名探偵コナン AND・NOWシリーズ


第七話 新年会


プロローグ、英理のマンション


新年1月2日、新一、快斗、青子そして蘭の4人は有る理由でここに来ていた。
何故なら、彼女に振袖を着付けてもらう為であった。
そして、青子と蘭の2人はそれぞれ色違いの振袖を着せてもらった。
それを見た新一と快斗の二人は…、

((か、かわいい…。))

そのまま、つれて帰って自分だけたんのうしようと一瞬考えてしまう2人であった…。
それもその筈、2人の井出達は蘭が赤、青子が水色の振袖を着ていた。
そして、2人とも薄化粧を施していたので、ぱっと見た目には双子の姉妹の様だった。
完全に見とれている2人に気付きお互いに赤くなる4人…。
だが、それに気付いた英理が口を挟んだ。


「見詰め合うのは結構だけど、間に合うの?新幹線。」

その一言に我に返った4人はそそくさと出て行った…。

後に残された英理は…、

「蘭ったら、完全にあの子しか見えて無いわね…。」

そう呟きながら、彼女は正月から(何時も)酒を飲んで寝ている小五郎の元へ向った。

(そろそろ、あの子も家事から開放させなくちゃね…。)

そう思いながら…。


  ☆☆☆


一方、4人は…。


4人はタクシーを拾い、東京駅で新幹線に乗り込んでいた。
その車内で…、

「何で快斗はタキシードなの?」

そう青子が不満を漏らした。

無理も無い、彼女はなれない着物でタクシーに乗り込むのも、新幹線の座席に座るのも一苦労したからだ。

「しょうがねーだろ…。羽織袴でマジックする訳にはいかねーんだから…。」

快斗は、文化祭の時に着たステージ衣装に身を包んでいた。

「それで、この荷物か?」

新一は快斗の持って来た大き目の鞄を見ながら呟いた。

「そうなんだ…。そんな大層な事しなくて良いって、平の奴が言うんだけど、寺井ちゃんがな…。」
「寺井さんが…?」
「寺井ちゃん、いくら顔見知りの依頼でも初対面の人が多い会合で手を抜くなって…。」
「じゃあ、結構大掛かりなマジックをやるんだ…。」
「ああ。楽しみにしてよ、蘭ちゃん。」
「でも蘭ちゃんのお母さんって着物の着つけも出来るんだねぇ…、凄いなぁ。」
「お母さん、仕事で覚えたんだって…。如何しても着物を着ないと行けない所にも、参加しなくちゃいけないからって…。」
「ふーん…。」
「でも、俺はともかくオメーは何で洋服なんだ?」

快斗は自分と同じく、色違いのタキシードに身を包んだ新一に文句を言った。
それに対して、新一は…、

「しょうがねーだろ?俺んちなんか着物無いんだぜ…。」
「何で?作家の家なら結構そういうパーティに参加したりしねーのか?」
「外国のパーティだぜ?アメリカやヨーロッパにちゃんとした着物が有るか?」
「なるほど…。さすが世界的に有名な作家だけの事はあるな…。」
「そうよ…。新一の家のクローゼット見せてもらった事あるけどドレスばっかりだったわ…。」
「へぇー、さすがに伝説の大女優だけの事はあるね、工藤君のお母さん。」
「それ全部オメーの母さんが着てたやつか?」
「いや…。」
「へ?!」
「家に今有るドレスのほとんど全ては蘭に着せるものだぜ。」
「「はぁ?!」」

思わずそろえて素っ頓狂な声になった快斗と青子…。
新一はそんな2人を見ながら続ける…。


「蘭がモデルになって結構頻繁にファッションショーをやってたんだぜ?どこの王室の舞踏会に出るんだって奴を…。」
「ちょっと待て、だったら文化祭のドレスは全て…?」
「そうさ、快斗。青子ちゃんも、和葉ちゃんのも、紅子さんのもあのクローゼットで見かけたぜ。」
「じゃあ、私のは?」
「蘭のは多分今回の為に新しくあつらえたと思う。」

その新一の言葉にただただ呆れる3人であった…。


  ☆☆☆


そして、新大阪駅にて…。


顔に縦線が裕に30本は入っているのではないかという顔になっている新一と蘭。
そして、少し呆然とした顔になっている快斗と青子…。

4人がそんな顔になっていたのは訳があった。

なぜなら、迎えにきた運転手はどう見ても私服警官だったし、迎えにきた車もどう見ても覆面パトカーだったからだ。
そして、4人は促されるままその覆面パトカーに分乗する事になった。
今だ少し呆然としている快斗に新一がこっそりと耳打ちする。

「快斗、ホントに引退した方が良さそうだぜ…。正月からすげー縁起がが悪そうだから…。」
「な、何でだよ?」
「まさか気付いて無いのか?覆面パトカーの後部座席は警察に捕まった犯罪者の指定席だぜ?」
「判ってるよ!!」

同様にその事に気付いていた青子も心配げに見つめていた。

「快斗、大丈夫なの?」
「青子、お前までそんな事を言うのか?」
「でも…。」
「何言ってんだ?以前は何時もオメーやオヤジさんを悔しがらせたんだぜ?」
「ぶぅ!!」

青子は思わず膨れてしまった…。


  ☆☆☆


そして、平次の家にて…。


「おお!工藤に快!ねぇちゃん達もよぉ来たのぉ。」
「服部…。オメーな、正月早々職権乱用してんじゃねーよ…。」
「工藤、今回パトカーを手配したんオヤジやで…。」

それを聞いた新一は心底呆れた声で叫んだ。

「親子揃って職権乱用してんじゃねー!!!!」


  ☆☆☆


そして、服部の家で新年会が始まった…。


「快斗、ホントに大丈夫…?」
「有る意味、どんな世界的な大会に出る時よりも緊張する…。」

マジックショーの最後の打ち合せをする快斗とアシスタント役の青子。
2人がこんな話をしながら打ち合せをしているのは訳が有った。
賢明なる読者諸君は薄々気付いておられると思うが、服部邸の新年会はほとんど(否、完全に)大阪府警の職員(だけ)で開かれていたからだ。
当然、怪盗キッドを裏の顔として持つ男、黒羽快斗としては心中穏やかでないものがあった。
だが、彼は父譲りのポーカーフェイスとマジシャンとしての血が騒ぐのか直ぐに不敵な笑顔になり、青子に向ってこう呟いた。

「じゃあ、始めましょうか?お嬢さん。」
「う、うん…。(か、快斗、キッドモードになってる…。)」



そして…、


「レディースアンドジェントルマン!イッツショータイム!!!」

この時、快斗は大量の警察官を前に何時も不敵に振舞う怪盗紳士キッドとなっていた…。


  ☆☆☆


そして、ショーが終わって暫らくした後…。

「さすが平ちゃんや、凄い友人ばかりやな…。」

そう感心する大滝を筆頭とした大阪府警の顔見知り達…。
それに対して、平次は超ご機嫌だった。

「そやろ、そやろ。」
「ご機嫌だな平…。」
「アイツ、酒が入ってるんじゃねーのか?」

そう新一が言ったのを静華は感心して呟いた。

「さすが、日本警察の救世主や…。よぉ判ったなぁ…。」
「ま、マジ…?」
「新一、ここに出されているの日本酒だよ…。」
「なんて一家だ…。」

新一は完全に呆れ顔でお酒を飲み始めた…。


一方、青子は既に出来あがっていた…。

「快斗ぉ、何かとっても良い気分だよぉ…。」
「青子、オメー学習能力ねーだろ…?」
「ほえ?」
「年末の忘年会で重度の二日酔いになったのは何所の誰だ?」
「誰だっけ…?」
「オメーだ!!」

青子は既に半分酔っていた…。

同様に酔って居眠りしている和葉…。(だから静かだったのだ)

そんな女性陣を無視して平蔵は快斗に話し掛けた。

「快斗君やったな…。」
「はい?」
「平次はああ見えて、結構プライドの高い奴なんや…。」
「はぁ…。」
「そやから、平次がここまでいれ込むからにはかなりの能力が有る筈なんや…。」
「と言うと?」
「アイツは自分と互角以上に渡り合える人間を見つけたら直接会って確認せな気がスマン奴なんや。」
「そうか!だから俺が行方不明になった時、直接蘭の所へ来たのか。」
「あの時、いきなり白乾児を持って、“工藤何所や?”って私に聴いて来たんだよね。」
「あの時、園子ねぇちゃんが工藤が蘭ねぇちゃんの所に転がり込んでるなんて言うとったけど、その通りやったな…。」
「確かにそうだな…。」
「そうよね…。」
「あ、あのなぁ…。」

事実なだけに反論できない新一だった…。

そして、その後も新年会は大盛り上がりで幕を閉じた…。



第8話に続く





「オマケ……。」に続く。