結局、夫婦
byドミ
「は?蘭がオレのツインソウル?んなわきゃ、ねーだろ!」
聞えてきた新一の声に、蘭の頭は真っ白になった……。
スピリチュアルな話は主に女子が好むものだと思っていたのだが。
昼休み、弁当を広げている傍で、男子同士が、ベターハーフがどうのソウルメイトがどうのという話が聞こえてきて、蘭は少し耳をそばだてていた。
すると。男子の誰かがからかい交じりに、
「毛利は工藤の……なんてったっけ?ほら、ツインソウル……魂の片割れってやつ?アレなんだよな」
と言うのが聞こえ。
それに対して新一の返しが
「は?蘭がオレのツインソウル?んなわきゃ、ねーだろ!」
だったのだ……。
実は、耳をそばだてていたのは蘭だけでなく、園子や他の女子もそれを聞いていた。
「新一君!ちょっと……許せないわね!最近、蘭の扱いが雑過ぎるんじゃないの!?」
「うんうん、なんか、蘭がもう自分のものって、甘え切っちゃってるところ、あるよね!」
園子たちがエキサイトして言う。
それを蘭は内心の動揺を押し隠し、「まあまあ」と宥める。
実際のところ、新一の蘭の扱いが雑過ぎるかというと、そうでもない。
恋人同士になってからの新一は、むしろ蘭にものすごく甘く優しくなった。
新一が甘えるというより、蘭を甘やかしている。
ただし、こういう態度は、ほぼほぼ「二人きり」の時に発揮され、クラスメイト達の前では以前とあまり変わらないかも、しれない。
「た、多分新一は……前世とかソウルメイトとか、あんまりスピリチュアルなことを信じていないから……」
蘭は、自分自身にも言い聞かせるように、そう言った。
新一は、超常現象や霊的なモノなどを丸っきりバカにしているわけではなさそうだが。
初詣はするしおみくじは引くし、神仏をないがしろにするわけでもないのだが。
ただ、最近はやりのスピリチュアルはあんまり信じていないのではないか、そう、蘭は思ったのだったが。
「工藤がそう言うんだったら、オレも、毛利口説いてみようかなー……って、冗談!冗談だって、工藤……!」
新一は、蘭たちから見て背中を向けていたのだが。
新一の背中を立ち上る黒いオーラが見えたと、そこにいた誰もが思った。
さっきまで新一を悪く言っていた女子たちも、顔を蒼褪めさせて新一を見る。
新一のその様子に、全く恐れる様子も何もなく涼しい顔をしているのは、蘭だけだ。
園子は、新一の方を見た後、いつもと変わらぬ様子の蘭を見た。
そして、口には出さないが、新一のパートナーが務まるのは蘭しかいないという認識を新たにしていた。
「……蘭はオレのただ一人の伴侶だ。誰にも譲る気はねえよ」
新一の黒いオーラに恐れをなした男子たちは、声も出せない様子でコクコクと頷いていた。
「オメーらな。そもそも、ツインソウルの意味を知ってんのか?ツインソウルってのは、一つの魂が二つに分かれた存在、つまり元は同一の魂だ。だからツインソウルを好きになるなんて、ただのナルシストだ、有り得ねえだろ!蘭は、オレとは異なる人格を持つ異なる存在だ、ツインソウルなんてことは有り得ねえよ!……まあ、前世も来世も傍に居るソウルメイトであって欲しいとは思っちゃいるが」
そこにいた者たちは、今度こそ新一の真意は伝わったのだが。
新一のウンチクはスピリチュアル方面にまで及んでいるのかと、妙に鼻白んでしまった。
「まあ、横文字とか使わずに、夫婦って呼べばいいってことよね!」
園子の言葉が一番正解だと、誰もが思ったのだった。
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