。」
「オメーの何処が只のお嬢様なんだよ?」
「何よ?!」
「まぁまぁ、園子も新一もその辺にして…。私が体力やれば良いんでしょ?」
「悪いわね、蘭。」
「もう、園子ったら調子良いんだから…。」



そうこうしている内に作戦タイムが終わった。

「タイムアップ!時間だ、各チームの中で知力を選択した者は“知力”の扉の前に集合したまえ。」

そう福沢に言われた参加者達は次々に“知力”の扉の前に集まった。
流石に知力だけあってチームの中で比較的頭の良さそうなのが集まっていた。(もちろん例外もいたが…。)

その中には…、

(やっぱりこっちに来とったか…。工藤、負けへんで…。)
(服部の奴完全に俺を意識してやがるな…。これは面倒な事になったぜ…。)

この二人も含まれていた…。



参加者達が“知力”の扉をくぐると中には整然と並べられた机と椅子、そしてカンニング防止と思われる白いついたて、そしてその席の所には学校名(もちろん参加している所の)が書かれたネームプレートが置いてあった。
それを見た参加者達は、これからここで何が行われるのか大体の想像がついてしまった…。
そこに福沢の声が部屋にあったモニターから響いてきた。

「ここのルールについて羽鳥アナから詳しく説明してもらおう、羽鳥く〜ん!」
「はい、は〜い!」

その声と共に羽鳥アナウンサーが参加者達の前に現れた。

「では、早速この“知力”の部屋のルールをご説明しましょう。題して“サドンデスペーパーテスト”!!」
「サドンデスペーパーテスト?!」

参加者達が口々に呟いた。

「そう。ルールは至極簡単!これから皆さんには延々とペーパーテストを受けてもらいます。」

その一言に参加者達が不満の声が漏れた。

「この状態から抜け出すにはペーパーテストでクリアラインを超える点数を取ることです。」
「クリアライン…?」

参加者達からどよめきが起こった。

「そのクリアラインは、第一回は92点、第二回は88点と4点ずつ下がっていくぞ。」

(なんで4点ずつなんだ…?)

その場にいた全ての者たちが同じ思いを抱いた。

「ちなみに、何故4点ずつかと言うと、全てのペーパーテストは一問4点で合計25問、満点は100点だぞ。」

その答えに全ての者が納得した。

「そして、回数が増えるほどペーパーテストの難易度も下がり、解くまでの時間も長くなるぞ。これが主なルールだが、何か質問は?」
「はい。」

間髪を入れず新一が右手を上げた。

「ん?君は帝丹の工藤君だな?なんだい?」

羽鳥は新一の胸に付いた学校名と名前が書いてある参加者のネームプレートを見ながら聞いた。

「もし時間内に全部解けてしまったらどうなるんですか?」
「良い質問だ。回数を重ねれば難易度も下がり、時間も増えるから時間内に全部解けてしまう状況には遅かれ早かれ陥るだろう…。だが、いかなる理由があろうとトイレ以外で途中退場は許されない!」
「何でや?」
「君は改方学園の服部君か、何故ならこれが“サドンデスペーパーテスト”の本質だからだ。」
「なんやて?」

つまりこう言う事だ。

最終的に“知力”、“体力”、そして“運”の割符を早く全てそろえたチームが勝ち残るゲームである。

したがって、それぞれの難関はわざと時間をかけさせるように出来ているのだ。
その為、テストの途中で出来たからと言って勝手に抜けることが出来ないルールになっているのだ。

全てを理解した参加者達は諦めたのかの様に深々とため息をついた。

そして…、

「他に質問が無ければ、早速第一回のペーパーテストを始めよう。クリアポイントは皆さんもご存知の通り92点、時間は50分!採点休憩は全て15分だ!用意…スタート!!」

羽鳥のその言葉と共に“知力”の部屋では静かな戦いが繰り広げ始めた。



  ☆☆☆



残った他の参加者と福沢はモニターの中に映し出されている静かな戦いをしばらく見ていた。

そして、モニターの画面が消えると福沢が進行を始めた。

「さぁ、“知力”の皆も戦いを始めたことだし、残った“体力”と“運”も負けてられないぞ!では、次は“体力”の皆の番だ!“体力”を選択した諸君は“体力”の扉の前に集合したまえ!!」

福沢のその言葉に“体力”を選択した者達がぞろぞろと集まって来た。

その中には…、

「あ!やっぱり蘭ちゃんはこっちに来とったんか!!」
「和葉ちゃんもこっちに?」
「そうなんや。平次の奴が“姉ぇちゃんは絶対こっちに来とる”っていうから…。」
「そうなのよ…。このメンバーで体力が一番出来るの私だからって園子も新一も言うもんだから…。」
「そら、しゃあないわ…。蘭ちゃん、空手の東都チャンプやから…。」

などとお喋りに花を咲かせる二人も含まれていた。

そして、“体力”を選択した者が全て集まったのを見計らって福沢が進行を始めた。

「よし、全員集まったな!それでは各自“体力”の扉の中に入りたまえ!」

そう促された参加者達は次々と“体力”の扉の中へ入って行った。

扉の中は扉の幅よりすこし広いぐらいの通路が奥へと続いていた。
そこを進んで行くと男女別になった更衣室があり、参加者達はそこで体操服(又は汗を掻いても問題の無い服装)に着替えて行った。
その更衣室にはロッカーがあり、参加している学校の名前がロッカーの扉に書いてあった。
そして、そのロッカーの中には小さな首にかけるカードが置かれてあった。

そのカードの上には参加している学校名が書かれ、その下には小さく区切られた(一列5マスで2列計10マスの)マス目があった。

参加者達は、“まるで小学校の時に貰ったラジオ体操の参加カードだな。”と思いながら自分の学校名が書かれたカードを首にかけて行った。



  ☆☆☆



“体力”の者達が着替えに入ったのを更衣室前のカメラからの映像で確認した福沢は、残った“運”を選択した者達に話しかけた。

「君達、随分待たせたな…。結構待たせたから喉でも渇いてこないか?」

残った参加者達は福沢の意図が読めずキョトンとしている…。

「それに、“体力”の者達はかなり汗を掻くから飲み物を差し入れたいと思わないか?」
「はぁ…。」

誰言うと無く呟いた…。

「だったら自販機でジュースを買おうじゃないか!!」

そう福沢が言うと同時に“運”の扉が真っ黒なセットの壁ごと奥に向かって倒れた。

そしてその奥には数多くの自動販売機が置いてあった。
その自動販売機は色々な種類のジュースやコーヒー、紅茶、ココア、そして(緑茶や烏龍茶と言った)各種お茶が販売されていた。
販売機はどれも同じタイプらしく、見た目が全く同じであった。
あえて違いがあるとすればそれぞれの販売機に参加している学校名が付けてあるというぐらいであった…。

その光景に?マークを飛ばす参加者達…。

無理も無い、これの何処が“運”なのだと言うのだろうか…?

呆然とする参加者達にスタッフが片手で持てる位の小さな袋を手渡した。
その中には、大量の高校生クイズのロゴが入った小さなコインが詰まっていた。

「このコインは我々からのプレゼントだ!受け取りたまえ。」

そう言われても、これが何なのか解らない参加者達は戸惑ったような顔になっていた。

「そのコインで自販機からジュースを買うことが出来るぞ。」

そう言われた参加者達は取合えず自分の学校名が書かれた自販機の前に行った。
そしてコインを投入し、各自好きなジュース(又はコーヒーやお茶)のボタンを押した。
その時、“ピピピピピ…。”と言う軽快な電子音と共に自販機の電光掲示板がスロットマシンの様に数字を回転させた。
この瞬間、“運”を選択した全ての者は割符を手に入れる為の試練に気付いた。

「どぉやら理解してくれた様だな…。そう、“運”の試練はこの自販機で“当たり”を出す事だ!!!」
「マジかよ…。」

誰かがそう呟いた。

「あ、そうそう!言い忘れてけど、自分で買った飲み物は全部飲み干せよ!捨てたりしたらもったいないからな!それとトイレは自己責任で行ってくれたまえ!我慢してお漏らしするのは勝手だが、全国ネットで放映されると言う事をお忘れにならない様に。」

この一言で全ての参加者はトイレを我慢すると言う暴挙に出られなくなったのは言うまでも無い…。



それから、暫くして…。

体力を選択した者達の着替えも終わり、更衣室のもう一つの出口(“体力”の扉に続く廊下と違う方)から出てきた。
そこは大きな広間みたいになっており、“腕立て”、“腹筋”、“スクワット”などと書かれたブースがあり、それらが合計10あった…。
それを見た参加者達は皆、“まさか…?”と思ったのは言うまでも無いだろう…。

その時、広間に福沢の声が響いた。

「“体力”を選択した君達、これが試練だ!!!」

その時、その場にいた全員がおなじ思いを抱いた。

(やっぱり…。)

と…。

「そう!“体力”は全てのノルマをクリアしてハンコを貰い、いち早く全て埋めたらオッケーだ!」

その時、参加者達から“ええーっ!!”という不満とも取れる声があがった。
それに気付いた福沢は苦笑すると、更に続けた。

「何だ?!随分不満そうだな?もっと種目を増やして欲しかったか?」

その声に参加者達はフルフルと首を振った。
だが、女子の参加者達から“ハンデはどうなったんですか?!”と言う声が上がった…。
その声に福沢が思い出した様にポンと手を叩いて呟いた。

「ハンデかぁ!すっかり忘れていたなぁ!!」

その言葉にジト目で睨み付ける女子の参加者達…。

「ハハハ…。冗談だよ。冗談。ちゃんとハンデは与えてあるよ。あれを見よ!!」

そう言われた参加者達がよく見ると各ブースにはノルマと書かれた赤と黒2種類の数字が書かれていた。

そして、全ての数字は黒よりも赤の方が小さくなっていた。

それを見た参加者達に“まさか…?”と言う思いが通り過ぎた…。

「そう!皆も気付いていると思うが、これがハンデだ!女子の皆は赤い数字をクリアしたらハンコを貰えるぞ!!」

それを聞いた女子達から“ええっ!!それだけ〜?!”と言う不満の声があがったのは言うまでも無い。

「おやぁ?!なにが不満なんだぁ?!今は男女平等が当たり前になっているからちゃんと平等にして上げたと言うのに?!」

それを聞いた女子達から“そんな男女平等嫌だ!!”、と言わんばかりの不満が上がったのは言うまでも無い。



  ☆☆☆



それから、約1時間後…。



読者諸君も経験が有ると思うが、当たり付きの自販機が当たらないと思った事が有るだろう…。
もちろん、宝くじに比べたら遥かに当たりが出る筈なのだが…。
その為、これだけの人数がこんなに長い時間当たりが出るまで(もちろんジュースを飲みながらであるが…。)頑張っていたのだが…、未だ会場内で割符を手にしているのが2〜3人だけと言う状況であった。

その時、軽快な音楽が会場内に響きわたった。

その事に気付いた福沢が口を開いた。

「おやぁ?どおやら第一回のサドンデスペーパーテストの結果が出たようだな!羽鳥くーん!!」
「はい、はーい!!」

そう言うと同時に会場内のモニターに羽鳥が現れた。

「第一回サドンデスペーパーテストの採点が今終わりました!合格者は…。」



(しばし間)



「なんと2人も居るぞ!!しかも両者共満点での通過だぁ!!!!」

その言葉に会場中の者が思わず動きを止め、どよめいた。

羽鳥は続ける…。

「合格者一人目は…。」



(また、しばし間…。)



「大阪代表、改方学園!!!」

その声と共にこれ以上無い位不敵な笑顔で平次が羽鳥の前に来た。
羽鳥はその表情に少しうろたえながら続けた。

「もう一人は…。」



(みたび、しばし間…。)



「東京代表、帝丹高校!!!」

その声と共に、平次と同じぐらい不敵な笑顔で新一が羽鳥の前に来た。

そして2人が揃うと早速インタビューが始まった。

「いやぁ、2人とも流石に高校生探偵と言われるだけあって凄いな。」
「ま、俺らにかかればこの程度ちょろいわ。」
「探偵たる者雑学に精通してないといけませんからね…。」
「成る程、では最後にこの喜びを誰に伝えたいのかカメラに向かって言ってくれたまえ!3、2、1、Q!」

そう言われた2人はさっき以上に不敵な顔で言った。

「和葉ぁ!早よ割符手に入れてやぁ!!」
「蘭、今から応援に行くからな!」

そうカメラ越しに名指しされた2人がこれ以上ないぐらい真っ赤になっていたのは言うまでも無い…。

ちなみにこのシーンはしっかり放映され、“おおっと!名探偵2人は自分よりも彼女の方が心配だと言うのかぁ?!ラブラブだなぁ!!”というナレーションが入った事を付け加えておこう…。

また、この時存在すら忘れ去られた2人は…、

「えー!えー!!良いわよ!良いわよ!!あんた達2人で好きなだけラブラブしてたら良いじゃない!!!」
「あいつ等、こんなにラブラブなのに何で只の幼馴染って言い合ってるんや…?」

と自棄酒ならぬ自棄ジュースを煽りながら愚痴っていたそうな…。



  ☆☆☆



さらに数時間後…。



既に2チームが全ての割符を手にして通過していたり、ようやくリーチ(割符を二つ手にした状態)に漕ぎ付けたりしている中、かなり早い段階でリーチになっているのにもかかわらず未だ通過していないチームが二つあった。

それは…、

「園子、こんだけジュース買って未だ当たりが出ねーのかよ?」
「五月蝿いわねぇ!そんな事言ったって当たらないんだからしょうがないでしょお!」

運で引っ掛かっている帝丹と…、

「佐伯、言いだしっぺのお前が足引っ張ってどないすんねん。」
「こればっかりは実力で如何にもならんのやからしゃあないやんか!!」

同じく運で引っ掛かっている改方学園であった。



その後、この2チームは改方学園が12番目、帝丹高校が16番目で何とか通過したそうな…。





二日目に続く…。