すれ違う心




By なかはらゆう様



【3】



「ねーちゃんの様子、どうや?」

どこで聞いたのか、服部がかけつけた。

「あぁ、やっと落ち着いた。今、博士がついてる」
「とりあえず一安心ってとこだな。発見が早かったから良かったよ」
「まさか自殺を図るなんて、思いもしなかったよ」
「彼女の強がりに気付くべきだったよな」
「しゃーないやん、それどころじゃなかったんやろ」
「まぁ・・・な」

組織を崩壊させたとは言え、当時者である以上、事後処理に立ち会わなければならないのは当然。
しかも灰原=宮野の存在を隠したままの状態なので、更に時間も手間もかかる。

KIDの素性を明かす事は出来ないので、表立って動けるのは新一のみ。
快斗も平次も所詮は裏方。この件に関して警察に出向く事は出来ない。
二人がいくら愛しい彼女との時間を望んでも、かなわないのである。
組織の崩壊と彼女を両天秤にかけることは不本意であってもできないのだから。

そこへきて、今回の自殺未遂騒動。
幸い、発見が早かったため、大事には至らなかったが、それを放っておけるほど、自分は薄情じゃない。
何も事情を知らない少年探偵団は真っ青で、歩美にいたっては、コナン君に続いて哀ちゃんまでいなくなるの?と灰原に泣きついた。
灰原哀のままでいることへの覚悟が足りなかった、と当人の俺達への弁明。
それでも一人でいることを望む灰原の説得は正直難しかったが、何より歩美の涙がきいたらしい。
彼女が落ち着いたのは、全てが終わったあの日から1ヶ月が経っていた。

「なら、大丈夫やな。あのな、お前ら、早いとこ誤解解いたほうがええで?」

服部の表情が意地悪いように見えるのは気のせいか。

「「誤解?」」
「和葉が言うとるんやけどな、毛利のねーちゃんと中森のねーちゃん、お前らと
別れる気ぃでおるらしいで?」
「「は?」」
「せやから、灰原のねーちゃんにかまってて、ほったらかしてんのやろ? 浮気した思うとるらしいで?」

少しオーバーだが、このさいまぁええか。

「「浮気ぃ?」」
「おぅ、灰原のねーちゃんと一緒のところを見たんやと。工藤んちにおったんやろ? 毛利のねーちゃんはそれを見かけたらしいで」
「だからって何でいきなり浮気になるんだよ! 蘭は灰原のことは知ってるんだぜ」
「工藤んちにおったーゆーことが問題やて、和葉は言うとったで?」
「だったら青子は関係ねーじゃん、あいつは哀ちゃんのこと知らないんだぜ」
「そやから、中森のねーちゃんも見たんやて。工藤んちに行ってるのは知っとったんやと」
「マ・・・ジ?」
「後つけたんやと」
「KID廃業してから鈍くなったんじゃねぇの? オメー」
「うるせー、人こと言えるか」
「ま、わいには関係ないけどな、どうするんや? お二人さん」
「「うるさい!」」



to be countinued…….




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