GOOD LUCK!〜今年最後の男達の戦い〜(事件編)



By トモ様



11月の最後の日曜日の午後、毛利小五郎は事務所で暗号を解くのに必死になっていた。

「行け〜アメリカンボス!!」

小五郎が悩んだ末に導き出した暗号は5ー8だった。

『シンボリクリスエスが先頭に立ちましたが内からファルブラヴ、外からサラファンが伸びてきた!!ゴール前体制が変わった!!ファルブラヴだ!!』
「あ〜!!」
『2着にはサラファンです!!波乱です!!今年のジャパンカップは外国馬のワンツーとなりました!!馬連1ー8は万馬券です』
「クソーッ!!」

小五郎は外れ馬券をテレビに投げつけた。

(作者の実話だったりします・・・泣)

小五郎はよほど悔しかったのかスポーツ新聞の競馬欄を丸めて、ほうり投げる。
手元に残った新聞には彼を更に不機嫌にさせる記事が載っていた。

[帰ってきた高校生名探偵・工藤新一、またまた難事件を解決]

「あの小僧のせいで俺の勘が鈍ったんだ!!」

完全な八つ当たりである。

「おじさーん、蘭いますか?」

最高のタイミングの悪さで工藤新一は事務所を訪れたと言えるだろう。
小五郎は不機嫌そうに新一を睨む。

「オメーみたいな奴は蘭には会わさん!!帰れ帰れ」

犬を追っ払う様に扱われる新一。

「でっでも蘭と約束が・・・」

困った表情の新一。

小五郎はしばらく新一を睨んでいたが何かを思い付いたのかニヤっと笑った。

「おい!蘭との交際を俺に認めてもらいたいか?」
「・・・ハア」

小五郎の真意が読めない新一は取り敢えず生返事をする。

「だったら俺と、ある暗号をどっちが先に解けるか対決をして勝ったら交際を認めてやっても良いぞ」

思いもかけない小五郎の提案に新一は、一瞬驚いたが次の瞬間には不敵な笑みを浮かべた。

(おっちゃんが俺にそんな対決を挑んで勝てる訳ないじゃん♪)

「・・・良いんですか?俺とそんな対決をしても」
「男に二言はねーよ」

(なんだ?おっちゃんの余裕の表情は・・・)

「・・・受けましょう」

新一は少し怪しく思ったが蘭との交際をこの頑固親父に認めさせる絶好のチャンスを逃せず了承した。

「よし!対決の日は12月22日だ・・・これは参考資料だ。ハンデとしてお前にくれてやる」

新一は小五郎から受け取った本を見て固まった。

「・・・月刊ギャラップ・・・有馬記念特集?」
「そうだ、お前には俺と有馬記念で1着と2着に来る馬番の数字の暗号を当てる対決をするんだよ」

新一はしまったと後悔したが時すでに遅し。
小五郎と蘭を賭けての有馬記念馬券当て対決をさせられるハメになってしまった。



  ☆☆☆



「新一がお父さんと何か推理対決をするみたいなんだけど二人とも何の勝負なのか教えてくれないのよ」

新一と小五郎に賭けの対象にされているとは、夢にも思ってない毛利蘭は大阪の友人の遠山和葉の電話で相談していた。

『ほな、アタシが工藤君に探りを入れる様に平次にゆーとくわ』

電話を終えた蘭の耳に小五郎の高笑いが聞こえてきた。

「ワーハハハハハ・・・あの小僧をギャフンと言わせてやる!!」

(一体、何の対決をするのよ?)

いくら考えても蘭には判らなかった。



  ☆☆☆



「なんやて〜!!おっちゃんと馬券対決をするやと!!」

和葉の命を受け、はるばる大阪から新一に探りを入れに来た服部平次は新一に内容を聞き仰天した。

(そら姉ちゃんに理由をゆわれへんわな・・・)

「馬券対決に蘭を賭けの対象にしたって知れれば殺されちまうよ・・・」

新一は自分の浅はかさに頭を抱えた。

「おもろいやん!俺にも協力させてーな」

しょせんは人の賭けなので平次は楽しそうだ。

「オメー競馬わかんのかよ?」
「アホ、しょせん東京は大阪には勝てへんねや。特に競馬は西高東低やし狙うのは関西馬やで!」
「関西馬で人気が一番ありそうなのはファインモーションだな」
「甘いで工藤!過去10年、有馬記念で牝馬が連に絡んだんは一頭だけやで・・・あのエアグルーヴでさえ沈んだんやからな」
「服部・・・くっ詳しいんだな」
「今年の3歳は小粒やからヒシミラクルはアカン、ジャングルポケットは前走で中山は不向きやと判ったからアカン、ナリタトップロードは冬の中山馬場では論外やし・・・」

平次はブツブツ言いながら関西馬の人気がある馬をどんどん消していく。

「そんなに消したら買えそうな馬残らねーぞ?」

新一が心配そうに服部に文句を言う。
東西の高校生名探偵が揃ってもなかなかこの暗号は解けそうになかった。

「今年の有馬は荒れるで〜」

馬券検討に夢中になってる平次には、もはや和葉に頼まれた事など完全に頭から忘れ去っているのだった。



〜推理編に続く〜




 推理編に続く。