工藤くんの悲劇!?



By 月代奈哉様



「工藤新一です。特技はサッカー全般。これから4年間宜しく。」

東都大の文学部での新一の自己紹介だ。蘭とは別の大学に進んだ。本当は同じ帝丹大が良かったのだが蘭に言われた為仕方なく東都大へ進んだのだ。

「ねぇ、工藤くん。私、水沢美波って言うの宜しくね。」

たまたま右隣に座った女が話し掛けてきた。

「この女、工藤の事好きとちゃうか?」
「平もそう思う?実は俺もそう思ったんだよね。」

平次と快斗もこの学校だ。彼女は蘭と同じ帝丹だが。理由は新一と同じ。彼等の人生は彼女に左右されるのだ。
「(勝手に言ってろ。)」

もう新一は他人事。




休憩時間では・・・

「新一って呼んでも良いかな?」

美波が言った。

「はっ?」

その場に居た帝丹高校出身の生徒と平次、快斗等が固まった。一早く我に返った快斗が言った。

「だ、駄目だよ。新一ってファーストネームで呼んで良いのは一人だから。」
「じゃぁそれが私って事で。ね、良いでしょ?」
「残念でした。もう決まってるの。新一の彼女は超美人なんだし。」
「えー言うだけじゃ分かんないよぉ。写真とかは?」フと気付くと新一は既に居なくなっていた。
「ちょっと待てよ。」

クラスメートの一人が園子に連絡を入れた。




数分後・・・

「おしっ これだ。」

差し出したのは綺麗に写って居る蘭の姿。

「(うわぁホントに美人じゃん。)こんなんだったら勝てるって。じゃーねぇ。」

負け惜しみがバレバレである。しかし、美波は翌日から手製の弁当を新一に食べさせようとていた。

「新一〜食べてvv」

だが蘭の手作り弁当を食べる新一は不味そうな美波の弁当に見向きもしなかった。





それから一週間がたったある日の事。木の上(!?)で愛する彼女と電話中の新一を見つけた美波は声を掛けた。

「新一〜ホラ愛妻弁当作って来たよ。一緒に食べようよー」
『愛妻弁当?』

電話ごしに蘭の怪訝そうな声。

「ご、誤解だって。俺はお前の弁当しか食ってねぇから。」

必死に否定する。

『あ、ゴメン。時間みたい。また後でね。』

残り5分はあるのに切られた。

「おいっ蘭?」

慌てて呼ぶが聞こえてくるのは寂しい機械音だけ。

「(ヤベェな・・・)」

本気でそう思った新一は家で行なうサービスを考え始めていた。

「新一ぃどうしたのー?ご飯はぁ?」
「まだ居たのかよ。」

美波をまくために次の講義をサボる事に決めた。だが、美波はしつこかった。

「新一ぃ遅れちゃうよー?」

その時、
 ♪〜 ♪〜 ♪〜
新一の携帯が鳴りだした。この着メロは確か、

「目暮警部、か。」

しばらく話した後、応援で行くことに。

「服部、快斗。行くか?」
「あぁ。/おう。」

何と、平次も快斗もサボっていたのだ。





3時間後・・・帝丹大にて。

「らぁん。今日遊びに行っても良い?」

鈴木園子、蘭の親友である彼女も帝丹大に通う。経済部である。

「うん。良いよ。」

蘭の家。事務所、では無く工藤邸、つまり新一の家の事。平次、快斗、和葉、青子も居候中。

「新一くん達は?居ないの?」
「うん。何か仕事らしいよ。」

彼氏があんなんじゃ彼女は大変だろう。

「ハァーあんたもよくあんな奴について行けるわねーあたしゃ信じられないよ。」

園子が言うのも当たり前だ。いつも危険と背中合わせの彼氏。彼女より、事件を選んじゃう彼氏。

「だって、仕方ないじゃない。アレが好きなんだもん。」
「おーおーお熱いねぇ。4月だってのに。」

まぁ、蘭の可愛い所は其処なのだが。

「園子っからかわないでよ(////)」

赤くなってるよ。そこへ、

「ねぇーうち等も、蘭達の家行きたいー」
「えっ?まぁ良いけど。」

あまり良くないのだが。





工藤邸・・・

「あれっ?鍵開いてる。玄関も。」

門、玄関の鍵が・・・

「って事は泥棒!?」
「それは無いわよ。ここのセキリュティかなりのモノだから。残る可能性はただ一つ。」

彼等が帰って来て居るのだ。しかも、リビングのカーテンが少し開いている。

「じゃぁ皆ちょっと待ってて。一分したら入ってて良いから。」

蘭、和葉、青子の3人が家の中へ。

「や、やっぱり・・・」

3人は同時に呟く。その視線の先にはソファーに丸まって寝ている彼氏達が。

「ねぇ起きてよ。」
「んー?」
「友達来てるの。寝るなら二階にしてよ。」

3人が3人共同じ事を言った。

「へいへい。」快斗
「しゃーないなぁ。」平次
「俺は書斎に居るよ。」新一

新一はただ単に二階に行くのが面倒なだけ。

ガチャッ

「入るよー?」
「あ、待って。後30秒っ」

返事した後、彼氏は大慌てで個々の場所へ。

ドタタタタタタッ

ジャスト30秒で部屋に滑り込んだ。

「な、何。今の。」
「帰ってたの?早くない?」
「あ、気にしないで。」
「そうなんよ、簡単やったとか良いそうやから、何も言わなかったんよ。」
「でも、変にプライド高いから何も言わないかもね。」

3人の言う事はそれぞれだった。

「誰の事?」
「居たなら会いたいー。」

友人は言った。

「機嫌悪いから止めた方が良いよ。」

睡眠不足なのだ。しかし、会う機会は幸運にも直ぐやってきた。

ガチャッ

「蘭、俺の上着知らねぇ?」
「そこ。誰か上着投げてあげてくれる?」
「えぇ?どれ?」

三着あったのだ。

「全部よ。」
「有難うございます。」

バタン

「服部ー快斗ー。早くしろよ、仕事だぞ。」
「いやや。工藤一人で行ってきいや。」
「同感。」

この返事にピクッとした和葉と青子。

「平次っ早くしいやっ」
「は、はいっ」
「快斗も早くしなさいっ」
「分かりましたぁっ」

一番効果があるのだ。

「ゴメンなぁ、工藤君。平次(アホ)の所為で。」
「本当、ゴメンね、バ快斗の所為で。」
「や、2人が謝る事無いよ。悪いのはあの2人だし。」

新一は和葉と青子には優しい。(蘭は当たり前)
だがなかなか出てこない。

「おいっ早くしろよっ」
「せやかて眠いんやもん。しゃーないやんけ。」
「睡眠時間3時間だぜ?」

さすがにムカついた新一はついに・・・

ドカッ

「行きます、行きますっ」
「俺も行くからっ」

訂正しよう。一番効果があるのはコレだ。



新一達が出掛けた後、

「今の格好良い人誰?」

やはり、聞いてきた。

「此処に来たのが蘭の彼氏。上に居た関西弁の人が和葉ちゃんの彼氏。最後が青子ちゃんの彼氏。」

園子が答えた。
そこへ、1人の来客が。

「えっ?此処新一の家でしょ?あんた達誰?」

水沢美波だった。しかし、驚いたのは蘭達の方だった。

「し、新一ですって!?分かった貴方、この前新一君に言い寄ったって女ね?蘭の写真を送らせた。」
「言い寄った?違うわよ。私は新一の彼女の水沢美波よ。」
「この人、相当頭イカレちゃってるわね。アヤツが他の女に振り向くわけ無いじゃない。」
「え?何で?」
「さっき、此処に来て最初に言ったのが『蘭、俺の上着知らねぇ?』よ?」
「あ、なるほど。」

つまり、他に誰が居ようと居まいと関係なく彼女に話し掛けるのだ。

「そ、そんなの確認しないと分かんないじゃないっ」
「じゃぁしてあげるわ。蘭、携帯にかけられる?」
「今かけても多分出ないわよ。」
「それもそうね。仕方ないか、警視庁にかけましょう。」

トゥルル・・・
『はい、・・・』
「あ、高木刑事?」
『園子さん?何だい?』
「アレ居ます?もう、現場行っちゃった?」
『工藤君と服部君はもう、行っちゃったけど、黒羽君は居るよ。』
「じゃぁ黒羽君呼んでくれる?」

快斗に拷問が・・・

『えぇっ!?水沢美波が来て新一の彼女だって言った!?』
「そうよ。本当のトコロは?」
『園子ちゃん。アイツの性格から考えてよ。嘘、ありえないよ。』
「やっぱり?」
『うん。多分新一怒るよ。嘘を言うなってさ。』

しみじみと言った。

「でしょうねぇ。でも何でそんな事になったの?」
『さあ?いきなりなんだよ。新一って呼んだり。彼女気取りなんだよ、きっと。かまって欲しいんじゃない?無理だけど。』
「そうねぇ。無理よねぇ。分かったわ、有難う。」
『うん。伝えとくよ。どうなるか保障しないけど。』

ガチャン

彼は必ずキレるだろう。水沢に。

「快斗なんだって?」
「何か、分からないらしいわ。そうなったのかが。まぁさっきのはありえない話よ。」
当たり前である。
「やっぱりね。」




事件現場・・・


「はぁ!?家に上がり込んでるだぁ!?」
『みたい。どうする?』
「決まってんだろ?追い出せ。」
『多分無理じゃない?』
「テメェが行けよ。」

当たり前だろ、と言ってきそうな口調だった。

『はい。』





しばらくして工藤邸に快斗が戻ってきた。
「あれ?どうしたの?」
「新一が、さ。追い出せって。」

小声で言った。

「分かった。水沢さんはリビングだよ。」

ガチャッ

「く、黒羽君!?何で!?」
「伝言です。“家から出ていけ”早くしてね、水沢サン。」
「え・・・誰が・・・?」

かなりの驚き様だ。

「もちろん。家主からだよ。」
渋々出ていった。この時は!






翌日、東都大・・・



「新一ぃ私ね昨日新一の家行ったのよ。そしたら女が居たわ。何で?」
「お前には関係ないだろ。それと、今後一切俺に近づくな。」

彼は、蘭を貶された事にキレていたのだ。だって、工藤新一の心は毛利蘭で染まっているのだから。それを変える事は無理なのだ。



END



戻る時はブラウザの「戻る」で。