名探偵コナン AND・NOWシリーズ



第5話 クリスマスパーティー


プロローグ 阿笠邸にて…


「快斗ぉ!何ボーっとしているのよっ!!早くしないと皆来ちゃうじゃない!!」
「ったくお祭り女だな…。」
「悪かったわね!!お祭り大好き女で!!」
「判ってるじゃねーか…。」
「快斗は、青子と違ってクリスマスでもドロボーやってた人だもんねぇ!!!」
「(ゲッ!)あ、あれはだなぁ…。」
「何よ!違うって言うのぉ!!」
「そ、そうです…。」

快斗はそう言ってうなだれた…。

そして、青子は上機嫌で阿笠邸で行われるクリスマスパーティの準備を進めていた。

何故この2人がここのクリスマスパーティの準備をしているのか?
話は、前日の工藤邸に遡る…。





前日の工藤邸にて…


「こんにちはぁ!!!工藤君居ますかぁ!!!」

その昼下がり、蘭に良く似た声が工藤邸に木霊した。
だが、彼女では有りえない…。
何故なら蘭はこんな呼び方をしないからだ…。

新一はその事に気付いて、怪訝そうな顔をしながら玄関に向った。
其処には、不機嫌そうな快斗と、嬉しそうな青子の姿があった。
そんな2人を見た新一は、取り敢えず挨拶をした。

「いらっしゃい青子ちゃん…。と、快斗。」
「とって付けた様に言うんじゃねーよ…。」
「なんか、すげー嫌そうな顔をしてるから…、青子ちゃんが用事が有って、その付き合いで来てるんだろ?」
「そうだけど…。」
「それで、俺に何か用かい?青子ちゃん。」
「うん。青子ね、工藤君にお願いが有って来たの。」

蘭に良く似た笑顔で微笑まれた新一は少し照れながらこう言った…。

「まあ、こんな所で立ち話もなんだから、上がれよ。」
「おじゃましまーす!!!」

嬉しそうに新一に付いて行く青子を快斗は超不機嫌な顔で付いて行った…。


  ☆☆☆


そして、リビングにて…。


3人は取り敢えず新一の入れたコーヒー(青子のみ蘭の飲んでいるココア)を飲みながら、青子の話を聴く事にした…。

「それで、青子ちゃん。用と言うのは?」
「今年のクリスマスパーティの会場を貸して欲しいの!!」
「は…?」
青子の話を総合すると、去年は自分の家でパーティを開いていたが、今年は蘭や新一、そして大阪から平次と和葉も呼ぼうと思ったのだ。
だが、只でさえ有名人の新一や蘭の友人など、去年とは比べ物にならない程の招待客を青子の家に入りきらないと考えた彼女は、広い新一の家に白羽の矢を当てたてたのだ。
そして、その事の了承を得ようとやって来たのだ。

「それで、俺んちを会場にしたい訳なんだ…。青子ちゃんは。」
「そうなの…。青子の知り合いで一番大きな家に住んでいるのが、工藤君の家だから。」
「そっか…。」
「お願いっ!工藤君!!」
蘭そっくりの上目遣いな表情で頼み込まれた新一は思わず真っ赤になってしまった。
「あ、ああ…。俺は構わないけど…。(メチャメチャ反則だぜ…。その顔は…。)」
「うわぁ!!ありがとっ!!工藤君!!」

そして、蘭そっくりの極上の笑顔ではしゃぐ青子にますます顔を赤らめる新一…。
それに対して、これ以上無いぐらいに不機嫌な声で快斗が絡んできた…。

「ケッ!新一はこの手の顔に弱いのを知ってて頼み込むんだもんなぁ!青子は…。」
「如何したの?快斗。さっきから凄く不機嫌だけど…。」
「別にっ!!!」

ものすごく不機嫌そうな顔でぶっきらぼうに喋る快斗…。
それに対して、新一は快斗の不機嫌な理由に気付き、ある罠を仕掛けた。

「悪かったな…、快斗…。俺がこの手の顔に弱くてよぉ…。」
「えっ?!」

新一はキョトンとした顔の青子に近づき突然、口説き始めた。

「ホント、俺って青子ちゃんのそう言う顔弱いんだぜ…。俺のモノにしたいぐらいだ。」
「えっ?!ええーーーーーっ!!!!」

真っ赤になりながら、うろたえる青子。
それに対して、快斗は怒り狂った様になった…。

「てめぇ!!!蘭ちゃんというもモノが有りながら、人様のモノに手ぇ出すんじゃねー!!!!」
「人様って…。ああ、中森警部の事か…、心配無用さ!俺は白馬以上の探偵になれる自信が有るから、正式に交際を申し込んで…。」



「ふざけるなぁ!!!青子は俺のだぁ!!!!


その一言にしてやったりの顔になり、青子に向ってこう言った。

「あれが、アイツの本心だよ青子ちゃん…。」
「え、えっと…………。」

青子はあまりの事に真っ赤になり、快斗も自分がはめられた事に気が付いてユデダコ状態になっていた…。

その後、暫らく2人は目が合っただけで照れまくっていたと言う…。





そして、クリスマス当日。工藤邸にて…。


「もうっ!隣の阿笠さんのクリスマスパーティを準備してもらう代わりに、ここでのパーティの準備をするって安請け合いしたの新一だよ!!」

そう言って、プリプリ怒りながら手伝う蘭…。
それに対して、新一は…。

「しょうがねーだろ?まさかこんなに沢山の招待客が居るなんて思わなかったんだよ!!!」

新一は青子から提出された招待客の多さに驚き、慌てて蘭に助っ人を頼んだのだった。
なにしろ、蘭や新一はもちろん、平次や和葉、そして園子や恵子、さらには江古田のクラスメートまで呼んでいたのだ。

「服部達はともかく、園子や恵子さん、快斗のクラスメートまで呼んでるんだもんな…。」
「新一、貴方も探偵なら青子ちゃんの性格ぐらい把握しなさいよ。」
「悪かったな…。」

むすっとした顔で呟く新一…。
そして彼が、青子の依頼を受けた本当の理由を蘭に話す事など出来なかったのだ。

(蘭に良く似た笑顔で微笑まれたから断れなかったなんて、口が裂けても言えねーよな…。)

そう思いながら、パーティの準備を進める新一と蘭であった…。


  ☆☆☆


同じ頃、東京に向う新幹線の車内で…。


「久しぶりに工藤や快に会えるでぇ…。」

すごく上機嫌で鼻歌交じりに呟く平次…。

「気色悪…。男に会うのがそないに楽しいか?」

ものすごく呆れ顔で呟く和葉…。
好対照の2人を乗せた新幹線は東京に向って走っていた。


  ☆☆☆


それから、数時間後の工藤邸にて…


「メリークリスマス!!!」


6人の声を合図に一斉にクラッカーが鳴り響き、パーティが始まった…。
その6人とは…。

「今年は随分少ねーよな…。」
「恵子達が工藤君の家でのパーティに萎縮して来ないんだから…。」

いまいち不満げな青子と、少しほっとした顔の快斗。

「これで少ねーのか?去年は一体何人呼んだのだ?」
「園子も京極さんとデートだってはしゃいでいたからね…。」

少し呆れ顔の新一と、京極と園子の事を思う蘭…。

「それで、こんなにぎょーさん食いもんが有るんか?」
「平次、アンタここに有るモノ全部食べる気ぃか?ちょっとは遠慮せぇ!!!!」

たくさん有るパーティ食材を目移りしながら呟く平次と、それを呆れた顔で見つめる和葉…。
この6人でパーティが始まった…。

「なあ、新一。」

パーティも盛り上がり中盤に差し掛かった頃、快斗が新一に話しかけてきた。

「あんだよ?」
「ずっと気になってたんだけど、何で隣のパーティの準備を俺達にさせたんだ?」
「隣のパーティ?なんやそれは、工藤?」
「隣の阿笠さん所でもパーティをやってるのよ、服部君。」
「へぇ…。どんなパーティなんや?」
「少年探偵団を呼んだ子供達のパーティなの、和葉ちゃん。」
「両方一緒にやったら良いのに…。如何してなの?工藤君。」
「それはだなぁ…。ガキ達と一緒じゃ盛り上がらねーと思ったんだよ!」
「それだけじゃねーな…。」
「何でそう言いきれるんや、快?」
「多分、コイツもトラウマなんだよ…。」
「「「「トラウマ?!」」」」
「蘭ちゃんがコナンの一件ですっかり寂しがり屋の性格に拍車がかかったのと同様に、コイツもコナンの時の一件を引きずっているのさ。」
「あーっ!!それでかぁ!!」
「なっ?!ど、どないしたんや?突然大きな声出して…。蘭ちゃん?」

快斗の話に対して、いきなり大声を出した蘭に驚く和葉…。
蘭はそんな周りの事を全く気にかけず、続けた…。

「可笑しいと思ったのよ、新一として一度も会ってないあの子達にいきなり“オゥ!元気にしてたかオメーら!”なんてコナン君みたいに言うんだもん。」
「(ゲッ!!)あ、あれはだなぁ…。」
「なによ!!その後、“あ、待てよ蘭ねぇちゃん”なんて寝ぼけた事言ってたのは何所の誰よ!!」
「完全にコナンとしての習性が残っとるな…。」
「気をつけねーと、また“蘭ねぇちゃーん!”なんて言いそうになるんだ。」
「わざわざコナン口調と声色で言うんじゃねー!!!!」
「それで、あいつ等に会いたく無かったんかいな?」
「コナンとしての習慣が出ちまうと、不味いからな…。だろ?新一…。」
「そ、そうだよ…。あいつ等にコナンとしてタメ口聞かれたくなかったんだよ…。」

快斗と平次の追及にそっぽを向きながら、呟く新一であった…。
其処に、和葉が口を挟んだ…。

「でも、あの子達も心配してるんとちゃう?」
「青子もそう思うよ、やっぱり…。親元に行った事にしてるんでしょ?コナン君は…。」
「そうよ、新一…。あの子達もコナン君に会いたいと思っているよ…。」

蘭の言葉に快斗が有る提案をして来た。

「だったら会わせよーぜ。」
「それ、好い考えだよ!!快斗!」
「どうやって?俺にコナンになれと?」
「なったらエエやん…。」
「簡単に言うけどなぁ…。」

そこに、蘭が有る物を持って来た…。

「これ使ったら?」

それは、コナンの時に使った蝶ネクタイ型変声機…。
それを見た新一は少し青ざめて呟いた…。

「ま、まさかこれを使ってコナンのフリをしろと…?」
「良いじゃない…。昔はこれを使ってよく新一のフリをしてたじゃない…。」
「好きでやってたんじゃねー!!!!」

新一の抗議を無視して、他の5人による探偵団へのクリスマスプレゼントが企画された…。


  ☆☆☆


それから、約1時間後の阿笠邸にて…。


パーティもすっかり佳境に入り、5人はすっかりもりあがっていた…。
だが、そんな雰囲気をぶち壊す一言が歩美によってもたされた…。

「ああ、ここにコナン君が居ればなぁ…。」

その一言に、一瞬水を打った様に静まり返る一同…。

「吉田さん…。気持ちは判るけど、その一言は禁句よ…。」
「灰原さん、ごめんなさい…。」

今までの雰囲気から一転して沈痛な表情になる一同…。
そんな雰囲気を打破するかの様に4人の男女が現れた。


「良い子の皆、メリークリスマス!!」


突然現れたサンタ服(和葉と青子はミニスカサンタ)の4人に唖然とする5人…。

「なんや、えらい沈んでるなぁ…。どないしたんや?」
「今日はクリスマスやでぇ!もっと盛り上がらへんとアカンわ!!!」

そう言って、さっき小遣いを出し合って買ってきた簡単なプレゼントを渡す平次と和葉。

「そうだよっ!クリスマスなんだからもっと楽しくやろうよ!」

そう言いながら、工藤邸のパーティで余ったお菓子やケーキを並べる青子。

「そうだぜ!オメーらがしょぼくれてたら、外国に居るコナンとか言う坊主も心配するぜ!!」

そう言いいながら、簡単なマジックを披露する快斗。
そんな4人に探偵団の3人は少しずつ笑顔を取り戻した…。
今だ驚きを隠せない灰原と博士に快斗がそっと耳打ちする。

「博士、ここの電話はスピーカーモードに出来ますか?」
「そりゃ出来るが、如何してそんな事を聴くんじゃ?」
「コナン君から電話が来るんでね…。」
「工藤君に頼んだの?」
「ええ…。クリスマスプレゼントに良いと思いましてね…。」

そこに、ちょうど良いタイミングで電話が鳴り響いた。
早速、博士が電話に出た。

「はい、もしもし…。おお、蘭君か。」

突然の電話に探偵団の3人は驚きを隠せない…。
しかも、相手は彼等もよく知っている蘭からだ…。

しかも、博士は嬉しそうに話している。
3人は?マークを飛ばしていた…。

博士は突然、電話をスピーカーモードにした、そうする事により、受話器無しでも会話が出来る…。
そして、その電話機からは彼等にとっていとても懐かしい声がした。

『あれっ?!もしもし…?博士、如何したんだ?』
「「コナン君!!」」
「コナン!」
『えっ?!皆?』
「コナン君!如何して?!」
『どうしてって…、クリスマスだから久しぶりに皆の声が聴きたいと思って…。歩美ちゃん達こそ、如何して博士の家に?』
「皆でパーティを開いてたんですよ!」
「歩美の奴がオメーを心配してよぉ!!!」

その後、少年探偵団は延々30分以上コナンと話し込んだ…。
彼等にとって、これが最高のクリスマスプレゼントだっただろう…。


第6話に続く




「オマケ……。」に進む。