おまけの江古田高校編
「おい、紅子!」
「な、何ですの?」
快斗から思いっ切り睨みつけられ怒鳴られて、紅子は気丈に返すが、その声は上ずっていた。
「おめーの変なチョコの所為だろ、あの騒ぎ!今の所まだ犯罪まで至ってないが、その内性的犯罪や暴力沙汰になったらどうする気だ!早く何とかしろ!」
「どうしてですの?黒羽くんに効かなかったから、あの薬は失敗だと思っていたのに・・・!それとも黒羽くんは、魔力の通じない殿方なのかしら?」
紅子は泣きそうになるのをグッと堪える。
泣いてしまったら、魔力を失ってしまうからだ。
快斗に媚薬の効果がなかったため、残りのチョコは他の男子生徒達にばら撒いてしまったのだった。
ところが、チョコを食べた男子生徒が、たまたま通り掛った女生徒や女教師を見て襲い掛かるという事件が多発している。
今の所、襲われた相手が男子生徒を逆に殴り倒し(←それも充分問題だが)事なきを得ているが、媚薬の効果は暫らく続くので、このまま放置しておくと、快斗の言う通り、大問題になりかねない。
紅子自身も、ばら撒いたチョコを食べた男子生徒達から何度も迫られ、そのたびに魔法を使って撃退していた。
「はっ・・・!もしや!」
紅子はやっと思い出した。
町で中森青子に似た(けれど青子より大人っぽくナイスバディの)可愛らしく綺麗な少女とぶつかり、そのときチョコの1つを落として慌てて拾い上げた事を。
「あの時、入れ替わってしまったんだわ!そして間の悪い事に、その入れ替わったチョコを黒羽くんにあげてしまった・・・!ああ、そうともっと早くに気付いていたら、今度こそ黒羽くんを私の虜に出来たのに!」
そう思っても、もはや後の祭りである。
紅子は仕方なく、解毒効果もある薬草・忘れ草を焚いて、その煙を学園中に流した。
チョコレートを食べた男子生徒全員の媚薬効果が無くなるのと同時に、快斗と青子を含む全校生徒と教師がこの騒ぎを忘れ、江古田高校は何事もなかったかのように日常を取り戻した。
黒羽快斗も、紅子のチョコが原因で起こった騒ぎの事などすっかり忘れ、たくさん貰ったチョコを抱えて青子と共に帰って行った。
☆☆☆
白馬探は、急ぎ高校に戻っていた。
昼過ぎに警察から事件解決の要請があって現場に赴いたものの、現場は米花町付近で江古田高校からは遠く、先に到着していた工藤新一が既に事件を解決していたため、結局出番が無かったのである。
彼も現在は高校3年生。
2月半ばの今は自由登校だから、登校する必要はさらさらないのだが、彼には学校に行きたい訳があったのだ。
尤も今は夕方。
1、2年生でさえ、スポーツ系のクラブ活動の生徒以外はもう下校してしまっている。
探は、3年B組の教室のドアを開けた。
誰も居ないと思っていたのに、女生徒が1人、席に着いていた。
長く美しい黒髪が、夕日を反射し、その美しさに探は息を呑む。
彼が会いたかった女性――けれど、もう下校してしまっているだろうと思っていた人が、そこに居た。
「紅子さん」
その女生徒――小泉紅子は振り返った。
「白馬さん。今頃、どうなさったんですの?」
それには答えず、探は紅子のすぐ傍まで寄って来た。
「美しい貴女には泣き顔など似合いませんよ?」
「泣いてなんか・・・!」
「涙は流していない。でも、今にも泣き出しそうな顔をしている。貴女がそんな顔をされていると、僕はとても辛いです」
紅子が目を見開く。次いでかすかに微笑んだ。
「あ、そうそう。チョコレート、ありがとうございました。貴女にとっては数多渡した義理チョコの1つに過ぎないでしょうが、僕にとっては・・・愛しい女性から頂いた、唯1つのチョコレートです」
「え?白馬さん・・・?それって・・・」
探は、昼前に紅子から貰っていたチョコレートを取り出すと、包みを開けた。
「あ、白馬さん、待って、そのチョコは・・・!!」
紅子の制止の声より早く、探はチョコを1口かじって飲み込んでいた。
目の前に居る美しい女性。
一目で惹かれ、いつかは思いを通じさせて、自分のものにしたいと願っていた女性。
けれど、探の中にある「手順を踏んで」という思いや理性などは、今全て吹き飛んでしまっていた。
残っているのは、「この女性を自分のものにしたい」という強烈な欲望。
探は、思いのままに紅子を引き寄せ抱き締め、そして口付けた。
そして探は、紅子の制服の中に手を入れ、直に胸に触れようとする。
「あ、ま、待って、白馬さん!」
「待たない。貴女が欲しい。貴女を僕のものにしたい!」
「お願い、ここじゃ嫌。・・・今から私の家に来て。そこで・・・」
「・・・わかりました」
白馬探の中に僅かに残る理性が、「場所を変える」事を辛うじて了承させた。
『私、どうしてしまったというの?』
紅子は自分で驚いていた。
探がチョコレートを食べたらどうなるか、判り切っていた筈で、紅子の力なら、避ける事も探を気絶させる事も簡単に出来たはずだった。
けれど、紅子は探を受け入れてしまった。
紅子に取って初めてのキスだったのに、口付けられて陶然となった。
探の手が制服の中に入って来た時も、決して嫌ではなかった。
そして、家に誘うような真似をしてしまった。
紅子にも、本当は判っていた。
白馬がチョコレートを口にする前に言った言葉に、態度に、真実を感じたからだ。
真っ直ぐに紅子を見詰める瞳の中の真実に、紅子は捕われてしまったのだった。
そして、自分の虜になってくれない少年・黒羽快斗の事は、最早どうでも良くなっていた。
目が覚めた白馬探は、いつもと違う部屋の景色に戸惑い、腕の中にある温かく柔らかな感触に仰天した。
腕の中に居るのは探が惹かれてやまない愛しく美しい女性・小泉紅子。
そして、自分も紅子も一糸纏わぬ姿であった。
昨日からの出来事を思い返して、探は真っ青になる。
「あ・・・白馬さん、お早うございます」
紅子が目を覚まし、柔らかな微笑を見せた。
「紅子さん・・・!申し訳ありません!!」
「え?」
「このような事を仕出かしてしまって・・・!」
紅子の顔が険しくなる。
「酷い!白馬さん、貴方は戯れで私を抱いたんですの!?『愛してる』って囁いて下さったのも、みんな嘘だったんですの!?」
「い、いや、そういう事では・・・!決して戯れ等ではなく!僕が貴女を愛してるというのも真実で!ただ、あの、強引に無理やり貴女を自分のものにしてしまった事が申し訳ないと・・・それに貴女は、初めてだったようですし・・・」
「そんな事・・・」
紅子は柔らかく微笑むと、自分から探に口付けた。
探は真っ赤になる。
「貴方は、強引だったかも知れませんけど、無理やりではありませんでしたわ。私は、拒もうと思えば拒めたのですもの。私が貴方に抱かれたのは、貴方の中の真実を感じて、私の中にもそれに応えるものがあったからですわ。バージンを貴方にあげた事、後悔なんかしてなくってよ?」
探は、感極まって、紅子を抱き締めて口付けた。
「では、順序が逆になってしまいましたが・・・紅子さん、僕は貴女を愛しています。僕と付き合って頂けますか?」
「はい。喜んで」
おまけの江古田高校編Fin.
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おまけその2:あるキャラの嘆き
「で?青子、俺、この話には一体何の為に出てきた訳?」
「快斗、そんなの決まってるじゃない。狂言回しよ」
「工藤達だけじゃなくて、白馬と紅子までいきなりのラブラブじゃねーか。せっかくのバレンタインなのに、俺のラブラブはどうなったんだ〜!!」
「あら、快斗、青子が相手じゃ不満なの?」
「そんな事言ってねーだろ!俺が言いたいのはだな・・・」
「大体、快斗がたくさんチョコ貰って意地汚くウハウハしてるのが悪いんじゃない!」
「げっ・・・ちょっと待て、青子・・・」
「快斗、誰とラブラブしたかったの!?同じ顔でも青子より大人っぽい蘭ちゃん?美人の紅子ちゃん?どうせ、青子はお子様ですよ!!」
「だ、だから、違うって。落ち着け、な?」
「快斗の馬鹿〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
「俺が何したって言うんだ〜〜っ、ドミの奴、俺に恨みでもあるのか〜〜〜〜っ!?」
(別に恨みは無いけど、ごめんなさい。その内ラブラブ書きますので待ってて下さい:byドミ)
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<後書代りの東海帝王会長とドミの対談>
会長「ドミさん、次はバレンタインのお話ですね。またちょっと考えた事があるんですが」
ドミ「え?どんなネタなんですか?わくわく(←少しは自分で考えなさい)」
会長「紅子様が作った媚薬入りのチョコと、蘭ちゃんのチョコが入れ替わってしまって、新一が媚薬入りのチョコレートを食べてしまう・・・」
ドミ「残念だけど、それはボツ!だって・・・今回こそは蘭ちゃん、新一くんにチョコ渡せないと可哀想だもの」
会長「あ、そっか・・・う〜〜ん」
ドミ「あ、でも、入れ替わるチョコが本命チョコじゃなくて義理チョコなら何とか許容範囲かな?」
会長「じゃ、それで行きましょう。で、新一がチョコレートを食べたとき、たまたま遊びに来てた志保さんが新一に声を掛けて・・・」
ドミ「却下!」
会長「え?だって、その、魔法の力でだから、本当に心変わりするわけでは・・・」
ドミ「却下!!たとえ薬の所為でも、他の女に迫る新一くんなんて、私には絶対に書けません!どうしても、という事であれば、御自分で書いて下さい。ただし、エースヘブンとのお付き合いはこれきりという事で・・・」
会長「わーっ、わかりました、それは止めます!じゃあ、こういったお話では?」
ドミ「ふんふん成る程。ドタバタギャグで結構面白い話が出来るかも」
会長「じゃ、その線で。(ドミさん・・・俺に脅しを掛けるとは・・・随分と図々しくなられたものだ・・・)」
ドミ「会長さん、何か言いましたか?」
会長「い、いえ、何にも(怖い・・・)」
ドミ「で、江古田高校の方、どう収拾つけましょうか。ただ紅子様が解毒剤ばら撒いて終わり、じゃ面白くないし。白馬っちも絡めたいし」
会長「そうですねえ」
――それから暫らくああでもない、こうでもない、と打ち合わせが続く――
会長「では、その線で進めましょう」
ドミ「急転直下、いきなりバリバリの白紅になりましたね」
会長「では、仕上がるのを楽しみにしていますね♪」
注)例によって上記の会話はフィクションですが、一部、事実も混じっています(笑)
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