3姉妹探偵団+α



byトモ様



〜プロローグ〜



高木ワタルは恋人の佐藤美和子を抱きしめて幸せに浸っていた。
高木の胸に顔をうずめていた美和子が顔を上げて高木と目が合うとニッコリと微笑む。

「・・・私ね、ワタル君に黙っていた事があるの」
「なにをですか?」
「実は私・・・人間じゃないの」
「へ?」

美和子の突然の告白に高木は思わず間抜けな声をだしていた。

「私の本当の正体は・・・吸血鬼美和」
「ハハハ・・・なっ何を言ってるんですか、美和子さん」

高木は引きつった笑みを浮かべて美和子を見たが動きが止まった。
美和子の口の両端には鋭い牙があり、背中には黒い翼が見えた。

「今まで黙っててゴメンね。でも・・・もう我慢ができない・・・あなたの血が欲しいの」

美和子・・・いや、吸血鬼美和は高木の首筋に顔を近づけて、ゆっくりと口を開いた。
高木は逃げようとしたが何故か体が動かない。
美和は高木の首筋に口を這わせると、一気に噛みついた・・・ところで高木は目覚めた。

「ハアハア・・・夢か」

と、目覚めた高木は夢だった事に安堵したが、その瞬間、高木の首筋に痛みが走った。

「イタタタタ・・・ちょっちょっと美和子さん!」

隣で寝ていた美和子が、寝ぼけて高木の首筋に噛みついていたのだった。



  ☆☆☆



「ゴメンね〜ワタル君」

美和子は済まなそうに両手を合わせて高木に謝っていた。
今日は美和子は非番だったので前日から高木の家に泊まりに来ていた。

「いえ、大丈夫ですから」

そう言って高木は美和子が作ってくれた朝食に口を運んだ。

「でも・・・問題よね、その首筋」

高木の首筋にはキスマークと言うより美和子の歯型がくっきりと残っていた。

「大丈夫ですよ。バンソウコウを貼って誤魔化しますから」

美和子は非番だが高木は仕事なのでそろそろ出掛けなければならない。

「じゃあ私は、ワタル君の部屋でも掃除して昼頃にでも帰るから」

高木を玄関まで見送りに来た美和子は、そう言って高木と軽く口付けを交わすと高木を送り出した。

「フフ・・・何だか新婚さんになった気分だわ♪」

美和子は、そう言って顔を赤らめると満面の笑みを浮かべて部屋に戻って行った。



  ☆☆☆



捜査一課にやって来た高木だったが大した事件もなかったので机に座ってボーっとしていた。
暇なのでつい、昨日の美和子との一時を思い出して一人でニヤニヤしていた。
暇だから良いかと考えていた高木だったが、白鳥警部はそうは考えてくれないようだった。

「高木君!」

白鳥は高木をジロリと睨むと彼を呼んだ。

「はっはい!」

ニヤニヤと妄想にふけっていた高木は我にかえって、あわてて白鳥の席に向う。

「何か御用ですか?」
「暇そうだね」

最近、高木が刑事として一皮剥けてきたのは白鳥も承知しているが、ねぎらいの言葉があまり出てこないのは上司としての特性なのか、たんに美和子との事が面白くないのかどちらかだろう。

「この資料をよく読んでおいてくれたまえ」

と、白鳥は机の上に封筒を置いた。

「何かの事件の資料ですか?」
「良い質問だね」

白鳥はニヤっと笑う。

「僕が君に高校の入学案内のパンフレットでも渡すと思うかい?」
「・・・いっいえ」
「じゃあ、それをよく読んで検討しておいてくれ」
「はい」
「今日はもう帰っていいよ」

高木は耳を疑った。

「えっ・・・今、何て?」
「今日は自宅でその資料を検討しときたまえ」
「分かりました!」

高木は急に元気になった。
帰って良いなら今日も美和子とゆっくり過ごせる。
嬉々しながら帰り支度を始めた高木に一課にフラリとやって来た宮本由美から声が掛かる。

「高木君、その首筋のバンソウコウはどうしたの?」
「あっ!由美さん・・・いえ、ちょっと寝違えて・・・」

歯切れの悪い高木に対して、由美はジト目になると高木の隙をつきバンソウコウを剥がした。

「あー!!何するんですか由美さん」

真っ赤になって由美に抗議する高木に対して、由美は高木の首筋の歯型付きキスマークを見て唖然としていた。

「美和子って意外と激しいみたいね」
「違います!これは寝ぼけた美和子さんが僕に噛みついたんです!!・・・あっ」

由美の誤解に反論した高木だったが自分の爆弾発言に気づき周りを見ると、一課は殺気に満ちていた。

「・・・高木君」

殺気を放っている代表格の白鳥が高木を呼ぶ。
白鳥は自分の席で怒りで体を震わせている。

「さっさと帰りたまえ!!」

白鳥に怒鳴られた高木は逃げるように一課を後にした。



  ☆☆☆



「あらワタル君、どうしたの?」

高木が家に帰ると美和子はまだ居て寝そべってテレビを観ていた。

「白鳥警部に家に帰って、この資料を検討しておけって言われたんですよ」

高木は嬉しそうに美和子に資料の入った封筒を見せたが、美和子に笑みはなかった。

「家に帰って資料を検討しとけって・・・もしかして遠まわしな辞職勧告なんじゃないの?」
「まさか、ハハハ・・・」

高木は笑ってみたが、美和子は真剣な表情のままだ。
いくら不景気だからって警視庁が自員整理に乗り出すのだろうか?しかも自分がその対象になるなんて・・・と、高木は最近の自分の仕事振りを思い返す。

護送中の被疑者を死なせてしまった。
警察手帳を紛失して仮病を使う。
勝手に他府県の事件を追いかけ、おまけに撃たれて負傷してしまう。

・・・ありうるかもしれない。
高木の気分は重くなった。

「とにかく、その資料を見てみましょうよ」

美和子に言われ、高木は恐る恐る封筒の封を切り始めた。

(まさか中身は毛利探偵事務所の入社案内じゃないよな?)

高木は以前、毛利小五郎に首になったら俺の助手にしてやると言われた事を思い出して、一抹の不安を感じた。
思いきって封を開けてみて中に入っていたのは・・・私立M学園入学案内・・・高校の入学案内のパンフレットだった。

「どうなっているんだ?」

高木も美和子も封筒の中身に目を丸くした。

「白鳥君、渡す資料を間違えたんじゃないの?」

二人が中身に困惑していると、高木の部屋の呼び鈴が鳴った。
高木が玄関を開けてみると、

「なんだ、まだ準備しておらんのかね?」

目暮警部と工藤新一が立っていた。
高木の頭はますます混乱した。



to be countinued…….




 〜第一章・江戸川コナン症候群〜に続く。