Millennium Christmas(後編)



By さくら様



ーーー数十分後

リビングに戻るとツリーの前に座り込んでる蘭に声をかけてた。
「蘭。オメーも入ってこいよ」
「え・・?あ・・うん」
そう言うと少し顔を赤くして恥ずかしそうに目をそらしながら、もう一度ツリーを見つめてる。
「蘭?」
「きれいだよー。積もってる雪がツリーのライトの色に染まってるの・・・」
うれしそうに言ってる蘭が、すごくかわいく見える・・・
蘭のこういう所、昔から変わらねーなぁ
そんな蘭に見とれてると
「あー、またガキみてーなコト言ってるって、思ってるでしょー?」
ちょっとすねた子供みたいに、オレを上目使いで見ながら言う蘭がかわいくて、思わずドキッとする。
「・・・思ってねーよ」
「ホントぉ?」
「本当だって・・・」
頼むからその上目使いは止めてくれ・・・緊張してくるからよ・・
「それより、ほらっ 早く風呂行って来いよ」
用意した蘭のパジャマ・・・といってもオレのトレーナーにジャージだけど・・・
それを蘭に手渡した。
「え?これ・・」
「オメー、着替え持ってねーだろ?」
「・・うん。ありがと。じゃあ行って来るね・・」
そう言って立ち上がった蘭に
「あー、ごゆっくり」
「・・・・」

クスクス

「何だよ・・」
怪訝そうに蘭を見てるオレに、笑いを堪えながら
「だって、新一、なんだか言い方がオヤジっぽいんだもん・・・クククッ」
「オヤジって・・・」
ちょっとグサっ。
いつまでも笑ってる蘭を少し睨みながら
「ほら、早く行って来いよ」
「はーい」
そんなオレを見て、また笑いながら部屋を出て行った。

クス・・

オレが戻ってきてからあいつ初めて笑ったな・・
ずっと張りつめた顔してたからな・・・
それにしても・・・オヤジはねーよなぁ
仮にも数ヶ月前までは小学生だったんだぜ・・・

ふと窓に目をやると止む気配のない雪が降ってる。
ホワイトクリスマスねー
あっ、そうだ!
ちょっと蘭のヤツ、驚かせてやろうかな♪


*****


「よし。これでOKっと」

ガタッ

(?)

ドアの向こう側で何か物音がした気がしたけど・・
ドアを開けて見てみると蘭が座り込んでる。
「蘭?」
「ハハハ・・こけちゃった・・・」
恥ずかしそうに照れ笑いしながらオレを見て言う。
「クス・・ たくっ何やってんだよ。ほら」
オレの差し伸べた手をつかんで立ち上がりながら
「だって、新一のジャージ長いんだもん・・・」
見るとトレーナーもかなり大きいらしくブカブカ・・・
蘭ってこんなに小さかったのか・・・?
でも・・オレの大きめの服着てる蘭って、なんかカワイイ。
「新一?どうしたの?私・・どこか変?」
何も言わずに蘭を見てた・・イヤ、見とれてたオレを不安そうに見ながら言った。
「いや・・それより、中に入ってみろよ」
「え?」
「いいから」
キョトンとしてる蘭の手をひいて部屋の中に入った。


*****


(!!)

新一に手を引かれて中に入ってみると、暗い部屋の中がいくつかのキャンドルの優しい光に揺れていた。
その中でツリーのライトがついたり消えたりしてる・・・
「すごい・・・きれい。もしかしてこれ・・新一がしたの?」
「あー。今日クリスマスらしいことしてなかったからな・・・。オメーこういうの好きだろ?」
「うん!!ありがとう新一。わたし、一生忘れない・・・」
「一生って大げさだな・・・」
「大げさでもいいの♪」
少し呆れたふうに笑ってる新一に笑顔で言った。
忘れないよ。こんなにステキなクリスマス。
「そっか」
新一も優しく微笑いながらわたしを見てる。
こういう新一との空気・・
好きだな・・・


「きれいだね」
「あぁ」

2人でソファーに座って、何をしゃべるわけでもなく優しい光に揺れてる部屋の中を見つめてた。
静かであったかい空気が心地いい・・・
新一とこんなふうに過ごすの何年ぶりだろ・・
「ねぇ 新一、昔もこういうふうに2人で一緒にいたことあったよね・・覚えてる?」
「オメーがおじさんと喧嘩して 泣きながらオレん家に来たときのことか?」
「うん。あの時も、こうやってずっと一緒にいたよね」
「・・・そうだったな」

クス・・・

「どうしたんだよ?」
急に笑い出した私を不思議そうに見てる新一に
「あの時、お父さんが迎えに来てくれたのに、私 新一にしがみついて帰らなかったなぁって思って・・」
「あー、あん時オメー意地でも帰ろうとしなかったもんなぁ。オレの親がオメーのおじさん必死に説得してさ・・・
 おかげでオレは一晩中、オメーにつき合わされたんだぜ」
新一がイタズラっぽく、わたしを見ながら笑った。
「だって・・新一のそばにいたかったんだもん・・・」
「え?」
予想外だったわたしの言葉に驚いてる新一に続けた。
ゆっくり、あの時の気持ちを思い出しながら・・・
「すごく泣きたい時とか、悲しいコトがあるとね、いつも、一番最初に新一の顔が浮かぶの・・・
 会いたいって思うの。そしたら、身体が勝手に新一の所に向かって走ってた・・・」
お父さんと喧嘩して、寂しくて寂しくて・・どうしようもなかったあの時・・・

ジワ・・

あれ・・変なの・・あの時の自分を思い出したら涙が溢れてきて、目の前がゆがむ。
「蘭?」
急に涙ぐんでるわたしを見つめる新一と目が合った。
バカ・・
こんなことで泣いてたら、また新一にバカにされちゃうよ・・・
「アハ・・ごめん。なんでもないの・・・ ちょっと思い出したら・・」
照れ笑いしてると
わたしの涙を溜めた瞳に、新一がそっとkissをした。

ーーーー!?

「しん・・いち?」
優しい目でわたしを見つめながらそっと言った。
「オメーのそばにいるよ。何があっても、ずっと」
「ずっと・・・?」
「あぁ」

新一・・・

光の中 お互い言葉もなく
ただ、自然に引かれ合うように唇を重ねた・・・
わたしを包み込む新一の優しさが、身体中に伝わってくる。


*****


あったかくて、心地いい新一の腕の中に抱きしめられて・・・少したった頃。

「・・・蘭、もう寝よう」
「え?」
「もう遅いし・・明日は出かけるしさ」
「・・うん」
寝るって普通に寝るってコトだよね・・・
でも、わたしどこで寝るのかな???
もしかして・・

『・・・・・』

ば・・ばか!!何考えてんのよ。思わず1人で赤面・・・

2人で2階に上がり、新一が1つの部屋のドアを開けて電気をつけた。
「ここ使って」
「あ・・うん。ありがと」
そこは新一の隣の部屋だった。
そうだよね・・・
「それじゃあ おやすみ」
「・・おやすみ」

パタン

新一の部屋のドアが閉まる音を聞いて、なんだか突き放された気がした。
それに、新一の態度が急に素っ気なくなった気がしたのは思い過ごしかな・・・
・・・胸の奥が少し重たい・・・
私・・・期待してた?
もう一度、新一に・・
でも、あの時 怖くて拒んだのは私だし・・
こうなって少しホッとしてる気持ちもやっぱりある・・・
でも・・・


*****


はぁーーーーーー

部屋に戻って、ベッドに倒れ込みながらため息がこぼれた。
・・・たくっ。何やってんだよオレは・・

蘭・・・

寝返りを打って天井を見つめる。
あれ以上 蘭と一緒にいたら、絶対もう自分を止めれねー
情けねーなぁ・・・
蘭には待てるって言ったのに・・・
触れたら全部が欲しくなる・・・
でも、戸惑ってる蘭を無理矢理 自分のモノにするのは絶対に出来ねー・・・
オレを怯えたように見つめる蘭の顔が頭をよぎる。
待つしかねーよな・・

「・・・・・」

でも・・・
気持ちと身体が反比例する。
はぁーーー。
寝れるかな、今夜・・・


*****


降り続ける雪をベッドに座って眺めてた。
ずっと楽しみにしてた新一と過ごすクリスマス・・・
新一とのkissは・・好き・・
抱きしめてくれる腕も・・・
それなのにわたし・・あの時、拒んだ・・
でも、どこかで期待してて・・・

キラッ

窓ガラスに新一からもらったペンダントが、スタンドの光に反射して光った。
あっ・・・
そっと首元のペンダントに触れてみる・・・
このまま・・このままでいいのかな
新一は待ってくれるって言ったけど・・・
わたしは、どうしたいんだろ・・・

ガチャ

部屋の窓を開けると、雪混じりの冷たい風が身体に触れる・・・
真っ暗な空から舞い散る綿雪・・・
静かで冷たい空気が、迷いを少しずつ消していってくれるみたい・・・
ずっと会いたかった新一
会いたくて そばにいて欲しくて・・・

「一緒にいたい」

新一のそばにいたい・・


*****


ドキドキドキ

新一の部屋の前にたって数分が経とうとしてる。
ど・・どうしよう
ここにきて気持ちが怖じ気つく・・・
わたしからこんなコトしたら
新一・・変に思うかな・・・
でも、このまま部屋に戻るのもヤダ・・・

ーーーよし!!

勇気を出してドアをノックしようとしたとき

ガチャ

(ビクッ!!)

新一の部屋のドアが開いた。
「うわっ・・蘭?何やってんだよ・・こんなとこで」
かなり驚いてわたしを見てる新一に
「え・・・別に・・。新一こそどうしたの・・・?」
違う・・誤魔化してどうすんのよ!
こんなコトが言いたいんじゃない・・・
「オメーの部屋のドアが開く音したから、気になってさ・・・」

「・・・・・」

「蘭?どうした?」
うつむいたまま上を向かないわたしを気遣うように聞いてきた。

「・・・・たい・・」
「え?」
「わたし・・新一と・・・」
今度は真っ直ぐ新一を見つめて言った。
「新一と、一緒にいたい」

「・・・・・」

新一は何も言わない。
ただ、何かを思い詰めるように眉をひそめてたけど・・次の瞬間

グイッ!!

わたしの腕を引き寄せ強く抱きしめた。
「オメー・・自分が言ってる意味分かってんのかよ・・・。今度は 途中でイヤだって言ったってオレは・・・」
「・・・うん」
新一の腕の中で小さくうなずいた・・・
分かってる・・・こんどこそ新一と・・・
あれ??
決心したはずなのに・・・
身体は正直で、かすかに震えてる。
そんなわたしに気づいた新一が、クスって微笑った。
しょうがねーなぁって感じで・・・
「無理することねーよ・・・」

え・・?

「怖いんだろ?オレは、オメーの決心がつくまで待てるぜ・・・。オメーの為なら・・・」
新一・・・
胸の奥がフワっとあったかくなる。
そっと、新一の背中に腕を回してギュッと抱きついた。
「蘭?」
もう逃げない・・・新一とならきっと後悔しない。
素直にそう思えるから・・・
「新一とならいいよ・・・怖いけど・・でも・・新一と・・」
「・・・蘭。おいで」
わたしの身体をそっと離して、手をひいて部屋の中に入れた。

「本当にいいんだな・・・?」

コクン・・・

小さくうなずいた。
私の耳元にそっと触れる新一の指が、くすぐったい・・・
「蘭・・」
ゆっくり上を向くと、わたしを優しく見つめる新一がいる。
そっと、唇に触れる新一とのkissがあったかい・・・
「蘭・・好きだ」
「しん・・いち」

もう一度、強く唇を重ね 強く抱きしめた。
痛いくらい・・
新一・・・

トサッ

ベッドに倒れ込んで見つめ合う視線・・・
そっと おでこ・・まぶた・・頬にkiss
そして、きつく唇をふさいだ・・・

熱い・・・

新一の触れる指先が・・・
重なり合う鼓動に身体が熱くなる・・・
新一の首にしがみついて 零れ出す吐息を必死に耐える・・・
大好きな人の体温を、こんなに近くに感じることが
こんなに幸せだなんて知らなかった・・・
離れたくない・・
もっと、もっと新一を近くに感じてたい・・・
「しんいち・・大好き・・」
かすかに震えてるわたしの手を、強く握りしめてくれる新一の手を握り返す。

後悔なんてしない・・・

怖さも、全て包み込んでくれる新一の腕の中・・・
時が止まればいいと思った・・・


*****


チュンチュンチュン

「ん・・・・」

ドキ!!

かすかに聞こえてくる小鳥の鳴き声に目を覚ました瞬間、心臓が飛び跳ねる。
「おはよう」
「オハヨ・・」
だって、目の前に新一の顔があるんだもん・・
それに抱きしめられてる・・・

ボボボッ・・・

なんだか恥ずかしくて、新一の顔が見れないよ・・・
わたし、とうとう新一と・・・
思い出したらまたまた顔が熱くなる。
新一の胸に顔をうずめるようにうつむいてると
「? 何やってんだよ?」
「だ・・だって なんだか恥ずかしいんだもん・・・」
「クスッ かわいいヤツ」
え・・・ 新一のそんな言葉でさらにボボボッ。
な・・なにバカなこと言ってんのよ〜〜
「オメーなぁ・・そんなに照れてると、こっちまで・・・」
困ったように言う新一を見ると、わたしにつられてか少し顔が赤くなってる・・・

クスッ

そんな新一を見て思わず笑っちゃった。
「何だよ・・・」
「ううん・・」
同じなんだ、新一も・・・
クスクス笑ってると、わたしのおでこに

チュッv

軽くkiss。
「え・・?なに?」
突然の出来事に驚いてる私をイタズラっぽくみながら
「笑うの止めねーんなら、もっとする・・・」
「え・・もっとって・・」
「こういうこと」
そう言って、唇にkiss
不意うちのキスに頬が熱くなる。 
新一は、そんなわたしを見てクスクス笑ってる。
あ・・遊ばれてる・・
わたしの反応をみて楽しんでるんだ・・

「わかった。もう笑わないです・・」
「笑わねーの?」
「うん」
きっぱり答えたわたしを見て、困ったなぁーって感じで
「でも蘭・・・オレ止めれそうにねー」
「え?」
「もう1回しようか?」
「えっーーーー!?」
新一の思いがけないセリフに、ドギマギしてるうちにわたしの上に覆いかぶさっていた。
「ちょ・・ちょっと待って・・今から?」
「あぁ」
あぁ・・・って、そんなあっさりと・・・
「ダメ。ダメだよ・・・」
変に落ち着いてる新一だけど、わたしはもう心臓 破裂寸前までドキドキいってるんだよ・・・
キスをしてこようとしてくる新一を必死に止めながら
「ほ・・ほら、今日出かけるし・・ もう用意しなきゃ・・」
「もう少し後でも大丈夫だよ」
「でも・・・」
ど・・どうしよう
少し強引な新一に困ってオドオドしてるわたしを見て
「クスッ  じゃあkissだけならいいだろ?」
「う・・うん」
キスだけなら・・・

新一の腕がわたしの背中をそっと抱き寄せた。

え・・・?
ちょっ・・ちょっと待って・・・

新一の腕の中から必死に逃れようとするけど、抱きしめられてて身動きがとれない・・・
「んっ・・しん・・いち・・」
「なに?」
ようやく自由になった唇から吐息が零れる・・・
「キス・・だけだよね?」
「あー、そうだよ」
そう言って、もう一度kiss
うそつきーーーー

「vvvvv」



fin





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