すれ違う心



By なかはらゆう様



【4】



新一&蘭



放課後、一人で帰ろうとしていた蘭を呼びとめ、自宅へ誘った。

「新一? 忙しいんじゃないの?」

蘭の表情は心なしか暗い。
あぁ、やっぱり・・・。

「いや、もう終わったよ。ゴメンな、もう待たせないって約束したのにさ」
「・・・・・・」
「蘭、聞いて欲しいことがあるんだ」
「何?」

蘭に全てを話した。
コナンの事。組織の事。
灰原の事。
そして今回の事。

長い、長い話を終えて、ようやく蘭が口を開いた。

「新一・・・、ゴメンね。私、知ってたんだ、コナン君が新一だって事。でもいつか話してくれるって信じてたから、知らないフリしてたの」
「え?」
「何度聞こうと思ったか知れない。でも隠したかった新一の気持ちも判ったから、黙ってた」
「蘭・・・」
「哀ちゃんの事は知らなかった。彼女、辛い思いしてたのね・・・」
「今度の事で、一番辛かったのは、灰原だからな」
「新一・・・」
「服部がさ、蘭が俺と別れる気でいるって言ってたけど、ホントなのか?」

努めて普通に聞くが、答えを聞くのが怖い。

「・・・・、新一がこのまま話してくれなかったら、そうしてたかもしれない」
「蘭!」
「仕方ないじゃない、やっと会えたと思ったのに、会ってもくれなかったんだから」
「ゴメン、灰原のこと、どうしてもほっとけなくてよ」
「ううん、いいの。むしろそんな事したら、怒ってたかもね」
「蘭・・・」
「哀ちゃんにとってはコナン君だけが頼りだったのよね・・・。私はそんな彼女からコナン君を取ってしまった」

あぁ、蘭はいつもそうだ。
自分の傷などニの次で、他人を気づかう。

「情けねーよ。服部に言われるまで、気付きもしなかった。蘭が苦しんでた事にさ」
「ごめんね、余計な心配かけちゃって」

あぁ、どうして・・・。謝るのは俺だろう。

「俺さ、蘭が好きだ。帰ってきたらちゃんと言うつもりだったんだ。こんなに遅くなっちまったけど」
「新一・・・」
「ガキの頃からずっと好きだった」
「嬉しい・・・、私も好きだよ、新一が大好き」

何時の間にか涙を溢れさせる蘭が愛しくて。
手を伸ばして抱き寄せて、苦しめた詫びの気持ちも込めて、唇を重ねた。



  ☆☆☆



快斗&青子

「あおこ〜、一緒に帰ろうぜ〜」
「バ快斗! 大きい声出さないでよ!」

前の方を歩いていた青子に声をかけた。

「用事はもういいの?」
「ん・・・、終わった」
「ふーん」
「ちよっとさ、公園寄ってかねーか?」
「いいけど?」

青子のリクエストを聞いて、自販機でジュースを買ってくる。

「なぁ、服部から聞いたんだけどさ、俺のこと嫌いになった?」
「な・・・に?いきなり・・・」
「別れる気でいるらしいって言われた」

突然黙り込んだ青子に、手遅れだったのか?と嫌な予感が走る。

「・・・だって、快斗、青子のことずっと無視してたじゃない」
「無視はしてねーよ、ちょっと事件あってさ。な、ちゃんと話すから、考え直せよ」
「・・・聞いてから考える」

素直じゃないねぇ。

それから今までのことを話した。
新一の許可は取ってるから、コナンが新一だった事も含めて。
青子が驚かなかったのはちょっと意外だったけど。

「そう・・・だったんだ。哀ちゃん、可哀想・・・」

まるで自分の事のように話す青子は既に涙目。

「親父の事もあったしな、ほっとけなくてよ」
「工藤君もホントに大変だったんだね。でも良かった。蘭ちゃん、もう大丈夫だね」
新一の事はどうでもいいんだけどな。あんまり関心持たないでくれよ。
「で? どうするの? 別れる?」

あくまでポーカーフェイスたが、心臓はバクバク言ってる。

「バ快斗! 判ってて聞いてるでしょ? イジワル!」
「判んねーよ、青子泣かせたのは事実だし」

反省してます、との気持ちを込めて、少し落ち込み気味に言ってみる。

「もぉっ、青子、淋しかったんだからね!」
「ゴメンって、もう一人にしないからさ、な?」

ふくれっつらの青子を笑顔にしたくて、得意のマジックをだした。

1・2・3!ポンッ!

青子に似合いの、小さな白い花。
みるみる顔色が変わり、それでも誤魔化されないんだから、と少し膨れる青子が愛しくて。
抱き寄せて、その小さな額にキスを落とした。

「バカ! こんなとこで!」
「誰も見てねーよ」
「そーゆー問題じゃなーいっ!!」



  ☆☆☆



「結局、どーなったんや、あいつら」
「ちゃんと話してくれたんやて、良かったぁ」
「そーか」
「なぁ、平次は? 平次も二人みたいに黙っとくん?」
「あ? ややこしーなるの判っとったら、言うで?(多分な)」
「ホンマ?」
「信用せーっちゅうに」
「信用できんから聞いとるんやん」
「あのな・・・」




end




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