秋桜


ある小春日和の毛利探偵事務所……。


「♪〜」

何やら荷造りをしている蘭。

「ん?」
彼女はふと、窓際に飾られているコスモスの鉢植えに目をやった。
「ウフ……。この薄紅のコスモスの花、何か陽だまりに揺れているみたい……。」
「コホッ……。」
「あっ、お母さん。」
一つ咳をした英里に気付く蘭。
「どう、片付けの方は?」
「うん。かなり進んだよ。」
「そう。それはよかったわ……。」
ちょっぴり寂しげな表情の英里。
「お母さん……。」
「……はっ、や、やだ、私ったら。ウフフ……。」
「クスッ……。」
互いに微笑み合う蘭と英里。


  ☆☆☆


「しかし、20年前はこんなに小さかった蘭が、明日いよいよ結婚式を挙げるのね……。」
昔のアルバムを見ながら、ふと呟く英里。そこには、小さい頃の蘭の写真が貼ってあった。
「ホント……、今考えたら、とても信じられないわね……。」
感慨深げな蘭。

「ねえ、蘭。」
「ん?」
「新一君、とっても素敵な人だから、大切にしてあげてね。」
英里がめくったページには、高校の卒業式の時の蘭と新一の写真があった。
「わかってるわ、お母さん。……でも、お父さん、私が嫁いでったら、寂しくなるわね……。」
「そうね……。私が戻って来るまでの間、あなたがあの人を支えてくれてたものね……。コナン君、いや、新一君と一緒に……。」
英里はふと、蘭とコナンが一緒に写った写真に目をやった。
「……。」
「ホント……、よく頑張ってくれたわね……。私の我侭の為に蘭や新一君にいっぱい苦労かけさせちゃって……。」
「ううん。そんな事、別に気にしなくていいのよ。時がそれらを笑い話に変えてくれるから……。」
「ウフッ、確かに……。」
英里は、そう言いながら、蘭に微笑みかけた。
「ウフフ……。」
蘭も英里に微笑み返す。
 
「……お母さん……。」
「何、蘭?」
と、蘭はふと、英里の膝元に横たわった。
「……え?」
「このまま……、もう少しだけお母さんの子供でいさせて……。」
彼女は、涙を流しつつも微笑を浮かべながら、静かに寝入った……。

「……ありがとう、蘭……。」
英里の瞳からも、一筋の涙が走った……。


(本当にありがとう、お母さん……。)




彼女は今、バージンロードを歩もうとしている。
けど、彼女に恐れなど無い。
何故なら、彼女には互いに信頼し合える素敵なパートナーがいつもついているのだから……。



二人に永遠なる愛があらんことを……。


Fin…….




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