The Romance of Everlasting 〜異聞・白鳥の王子〜



byドミ(原案協力・東海帝皇、挿絵・こむらがえり様)



*この番外編は、超個人的に、「くまのこみていた」のこむらがえり様に、捧げます。



(番外編)青子の悩み



新一王子と蘭王女が、ベルモットを滅し、戦争が終結して、この世に平和が訪れた後の事です。

「蘭ちゃん、こんにちは」
「青子ちゃん、いらっしゃい」

元妖精王女の青子が、蘭王太子妃の部屋に遊びに来ました。

「蘭ちゃん・・・また、胸が大きくなったんじゃない?」

青子が、蘭の胸をじっと見つめて、言いました。

「うん。だって、お腹に子供が居るんだもん。でも、赤ん坊が離乳したら、また元に戻るんだって」
「・・・・・・(そっか。青子も、快斗の子供が出来たら、胸が大きくなるんだろうけど、それって一時的なもんだよね。でも、蘭ちゃん達は、妊娠してなくても、胸がおっきかったもんなあ)」


青子は、胸が小さいのがコンプレックスで。
蘭達の大きな胸が、羨ましかったのでした。


妖精たちは、見目麗しい者が多いのですが、ごく一部の例外を除き中性的な雰囲気でした。
男性も筋骨たくましい者は少なく、女性は大抵、胸が小さいのです(アースレディース達は、例外的存在でした)。


青子が親しくしている人間の女性達は、蘭王女をはじめとして、皆、胸が大きく、青子はそれが標準だと思っていました。


半分人間の血を引く、妖精王女だった青子ですが。
生涯の伴侶として、人間の黒羽快斗を選んだ時点で、妖精の神通力を失い、ほぼ人間と同等の存在になりました。
なのに。

『胸が大きくならないのは、何でかなあ?』

悲しく思う、青子でした。


   ☆☆☆


蘭王女も、健康上特に問題はなく、安定期に入ったので、主治医の志保から、皆と共に買い物や遊びに出かけるお許しが、出ました。
久しぶりに買い物に出かける蘭王太子妃に、侍女達と共に、青子もついて行く事になりました。


元妖精王女だった青子は、人間として生きて行く上で知らない事も多くありました。
キッドと共に世界中を旅してまわった・・・とは言え、人間社会の奥の部分まで、見た訳ではないですから。

という事で、生活の整え方や買い物についても、蘭王太子妃の侍女達から、細かい事まで色々と教えて貰っている青子でした。

一行が入った店は、女性が服の下に身につける、いわゆる下着の専門店でした。
下着類についても、妖精族のそれとは異なっていて、青子は目を見張りました。


「そろそろ、今迄のでは、窮屈になって来てるでしょ?これなんか、授乳中にも使える優れ物で・・・」

園子が、蘭王女に勧めている下着を見て、青子は目を丸くしました。

「な、何、それ?」
「ああ。これは、胸を覆う下着ね」
「え?妖精達って、こういうの、身につけないのかしら?」
「だって、背中の羽に引っかかるから、無理なんじゃない?」
「それもそうか」

その下着は、二つの丸い膨らみをもっています。
ああ、人間の女性は、この下着をつけているから、胸が大きく見えるのかと、青子は思いました。

「青子ちゃんも、下着買わない?」
「う、うん・・・青子は、別にイイよ」

咄嗟に青子は誤魔化しました。
本当は、人間の女性達が身につける胸の下着が、欲しくてたまらなかったのですけれども、何だか恥ずかしくて、口に出せなかったのです。

だからと言って、後で、1人で買いに来る勇気も、ありません。



買い物から帰った青子は、夫である魔法使いキッドこと黒羽快斗に、コーヒーを入れてあげ、甘えるように身をすりよせました。
ちなみに、キッドは現在、黒羽王国を再建する為、帝王学のお勉強中の身なので、分厚い本を読んでおりました。


「ねえねえ、快斗。」
どこにも売ってないというのは、ちょっと嘘だったので、青子はちょっぴり胸が痛みました。(と言っても、青子が思い込んでいるような、「胸が大きく見える」下着が、この世界で存在している訳ではないので、実を言うと、嘘でもなかったのですけれどね。)
快斗は、一瞬吹きそうになったコーヒーを置いて、青子の頭を撫で撫でしました。
「・・・・・・えーと、まあ、そういうことなら俺も頑張るし(今晩)」
「???」


その夜。

「か、か、快斗!」
「ん〜?」
「が、頑張るって、子作りの事!?」
「ああ。まあ、子作りでもあるかな?」
「だだだって!子供が出来て胸がおっきくなっても、授乳が終われば元通りなんだよ!」
「だから、そうじゃなくて」
「?」
「胸は、揉むと大きくなるんだ」
「ウソっ!だって、蘭ちゃんは初めて会った時から、胸が大きかったもん!あの時はまだ、新一王子と出会う前だから、胸を揉んでもらった事なんてないでしょ!?」
「あー。だから、元々大きい女性も居るけどさ。小さい胸の女性も、恋人か夫が揉んでたら、段々大きくなるんだぜ?」
「・・・ホント?」


青子は、キッドから丸めこまれ。
その夜、その家からは、甘い声が一晩中漏れ聞こえていたと、いう事です。



青子が、天真爛漫に、「胸が大きくなるように、快斗に揉んで貰っている」話をした時。
蘭王太子妃と侍女達は、それぞれ真っ赤になって目をあさっての方に向け、青子はキョトンとしたのでした。



後に、その顛末を、妻の蘭を通して聞いた新一王子が、キッドに向かってボソリと言いました。

「胸は揉んだら大きくなる?それって、俗説だろ?」

キッドは、新一王子の胸倉を掴んで、言いました。

「それ、青子にばらしてみろ。殺すぞ」
「・・・ああ、ハイハイ。分かっててやってる訳か」


その後、はたして青子の胸が育ったのかどうか、それは謎のままとしておきましょう。



<おしまい>

++++++++++++++++++


≪後書き≫

本編も書き終わってない状態で、このようなお話、す、すみません!

こむらがえり様の絵日記のお話が、あまりにもツボだったもので!
おまけに、絵日記をそのまま使う事まで、お申し出頂き、本当にありがとうございました!


この世界には、どうやら、ブラ○ャーというものは、存在するらしいです。
・・・イイんですよ、基本メルヘンだから、その辺りはどうでも(爆)。

ハイ、本編の最終話も、頑張ります。

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