恐怖の調理実習



By 谷本篤史様



これは小五郎と英理が帝丹中学2年生だったころの話です・・・
ある秋風の涼しくなったある日の昼前のことです。
3・4時限目、女子は家庭科の調理実習、男子は技術科で何かの機械を組み立てる実習をしました。
家庭科ではご飯に味噌汁、筑前煮をつくって、男子にもお昼ごはんとしてそれをだし、クラスみんなで分けて食べるという趣旨で授業がすすめられていました。
調理実習は順調に進みあとは筑前煮を煮込むばかりとなりました。
瑠璃っぺこと雨城瑠璃も英理と同じ班で調理実習をしていました。

瑠璃「英理ちゃん、私たちは味噌汁づくりにかかるからちょっと鍋見ていてね」
英理「OK」
そうして班のみんなが目を離したすきに英理はちょっと味見をしました。
英理「まだまだあっさりしすぎて物足りないわね、私の天才的な料理センスでもっといろいろ調味料を入れましょう」
そして英理はよせばいいのにいろいろ調味料を入れました。
改めて味見をした英理、
英理「うんうんこれこそ究極のメニュー、これなら納得ね」

そして瑠璃たちがもどってきて
「英理ちゃん、ちゃんと見てくれた?」
英理「もちろん大丈夫」と自信たっぷりに言いました。
そして筑前煮が煮あがりました。
そしてみんなが各自の席につき、技術科の実習を終えた男子も決められた席について、
小五郎、英理たちの班の席について、「お、こりゃうまそうだ」
みんなそろって「いただきまーす!」
一斉に箸をつけた。
そして一口。
英理を除く、英理の班のテーブルの皆一様に
「ゲエエエエエエエッ!なんて味なのっ!!!」
英理1人が
「おいしいわ〜こんなにうまくていいのかしら」
瑠璃がふと何かに気が付いたように
「英理ちゃん鍋を見ている間に何を入れたの!!!???」
問い詰めると英理はしれっとした表情で
「ウスターソースとバターとケチャップ、あと梅干とオイスターソースを。見事な味付けでしょう?だってレシピ通りじゃ物足りなかったのだもの」
瑠璃と班のみんな怒って曰く
「なんてことしてくれたのあんまりひどすぎるわ!!!」
英理「私の素晴らしい味付けにケチをつける気なのッ!!」
班一同「何が素晴らしいもんですか!!」
そこで小五郎立ち上がり
「ああわかったわかった、なら俺がみんな食ってやるよ」
皆一瞬小五郎の方を見つめ驚いたような表情をしましたがすぐに
「そうよね。未来の旦那様に食べてもらうのが一番よね〜!!」
英理、顔を赤らめ恥ずかしげにしつつ「まあ未来の旦那様かはともかく、私の料理の値打ちをわかって食べてくれるなら有難いわ」
そして小五郎、本当に、目からの「汗」を出しながら、うまいうまいとひきつった声で言いつつ件の英理特製の味付けの筑前煮を皆食べてしまいました。

で、班のメンバーの他の面々はというと、他の班から事情を話して土下座して筑前煮を分けてもらいなんとか腹を満たしました。

そして、どうしたことか午後の授業に小五郎の姿はありませんでした。

で翌日朝礼の時間。
金八先生に似た担任教師いわく
「えー、毛利は昨日帰宅後から腹下しでトイレに入ったきり出てこれないと親御さんから連絡がはいりました」
英理を除くクラス一同、さもありなんといったジト目の表情で
「やっぱり」
英理は顔を紅潮させうつむいて何も言うことができませんでした。



おわり




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