「俺の日課」〜 朝の目覚めのひととき 〜



By ゆう様



蘭と結婚したら、俺には日課ができた。

『日課』を辞書で調べると、『毎日きまってする物事』と出ている。
たしかに『毎日きまってする物事』ではあるが、俺の場合少しニュアンスが違う。

なぜなら俺の『日課』とは、



『毎日その幸福感ゆえに無意識にしてしまう行為、愛しいがゆえに止めることのできない衝動的習慣』



だからである。

『幸福感ゆえに無意識にしてしまう行為、愛しいがゆえに止めることのできない衝動的習慣』と、いうところがみそだ。
が、しかし、言いやすいので日課と呼んでいる。

そしてそれは、朝目覚める前から、夜眠りについた後、そして眠っている最中まで、数えあげるときりがないくらいある。
蘭と過ごす時間は言葉にすることができないほど幸せで、どれもこれも全部日課になっていってしまうんだ。
今回は、その中の1つ、蘭との『朝の目覚めのひととき』を紹介しようと思う。
どうして日課になるのか、きっとわかってもらえるはずだ。



〜 朝の目覚めのひととき 〜



俺は、朝ベットの中で意識が覚醒しはじめたら、朦朧としたまま無意識のうちに腕を伸ばし、優しくぽんぽんとベットの中の柔らかい感触を探す。
触れた手の感触から俺と同じ方向を向いて眠っているの蘭の位置がわかると、俺は蘭の背中までぴったりと寄り添って、後ろから抱きしめ自分の胸の中へ収める。
そうして、蘭の細いウエストからパジャマの下に手を滑り込ませ、蘭の胸を包み込む。

ふんわりと柔らかい感触が手に伝わると、自分の体まで柔らかくなったようなぽわんぽわんな気分に溺れられ、同時にすーすーと胸を上下させている寝息の振動がなんとも心地よく感じられる。
俺の鼻の下にある蘭の髪からは甘い香りがやさ〜しく漂って俺の嗅覚を刺激し、俺の体全体に、抱きしめている蘭のぬくぬくした体温がじ〜んわ〜りと伝わってきて、俺はこれ以上ないくらいの幸福感に満たされていく。
愛しいものがすべての気をゆるして俺に抱きしめられているという実感、その極上の幸福感の中へ。



う〜〜〜んっ幸せだっ



少しすると、後ろから抱きしめられていた蘭が次第に覚醒しだす。
すると、蘭は寝ぼけたままずりずりと体の向きを俺と向き合う方に変え、ぴったりと擦り寄ってくる。
それを合図に、俺ももぞもぞと腕や足を組み替える。
蘭も同じように動き、互いの体に腕や足を滑らせる。
俺の片方の腕は腕枕、もう片方の腕は蘭の背中に回したところできまり、蘭の片方の腕は俺の背中、もう片方の腕は自分の胸の中に折りたたむようにしてきまる。
腰から下も限りない密着を試みて、蘭は天井側にある方の足を俺の脚と脚の間に滑り込ませ、俺も軽くそれを抑え、力を込めなくても外れないように絡ませ合う。
こうして、気を抜いていても緩まない、すぐにみつかる寸分も離れない形でぴったりと抱きしめ合うのだ。

形がきまると、俺はすかさず蘭の背中やウエスト、おしりに手を滑らせ、そのすべすべの手触りや、きゅっと締まったくびれ感、胸とはまた違うぷよんぷよんの柔らかさを堪能する。
蘭の方も、腕に力を込めたり、顔をむきゅ〜っと俺の胸に押し当てたりして俺を堪能する。
まだ重い目を開けてその様子をみてみると、目を細めて幸せそうに眠っている蘭の横顔がうっすらと見える。
それを見ると、蘭も幸せに感じているという実感が体中と心中にじゅわ〜っと広がっていき、幸福感がさらに増していくんだ。



蘭も幸せ・・・にへへへっ



時間になると自動的に動き出すカーテンが開いて、朝の眩しい光が部屋中に満たされる頃になると、俺は完全に覚醒する。
今度はしっかりと目を開けて、胸に顔を押し付けている蘭をじっくり観察すると、蘭は顔を離して眠たそうに目をこすったり、俺の胸に顔をずりずりこすり付けたりしだす。
どうやらカーテンが開いたのに気づいて起きる時間だと認識したらしい。
完全に覚醒しようとがんばっているのがわかる。
でも、すぐに起きることはできなくて、次第に手の動きが鈍くなって、顔の動きがほてっと止まると、ほんのり笑みを浮かべた顔でまた夢心地の中へと戻っていくんだ。

その天使みたいにめちゃめちゃかわいい寝顔を目にしてしまえば、俺が突き上げる衝動に勝てるわけがない。
頭部、おでこ、鼻、頬、唇にと、次々とキスしてしまうのは仕方のないことだ。

そうした刺激で無理やり起こされた蘭は、目をぱちぱちとさせた後、俺を見てうれしそうにふにゃっと笑い、決まって俺の胸板にキスをする。
俺は、決して蘭が胸板にしようと思っているわけではないことを知っている。
ほんとは、口にしようとしているが、起きたばかりで力が入らず、足も絡まっているから届かないだけなんだ。
だけど、その姿があまりにかわいくて、また、起きたはずなのに、胸板にキスしたまままた寝入ることもあり、それがあまりに愛しくて、ついエスカレートしてちゅっちゅっちゅっちゅっとキスを繰り返してしまうんだ。

蘭は、ぴくっとしたり、すぐまたぽてっと力が抜けた顔をして寝入ったり、キスされたところを猫のように手でこするしぐさをしながら、夢心地と覚醒の間をいったりきたりする。
その一連のしぐさのすべてが愛し過ぎて、俺はくにゃりとさせられてしまう。
それで、また猛烈にキスしたい衝動にかられ、その胸を突き動かす衝動の赴くままに、とろんと瞳を閉じている蘭の顎に手をそえてそっと上に向かせ口づけする。
もちろん他の場所にもだ。
そうして蘭が覚醒に近づいてふにゃっと笑うのを見て喜ぶ。
これを蘭が完全に覚醒するまで繰り返し、何度もふにゃっと笑うのを見て幸せな気持ちになるってわけだ。



どうだろう、これが俺たちの『朝の目覚めのひととき』だ。日課になるのがわかってもらえただろうか?



俺の日課とは、



『毎日その幸福感ゆえに無意識にしてしまう行為、愛しいがゆえに止めることのできない衝動的習慣』



なのである。



fin



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