森の番人



By 柚佐鏡子様



〈エピローグ〉



それから数年後。
工藤優作の跡を継いだ新一は、米花の森の開拓に余念なく、忙しい日々を過ごしていました。
彼の森林開発は、まず、森に置き去りにされ、町へ戻ることも叶わずに亡くなった人達の遺骨を残らず探し出し、手厚く葬ることから始まりました。
骨の特徴から、その遺族達も探し出し、家族を森に置き去りにした罪の代償として、慰霊施設の建設作業に従事させました。

こうして、森の忌まわしい過去が清算されると、実り豊かな米花の森には、徐々に人間が集まってくるようになりました。
新一は森林を整備して道路をつくったり、元々あった多数の蔵書をベースにして学問所をたてたりしました。
その学問所には、医学を教えている宮野志保という美人の女性がいて、いつも周辺諸国の話題を攫っていました。
道路を整備したため、近隣との交易も盛んになっています。
隣町のギルドと協同して織物工場を建て、独自の製法なども開発し、その織物は各国でたいそう評判になっていました。
ちなみに、隣町のギルドの議長は京極真です。
彼は園子と約束したとおり、あれから黙々と修業に励み、その成果が認められ、一人娘が嫁いだために跡継ぎのいなくなった毛利小五郎の親方資格を譲り受けた上で、ギルドの一員となりました。
やがてギルドの若き議長となり、それまでの修業で蓄えた、卓越した知識と技能をもって、閉鎖的だったギルドの改革を見事成功させました。
彼は、近く園子と結婚する予定になっています。
それ以外にも、役所を整備して、教会の手に寄らない独自の戸籍を編成したりと、新一は、斬新かつ内実のある治世を精力的に行っていました。
そんな彼の傍らには、常に彼の美しい妻・蘭がいて、いつも夫を支えていました。
彼らの愛情はいや増すことはあっても枯れることなど知る由もなく、いつまでもいつまでも、仲良く暮らしたということです。


昔々の、どこか遠い国でのお話です。




END





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