大切な記念日



By月白奈哉様



今日は新一が、帰ってきた日。つまり、私達の恋人記念日なんだけど、新一は忘れちゃってるだろうな。何せ、自分の誕生日を忘れるような人だから・・・

「分かりました。正門前でお待ちしております。」

園子が言うには、嬉々として高木刑事との電話を切って現場に行ったみたい。やっぱり、新一にとってはどうでも良いんだろうな・・・

「(だーッッくそっいい加減認めやがれ!!)」
新一は、今日という日を覚えていた。嬉々として現場に向かいはしたが、即解決して戻るつもりだったのだ。が、なかなか犯人が自供しない。
「ま、まだ証拠不十分よ!決定的な物が無いじゃないの!」
これでもか!と証拠を並べているのに、認めない。新一が、凄い状況になっている事に気付いている刑事達は、
「い、いい加減認めたらどうだ?これだけあるば十分だろう。」
と説得していたが・・・
「まだよ。それだけなら、私以外でも殺せるんじゃなくて?」
プチッ
何かが切れる音がした。多分音源は・・・
「じゃぁ、これならどうだ?」
新一が差し出したのは、未だ見つかっていなかった凶器のナイフ。
「馬鹿な犯人だよなぁ?指紋が残ってる。あんたのと照合させてみようか?」
その一言でやっと罪を認め、連行されて行った。
「では、警部。僕はこれで失礼させて戴きます。」
「今日も助かったよ、工藤君。高木君に送らせよう。高木君。」
「あ、はい。」

1限目が終わって直ぐに現場に向かったので、今なら4限目の途中から、授業にでられる。約2時間で解決した事になる。
ガラガラッ
「あー工藤。早かったな。もう終わりか?」
「えぇ、一応。」
軽く教師と話した後、席に着いた。が、クラスメート達は解放してはくれなかった。
「先生!後10分なんですから、自習にしません?工藤に色々と話聞きたいんですよ。」
「そうだな。スピード解決の訳、とか?」
教科担任も乗り気だ。気やはり、になるのだ。
「別に訳なんてありません。(コイツ等に知られてたまるか!)」
知られたら、本当に恥ずかしいのである。東の名探偵が彼女との恋人記念日だからスピード解決した、なんて言える訳がない。
「嘘つくなって。名探偵お得意のポーカーフェイスが乱れてるぜ?」
「おまけに顔が赤いぞ、名探偵?」
「そうそう。白状しやがれ、名探偵?」
何と言われようが関係ない。絶対に口を滑らしてはいけない。
「テメェ等に話すような事じゃねぇし、話すつもりもねぇよ。」
ギロリと睨んでその場を何とか逃れる。

「らーん。あんたの旦那、帰って来たわよ。」
新一は、蘭の元に行きたかったのだが、クラスメート離してくれなかった。だから代わりに園子が知らせにきたのである。
「え?本当なの?」
「えぇ。スピード解決の理由を言えって皆に囲まれてるわ。(旦那発言には突っ込まないのね)」
「そっか。有難う。」
新一が出掛けてから、笑顔が消えていた蘭に、やっと笑顔が戻る。
「ふー大変な目にあったぜ。よ、蘭。」
いつもと変わらない笑顔を蘭に向ける。
「・・・お邪魔なようね。私、戻るわ。」
園子が去ると、蘭は新一を睨んだ。
「事件があっても行かないんじゃなかったの?」
「いや、だってさ。断れなくて・・・。ま、早く解決したから、良いじゃんかよ。」
「そういう問題じゃないでしょ。」
軽口をしばらく叩き合っていたが、そろそろ昼食を食べなくては時間がヤバくなったので、彼等は屋上へと向かった。

「本当、良い天気ね。」
「そうだな。」
帝丹高校の屋上は、新一と蘭専用スペースである。2人からオーラが出ていて、誰も近寄る気にならないからである。
「なぁ、蘭?今日さーうちに勿論来るよな?」
「え?勿論行くけど、何で?」
当たり前の事なのに、何故今更聞くのか分からないと言った顔で、蘭は、聞き返す。
「・・・うちに、泊まってくか?明日から連休だし・・・」
新一は、ちょっと照れた顔で、蘭を誘う。
「そうね・・・お父さん仕事で、居ないし・・・新一のご飯とかもあるし、良いかな。(////)」
新一は可愛く世話好きな彼女を持って羨ましいかぎりである。
「マジで?なら来いよ。あ、でもさ。一旦家に戻るよな?」
「えぇ。荷物とかあるし。何?私に見られちゃ困るものでもあるの?」
「え?い、いや無いって。聞いただけだって。」
ジト目で見られてかなり慌てる。どうやら、図星のようだ。
「本当に〜?」
「本当、本当。」
その場をどうにか誤魔化して、新一は逃げた。



  ☆☆☆



工藤邸・・・


新一が蘭を送った後、急いで帰った自宅は、物凄く汚かった。蘭の為にケーキや料理を昨夜作って居たのだが、完成したところで疲れて寝てしまったので、片付けていなかったのだ。
「ハハハ・・・さすがにこれは見せらんねぇよなぁ・・・」
ちょっとだけぼやき掃除に取り掛かる。やれば出来る男が、さっさと片付けたので、10分程で元通りになった。温めた料理を並べ終わった直後、
ピンポーン♪
新一は、蘭にチャイムは鳴らさなくても良いと言ってあるのだが、『礼儀は大切よ。』と律儀に鳴らす。
「入れよ。」
新一に促されて蘭が、邸内に足を踏み入れると、
「な、何コレ・・・新一が作ったの?」
テーブルに並んだ数々の料理に驚きが隠せない。
「俺以外の誰が俺ン家で作るんだよ?」
「いつもは面倒臭がってやらないのに、何で?」
自慢気な新一に蘭は、再び問う。
「だって今日は、俺等の恋人記念日じゃん。今日くらい祝おうぜ?」
「覚えてたの・・・?」
「当然。蘭が俺の彼女になった日なんて死んでも忘れねぇよ。」
当たり前だろ?と言う新一に蘭は、泣き出してしまった。
「泣くなって。蘭に泣かれると俺、どうしたら良いか分かんねぇよ・・・」
「だって、だって・・・忘れてると思ってたのに・・・覚えてるなんてズルイよぉ・・・」
新一は、泣きじゃくる蘭の背中を優しく撫でながら言った。
「折角温めたのに、冷めちまったら嫌だろ?早く食おうぜ。」
蘭は、コクンと頷いて、料理を口に運ぶ。
「・・・おいしい。」
「何を今更。俺が作ったのにマズイ訳ねぇだろ?」
実際は何度か失敗している。不器用な彼ですから(笑
「自意識過剰にも程があるわよ。」
くすりと笑う蘭。新一も共に笑い、
「やっと笑ったな。お気に召しましたか?俺のお姫様。」
「全く、気障なんだから・・・(////)」
新一は、蘭にキスの嵐を降らせながら、こっそりとプレゼントを取り出す。
「これからも、俺だけの蘭で居てくれるか?」
真っすぐ蘭の目を見ながら、問う。
「勿論。新一も私だけの新一で居てくれるの・・・?」
「当たり前だろ?」
そんな事を言いつつ、プレゼントのネックレスを蘭の首に付ける。
「有難う、新一。これってペアよね?」
不自然な形に途切れる自分のネックレスを見て言う。
「ま、まぁな。(////)」
照れてそっぽを向く新一の頬にキスを落としながら、蘭は、
「私もプレゼントがあるの。はい。」
蘭が差し出したのは、腕時計。自分で買ったのが、狂い始めたと言っていたのを覚えていたのだ。
「サンキュー蘭。キスも頬じゃなくて、こっちが良いな。」
と、また蘭の唇を奪う。
「新一ったらーッッ」

しばらくイチャ付きながら、夕食をとって居たが、食べ終わった後の蘭がどうなったというのは定かではない。もしかしたら、格好良い狼の餌食になってしまったのかもしれない・・・



END


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