はやく、おとなになりたい(第2回ちびフェスタ参加作品)



1年Aくみ  工藤 新一


おれは、ことし、しょうがくせいになった。
もう、ようちえんせいじゃない。

だから、ちゃんとしなくちゃ、いけないんだ。

じぶんのことは、ぼくってよばなきゃ、いけない。
友だちのよびかたも、かえなくちゃいけない。

女子には、さんを。
男子には、くんを。
つけて、よびなさいって。
にゅうがくしきで、こうちょう先生が、いってた。

ぼくは、はやく大人になりたい。

ホームズみたいな、りっぱなたんていになって。
そして、蘭を、およめさんにするんだ。

大人になるために、蘭のことも、「毛利さん」ってよばなくちゃ。

あーあ、めんどくさいよな、大人って。
でも、蘭、じゃなくて、毛利さんを、およめさんにするためだから。
めんどくさくても、がんばらなきゃ。


でも。
蘭が、なきそうになって、おれ、じゃない、ぼくを、みてるんだ。
ぼくは、はやく、蘭をおよめさんにしたいのに。
蘭は、そうおもってくれないのかな。


ぼくは、はやくおとなになりたいって、がんばってた。
しょうがくせいになってから、ずっと、がんばってた。

でも、きょう、それをやめたんだ。



きょうは、蘭といっしょに、ふしぎなおじさんの出した、あんごうをときながら、大ぼうけんをして。
あんごうをといたごほうびに、とってもきれいな夕日を、みた。


蘭が、夕日をみながら、おれにいった。



「蘭でいい!蘭のままがいい!!」


蘭が、そういうんなら、しかたない。
だって、蘭がのぞむことが、1ばん、1ばん、だいじなんだから。


大人になれないのは、ざんねんだけど。
蘭が、わらってくれるのが、おれは1ばん、うれしいんだ。
蘭が、なくのが、1ばん、つらいんだ。


だから、おれは、みんなになんといわれても、蘭がのぞむことを、やる。


あしたも、あさっても、ずっとさきも。

ずっとずっと、蘭のわらったかおが、みられたら、いい。



おわり


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≪後書き≫

このお話は、チビフェスタの参加作品に、少々、修正をかけたものです。

以前書いた「ちょっと背伸び」を、チビ日記風にアレンジしようとしたら、何かかなり違うものが出来上がってしまいました。根本は同じなんですけどね。

チビ祭りでは、同じ日に重ならないよう、お手付きしなきゃならなかったのもあり、6月2日にした為、1ヶ月前を振り返った日記にしたのですが。今回、本来の姿に戻しました。

新一君は、おそらく小学1年にしては、沢山漢字を知っているでしょうが、どの程度漢字交じりにするのか、非常に悩みました。
読めると書けるとでは、また違いますし。

けれど、新一君の事だから、「毛利蘭」に関しては、チビでもきっと書ける筈!と、こだわりを持って、漢字にしました。

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