Pure Mind



byドミ



「まあ、この方が新一の幼馴染の蘭さん?初めまして」

蘭は目を上げて、目の前に現れた女性を見る。ほっそりとした綺麗な人で、優しそうな微笑を浮かべている。

「蘭、紹介するよ。俺の婚約者の○○××・・・来週の結婚式には、『幼馴染』として是非出席してくれよな」

その女性の肩に手を掛けて、はにかんだ笑顔を浮かべているのは、蘭の最愛の男性、幼馴染の工藤新一だった。

何故か場面が移ってバージンロード。
蘭は花嫁のベールを捧げ持って歩きながら、惨めな気持ちでいた。
新一とその女性が微笑み合っている。
蘭の目からは大粒の涙がいくつも転がり落ちて行った。

「これが夢だったら良いのに・・・」



   ☆☆☆



蘭は目を開けた。
一瞬自分がどこに居るのかわからなかったが、すぐに工藤邸の居間のソファーで転寝をしていた事に思い当たる。
たった今、「夢なら良いのに」と思っていた事が本当に夢だった事に、蘭は安堵の溜息を吐く。
確かに夢らしく辻褄の合わない事やいきなりの場面転換があったけれど、その時の蘭の悲しみ・苦しみは妙にリアルだった。
動悸がなかなか治まらない。

蘭はふと自分の体に毛布が掛けられている事に気付く。
このような事をするのは、1人しか考えられない。
蘭は部屋を見回してこの家の住人を探したが、新一の姿は見当たらなかった。



「蘭、起きたのか。あんなとこで寝てっと風邪引くぞ」

書斎でパソコンに向かって居た新一は、ドアの所から覗き込んだ蘭に気付き、振り返って言った。

「うん・・・新一、何してるの?」
「課題。進級する為にたくさんノルマがあっからよ。蘭、何か飲むか?」
「勉強中なんでしょ、いいよ」
「俺もちょっと気分転換してぇの」

そういって新一は立ち上がり、伸びをしながらキッチンの方へと消えて行った。
蘭はそれをぼんやりと見詰める。
程なく、コーヒーの良い香りが漂って来た。

「ほらよ」

新一が蘭に差し出したのは、紅茶。
香り高い紅茶を濃い目に淹れ、ミルクティーにしてある。全て蘭の好みどおり。
新一はといえば、自分用にはコーヒーを淹れていた。
コーヒーがそれ程好きでない蘭も、淹れたての香りは好きである。
新一はコーヒーには拘りがあるので、いつも香り高い本格的なコーヒーを淹れる。

『ちょっと気分転換、って言いながら、私にはわざわざ別のものを用意するんだから・・・』

蘭は複雑な気持ちで新一が淹れてくれた紅茶を口に運ぶ。

「ねえ新一」

蘭は紅茶を半分ほど飲んだところで、もうコーヒーを飲み干して手持ち無沙汰そうにしている新一に声を掛けた。

「ん?」
「私がここに来るのって迷惑?」

蘭が意を決してそう言うと、新一は意外な事でも聞いたと言う様に目を丸くした。

「何でんな事訊くんだ?」
「だ、だって・・・」
「迷惑な訳ねえだろ?もしそうなら、俺はちゃんとそう言うよ。俺が遠慮なんかする性格じゃねえの、オメーもわかってんだろ?」

それは確かにそうかも知れない、と蘭は思う。
蘭が本当に訊きたい事は、そんな事ではない。

『私の事、どう思ってるの?』

そう訊きたい。でも、訊けない。



新一が「厄介な事件」とやらを解決して戻って来てから、2ヶ月が過ぎていた。
蘭は暫らくの間、また新一はすぐどこかに行ってしまうのではないかと不安で仕方がなかった。
けれど、1ヶ月が過ぎ、2ヶ月が過ぎても新一がここに居る為、ようやくその不安は薄れつつあった。

学校は新一に対し、長期に渡って休学していた為本来なら留年となるところを、特別に課題をクリアーする事で進級を認めるという特例措置を取った。
学校側の温情のようだが、この件に付いてはむしろ新一側が主導権を握っている。
何故なら、新一には別に帝丹高校在学に固執しなければならない理由などない為、留年決定となれば即逃げられる恐れがあるからである。
但し、他の生徒・父兄の手前、無条件という訳にはいかないので、このような条件を出して来たのであった。

今の所新一は、高校生探偵としての活動を続けながら授業にもきちんと出席し、おまけに課題も黙々とこなしている。
ただ、これは以前からの事だが、進学校である帝丹高校では殆どの生徒達がほぼ強制的に授業外の講習を受けさせられて居るのに対し、成績優秀である新一はそれを免除されていた。
一見優遇のように見えるが実はそうではない。
決められた授業ならまだ新一は大人しいが、講習などになると新一は些細なミス(教師側の)や勉強不足にも容赦がない為に、教師の方で嫌がるのである。



蘭は、時々新一の家を訪れては、御飯を作っていた。
新一も家事は一通りの事が出来るし、今迄だって1人でこなして来た。
最初蘭が「御飯を作ってあげる」と言った時、新一は遠慮していた。
しかし、忙しいと新一は簡単なものや出来合いのもので御飯を済ませるのは目に見えており、蘭は新一の健康状態が心配だった。
結局、やや強引な蘭に新一が折れる形でこうやって時々やって来るのである。


2人の関係は、新一が暫らく不在になる前と何ら変わらない。
つまり、「傍からは夫婦と言われる程に親しい只の幼馴染」である。


新一はまるで長い不在がなかったかのように蘭に接していた。
意地悪だけど優しく、優しいけれど意地悪。
特別扱いはされている、と思う。
けれどそれは、ただずっと傍に居て親しいから、という風に蘭には見える。
多分、同性同士だったら無二の親友になれたのだろう。
この胸の苦しみも経験する事はなかったのだろう。

ならば、新一が女性だったら、あるいは蘭が男性だったら、良かったのだろうか?



蘭は首を横に振る。
どんなに苦しくても、新一を愛さなければ良かった、と思う事は決してない。



「蘭?どうした?」

物思いに沈んだ蘭を、気遣わしげな新一の声が現実に引き戻す。

「ううん、何でもないの。もう遅いし、私、帰るね」
「じゃあ送ってくよ」

新一がカップを置いて立ち上がる。

「ううん、そんな!新一、課題があるんでしょ?近いし、1人で・・・」

蘭はそう言いかけるが、新一はさっさと玄関まで歩いて行った。


夜道、肩を並べて歩く。
只の幼馴染と言うには近く、恋人同士と言うには微妙に距離を置いて。
これが、私達の距離、決して縮まる事はないのかも知れない。
蘭は何故だか泣きそうな気持ちになりながら、そう考えていた。

「なあ、蘭」

暫らく黙って歩いていた新一が、前を向いて歩きながら蘭に声をかける。

「・・・なあに?」
「あのさ・・・オメーが来る事は迷惑なんかじゃねえ。けど・・・1人で夜道を帰るなんて言われたら、スッゲー迷惑だ」

蘭は俯き、泣くのを堪えながら言った。

「うん・・・ごめんね・・・」

新一が立ち止まり、蘭の方を見て困ったような顔をした。

「あのなあ・・・だから、俺が言いてえのは、そんな風に気を回すなって事。無理、すんなよ。少なくとも、俺の前では」
「え・・・?」

蘭には、新一が何をどう思ってこんな事を言うのか、見当が付かずに戸惑う。

「え?何で?私、無理なんか・・・」
「まあ、オメーに無理すんなっても無駄だって事は、わかってっけどさ。・・・んじゃあ、また明日な」

新一がそう言って手を振り、踵を反した。
いつの間にか、毛利探偵事務所の前に着いていたのだった。



   ☆☆☆



『蘭ちゃん、そないなはっきりせん男は止め止め。蘭ちゃんやったら言い寄る男ぎょうさん居てるで。何やったらアタシ、紹介したるで』
「んもう、和葉ちゃんったら・・・」

大阪の遠山和葉から、久々に蘭へ電話が掛かって来た。
他愛もないお喋りに花を咲かせ、最初は和葉が幼馴染の服部平次への愚痴を聞かされていた筈なのに、いつの間にか新一への愚痴を聞かせていたのだった。

『蘭ちゃん、アタシは本気や。蘭ちゃんの恋を応援したろ思うてたけど、帰って来たかて幼馴染のまんま何も言うてくれへん男やったら、もうあかん。もう他に目ぇ向けた方がええで』
「だけど、和葉ちゃん。じゃあ和葉ちゃんに、いつまでもはっきりしない服部君の事なんか、忘れろって言ったら・・・忘れられる?」

電話の向こうで息を呑む声が聞こえた。
それから、苦笑交じりの返事があった。

『せやなあ。確かに無理やなあ。平次がどんだけいけずやっても、平次がアタシ以外の女と付きおうても、きっとアタシは忘れられへんなあ。けど蘭ちゃん、はっきり言うてくれるやん。アタシは蘭ちゃんのそういうとこ、好きやけどな』
「・・・ごめん。私こそ。和葉ちゃんが私の事真剣に考えて言ってくれてるのに、失礼な事言ってしまって」
『そんなん、お互いや。相手にズバッと言われて分かる事もあるしな。で、蘭ちゃん。結局、何があろうと工藤君の事好きなんやろ?やったら、それでええやん』

電話を切った後、蘭の中に緩やかに温かいものが満ちるのを感じた。

蘭がつい友人に新一の事で愚痴をこぼしてしまうと、蘭の事を真剣に思ってくれる友人は大抵、「そんな男止めたら?」と口を揃えて言うのだ。園子しかり、和葉しかり。

けれど、その度に蘭は、自分がどれだけ新一の事を好きで、新一しか見えていないかを再確認するのであった。



   ☆☆☆



ある日、出席日数がやばい筈の新一が、どうしても病院にかからなければならないからと届けを出して、学校を休んだ。
蘭は放課後、その日出された課題を新一の元に届けようと、工藤邸を訪れた。

門扉を開けようとすると、新一と・・・赤みがかった茶髪のすらりとした美しい女性が、玄関先で立って話しているのが見えた。
蘭は咄嗟に門柱の影に隠れてしまった。

2人の会話は聞こえない。
けれど、2人の様子はかなりの親密な仲であるように蘭には見え・・・蘭の知らないところで新一が親しくしている女性が居た事に、蘭は少なからずショックを受けていた。

その女性をどこかで見たような気がして、蘭は首を傾げる。
そして思い浮かんだのは、コナンのクラスメートだった子で、阿笠博士が預かっていた博士の遠い親戚という灰原哀と。

「あ・・・!」

全く馬鹿馬鹿しい話とは分かっているのだが、数日前蘭の夢に出て来た新一の花嫁が、この女性に似ていたのだ。

「まさか・・・正夢・・・って事は・・・ないよね・・・?」

そう思いながら、蘭の胸はドキドキと早鐘を打つ。

「あら?蘭さん、工藤君に用があるんでしょ?中に入れば良いのに」

蘭が門柱にもたれかかって考え込んでいると、いきなりアルトの声をかけられて飛び上がらんばかりに驚いた。

「え?ええ!?あの・・・」

門のところに立って声をかけて来たのは、新一と話をしていた美女で、蘭が直接知らない筈の女性。
なのに名前で呼ばれて、蘭は混乱していた。

「あ、あの・・・何故、私の事を・・・?」

蘭がおずおずとそう言うと、その女性は、切れ長できつく見える目の光を和らげて、くいと顔を動かして阿笠邸の方を指した。

「丁度良かったわ。あなたとは、色々お話したいと思っていたの。ちょっと付き合って貰える?」

蘭は誘われるままに、その女性について阿笠邸に向かった。



   ☆☆☆



阿笠邸の主は留守で、蘭は促されるままにソファに腰を下ろし、女性が2人分のコーヒーを淹れ、蘭の前に置いた後、自身は蘭の向かい側のソファに腰掛けた。

「あの・・・あなたは、哀ちゃんのご親戚ですか?」

蘭がそう切り出す。
女性はフッと笑って言った。

「私は・・・宮野志保。もうすぐ博士の養女になって阿笠志保になるけどね。哀とは・・・両親が同じなの」

両親が同じとは変な言い回しだが、姉妹という事であろうと蘭は理解した。それにしては姓が違うと思った時、志保の方からまるで蘭の考えている事を読んだかのような言葉があった。

「哀と苗字が違うのには、色々と事情があるの。そこら辺は詮索しないで頂戴」

蘭は赤くなって頷いた。
他人の家庭事情に首を突っ込んでしまったような気がしたからだ。

「ところで。何故、あなたの事を知っているかって事だけど。理由は単純。哀や博士から、あなたの事を聞かされていたからよ。写真も見せてもらったし」
「そうですか・・・」


蘭は、今は遠い国に行ってしまったという小さな友人達の事を思い起こしていた。
江戸川コナンと灰原哀。
コナンは、自分の家で長い事預かっていた男の子で、灰原哀は長い事阿笠博士が預かっていた女の子。

コナンは最初から蘭に懐き、弟のように可愛がり、家族同然だった。
哀は、最初とっつきにくく、蘭を避けていたようだったが、元々人見知りの激しい性格であったらしい。
後になるとすっかり蘭に打ち解けてくれて、嬉しかったものだった。

哀が、自分の姉である志保に、蘭の事を話したり写真を見せたりしていたのかと思うと、嬉しくくすぐったい思いがした。
哀に姉が居たのは初耳だが、そもそも哀がひとり、独身の阿笠博士に預けられていたという事だけ取ってみても、色々複雑な家庭事情があったのだろうから、蘭はそれ以上忖度しない事にした。


「ふふふ。あなたって、本当に素敵な子ね。優しいけど、無理に相手の領域に踏み込んだりしない。哀やコナン君や博士や・・・それに工藤君から聞いた通りだわ」

この美しい女性から新一の名を聞いて、蘭の頬がこわばる。
この人は、新一にとってどういう存在なのだろう?

蘭は気を落ち着かせようと、目の前に置かれたコーヒーを口に運んだ。
一口飲んだところで、その苦さに一瞬顔を歪め、カップをテーブルに置いた。

「あら・・・ごめんなさい、苦かった?博士も私も工藤君も、濃いコーヒーでブラック派なもので」

志保が苦笑しながら言った。
新一のコーヒーの好みを知っている志保に、蘭の胸のつかえがますます大きくなって行く。

「あの。新一とも、遠い親戚に当たるんですよね・・・?」
「う〜ん、そうねえ・・・親戚と言えば言えるのかって位、遠い関係だけどね。でもまあ、あなたが本当に知りたい事はそんな事じゃないでしょ?」
「え・・・?」

蘭は悪い予感を覚えながら胃の前で拳を握り締めた。

「私が工藤君と恋人で、あなたに必要以上に工藤君に近寄って欲しくないって言ったら・・・あなたはどうするの?」

志保に真正面から見詰められながらそう言われて、蘭は息を呑んだ。
目の前が暗くなり、気が遠くなりそうになる。

「ど、どうするも何も・・・わ、私達は・・・」
「そうね。あなた達はただの幼馴染だけれど。でも、『恋人』としては、ただの幼馴染でもただの友人でも、彼に近付く女性の存在は面白くない。だから、出来ればあなたにも、隣の家に踏み込んで欲しくない。そう言ったら、あなたはどうするの?」

蘭は蒼白になり、俯いて拳をぎゅっと握り締める。
回らない頭で必死で考えた。
そして、ひとつの結論に至る。

蘭は唇を噛み締め、涙を堪えながら、顔を上げて志保を真直ぐ見詰めながら言った。

「もし、私の存在があなた達の・・・ううん、新一の迷惑になると言うのなら、私はもう、新一の家には行かないし、クラスメート以上のお付き合いはしません。でも、でも・・・あなたには悪いけど、私・・・新一が好きだってこの気持ちだけは、消せない。私は、たとえ新一が決して私を見てくれなくても、それでも。新一が好き」

そうなのだ。
新一の気持ちがどこにあろうと、新一が蘭の傍に居ようと居まいと、新一が蘭に何をしてくれようとしてくれまいと。
そういう事に関わりなく、蘭が、新一の事を、好きなのだ。
愛してくれるから愛し返すのではなく、大切にしてくれるからこちらも大切にするのではなく。
相手がどうであろうと、ひたすらに相手を想う。
人を愛するという事は、きっとそういう事なのだ。

それが蘭の出した結論だった。


志保は、フッと柔らかく微笑んだ。
そして口を開く。

「それが、聞きたかった」
「え・・・?」

志保の思いがけない言葉に、蘭は戸惑った。

「蘭さん、ごめんなさい。工藤君と私が恋人同士なんてのは、真っ赤な嘘。彼には今のところ、少なくとも私の知る限りでは、恋人と言える存在は居ないわ」
「え・・・?」

蘭は再び同じ言葉を繰り返した。
志保の言葉に戸惑い混乱するばかりだったのだ。

「工藤君とはね、厄介な事件絡みで協力した、そうねえ、いわば同志のような存在なの。意地悪してごめんなさい。あなたの気持ちがどれだけ確かなのかを、あなたの口から聞きたかったから」
「え?で、でも・・・」

蘭は、戸惑いながらも、もしかしたら志保も新一の事を好きなのではという気がした。
でも、それを口にしてはいけないような気もした。

「今日私が隣に居たのは、その厄介な事件絡みの事が色々、全て終結を見たから、その報告を兼ねて。彼が病院に行ったのも、それと関連する事で、病院に行くから学校を休むって届けたのも嘘ではないのよ。
で、これは本当に勝手なお願いになるのだけれど。もしあなたが工藤君と恋人同士になった時は。工藤君の友人としての私の存在を出来れば許して欲しい。決してそれ以上にはなり得ないから」



蘭は、複雑な気持ちで阿笠邸を後にした。
けれど、自分自身の気持ちと覚悟を再確認して、妙に晴れ晴れとした気持ちにもなっていた。

志保はああ言っていたけれど、今のところ新一が蘭に恋心を抱いてくれているとは考えにくい。
それに、今はそうでなくても、あれほどに美しく落ち着いた女性である志保に、新一が心動かす可能性はとても高いだろうと蘭は思っていた。

けれど、新一がどうであろうとも。
蘭は新一を1人の男性として一途に愛し続けるだろう。

蘭は改めて、新一への想いを確認したのであった。



   ☆☆☆



蘭が工藤邸の呼び鈴を鳴らすと、新一が笑顔で出迎えてくれた。

広いリビングでくつろいでいると、新一がたっぷりのミルクと少しばかり砂糖を入れた香り高い紅茶を、蘭の前に置いてくれた。
新一自身は濃い苦そうなブラックコーヒーを置いて、蘭の向かいに腰掛ける。

蘭はまず、学校で出された課題を新一に手渡した。
新一はそのプリントを受け取ると、引っ込めようとした蘭の手をぐっと握り締めた。


「え?し、新一・・・?」

新一が真剣な瞳で蘭を見詰めている。
蘭は胸がドキドキしていた。


「蘭。オメーにずっと言いたかった事がある。けど、事件のけりがつくまでは言えねえと、ずっと抑えてた。今日、全てにけりがついた」
「新一・・・?」
「蘭。オレはずっと、オメーの事が・・・」



その後2人がどういう会話を交わし、どうなったのか。
それはここで語るまでもないだろう。



Fin.


+++++++++++++++++++++++++


<後書き>
2005年工藤の日記念企画作品。

と言っても、この話、ずっと昔に書きかけて放置してたのを完成させただけなのですが。

志保さんにあのような役割をさせて良いものか、とても迷いました。でも多分、志保さんは新一君の事も蘭ちゃんの事も好きで、先々、ほのかな恋心を抑えて2人の良き友人になって行くのではないのかなあと思っていますので。

えっと、この話これで終わり?と思われた方は、ごめんなさい。
何せ、この話の主題は、蘭ちゃんサイドの気持ちなので。
新一君が告白してのあれこれは、また別の話になっちゃうのです。

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