風邪ひきジャージ
byドミ
(1)中学生編(新蘭彼ジャージ祭り参加作品)
※中学三年設定です。
今年の夏は、例年以上に暑くなると予想され。
まだ5月だというのに、昨日は最高気温が30度に迫る夏日となった。
しかし今日は一転して、朝の気温は15度まで下がってた。
いくら中学生の若者でも、この気候の変動についていけない。
帝丹中学3年B組、今日の体育はグラウンド競技。
昨日まで暑かったので、ジャージを持っていない者もちらほらといた。
「昨日まであんなに暑かったのに、今日の冷え込みは何事よ!?」
「蘭、オメーなあ。天気予報で今日は冷えるっつってただろうが。そうじゃなくても、家出る時。寒いなって思わなかったのか!?」
「だって、朝練でバタバタしてて……」
「で、蘭?オメーもジャージ忘れたのか?」
「ううん。絢(あや)ちゃんがジャージ忘れてるっていうから、貸した」
「……ったく」
「わたしは鍛えてるから大丈夫!……っくしゅん!」
「ほら、言わんこっちゃない」
新一は、自分のジャージを脱ぐと蘭にかぶせる。
「えっ?」
「ほら。風邪ひくだろ?着とけよ」
「でも、新一は?」
「男は女より暑がりだからな。オレは大丈夫だから。オメー、くしゃみしただろうが。遠慮せず着とけ」
「う、うん……ありがと」
蘭が着せられたジャージには、しっかりと「Kudo」とネームがついていて、皆から散々からかわれるのだが。
2人とも全く気にしている様子はなかった。
「わたしが新一のジャージ着てるくらいで騒ぐ方がおかしいじゃない」
「だって……じゃあ蘭。中道君が蘭にジャージ貸すって言ったら、借りるの?」
「え?中道君がわたしにジャージ貸すはずないじゃない」
「たとえばの話よ!」
「そりゃあ……借りないよ……彼には悪いけど、汗くさくて気持ち悪いから……」
心優しい蘭は、さすがに男子に聞かれないように声を小さくして言った。
「……新一君だって汗をかく男子なんですけど?」
「え?だって、新一のでしょ?わたし、新一の汗のにおいなら、別に嫌じゃないもん」
途端に。
蘭の周りの女子たちが、ずざざざっと引いた。
「……蘭ってば、ああまで言ってるのに、自覚がないあたりが、ある意味恐ろしい」
「蘭は、新一君のこと、男女関係ない友だちだって言い張っていて……自分でもそう思い込んでいるみたいなんだけどさ」
「でも、いくら仲が良い友だちでも、男子の汗臭いジャージは、ふつう、嫌だよねえ」
体育の授業が終わった後。
「新一、ありがとう。洗濯して返すね」
「あ?別にいいよ、洗濯くれえ、自分でやっからよ」
「でも……」
「オメーんち、乾燥機ねえだろ?どうも雨が降りそうだし、明日も体育あるしよ」
「わかった。ありがとね」
さて。
蘭は、ジャージを借りたけれど、引きかけた風邪を止める事はできなかったようで、次の日熱を出して学校を休んだ。
そして、蘭にジャージを貸した新一も、1日遅れで熱を出して学校を休んだ。
「奥さんの風邪が旦那に移った」と、また皆のからかいの種ができたのだが。
『もしかして新一君、あのジャージで蘭の風邪がうつったんじゃ?』
そう勘ぐったのは、後に推理クイーンとして名を馳せる(?)鈴木園子である。
実を言うと、蘭から返してもらったジャージを、新一が洗濯しないまま次の日身につけたのは事実なのだが。
単に洗濯が面倒くさかったのか。
蘭が着たジャージをそのまま身につけたかったのか。
その両方なのか。
それは神のみぞ知る。
Fin.
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新一君は蘭バカの変態です。
それはまぎれもない事実です。
しかし、中学時代の新一君はもうちょっと純情なはず。
中坊新一君を変態にしちゃってごめんなさい。
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