名探偵コナン AND・NOWシリーズ


第六話 忘年会


プロローグ 年の瀬も迫った12月29日の工藤邸


「マジでやるつもりか、快斗?」
「なんの為に、わざわざオメーの家の大掃除を手伝ったと思っているんだ?」
「手伝ったの主に私なのに、偉そうな事言わないの!!」

「新一も掃除より推理小説を読んでた時間が長かったわね…。」
「「ハハハハ…。」」

笑って誤魔化す新一と快斗をじと目で睨む蘭と青子であった…。
四人は大掃除の後、新一の家で忘年会を開こうと準備していたのだ。

それを言い出したのは快斗であった。
が、調子の良い快斗はこう言ったイベントが大好きな青子をまき込んだのである。
そして、彼女の性格を熟知していた快斗は掃除のほとんどを青子に任せていた。
新一もまた、蘭の性格を熟知していたので、主に(読書も兼ねて)書斎の掃除に専念していた。
そして、ほとんど掃除が終わった時点で快斗が今晩の忘年会を企画したのだ。
そして、その忘年会にはしっかり平次と和葉も参加する予定になっていた。


  
☆☆☆


そして、その夜…。


「工藤ぉ!!!来たでぇ!!!」
「なんちゅう大声出すんや!!近所迷惑やろっ!!!」

と、揃って近所迷惑な2人が工藤邸に入っていった。


そして、リビングで…。


「お前等…。未成年の飲酒は法律で禁じられてる事はしってるよな…?」
「工藤、そんな細かい事気にすんなや。」
「俺、犯罪者だもん。」

快斗と平次はしっかりと(大量の)お酒を持ち込んでいた…。

「平、日本酒を一升瓶で2本も持って来たのかよ?」
「そう言う快こそ、こんな仰山の洋酒何所から持って来たんや?」
「この洋酒は新一の家の地下に有ったんだよ。」
「これ、オヤジが忘年会行く言うたら持ってけってくれたんや。」

それを聞いた新一は心底呆れた…。

「大阪府警本部長が法律を無視するなよ…。」
「心配せんでも、飲酒運転に引っ掛かるような真似せんから…。」
「そう言う問題じゃねー…。」
「でも、新一。こんなに沢山のお酒如何したの?」
「父さんが出版社の人達からもらったんだよ。特にヨーロッパの方からはワインが結構来てな…。父さんもあまり飲むほうじゃなかったから、これでも結構人にあげたんだぜ。」
「それでもこの量かよ?」

快斗は地下から赤白合わせて4本のワインとブランデー、ジン、ウイスキーなど合計8本を持ち込んでいた。

「凄い量やな…。」
「地下室にはまだまだあったぜ…。」
「全部で何本有るの、新一?」
「さあな…。父さんがロスに行くまでの間に貰ったり、人にあげたりして出し入れが激しかったからな…。」
「工藤君も知らんのかいな…。」

新一の言葉に残りの5人は心底呆れていた。




そして、忘年会(酒盛り)が始まった…。


「先ずはロゼ(赤ワインと白ワインのカクテル)から飲もうぜ。」

快斗は慣れた手つきでワインをブレンドし始めた。

「慣れてるな…。オメー…。」
「オヤジがこう言うの好きだったからな…。他にも造れるぜ。」
「快、作ってくれや。」
「アタシも!」
「青子も。」
「ったく…。どいつもこいつも酒のみだな…。」
「良いじゃないの。たまには…。」
「蘭、オメーまでそんな事を言うのか?」
「工藤!お前は真面目過ぎるわ!!」
「オメーらが不真面目過ぎるんだよ!!」
「新一、両親が有名人だからって気にしすぎだぜ。」

新一はもはや諦めたのか、その後他の5人同様お酒を飲み始めた。


最初はある程度ちゃんとしたカクテルを飲んでいた6人だが、次第にアルコールが回ってきて彼等は未知の液体(訳の判らんカクテルや、ちゃんぽん)を流し込むようになった。
そして、遂に…。

「究極のちゃんぽんや!!」

そう言って平次は、ワイン(赤)を日本酒で割ると言う暴挙に出た。

「おいおい…。そんなの美味いのか?」
「快斗、飲めると思うなよ。んなもん。」

そして他の5人が見守る中、平次がそれを飲み干した。

「どうだ?平。」
「よぉ判らん。」
「飲んだのおめーだろが!」
「そないな事言われても、初めての味やったんや。工藤。」
「快斗ぉ、青子も飲んでみたい。」
「アタシも欲しいわ、平次。」
「新一、飲んでみようよ。」

快斗と新一もかなり酔って居た為、一緒にその謎のカクテル(和洋折衷のロゼとでも言うのか…?)を飲んでみた。
その始めての味わいにますます6人は酔いが回ってしまった。
その後、彼等は取り敢えず其処に有る液体(何であるか認識できなくなっている)を飲むような状態になった。



そして、更に数十分後…。


6人はすっかり出来あがっていた。




新一と蘭の場合…。

「ったくよぉ…。っく、どいつもこいつも…。ヒック!」

新一は酒に酔うと愚痴る人間であった…。
ただし、かなり酔っている為、何を愚痴って居るのか(本人を含めて)誰にも判らなかった。
そして、そんな新一にピッタリとくっ付き絡んでいるのが蘭であった。

「新一ぃ!私の事どう思ってるのぉ?!どうせハウスキーパか、メイドぐらいにしか思ってないんでしょお!!」

「んな訳ねーだろ!!」
「嘘だぁ!私より事件の方が新一は好きなんだぁ!!」
「ちがぁう!!」
「じゃあ米花センタービルで事件が起こった後、帰って来なかったのは何所の誰よぉ!!!」
「あ、あの時は…。」
「私、新一に弄ばれて捨てられるんだぁ!!」
「んな事するかぁ!!!!」
「良いもん!私、コナン君を探して押しかけ女房になってやるっ!!!」
「コナンは俺だぁ!!」


蘭はあの一件のトラウマで酔うと新一に絡む様になっていた…。
そして、彼女のきめ台詞がさっきのコナンの奥さんになると言うものだった。





快斗と青子の場合…。

「快斗ぉ!!すごぉいぃ!!カッコイイ!!」

ハートマークを飛ばしながら快斗を応援する青子。
彼女は酔うとすっかり素直になり、そして陽気になっていた。
ちなみに快斗は、マジックを無意味に披露していた…。

この2人、酔うとすっかり似た物同士になり、お似合いの夫婦になっていた…。




平次と和葉の場合…。


「平次、アタシの事嫌いか?」
「なんやねん。藪から棒に?」
「質問に答えてぇな。」
「す、好きやで。」
「嘘や!」
「何でそう言いきるんや!!」
「ほんなら、何で何時も何時も工藤、工藤って言うんや?!」
「そ、それはやな…。」

「それは…?」
「は、恥ずかしいからや。」
「何が恥ずかしいんや!アタシの事好きやったらちゃんと言うてぇな!!」
「アホー!そんな事はここ一番に言うもんなんや!!」


この2人は、何時も酔うとこんな調子で告白していた。
が、二人揃ってこの時の記憶が無い為、何の意味もなかった。
そんな告白合戦を快斗は花びらを撒き散らしながら応援し、それを青子が声援を送っていた。

そんな4人を後目に、新一は蘭の酒癖の悪さを愚痴りながらチビチビと酒を飲み、蘭は文字通り妖怪子泣き爺の様に新一にしがみ付いていた。


  
☆☆☆


同じ頃、工藤邸の前では。


「はぁ…、気が進まないわ。」
「佐藤さん、気持ちは判りますが目暮警部の指示ですし…。」

高木と佐藤の2人はこの年の瀬に起った事件の早期解決の為、目暮警部の指示で新一に助っ人になってもらおうと頼みに来たのだ。
もちろん、2人は冬休み中の新一を呼び出す事は反対したのだが、いかんせん未解決事件(しかもその多くが重大事件であった)が多すぎたので、やむなくここに来ていた。
2人は早速工藤邸のインターホンを押した。


☆☆☆


同じ頃、室内では…。

「あんだよ…。ヒック!こんな時間に誰だ…?ヒック!!どうせ、事件の呼び出しだろうけどよぉ…。」


その音になんとか反応出来た新一が立ち上がろうとするが…。

「駄目ぇ!!!行っちゃやだぁぁぁぁ!!!!」


泣きながら蘭が凄い力でしがみ付いて来た為、新一は上手く立ち上がる事が出来なかった。
もちろん、他の4人も気付いていたのだが…。

「工藤ぉ、ねぇちゃんがそんな状態なら身動きとれんやろ?俺が行くわ。」

だが、平次は言葉と裏腹になかなか立ち上がれなかった。
なぜなら…、

「平次ぃ!アンタが行く事ないわぁ!!」

蘭同様に和葉も泣きながらしがみ付いて来た。
そして、快斗と青子はそんな4人のラブラブぶりを声援していた…。


  
☆☆☆


一方、玄関先では…。


「変ね…。」
「如何したんです、佐藤さん?」
「工藤君居る筈なのに、出て来ないわ。」
「寝てるんじゃないんですか?」
「でも、リビングの電気をつけっぱなしにして寝るような子じゃないはずよ、彼。」
「ま、まさか強盗?!」
「にしては変よ。」
「ですよね…。」
「取り敢えず、リビングの窓から覗いてみましょう。」
「さ、佐藤さん、大丈夫なんですか?そんな事して…。」
「良いんじゃないの?別に…。」

そう言って、佐藤はさっさと光の漏れている窓の方に向った。
それを高木が慌てて追いかけた。



そして、2人は窓から覗き見た光景を観て愕然となった。
そこには、大量のお酒が入っていたと思われる空き瓶と、すっかり酔っ払いと化した6人の姿だった。
新一は既に来客が来て居た事を忘れ、すっかり出来あがった蘭の相手をしていた。
蘭はひたすら新一にしがみ付き、(傍から見れば)迫っていた。
平次と和葉は、新婚カップルの様にいちゃついていた。
快斗はそんな4人を祝福するかのように紙ふぶきや、花びらを撒き散らしていた。
青子は真っ赤な顔で、快斗に声援を送っていた。


「助っ人頼むの無理みたいね…。」
「そうみたいですね…。」

そんな光景をみた2人は、すっかり呆れていた。
そして…、

「高木君、私達もこんな忘年会が出来る様にがんばりましょう!!!」
「そ、そうですね!!」

2人はそう言って、立ち去っていった…。


ちなみに頼もうとした事件は、その事を聴いた目暮の陣頭指揮で解決した…。



第7話に続く





「オマケ……。」に続く。