GOOD LUCK!〜今年最後の男達の戦い〜(解決編)
〜有馬記念当日〜
蘭は今日、新一と小五郎が何の対決をするのか後を付けようと思っていたが目覚めると既に小五郎は出掛けた後だった。
「蘭ちゃん、平次にも工藤君にも電話したけど出てくれへん」
電話していた和葉が蘭の側にやってきた。
「お父さんの後を付けようと思ってたのに」
まさか小五郎達が早朝から出掛けるとは予想外だった。
「あら、どうしたの?」
振り向くと母の妃英理がいた。
「・・・なるほどね」
蘭から事情を聞いた英理は、しばらく何かを考えていたようだったが、やがてニヤっと笑った。
「・・・じゃあ行きましょうか」
「え?お母さん、新一達が何処に居るか知っているの?」
「あの人の考えそうな事ぐらい解るわよ・・・無謀にも新一君に推理対決を挑んでいながら余裕の表情で対決の日が今日とくれば、あの人の性格を考えたら行き先はあそこしかないわ」
英理は自信たっぷりに言い放った。
☆☆☆
〜中山競馬場〜
小五郎、新一、平次は早朝からやってきてゴール前、正面の席を陣取っていた。
「いいな、勝負は1万円で馬連を購入して回収額の多かった方が勝ちだ」
小五郎はルールを再確認させると新一のマークシートを受け取った。
なんせ新一も平次も学生の為、馬券を購入出来ないので小五郎が新一の分も買いに行くしかない。
「ヒシミラクルだぁ・・・菊花賞はフロックじゃねーのか?」
新一の買い目を見てヒシミラクル本命と知り怪訝な表情をする小五郎。
「おじさんこそノーリーズンから流すなんて・・・確かブライアンズタイムってナリタブライアンやシルクジャスティスに代表される様に一度スランプに入るとなかなか勝てなくなるのが特徴じゃないですか」
自信たっぷりに不敵な笑みを浮かべる新一。
(コイツ、初心者だと思っていたのに・・・一ヶ月の間にかなり競馬を覚えやがったな)
小五郎は楽勝だと思っていたのに新一の自信満々の顔を見て、狼狽した。
「ふん・・・しかしサッカーボーイだって、自身も有馬で惨敗したし3年間のナリタの成績を見ても冬の中山馬場が合わないのは一目瞭然じゃねーか」
小五郎は新一に言い返して馬券を買いに行った。
「確かに、おっちゃんの意見にも一理あるんとちゃうか」
「大丈夫だって、真実はいつもひとつさ」
心配そうな平次にも自信の表情を崩さない新一。
「せやけど昨日の雨で先週の冬至ステークスとは全然ちゃう馬場になってんのとちゃうか?ここはグッドラックハンデが終わるまで様子を見た方がええと思うで」
「大丈夫だって・・・(汗)」
新一の自信に少しずつ綻びが現れてきている様だ。
新一にとって重要なレースである有馬記念と同条件のレースであるグッドラックハンデが終わってみると更に自信が無くなってきた。
「・・・シンボリルドルフ負けよったやないかい」
先週の馬場の傾向通りならヘドロ系のルドルフ産駒が勝っていた筈だが結果は惨敗。
「・・・だけど沢山いたターントゥ系も全滅したからまだ俺達の方が有利だよ」
「せやけど連対馬の血統がビワハヤヒデにカコイシーズやったら系統が似ているシンボリクリスエス、イーグルカフェ、タップダンスシチーが良いんとちゃうか?」
「・・・だっ大丈夫だって」
平次の正論に、もはや新一の自信は消え去りそうだった。
☆☆☆
いよいよ有馬記念のゲートインが完了する。
(神様、どうか俺に勝たしてください・・・でもってクリスマスは蘭と一緒に甘い一時を)
さっさと馬券を買った事を後悔しても後の祭・・・自信喪失した新一はもはや神頼みしている。
(この勝負に勝てばまた俺様の時代がやってくる筈だ)
どこからこんな自信が涌いてくるのか小五郎は余裕の表情だ。
新一に勝ったら警視庁などに眠りの小五郎健在と吹き回る予定みたいだが高校生相手に馬券対決したとモラルを問われる事に気づいていない小五郎。
いよいよ有馬記念がスタートした。
「頑張れ〜ヒシミラクル!!」
「いけ〜ノーリーズン」
三人は夢中でそれぞれの本命馬に声援を送っていた。
☆☆☆
最終レースも終わり観客は家路に付き始めている中、小五郎と新一は真っ白に燃え尽きていた。
「だからギリギリまで買うん待てってゆーたのに」
平次は横で燃え尽きている新一に呆れていた。
「・・・はっ・・・引き分けの場合はどうするんですか?おじさん」
正気に戻った新一が二人とも負けた場合を想定していなかった事に気づいた。
「・・・こうなったら今年最後のGIレースの東京大賞典で勝負だ!!」
小五郎は再戦を要求した。
「やっぱりこんな事だろうと思ったわ」
三人の後ろから冷たい声が聞こえてきた。
恐る恐る振り返ってみると予想通り英理、蘭、和葉が睨んでいた。
「高校生と馬券勝負なんて最低だと思わないの!!」
英理に詰め寄られ小さくなる小五郎。
「いや・・・新一の奴が有馬記念で馬券対決して勝ったら蘭との交際を認めてくれって言うもんだから」
「なっ・・・おじさん!!」
必死に言い訳している小五郎が新一に責任を押し付けている。
しかも蘭を賭けの対象にしているのをバラしてしまった。
「平次はそれを知っとって楽しんでいたワケやな」
蘭と和葉がゆっくりと新一と平次に近づいてきた。
「まったく!!お父さんに乗せられて馬鹿な勝負して」
怒っている蘭達の後ろには傷だらけの男達がいる。
「あなたには、もう少し反省してもらわないといけない様ね」
英理はそう言って小五郎の耳を引っ張って連れていく。
「イテテテテ・・・おい、オメーら」
小五郎は新一と平次に向けて親指を立てた。
「GOOD LUCK!」
「何、馬鹿な事をしているの!!」
英理は小五郎の耳を更に強く引っ張ってエスカレーターを降りていった。
新一と平次は顔を見合わすと苦笑して小五郎が連れて行かれた方向に向かって親指を立てた。
「「GOOD LUCK!」」
−完ー
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