あるクリスマスの一コマ



By東海帝皇



12月24日……。



「と言う訳で、あなたが犯人です!」

何時もの如く的確に事件を解決していく、ご存知我等が高校生名探偵工藤新一。
彼の推理の見事さは、今更語るまでもない事だが、今日は特にその推理が冴え渡っており、居並ぶ目暮警部や高木刑事を驚嘆させた程だ。



「いやあ、今日の推理は凄かったねえ、工藤君。短時間で犯人とその証拠を突き止めるなんて。」
「いや、それほどでも。」

高木刑事の驚嘆に対し謙遜する新一。
とその時、新一は時計型麻酔銃にふと目を移した。

「あ、まだこんな時間か。今日は悠々間に合いそうだな。」
「え、間に合いそうって何が。」
「いや、ちょっとした個人的な事なんで……。」
「個人的な事……あ、そっか。成る程ね。」

新一の言葉の意味を理解する高木刑事。

「そうそう、もし良かったら僕が君の家まで送っていこうか。何時も君に何かとお世話になってる事だし。」
「いやあ、すいませんね、高木さん。」

礼を言う新一。

「あ、そうだ。そのまえにちょっと寄りたい所があるんですけど、いいですか?」
「寄りたい所?別にいいけど、何処へ寄るんだい?」
「ま、それは車の中で。」



  ☆☆☆



「どうもありがとうございました、高木さん。」

高木刑事に自宅まで送ってもらった新一は、覆面パトカーから降りて彼に礼を言った。

「いやあ、いいっていいって。あ、それより工藤君。」
「え、何か?」
「がんばるんだよ。それじゃあまた。」

ブロロロ……。

「……。」

顔を真っ赤にしながら高木刑事を見送る新一。

「……ったく、あの人いったいどこであんなアドバイス法を取得したんだ?」

そう訝しがりながら彼は自宅へと戻って行った。




「ただいまー。」
「あ、お帰りなさい、新一。」

蘭が帰宅した新一を迎える。

「今日は随分早かったわね。」
「あったりめーだろ?今日は蘭とのクリスマスパーティーだから、頭をフルスロットルさせて事件を解決してきたんだ。」
「えっ、そ、そ、そ、そうなの……?」

蘭は、新一が自分の為に早めに事件を解決させた事を知り、思わず顔が真っ赤になる。

「ささ、行こうか。」
「う、うん!もうちょっとでお料理できるからね。」
「ああ、楽しみにしてるぜ。」

そう言いながら二人はリビングルームへと向かった。



  ☆☆☆



「ふーっ、食った食った。」
「ご馳走様。」

クリスマス料理を全て平らげた二人。
その直後、

「あ、そうそう。蘭にプレゼントがあるんだ。」
「えっ、ホントに!?」
「ああ。ほら。」

と言いながら新一は包みを蘭に渡した。

「何かなー。」

蘭は新一から受け取った包みを取っていく。
すると、

「うわあー、とってもあったかそー。」

その包みに入っていたのは、ベージュ色の毛糸の帽子だった。

「ねえ新一。これかぶって見ていい?」
「ああ、いいとも。」
「それじや……。」

蘭は新一から送られた毛糸の帽子をかぶってみた。

「どう、新一?」
「うん、すっげー似合ってるぜ。」

新一は帽子をかぶった蘭の美しさに、『自分の見立ては間違ってなかった。』と思わずガッツポーズをする。

「あ、そうそう。私からも新一へのプレゼントがあるの。」
「おっ、それは楽しみだなあ。」

年甲斐も無くワクワクする新一。
やはりこの男は蘭が絡むと何事においても、色んな意味で平静ではいられなくなるようだ。

「はい、これ。」
「うっわー、あったかそーじゃんか、これ。」

蘭が出したのは、見るからに手編みとわかる毛糸の手袋だった。
それを見た新一は、当然の如く感激する。

「これ手製だから、今一つ自信は無いんだけど、どうかな……。」
「ううん!めっちゃいーよ、これ!蘭の温かい心がモロに伝わってくるぜ。サンキューな、蘭♪」
「あ、ありがとう、新一!」

蘭はプレゼントが新一に心から気に入ってもらえた事に感動する。

「……なあ、蘭。」
「何、新一?」
「去年のクリスマスの時は、オメーにちょっと寂しい思いをさせちまったけど、これからはずっと一緒にクリスマスを過ごそうな。」
「うん、ありがとう、新一……。」

蘭は新一にぴったりと寄り添い、しばらくの間二人でそのままでいたと言う……。




Merry Christmas,Shin-ichi&Ran…….




FIN…….





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