『夏の音色』



「ねぇ!どこに行くの!?」
「いいから、黙ってついてこいよ」

自分の手を引っ張って、花火会場である緑地公園から
どんどんと離れて行く新一に蘭は疑問に思いながらもついて行った。


今年は、新一と恋人同士になってから初めてのお祭りだった。
だから、少しは綺麗に見えるように今日は浴衣を着て、髪もアップにしてみた。
新一に見て貰いたかったから・・・
だけどそんな考えは空しく、新一は周りの女の子の方が気になるみたいだった。

私は、新一の事だけしか見えないのに・・・


前を歩く新一が、突然止まった。

「よし、着いたぞ」

気が付くと、山の中に立っていた。
いつの間に・・・

「ここは・・・?」
「まぁ、ちょっと待ってろよ」

新一がそう言い終わる直前、大きな音が鳴り響いた。
目の前には大輪に輝く、色とりどりの花火。

「わぁ!!」

後から後から花火は上がっていき、この町の空を彩っていった。

「ここからの花火を蘭と見たかったんだ。
それに・・他の野郎に蘭を見せたくなかったから・・・」
「え?」

そう言う新一の顔は、少し赤らんでみえた。

そっか・・さっき新一が見てたのは他の女の子じゃなかったんだ・・・


新一が私の肩に手を回した。
まだ慣れない行為。


「ね、また来年も一緒に来ようね?」
「あぁ・・・そうだな」


こうして終えた夏の夜。

あなたの傍にいれて、とても幸せだった。



END。。。