名探偵コナンAND・NOWシリーズ大学編




特別編・遅れて遣って来たサンタ。




プロローグ



黒の組織が崩壊して2年、工藤新一達は大学に進学していた…。

蘭は少しでも新一のサポートをしようと思い、母英理と同じ弁護士になろうと東都大学の法学部に進学した。
無論、彼女の学力ではかなりの難関であったが、最高の家庭教師(新一と英理)のお陰で滑り込む事が出来たのだ。

そして、蘭の居ない大学に興味も関心もない新一は当然の様に同じ大学の同じ学部に入った。


平次は、父の後継者になろうと新一と蘭と同じ学校の同じ学部に入り、和葉は少しでも平次の側に居ようと同じ学校の教養学部に何とか(かなり大変だったらしい…。)入る事が出来たそうな…。


快斗は最近国公立でも導入された一芸入試で同じ学校に入り、青子は本人の努力とかなりのIQをフルに使って快斗と同じ学校に入った…。


こうして、6人は全員同じ大学に進学し、平次と和葉、そして大学に入って直ぐ同棲(小五郎曰く同居だが、だれもそう言わない)生活を始めた蘭は揃って新一の家で生活を始めていた。









それから1年近く経った12月28日、阿笠邸。



博士と哀はリビングのソファーでくつろいでいた。
熱いお茶をゆっくりと飲みながら…。

「平和じゃの…。」
「そうね…。」
「哀君、君は小学生なんじゃから他の子供達と外で遊んで来たらどうなんじゃ?こんな所でワシみたいな年寄りとのんびりお茶をするなんぞ子供のする事ではないぞ?」
「博士、誰と遊べば良いの?」
「誰って、居らんのか?例えばあの子達とか?」
「博士も意外とひどいのね?それとも知らないのかしら?」
「なんじゃと?」
「あの子達は今、米花町には居ないわ。私がどんなに頑張っても手に入らない場所に居るの…。」
「あ、哀君、如何言う事じゃ?」
「判らない?歩美ちゃん〔作者注:哀は少年探偵団達と生きていく事にした為、3年に進級すると同時に呼び方を改めた。〕は母方、元太君と光彦君は父方の田舎に帰省しているのよ。3人共年内は帰ってこないそうよ。」
「そ、そうじゃったか…。」

そう言ってすまなそうにしている博士を哀は少し微笑みながら哀は答えた。

「気にしなくて良いわ。博士、知らなかったんだから…。」

そんな平和な時間がゆったりと進んでいた…。



そんな時、突然…、


ドッカーーーン!!!!!!


阿笠邸を揺るがす凄まじい大音響が地下の研究室から轟いた。

「な、なんじゃ?」
「な、なに?」

2人が突然の事に呆然としていると不意に地下から得体の知れない黒い煙が漏れ出してきた。
それに気付いた2人は慌てて地下の階段を下りて行った。



  ☆☆☆

 

その後、地下の研究室の前にて…、



2人は扉の前まで来ていた。そして、その扉からは黒い煙が漏れ出していた。

「こりゃイカン!哀君、強制排気システムじゃ!!」
「判ったわ!!」

強制排気システム…、それは得体の知れない不思議な実験を繰り返す阿笠邸には必要不可欠な代物であった。

実験によって偶発的に(極めて稀に狙い通りの物も出来ていたらしいが…。)出来た得体の知れないガスを安全に処理する為に作られた物であった。

その作動スイッチは床と天井付近に有り、ガスが空気より重い場合は天井を、軽い場合は床のスイッチを作動させる様にしていたのだ。
そして、この家に灰原が居候する様になってからは、身体の小さい彼女が床のスイッチを押す事になっていた。

灰原がスイッチを作動させると、ようやく煙が晴れ、研究室を見渡す事が出来る様になった…。

だが、2人はそんな状況に安堵する暇が無かった…。
何故なら、2人の目の前に観た事も無い物が鎮座していたからだ。
そのあまりの光景に暫し硬直してしまう2人…。

「博士、貴方何時の間にこんな物を作り上げたの?」
「哀君、幾等ワシが天才でもこんな大きな物を一瞬で作れんぞ。」
「でも私を驚かそうと…、って直ぐ顔に出る博士にそんな事無理ね…。じゃあ、一体誰がこんな物を?」
「さぁのぉ…。とにかく調べてみるしか無いんじゃないかのぉ。」
「そうね…。」

と言う訳で、2人は一緒に突然現われた謎の物体(何であるのか二人にも表現し辛かったらしい…。)を調べ始めた。



  ☆☆☆



それから、暫らくして…。



2人は手分けして謎の物体を調べ続けていた…。

「うーむ…。」
「博士、如何したの?」
「気のせいか、どうもワシが作ったような親近感を感じるのぉ…。」
「博士もそうなの?!実は私もそうなのよ。」
「なんじゃと?!」
「私が博士の発明の手伝いなんてほとんどやった事ないのに、どう言う事かしら?」
「さぁのぉ…。」

そんな話をしながら、尚も調査を続けていると不意に博士が何かのボタンらしき物を見つけた。

「ん?こりゃ何じゃ?もしかしてボタンかの?」

そう言いながら博士がボタンを押すと…、


ブシューーー!!


と言う何か気体が抜けるような音が響いた。
その音に驚いた哀が文字通り飛んで来た。

「博士?!何があったの?」
「判らん、表面にボタンらしき物があったから…。」
「押してみたの?!呆れた…。幾等調査の為とは言え、変に弄ったら大変な事になるかも知れないじゃない!!」
「じゃが、押してみん事に判断のしようがあるまい…。」
「確かにそうだけど…。自爆スイッチだったら如何するのよ?」
「あ、哀君、幾等何でもそんな物騒な物は…。」
「あら?何であるか判らない以上、そう言う物が付いてる可能性も頭に残して置くべきよ?」
「じゃがのぉ…。」

2人がそんな言い争いをしていると、不意に、

「う、ううん…。」

と、言ううめき声が何所からか聞こえてきた。

「博士、聞こえた?」
「ああ。ワシも聞いたぞ。」

2人はそう言うと声の聞こえた方に向った…。

 

2人はさっきまでは無かった謎の物体の出入り口にやって来た。

「あ、哀君、これは…?」
「どおやら、さっきのスイッチは入り口を開ける為の物だったみたいね…。」

そう言いながら、2人は少し緊張した面持ちで中に入って行った…。

 

  ☆☆☆



それから暫らくして、工藤邸に向う路上…。



新一、蘭、快斗、青子の4人は年末の大掃除の為、工藤邸に向っていた…。

「ゴメンね、新一の家って無駄に大きいから大掃除となると人手が足りないのよ。」
「悪かったな…。無駄に大きくてよぉ…。」
「良いよ蘭ちゃん、青子ん家も手伝ってもらったんだし…。」
「ったく、何で俺まで…。」
「イヤなら帰っても良いんだぜ?俺的には結構美味しいんだけどなぁ…。何しろ蘭が2人になって俺ん家をお掃除してくれる気分になれるからな…。」

そう言って嬉しそうにする新一を快斗はジト目で睨んでいた…。

(だからこうして来たんだよ!!コイツは蘭ちゃん以外眼中にねーと思うけど、青子と一つ屋根の下に居ると言うのが気に食わねー!!)

そう思いながら…。

「だけど、何で平達に頼まねーんだ?アイツ等も下宿しているんだから、手伝わせろよ?」
「アイツ等、年末年始は大阪に帰るんだと。」
「はぁ?大掃除がイヤだから逃げるって言うのか?」
「イヤ、かなり前から言われていたんだ。年末年始ぐらい帰って来いって…。」
「和葉ちゃんはともかく、平の奴は全く大阪に帰る気配が無かったからな…。」
「だろ?それで向うが痺れを切らしたらしくって、新幹線のチケットを送って来たんだ。」

4人はそんな話をしていると、工藤邸の玄関前に4人の子供が佇んでいるのを見つけた。

その4人は、(一卵性双生児の様に良く似た)双子の6〜7歳ぐらいの男の子と、同じくよく似た(此方も一卵性双生児の様に良く似ていた)双子の4〜5歳ぐらいの女の子、と言う4人兄弟の様な感じがした。

この辺りは住宅街なのでその事自体は然程珍しい事では無いが、その子供達を見て4人は少し驚いていた。

(え?こ、コナン君?!でもそんな訳無いし…。)
(この子、蘭の小さい頃に良く似てるなぁ…。)
(あの男の子、快斗の小さい頃そっくり…。何所の子だろ?)
(何だ?あの女の子、青子のガキの頃そっくりじゃねーか…。)

4人がそんな事を思っていると、不意に2人の女の子が新一達に向かって駆け出し、それを残った男の子達が追い駆け始めた。
4人は暫らくその光景を微笑ましく(昔を思い出しながら)見ていたが、

「パパぁ!!!」
「お父さぁん!!!」

と言いながら、新一と快斗にしがみ付いて来たのだ。

あまりの事に4人は…、

(ぱ、ぱ、ぱ、ぱ、パパぁ?!)
(お父さんだとぉ?!)

思わずパニックに陥る男性陣…。

(か、快斗ぉ…。)
(そ、そんな…?!し、新一、何時の間に…?!)

そして、あまりの事に文字通り目の前が真っ暗になった女性陣とに別れた。

そして、いまいち事態を飲み込めて無い2人の女の子は、

「パパ…?」
「お父さん…?」

蘭と青子の幼い頃そっくりの不安げな表情で2人を見つめた。
それを見た二人は、

((げ、これは泣く体制だ…。))

思わず(2人は何故そう思ったのか判らないまま)そう思ってしまう2人…。
そのまま、2人の不安通り目を潤ませる女の子達…。

だが、其処にようやく追いついて来た男の子達が話し掛けた。

「止めろ!!有理!!この人はオメーの知ってる父さんじゃねー!!」

(なに?!如何言う事だ…?)

「ったく、何やってるんだよ!!藍子!!コイツはオメーの知ってるパパじゃねーんだよ!!」

(はぁ?!如何言う事だぁ?!)

その一言でようやく我に返った蘭がその男の子に尋ねた。

「ね、ねぇ!僕達、それって如何言う事かなぁ?(な、なんかコナン君に話しかけてるみたいね…。)」
「うーんっと、僕達も良く判んないけど、哀お姉ちゃんに聞いてくれる?」
「「「「哀お姉ちゃん?!」」」」

4人は、綺麗にはもった…。

その後、3人の子供を連れた7人はその男の子に付いて行く様に阿笠邸に向った…。

 

  ☆☆☆



8人は阿笠邸の玄関先に着いていた。

「新一、気付いているか?」
「てめ…、俺を馬鹿にしてるのか?」
「そうじゃねーけど…。俺達突然オヤジにさせられたのに、何か違和感がねーんだよな…。」
「ああ。しかもこいつ等、博士の家を知ってる上に灰原の事“哀お姉ちゃん”って言ってたよな…。」
「だとすると、考えられるのは一つだよな…。でも、そんなバカな事あるのか…?」
「博士達なら考えられない訳じゃねー…。ましてや…。」
「そうか…。今は無理でも未来なら…。」
「ああ…。」

新一と快斗が真剣にそんな事を言い合っている側で、蘭と青子は2人の女の子を実の娘のような感じをしながらあやし、残った二人は…、

「月斗!オメーのせいだぞ!!!」
「あんだと!そもそも見つけたのはコナン!オメーだぞ!!!」

喧嘩していた…。



  ☆☆☆ 



8人は阿笠邸に入って行った。

「何だ?誰もいねーぜ?」
「おい!!ホントに灰原はここに居るのかよ?!」
「新一!子供相手に何怒ってるのよ!!ねぇ、僕。哀ちゃんはホントにここに居るの?」
「うん、居るよ。僕達が目を覚ました時は2階のベッドルームに居たけど…。」
「けど?」
「今は知らない。僕達に父さん達にここへ来る様に言い残してどっか行っちゃった。」
「はぁ?!」
「快斗、多分地下の研究室だ!!」

そう言う新一に急かされる様に8人は地下へと降りて行った。



  ☆☆☆


 
地下に下りてきた8人を哀が迎えた。

「あら?親子揃って来たわね。」
「へ?!(お、親子ぉ?!そ、それって青子の事も含まれているのかなぁ…?)」
「つー事はやっぱりこいつ等は未来から来た俺達の子供なのか?」
「そうよ、工藤君。」
「そうよって、哀ちゃん…。」
「快斗、呆れてる場合じゃねー。で、何でこいつ等がここに来る事になったのだ?」
「それは…、」
「月斗が悪いんだよ!!」
「あんだと!!最初に見つけたのはコナンだぞ!!」
「げっと…?」
「コナン?!」
「新一、ホントにそんな名前付けたんだ。」
「るせー!!オメーだってどうせ快斗の斗の字を取って“月斗”って名付けたんだろ?」
「うん。オヤジがそう言ってったってママが言ってたんだ叔父さん。」
「お、おじ…!!(俺、未だ二十歳なのに…。)」
「コイツにとっては叔父さんなんだよ。諦めろって…。」
「で、月斗君。ママってだあれ?」
「あ、青子ちゃん…?(おいおい…、俺があえて避けていた話題を今聞くか?普通。)」
「快斗!青子は今知りたいの!!快斗みたいな意地悪な奴にど〜んなお嫁さんがくるのかをね!!」
「あのな…。(今にも泣きそうな顔で言っても説得力ねーぜ…。)」
「ねぇ、ママ、なんでそんなに泣きそうな顔してるの?」
「へ?!(そ、それってまさか…?!)」
「ママ、如何したの?」
「藍子、このママは未だパパと結婚してねーんだって…。」
「ほえ?!だって藍子が産まれた時にはパパはパパだったし、ママはママだよ?」
「だーかーら…、」

そう言いながら、月斗は藍子にもう一度現在の状況を説明していた。
その時、青子がこれ以上ないぐらい真っ赤だったのは言うまでもない。

「青子ちゃん!良かったね!!で、コナン君、君のお母さんは?」
「ら、蘭ちゃん…?(おいおい…、顔はにこやかだけど目が座ってるぞ…。)」
「ねぇお母さん、なんでさっきから怒ってるの?」
「有理、この母さんは未だ父さんと結婚してないってさっき説明したろ?」
「コナンお兄ぃちゃんには聞いてない!!有理はお母さんに聞いてるの!!」
「ったく、一度言い出したらてこでも動かねーんだから…。」
「あの辺は母親似よね?蘭さん。」
「え、えっと…。」(←超弩級に真っ赤になっている。)

そんなほのぼのとした空気の中、博士が現われた。

「そろそろ本題に入っても良いかのぉ?」
「博士、もしかして楽しんでねーか?」
「ま、まさかそんな事はないぞ。し、新一君。」
「ホントかよ?(すげー嘘臭せーんだけど…。)」

その言葉に、博士は一つ咳ばらいをしながら続けた。

「ともかく、この子達は未来からやって来た新一君達の子供達じゃ。」
「で、そこに有る訳の判らねー物体がタイムマシンなのか…。」
「へぇー!すっごぉーい!!!」
「青子、関心している場合かよ…。で、こいつ等は未来に返せねーのか?」
「快斗!折角未来から来てくれたのに、もう返すのぉ?!」
「なに泣きそうな顔で言ってんだよ!!俺が言いたいのは、時代の違う人間が出会うだけでその歴史が変っちまうかも知れねーって言う事を心配してるんだよ!!」
「快斗君、そんな事有るの?」
「ああ。俺も何かの小説で読んだ事あるぜ。確か、“タイムパラドックス”とか言ってたな…。」
「ふーん…、新一ってそんな小説も読んでたんだ。(私は快斗君に聞いたのに…。)」
「まぁな…。何時も推理小説ばっか読んでた訳じゃねーんだ。で、灰原、このタイムマシンは使えるのかよ?」
「無理ね。」
「「「無理ぃ?!?!」」」
「そんな…!じゃあこの子達はずっと帰れないの?」
「快斗ぉ、どうしよう?青子達未だ結婚してないのにぃ…。」
「おいおい、そんな事になったら歴史が狂っちまうぜ!!」
「皆、少し落ち着け!!今は無理でも直せるんだろ?」
「出来る事は出来るんじゃが…。」
「何か問題でも…?」
「蘭さん、悪いけど未来の代物だけに私達が全く知らない、いわゆる“オーバーテクノロジー”が使われているのよ。」
「“オーバーテクノロジー”って?」
「文字通り、現在未だ開発されてねー代物の事だぜ、蘭。」
「そうなんだ…。(私、哀ちゃんに聞いたんだけど…。)」
「じゃあ、やっぱり直せないの?」
「そうでもないわよ、青子さん。幸いにも未来の私…、つまり未来の阿笠哀に連絡が取れたの。」
「阿笠哀?!」
「灰原、お前遂に博士の養女になるんだな。」
「今直ぐじゃ無いけどね…。」
「で、何だって?今も未来の哀ちゃんと連絡取れるんだろ?」
「残念だけど、今は無理よ…。誰かさんが色々弄ってくれたお陰で未来との通信すら途切れ途切れなの。」
「月斗!オメーのせいだ!!」
「あんだと!最初に見つけたのはオメーだろ?!コナン!!」
「もぅ、コナン君も月斗君も喧嘩しないの!」
「ちぇっ!何で口調まで未来の母さんと同じなんだよ…。」
「え?!えっと…。」(←ユデダコ状態になっている。)

(未来の蘭って、俺とコナンを間違える事が良くあるんだ…。)(←そう思いながら赤くなっている。)

「駄目じゃない月斗!喧嘩しちゃあ…。」
「はぁーい…。ちぇっ!時代が違ってもママはママかよ…。」
「そ、そうよ…!!ま、ママは何時の時代もママなんだから…!!」(←自分で言っておいて照れている。)

そう言いながら真っ赤になっている(未来の)両親達…。
そして、そんな彼等になつきまくっている娘達であった…。

「楽しい一家団らんは終わったかしら?」
「あ、あのな…。(灰原、オメー楽しんでるな…。)」
「哀ちゃん。楽しいんでないで、話進めてくれる?」
「そう…?じゃあ進めるわ…。でね、このタイムマシン自体が何時の時代から来たのかすら特定しきれてないの。」
「「なんだって?!」」
「それって、問題有るの?」
「有るに決ってるだろ!!このアホ子!!何時の時代から来たのか判らねーんじゃ帰りようがねーじゃん!!」
「そんな怒らなくても良いでしょ!!バ快斗!!」
「喧嘩なら、どっか他所でやれ!!他所で!!子供達の前でやるんじゃねー!!」
「話、続けて良い?」
「あ、ああ…。(くっそー!何かやり難いぜ…。)」
「まぁ、全く判らない訳じゃあ無いのよ。大体10年から15年ぐらいの間のはずよ…。」
「灰原、その根拠は?」
「貴方達の子供の年齢、それと未来の私の見ため年齢から推理したの…。」
「推理って…。未来のオメーと話せたんだろ?どんだけの間話せたのか知らねーけど…。」
「工藤君、そんな下らない事に貴重な時間を割いて欲しかったの?」
「い、いや、そう言う訳じゃあ…。」
「話を戻すわ…。それでね、何とか非常システムだけでも復旧させないと帰れないのよ。」
「非常システム…?哀ちゃん、それって何だよ?」
「つまり、何者かがイタズラして誤作動を起こした場合自動的に作動して、タイムマシンを適当な時代に移すシステムなの。」
「適当な時代?」
「つまり、誰かがタイムマシンをメチャメチャに操作して変な事…、平たく言えば時限の狭間で永遠にさまよったり、とんでもない過去や、ヘタをすると太陽系すら無い時代にタイムワープしない様にする為のセーフティロックなの。」
「それが働いて今の時代にワープしたんだな?」
「そう言う事よ…、工藤君。ただね、誰かさんがそれすらも弄ってしまったらしくてね、未来の私の話しによると、本来元の時代に戻るはずが、謝ってこの時代にやって来ちゃったらしいのよ。」
「月斗ぉ!!」(←かなり怒った様子で睨んでいる。)
「月斗兄ぃちゃぁん!!」(←泣きわめいている。)
「だぁっ!!俺が悪かったから泣くんじゃねーよ!!藍子!!」
「ねぇ、哀ちゃん、直るんでしょ?」(←泣きわめいている藍子をあやしている)
「青子さんに言われるまでも無く直すわよ。でないと、ホントに歴史が変っちゃうからね…。」
「哀ちゃん、どれぐらいかかるんだ?」
「何とか年内にケリをつけてみたいんだけどね…。肝心要の未来との通信がいまいちなのよ…。」
「灰原、通信機は無事なら何とか調整して…。」
「工藤君、馬鹿言わないで。普通の通信機と違うのよ?時を超えた遥かなる未来と今を結ぶ超時間通信機…、ヘタに弄くったらそれこそ永久に繋がら無くなるわよ。」
「そんな…。」
「大丈夫よ、蘭さん。きっと向うも同じ思いを持っている筈。今、未来では必至になって少しでも長い間通信出来る様に調整しているかもしれないわね。」
「さっき出来た未来の哀君との通信では、何とか今のタイムマシンの状態と今の哀君の年齢を伝えるだけで精一杯だったんじゃ…。」
「だから、今現在は向うの連絡待ち…。非常システムが復旧さえ出来れば直ぐに送り返せる事もさっきの連絡で聞いたから、通信さえ生き返れば直ぐに直せるわ。」
「じゃから、君等には済まんが、暫らくこの子達を預かってもらえんかのぉ?」
「イヤとは言わせないわよ?未来とは言え、貴方達の愛の結晶なんだから…。」
「「「「あ、愛の結晶?!?!」」」」

4人は真っ赤になりながら綺麗にはもった…。



  ☆☆☆



取り敢えず8人は、これ以上未来から来た子供達を引っ張り回すのは不味いと言う新一と快斗の意見で、工藤邸のリビングに移動した。
そして、暫らく(色々有りすぎて疲れたので)くつろいだ後、とにかく子供達の自己紹介をさせる事になった。

「とにかく、こいつ等の名前は聞いとかないとな。」
「新一、そんな事聞いてどうすんだよ?ヘタをすれば歴史に干渉する事になるぜ?」
「ほぉー、オメーは青子ちゃん以外の女の子と結婚してーんだ…。」
「「なっ?!?!」」

青子は真っ青になりながら、快斗は真っ赤になりながらはもった。

「か、快斗ぉ…。」(←潤んだ瞳で見つめている)
「パパぁ…。」(←母親が父親と喧嘩していると思い、泣きそうになっている)
「ば、バーローぉ!!(だぁっ!Wで泣くんじゃねー!!)それとこれと何の関係が有るんだよ?!」
「大有りなんだよ…。オメーだって知ってる筈だぞ?!“タイムパラドックス”の意味を…。」
「だから、ヘタに未来を知っちまうと…。」
「もう手遅れだぜ?何しろ俺達はもちろん、灰原や博士まで公認なんだからよー…。」
「あっ!!」
「やっと気付いたのか?でなきゃ、博士と灰原があそこまで俺達をからかう訳ねーだろ?」
「良く判ったな…、んな事。」
「あのな…。俺、探偵だぜ?(まさか、毎日の様に学校で園子達にからかわれているから慣れてるとは言えねーな…。)」
「あっそ…。(何か、嘘ついている様な顔なんだけどなぁ…。)」
「コナン、オメー有理ってどんな字書くか知ってるか?(何か、俺自身に聞いてるみてーだな…。)」
「知ってるよ。確か、おばあちゃん達から一字づつもらったんだって、小五郎のおじいちゃんが言ってた。」
「やっぱりそうか…。(あのババァの考えそうな事だな…。)」
「新一!やっぱりって、気付いていたの?!」
「まぁな…。母さんの性格から言って、蘭そっくりの孫が出来たら絶対名付け親に名乗り出そうだからな。」
「月斗、オメーは藍子ちゃんってどんな字書くのか知ってるか?」
「知ってるけど…。」
「けど?」
「すごく難しい字を使っているから判かんないんだ。叔父さん。」
「なるほど…。快斗、オメーってほんと判り易いな…。」
「コナンの名付け親に言われたかねー!!!」
「ねぇ、新一。どんな字書くか判ってるの?」
「多分、こう書くんだ…。」

そう言って新一は、メモ用紙に“藍子”と書いた。

「こう書くんだろ?月斗?」
「うん。そう言う字。」
「藍子ねぇ、すっごい難しい字を書くから未だ書けないんだ…。」

藍子はそう言ってうなだれた…。

「まぁ、しゃあねぇな…。4歳の子供に“藍”の字は難し過ぎるからな…。」
「でも、何で藍子なの?」
「蘭、黒と青を混ぜたら何色になる?」
「あっ!」
「そう言う事。」

新一の言葉に青子はこれ以上無いぐらいに真っ赤になり、快斗は不機嫌そうにそっぽを向いた…。

其処に更なる問題が帰って来た。

「ただいまぁ!」
「工藤ぉ、頼むからちょお手伝ぉてくれるか?」

その声に頭を抱える新一と、驚くそれ以外の者達に分かれた。
そして、よりによって最初に玄関に向ったのは…、

「あーっ!!平次叔父さん達がやって来たんだぁ!!」
「和葉叔母さん“ただいま”だって間違えてるよ!!コナンお兄ちゃん!!」

そう、有理と藍子であった。

残った6人がその後を慌てて追いかけたのは言うまでも無い…。



  ☆☆☆

 

一方、玄関先では…。



しっかりと実家へのお土産を買い込み上機嫌の和葉と、荷物持ちをさせられてすっかりグロッキー状態な平次が居た。
其処に、可愛い足音をさせながら、ちびっ子と化した蘭と青子が現われた。
あまりの事に思わず目が点になる2人…。

「ら、蘭ちゃん、青子ちゃん、ど、どないしたん…?」
「姉ぇちゃん達、工藤が飲んだアホトキシン(作者注:誤植ではありません)でも飲んだか…?」

その2人の反応に思わず小首を傾げて不思議そうにする2人の子供…。

「有理ちゃん、叔母さん達どうしちゃったんだろう…?」
「さぁ…。判んないよ、藍子ちゃん…。」
「お、叔母さん?!?!(な、何なんや?蘭ちゃんも青子ちゃんも同い年やのに…。)」
「和葉、ちょお落ち着け。この2人、何や可笑しいで。(何で“ゆり”と“あいこ”って言いあっとるんや?)」

其処に残った6人が追い着いた。

「藍子!さっきから何度も言ってるだろ?!この2人は俺達が知ってる平次叔父さんと和葉叔母さんじゃねーって!!」
「有理!あんまりあちこち走り回るなよな!ったく、“オメーは母さん似で方向音痴なんだ。”って父さんが言ってたんだからよぉ…。」
「平、悪いけどコイツ等の事は詮索するなよな。」
「もう手遅れだぜ…。快斗…。」
「工藤…、快…、如何言う事かきっちり説明してもらおうやないか…?」

其処には口調は穏やかだが、すっごく怒っている平次の姿があった…。



  ☆☆☆

 

それから、数分後…。



10人は取り敢えず玄関先から、リビングに移動した。

「ほー、それでこいつ等が未来からやって来た工藤と快の子供等か…。」
「よぉ似とるやん。可愛いわ。」

平次と和葉は新一達からこれまでの経緯を聞いていた。

「で、こいつ等は何時まで居るんや?」
「それが、判んねーんだよ…。」

そう新一が言った後、コナンが月斗を睨んだ。

「さよか。まぁ、俺等は明日大阪へ帰るから、せいぜい将来に備えて練習するんやな。」
「平…、オメー楽しんでるな?」
「当然やんか。他人の不幸は蜜の味なんやで?」
「他人事だと思いやがって…。」

そうやって楽しそうにしている平次にムッとした快斗はある逆襲に出た。

「なぁ、月斗。オメー未来から来たから、当然将来のこいつ等も知ってるだろ?」
「オイオイ、さっき自分で言ってた事と矛盾してるじゃねーか…。」
「良いんだよ。平達がこっちに下宿している時にこいつ等が未来から来たって事自体が、もう大きな時間の流れに組み込まれているんだからな…。」
「快斗、それ如何言う事?」
「つまりだ。未来の人間が過去に来てしまった時点で何らかの形で歴史に介入してしまうんだ。早い話が、この事故自体が歴史の流れの中に既に組み込まれているんだよ。」
「ふーん、そうなんだ…。」
「で、月斗、こいつ等の未来を教えてくれよ。」

だが、その問いに答える前に藍子がこう聞いてきた。

「ねぇ、和葉叔母ちゃん。」
「ん?何や…?(判っとっても、何か釈然とせんなぁ…。)」
「紅葉ちゃんと平太君は来てないの?」
「は?」
「藍子、この時代は未だ和葉叔母さんは平次叔父さんと結婚してないんだよ…。」
「ほぇ?そうなの?」
「そうだよ。だから、平太も紅葉ちゃんも未だ生まれていないんだ…。」

その月斗の言葉にしてやったりの顔になる快斗…。
もちろんこの時、平次と和葉が真っ赤だったのは言うまでも無い。

「平太に紅葉ちゃんねぇ…。」

快斗の不敵な物言いにダラダラ冷や汗を描きまくる平次…。
「平太はやっぱりオヤジに似て真っ黒なのか?紅葉ちゃんはやっぱりお袋さんと同じくポニーテールなのかな?」
「そ、そや!俺等明日大阪へ帰るからじ、準備せなアカンかったんや!!なぁ?和葉?!」
「へ?あ、そ、そうやな。アタシ等明日大阪へ帰らなアカンかったな…。」

そう言って、2人はいそいそと2階へと掛け上がって行った…。
それを見た新一と快斗は…、

「逃げたな…。」
「ああ。服部の奴、逃げやがったな…。」

自分の部屋に逃げ込む服部達をジト目で睨んでいた…。









翌日…、デパートに向う路上にて…。



「青子、昨日散々言った事判ってねーだろ?!」
「でも、この子達が何時帰るか判らない以上、服とかこのままだと可愛そうでしょ?」
「でもなぁ…。」

昨日から4人の子供が未来に帰るまで工藤邸に寝泊りする事にした快斗と青子、そしてその子供達を含む8人は、青子と蘭の提案で年末の買い物と服を買う事にしたのだ。

「快斗、諦めろ。昨日自分で言ってたろ?今日買い物に行こうが、行くのを止めようが、知り合いに合うのは止められねーんだぜ…。」
「だよな。母さんや警部さんにばれない様に新一の家に泊まったけど、オメーの両親に知られる可能性が有るもんな…。」
「ああ。母さんの性格から言って、全部の知り合いに知られる可能性が高いぜ。」
「ロスからひょっこり帰って来る可能性は?」
「それは何とも言えねーよ…。あのババァの行動だけは俺の予測を上回るからな…。」

そんな話をする新一と快斗を嬉しそうに懐く友理と藍子。
それを見た蘭と青子は微笑ましそうに言った。

「藍子も有理ちゃんもすっごい嬉しそうね。」
「そうだね。やっぱり新一は今も未来も一緒なんだね。」
「如何言う意味だよ…。」
「そのまんまの意味よ、事件が起きたら鉄砲弾の様に飛んで行ってしまう大バカ推理之介さん。未来においても全く変ってないみたいだし?」
「何でそう言いきれるんだ?」
「だって有理がとっても嬉しそうになついているんだもん。きっと未来でも構ってもらえないから寂しかったのよ。」
「寂しがりやの性格は母親似ですかね?名探偵?」
「何でオメーまでんな事を言われなきゃいけねーんだ?オメーだって人の事言えねーぜ?」
「そうだよ快斗!自分だって藍子にすっごい懐かれているじゃない!!きっと未来の快斗も藍子の事構ってなかったんだよ!!」
「「ねぇー!!」」

そう言って微笑む蘭と青子にムッとした新一と快斗は逆襲に転じた。

「しょうがねーだろ?家族を養う為なんだからよぉ…。」
「愛しい妻と娘達にひもじい思いをさせる訳にはいきませんからねぇ…。」

そう言われた蘭と青子が真っ赤になったのは言うまでも無い。

 

だが、其処に更なる悪夢が現われた。

「あ。お父さん達だ。」
「なに?!」

そう言って蘭の観ている方を向くと、かなり不機嫌そうな小五郎と少しにこやかな英理が連れ立ってが歩いていた。

「おと…フグゥ!!!」(←叫ぼうとして、途中で口を押さえつけられた。)
「か〜い〜とぉ〜!!わざわざ呼んでどうすんだぁ!!蘭の声色まで使いやがって!!」
「ふ、ふぐうぐんぐぐふぐんんー!!んぐぐんー!!!」(訳:わ、悪かったから手を離してくれぇ!息が出来ねー!!!)
「新一、あんまりやると死んじゃうよ…。」
「大丈夫だよ!青子、何時も此れぐらいやってるけど全然平気そうだったから!!」
「んぐんぐー!!んぐんぎんぐんぐんんぐんぐうー!!」(訳:青子!お前とコイツとでは力が違いすぎるんだよぉ!!)
「ねぇ、叔父さん。」
「あんだ?月斗?」
「オヤジを止めるのは良いけど、有理行っちゃったよ?」
「んぐぐぅ!!んぐんぐんががぁ!!」(訳:月斗ぉ!!ちったぁ心配しろぉ!!)
「なに?!」
「今、コナンが慌てて止めに行ったけど、多分間に合わないと思うよ。」
「な、なにい!!!」

その瞬間、凄まじい殺意に満ちた暗黒のオーラを感じ振り向くと、

「し〜ん〜い〜ちぃ〜!!!どぉ言う事か説明してもらおうかぁ?!!!」

と、言いながら上半身裸になったケンシロウ状態をバックに背負っている小五郎が現われた。
声が同じ(神谷明)だけにかなり洒落になってないと言えるだろう…。



  ☆☆☆



数分後、近くの喫茶店にて…。



小五郎達は今までの経緯を聞いてようやく落ち着きを取り戻していた。

「未来からやって来た俺の孫ねぇ…。」
「全く、少し考えれば判るでしょ?幾等、新一君と蘭が幼馴染だからって中学生に入ったかどうかぐらいの年に私達に気付かれずに妊娠して、こっそり子供を育てられる訳無いじゃない。」

英理のそうたしなめられ、少しムッとする小五郎。

「で、名前は?」
「は?」
「名前だよ、こいつ等の。まさかコナンじゃねーよな?」
「うん。良く判ったね、さすがおじいちゃん。」
「オメー、ホントにんな名前をつけたのか?」
「ハハハ…。」
「名付けたのはきっと蘭ね…、そして、新一君も反対しなかった…。」
「で、今日は叔父さん達如何したんですか?まさかデートですか?」
「「なっ!!!」」(//////////)

(新一の奴、誤魔化しやがった…。)

「そ、そんな訳ないじゃない!!」(←そう言っているが、まんざらでもないらしい…。)
「ば、バーロォ!!俺達は仕事で《←何故か強調》来ているんだ!!断じて《←さらに強調》デートじゃない!!」
(↑と言いつつ、しっかり真っ赤になっている。)
「し、仕事って、何ですか?(何もそこまで強調しなくても…。まあ、話題を変えることが出来たから良いけど…。)」
「怪盗キッドが現われたんだよ。」
「「「「「「「「怪盗キッドぉ?!?!」」」」」」」」

あまりによく知った怪盗の登場に思わず綺麗にはもってしまう8人。

「怪盗キッドって言ったらお祖父ちゃんが追い駆けていた怪盗の事だよね?月斗兄ちゃん。」
「この時代なら、お祖父ちゃんも元気なんだろうな…。」
「叔父さん、まさかこの後中森警部に会う為に此方に?」
「ああ。」
「し、新一、お、俺達買い物に来ているんだぜ?毛利さんのお仕事を邪魔しちゃ不味いぜ?」
「ほぉ…、俺に関われたら困るのかよ?随分と落ちぶれたもんだな?白き怪盗の名が泣くぜ?」(ボソッ)
「ち…!違うっ。俺じゃない。」(←思わず大声を出しそうになって慌てている…。)
「本当に?」(ひそひそ)
「青子、俺がキッドをやる時はちゃんと前もって言うって言ったたろ?信用しねーのか?」(ひそひそ)

そんなひそひそ話しを小五郎はジト目で睨んでいた…。

「あ、そうだ。毛利さんも仕事の最中だし、俺達はそろそろ行かねーと…。(こいつ等の居る時に警部さんに会いたくねーからな…。)」
「「「えー?!?!」」」
「快斗ぉ、少し休憩しようよ…。」
「パパ、藍子もう少し居たい。」
「折角だから、おじいちゃんに会いたいよ。パパ。」
「あ、あのな…。」
「快斗、人間諦めが肝心だぜ?」
「で、でも毛利さん達が警部さんとの待ち合わせに遅れちゃ不味いし…。」
「中森警部に連絡すれば良いだろ?携帯の番号は俺も知っているし、青子ちゃんも知っている筈だぜ?」
「で、でも警部さんだって色々忙しいみたいだし…、」
「あら、黒羽君。その心配なら必要無いわよ?」
「へ?!」
「俺達はここで中森警部殿と待ち合わせているんだよ。」
「ま、マジ?!」

その後、現われた中森警部にいち早く藍子が“おじいちゃーん!!”と言ったそうな…。
その後、快斗が冷や汗ダラダラ状態で事情を説明する羽目になったのは言うまでも無い。



  ☆☆☆



夕方、工藤邸にて。



青子と蘭はゆっくりと買い物ができ、4人の子供達は久々の一家団らんに満足そうにしていた。
だが、銀三と小五郎の相手で買い物する前にスタミナを使いきった快斗と新一は、荷物持ちで完全にグロッキー状態であった。
そんな彼等に最後の追い討ちが待っていた。

「あーっ!おじいちゃん達だぁ!!」

有理がそう言う先には日本に帰ったばかりの優作と有希子がいた。

2人は突然、“おじいちゃん”と言われながら懐いてくる蘭(の子供バージョン)に驚いた。

「お、おじいちゃん…?(うーむ、私達の事だろうか?)」
「おじいちゃん、おばあちゃん、如何したの?」(←いまいち状況が飲み込めて無い)
「お、おばあちゃん…?!(そんな!!この若くて綺麗なこの私がおばあちゃん…!!)」

突然の事に首を捻る優作と、おばあちゃんと言われ固まって(もちろん彼女の心の中では“おばあちゃん”のフレーズがエコーとなって響いて)いる有希子…。
其処に更なる追い討ちがかかった。

「ったく、いい加減にしろよ!!有理!!このじいちゃんとばあちゃんは、俺達の知っているじいちゃんとばあちゃんじゃないんだよ!!」
「?!(新一?いや、違うな…。この子は一体…?)」
「!!!!(な、なんで新ちゃんまでそんな事言うの?!?!)」(←パニック状態で冷静な判断が出来ていない。)
「何よ!!元はと言えば、コナンお兄ちゃんと月斗君がタイムマシンなんか見つけるから…!!」
「俺はタイムマシンを見つけたつもりはねー!!博士の家の地下に面白そうな物が有ったから月斗を誘っただけだ!!そもそも、何でオメーと藍子が付いて来たんだよ!!」

優作と有希子の前で兄弟(正確には兄妹)喧嘩を始める2人…。
そこにようやく新一達が追い着いた。

「コナン、有理と喧嘩している元気があるなら少し手伝ってくれ…。」(←もう誤魔化す気力もないらしい)
「新一、これは一体如何言う事かね?」
「父さん、悪いけど少し手伝ってくれねーか?後で話すから…。」
「おじ…、い、いえお義父様、お義母様、と、と取り敢えず家には、入りませんか?(キャー!お義父様とお義母様だって!!どうしよう!!どうしよう!!!キャー!!!)」
「お、お義母様ですって?!如何言う事よ!!新ちゃん!!!」(←蘭にお義母様と言われて復活したらしい)
「母さん、後で説明するから家で少し休ましてくれ…。頼むから。」

そんな一家団らんを傍から見ていた快斗と青子は、大阪へ向かう為に出発しようとした平次達と話していた。

「蘭ちゃん、凄く嬉しそうだな。」
「青子も快斗のお母さんに“お義母さん”って言ってみたいな…。」
「言うたらエエやん。」
「「なっ!!」」(//////)
「な、何バカな事言ってるんだ!!平!!」
「何って、さっき黒羽のオカンから電話があって警部さんから事情を聞いたから自分も孫を見たいとか言うて…。」

それを聞いた快斗が“警部さん!何言ふらしてんだよぉ!!!”と警部の居ると思われる方向に向かって叫んだのは言うまでも無い。

「そ、それで服部君達は未だ大阪帰らないの?(って事は青子もお嫁さんとして行かなきゃ!!キャー!!如何しよう!!)」
「それがな、オカンが指定席を取った新幹線は夜の便やったんや。(こっちもえらい嬉しそうやな…。)」
「流石平次の叔母ちゃんや。朝早い時間やったら寝過ごしたって言われる思ってこんな時間の新幹線にするんやから…。」
「この時間やったら準備に手間取って乗り遅れたちゅう言い訳すら出来ひんで…。」
「伊達に平次のおかあちゃんをやってへんなぁ…。流石やわ、抜かり無いで。」
「と、言う訳やから今から帰るわ。」
「ほんなら、快斗君も青子ちゃんも良いお年を…。」
「快!しっかり、未来のおばあちゃん孝行するんやで!!」
「平こそ平太と紅葉ちゃんの為に義父の機嫌をとっておけよ!!!」
「五月蝿いわい!!!」

そう言って真っ赤になりながら2人は大阪へと帰って行った…。
これ以上、未来の事でからかわれたくないと思いながら…。

だがこの時、目をキラキラ輝かせた有希子がしっかりとこの会話を聞いていた…。



  ☆☆☆

 

その夜、工藤家と黒羽家では忘年会とクリスマスをプラスしたようなパーティが盛大に執り行われたそうな。

なお、怪盗キッドを名乗り、その罪を彼に擦り付けようとしたバカ達(もちろん一人ではなく窃盗団だった)は本物とその後継者(後の3代目)と3代揃った名探偵に完膚なきまでに叩きのめされ、2度とキッドを名乗るまいと思いながらパトカーで刑務所に送られたのは別の話しである。









そして、大晦日(12月31日)…。



タイムマシンの修理がようやく終わり、コナン達を未来に返すべく関係者が阿笠邸に集まっていた。
阿笠邸の地下の研究所にはコナン達の親4人とその爺婆達6人、そして博士と哀、そして当事者であるコナン達を含めると総勢16人が一同に…、と言いたかったが流石に全部は無理だったので爺婆達がリビングで博士と共に、そして哀と親達(つまり新一達)が地下と言う風に別れてコナン達を未来に送り返すのを見届ける事にしたのだ。

先ず真っ先に別れを惜しんだのは言うまでも無く有希子であった。

「ああーん!もうコナンちゃんと有理ちゃんとお別れしなければならないのぉ!!」
「有希子、大人気無いわよ…。」
「んもう!こうなったら新ちゃんと蘭ちゃんに頑張ってもらって一日も早くコナンちゃんと有理ちゃんを作ってもらうわ!!」
「「なっ!!」」

あまりの事に真っ赤になってはもる毛利夫妻…。

そして、優作は…、

「ゆ、有希子、無茶を言うものじゃないよ…。」

少し呆れていた。

「ゆ、有希子さん!!なに言ってるんすか!!」
「蘭には学生結婚させたくないのよ…。全く、幾等有理が可愛いからってなに考えているのよ…。」
「だって、だってぇ!!有理可愛すぎるんだもん!!」
「有希子、後10年ぐらい我慢しなさいよ…。」
「工藤さんの奥さんは本当にお孫さんが可愛いんですね…。」
「まぁ、気持ちは判りますよ。ワシも藍子を見ていると愛しさがこみ上げて来ますからねぇ…。」

そう、銀三も有希子も藍子と有理に懐かれすっかり情が移ってしまっていたのだ。
そして、そうこうしている内に時間になってしまっていた。

「皆さん、そろそろ時間じゃ。皆さん暫しの別れを済ませたかのぉ。」
「有理、お別れね…。今度は赤ちゃんとして再会するのね…。」
「おばあちゃん、泣いているの?」
「有理、しょうがないよ。僕達は本来ここにいてはいけない存在なんだから…。」
「コナンの言う通りだよ、有希子。それに、今我々がこの子達を独占すれば未来の有希子が黙っていないだろう。」
「そうね…。未来の私が有理をほって置く訳無いものね…。」
「そうだよ。さぁ、有希子涙を拭いて…。有理とコナンに暫しの別れをしよう。」
「そうね…。有理ちゃん、コナンちゃん、今度は本当の赤ちゃんで再会しましょうね…。」
「うん。」
「バイバイ、おばあちゃん。」

そう言い残して、コナンと有理は地下へと消えた。



  ☆☆☆

 

その後、地下にて…。

  

「さぁ、時間よ。さっき入った未来からの通信で、未来のお母さん達と私が向うで待っているそうよ。」
「きっと、なかなか帰って来ないオメーらを心配したんだろうな…。」
「お別れだな…、と言っても今度は本当の赤ちゃんとして再会するんだろうけど…。」
「そうだね、オヤジ。」
「快斗、なんかこの子達を見ているとサンタクロースみたいだね。」
「はぁ?何言ってるんだよ?クリスマスはとうに終わってもう除夜の鐘が聞こえる時間だぜ?」
「良いじゃないの!!バ快斗!!!」
「快斗君も新一と一緒で夢が無いのね…。遅れてやってきた未来のサンタって言う感じでロマンチックじゃない…。」
「悪かったな、ロマンがなくてよぉ…。」

その時、何かの作動音がした。

「時間よ!貴方達、急いでタイムマシンに乗って!!応急処置しかなされてないから今動かさないと今度は何時になるか判らないの!!早く!!」
「う、うん!!有理、行くよ!!」
「じゃあね!!お母さん、お父さん!!」
「藍子、急げ!置いていくぞ!!」
「あ、待ってよ!!月斗兄ちゃん!!」

そう言い残して、4人はタイムマシンに乗り込んだ。
そして、入り口の扉が閉まるとほぼ同時にタイムマシンから凄まじい閃光が飛んだ。

5人はそのあまりの眩しさに暫らく目を眩ませていた。

そして、彼等が目を開けた時には其処には何も存在していなかったのである。

「帰っちゃったね、快斗…。」
「なんかあいつ等に振り回されっぱなしの日々だったな…。」
「と言うより、爺婆どもにって感じがしたけどな…。」
「確かに…。」
「あの子達、今頃未来の私達に叱られてないかしら…。」
「しっかり叱られていると思うぜ、蘭。」
「クスッ!そうね…。」

4人がそんな話しをしていると、突然哀が口を開いた。

「工藤君、黒羽君、貴方達新年の挨拶はしないの?」
「「はぁ?!」」
「言わなかったけ?この非常システムって年の変る瞬間、つまり12月31日から新年の1月1日に変る瞬間が一番良いのよ。地球の公転周期の計算はこの瞬間を基準にしているから…。」
「んなん初耳だぜ?」
「あら、そうだったかしら?」
「哀ちゃん、もしかして知ってて…。」
「知ったのはあの後、未来の私からの通信が復旧してから…。お陰で結構大変だったのよ?年末までに直さないと今度は早くて一年後だったから…。」
「幾等何でも一年もあいつ等をここに置けねーからな…。」
「そうね…。」
「まかり間違って歩美ちゃんに見つかったらそれこそ大騒ぎしそうだと判っていたからね…、私も急いだのよ。」
「確かに…。」
「コナン君が帰って来たって大騒ぎしそうだものね。」
「そうだな。」

そう言って4人はホッとした様に笑い会い、新年の挨拶をした。

「「「「「皆さん、開けましておめでとうございます!!!!!」」」」」





おわり。