ティータイム



ある日の午後の工藤邸……。


「さーてと、今日はこんくらいにするか。」
「フッ、そうね。」
背伸びをする新一と、ホッと一息入れる蘭。
二人は新一の部屋で、勉強をしていたのだ。

「うーっ、何か勉強のし過ぎか、少し小腹が空いたような……。」
「クスッ、新一ったら。まるで小学生がそのままでっかくなったみたい。」
「あったりめーだろ、俺ついこないだまで小学生だったんだから。」
「あっ、そうだったわね。」
と、ちょっと舌を出して照れる蘭。
その時、
「おお、そうだ。」
と、席を立つ新一。
「どこ行くの?」
「台所から紅茶を取って来るわ。」
「紅茶?」
「そっ。勉強後のティータイムっつー事で。」
「あっ、それいいわね。私も手伝おうか?」
「いや、ここは俺に任せて、ちょっとの間だけ待っててくれ。」
「うん。」
そう言い残して新一は台所へと向かって行った。

バタン。

「紅茶か……。そう言えば新一って、お茶の類にも結構精通してるのよね……。」
と、台所にいる新一にふと思いを馳せる蘭。


その間、待つ事10分……。


ガチャッ。

「あっ、新一。」
「お待たせー。」
新一は、ティーポットやティーカップ2個、そしてお菓子が入った器を載せたお盆を持って、部屋へと戻ってきた。
「ささ、これよりお姫様とのティータイムと洒落込みましょうか。」
「あらやだ、新一ったら。私の事をお姫様だなんて……。」
照れる蘭。
「まあ、いいじゃん。それなりにムードが出て。」
「クスッ、確かに。」
「ところで紅茶、何で飲むんだ?」
「普通のレモンティーで。」
「じゃあ俺は何も入れないストレートティーで。」
と言いながら新一は、蘭や自分の場所にティーカップを置いた。
「熱いから気をつけるんだぜ。」
「うん。」
そう言いながら新一は蘭のティーカップに熱い紅茶をゆっくりと注ぎ込み、そして輪切りのレモンを中に入れた。
「さあ、どうぞ。」
「いただきまーす。」
と、蘭はゆっくりと紅茶を啜った。
「如何ですか、お姫様?」
「うん、最高よ♪」
「おお、そりゃ良かった。」
と、ご満悦の二人。
「さ、お菓子でも食べるか。」
「ええ。」
と、茶菓子のビスケットを摘まみながら、色んな事を語らい合う新一と蘭。


そうして一時間が過ぎた頃、


「ありゃ。」
「まあ。」
二人がふと気付いた時、器の中には、棒型のビスケットが一つしか残っていなかった。
「「…………。」」
器の中のビスケットを見つめる二人。
と、
「さささ、レディファーストっつ―事で、蘭、食べなよ。」
「いやいやいや、ビスケットの本来の持ち主の新一が食べて。」
「いやいや、蘭こそ。」
「いえいえ、新一こそ。」
と、譲り合う二人。


と、こんなやり取りが延々30分ほど続いた後……。


「う〜ん……。こんなんじゃ埒があかねえなあ……。」
「でも食べなきゃ勿体無いしね……。」
と、腕を組みながらたった一つ残ったビスケットを見つめる二人。
「う〜〜〜〜〜ん………………。あっ、そうだ!」
「あら、何か閃いたの?」
「ああ、よく考えてみたら、これ二人で食べればいいんじゃねーか?」
「あっ、そう言われて見れば……。」
「フッ、こんな単純な事に今まで気付かなかったとはな……。」
「クスッ、そうね。」
思わず微笑む蘭。
「じゃあ早速これ二つに割って……。」
「ちょっと待て。」
「え?」
「それじゃちょっとベタだから、こんな風にして食べないか?」
と言うや新一は、棒型のビスケットの端の方を歯で挟んだ。
「な゛っ!?何のまねよ、新一!?」
「何って、文字通り二人で一緒に食べるってヤツさ。」
「……それってもしかして、二人で食べてく内に最終的にはチューするってゆう、すっごく古典的なモンでしょ?」
「ああ、そうさ。何だオメー、そう言うのは嫌なのか?」
「べっ、別にそう言うわけじゃ……。」
「ほーっ、やっぱこーゆーのも好きなんだ。」
「ハッ!!?」
と、思わず両手で口を塞ぐ蘭。
「へっへっへ。どーやら語るに落ちた様だな、蘭。」
「う゛〜〜〜〜っ。」
「で、どーすんだ?」
「……いいわ、やりましょ。」
と、蘭は気恥ずかしそうに答えた。
「よーし、じゃあ、ホレ。」
と、新一は棒型のビスケットの一方の端を歯に挟みながら蘭に近付く。
「ん……。」
と蘭も、もう一方の端を歯で挟んだ。
「「ポリッ、ポリッ。」」
と、同時にビスケットを食べ始める二人。
で、行き着く先は勿論、

CHU……。

と、二人はそのまま口付けを交わした。
すると、
(ありゃ、ビスケットがあと少しだけ残ってるな。よ〜し。)
と、新一はある行動に出た。
それは、
「ん゛ん゛っっ!?(きゃあ〜〜〜〜〜っ!!!新一ったら、舌でビスケの残りを押し込まないでよ〜〜〜〜っ。)」
と、ぐるぐる目で顔を真っ赤にしながらドギマギする蘭。
そして、
「……どーだった、ビスケのお味は?」
と、してやったりの表情で尋ねる新一に対して蘭は一言、
「…………うん、最高よ★」



とある日の午後の一コマでした……。



Fin…….


戻る時はブラウザの「戻る」で。