3姉妹探偵団+α



byトモ様



〜第二章・3姉妹登場〜



ああ、今日はツイてない・・・と、佐々本家の長女の佐々本綾子は思った。
思えば朝からロクな事がなかった。
寝坊して大学の講義に遅刻するし、昼食は財布を忘れて食べられなかった。
そして現在は2人のガラの悪い男に取り囲まれていた。

(お腹が空いてて早く帰りたいからって普段通らない路地裏の近道を通ったのは失敗だったわ)

綾子は後悔したが、それで目の前の男達が消えてくれる訳ではない。

「姉ちゃん、ここを通りたかったら通行料1万円を払っていきな」

男の一人がニヤニヤ笑いながら綾子に話しかける。
綾子が困惑しているともう一人が話しかける。

「なんなら体で払ってくれてもいいんだぜ」

男達はイヤらしい顔で綾子の体を見つめている。

(あれ?このセリフ何処かで聞いたような・・・そうだわ、先週観たドラマで・・・)

「あのー・・・先週テレビに出ませんでしたか?嫌なヤクザ屋さんの役で」

綾子の言葉に2人組は、しばらく唖然としていたが、やがて顔を真っ赤にして怒り出した。

「この女!馬鹿にしてんのか!!」

男は怒って綾子の手を掴んだ。

「おい!そこで何をしてるんだ!!」

綾子の後ろから急に男の声が聞こえた。

「なんだぁ、テメーは!」

2人組の怒声に男は怯まずに胸元から警察手帳を取り出した。

「恐喝と婦女暴行未遂で連行されたいかい?」
「ヤベェ!サツだ!!」

2人組は男が刑事だと分かると慌てて逃げ出した。

「全く・・・君、大丈夫かい?」
「・・・・・」
「・・・?君、どうしたんだい?」
「・・・え・・・あっはい・・・大丈夫です」
「そうか・・・この辺りはガラの悪い連中が多いから気をつけなよ」

男は綾子に向って微笑んだ。

「高木さーん、被疑者の隠れ家を発見しました!」

通りの向こうから助けてくれた刑事の同僚らしき人物が走ってきた。

「そうか・・・よし千葉、行くぞ!」
「あの・・・」
「ん、ああ・・・気を付けて帰りなよ」

男はやって来た刑事と共に走り去って行った。

「・・・見つけた。私の王子様」

綾子はウットリと走り去って行く男の背中を見つめていた。



  ☆☆☆



(ハァ・・・あれから3ヶ月・・・私の王子様とは、いつ再会できるのかしら)

「ちょっと聞いてるの?お姉ちゃん!」

物思いにふけっていた綾子だったが佐々本家の三女、佐々本珠美の言葉で我に返った。

「全く、パパが出張中だと絶対に何か起こるんだから」

珠美は文句を言って佐々本家の次女の佐々本夕里子の方を向いた。

「ちょっと珠美!何よその目は?」
「・・・別に・・・いっつも何か起こる時の中心に、お姉ちゃんがいるなんて思ってないわよ」

口では否定している珠美だが目で肯定している珠美だった。
21歳の綾子を筆頭に18歳の夕里子、15歳の珠美の三人姉妹は、ある事件で知り合ったM署の刑事の国友と共に自宅で夕食の最中だった。
佐々本家の所帯主で3姉妹の父親である佐々本周平は例によって海外出張中だ。
3人の母親は七年前に他界して、以後、父と3人の娘とで暮らして来た。
当然、長女である綾子が母親代わりというのが普通だが、人並外れて気が弱く、おっとりとした性格の綾子にはとても無理な役目だった。
そこで人並外れてしっかり者の次女、夕里子が、一家の主婦役を立派につとめていた。
ただ、経済的側面だけは、先天的ケチである三女、珠美が頑張っている。

「まあまあ、二人とも落ち着いて」

夕里子と珠美の間に入った国友、実は彼と夕里子は事件で知り合った後、友達以上恋人未満の時を経て、現在は恋人関係になっていた。

「だって国友さん、珠美の奴、今回の事は私の所為だと言っているのよ」
「そこまでは言ってないでしょう」
「だいたいウチの高校の生徒が自殺したからって私の所為にされたら、堪らないわよ」
「あ・・・その事なんだけどね」

国友は言いにくそうな感じでチラッと夕里子を見た。
問題は三度のメシより事件に首を突っ込む事が大好きな夕里子だ。
もし、夕里子がホームズの世界に存在していたらワトスンを追い出してホームズの助手に無理矢理なっていただろう。
そんな夕里子に、この情報を教えたら喜んで介入する事は目に見えているので国友は躊躇していた。

「急に口篭もってどうしたのよ国友さん」

国友は迷ったが結局、話す事にした。
どうせ明日になれば分かる事だし、何だかんだ言っても国友は夕里子に甘いのだ。

「・・・えー!!工藤新一が明日、ウチの高校に来るですって!!」

これには夕里子ばかりか珠美も驚いた。

「工藤新一って、あの有名な高校生探偵の工藤新一なの?国友さん」
「あ・・・ああ・・・そうだよ」

珠美の迫力に押されながら何とか答える国友。
夕里子の知る限り、工藤新一は推理力、ルックス、どれを取っても最高の探偵だ。
ただ、いつもクールで気障に決めていた彼がイメージチェンジを狙っているのか最近ブリッコに時々なるのが少し気になる夕里子だが、それでも彼が優秀な探偵である事には変わりはない。

「工藤新一って言ったら父親は有名な推理小説家で母親は伝説の女優という、バリバリのサラブレッドじゃない・・・お姉ちゃん、玉の輿狙ったら?」
「何言ってんのよ珠美。私には既に素敵なサラブレットがいるのよ」

夕里子は、そう言って国友の頬にキスをした。

「ハイハイ、ごちそーさま」

珠美は呆れて二人を見た。

「でも、工藤新一が来るってことは、もしかして自殺じゃなかったって事なの?」
「いや、間違いなく自殺だよ」
「じゃあどうして?」
「ああ、実は・・・」

国友は昼間の事を話し始めた。




「理事として我が校の教師や生徒を信じたい気持ちは強いのですが、亡くなった女性徒は妊娠していたという事実があるんです」

町田理事は教育者として自分の学校に売春組織が存在するなんて信じたくないのだろう。

「・・・亡くなった女性徒の為にも真実を明らかにしないといけないと思い、親友の松本を通じて工藤君、君に調査を依頼したという訳だよ」
「なるほど・・・事情は分かりました。僕にM学園の生徒になって事件の真相を調べて欲しいという事ですね」
「さすが、察しがいいね。生徒の中に売春組織の関係者がいるなら同じ高校生の君が生徒となって調べるのが都合が良いからね」
「しかし警部、工藤君は有名過ぎて売春組織が校内に居るとしたら警戒心を与えませんか?」

たしかに新一はメジャー過ぎて、その存在は目立ちまくるだろう。
高木の疑問は最もだった。

「なあに、それはそれで売春組織は工藤君の存在に焦って、何かアクションを起こそうとする筈さ」
「それもそうですね・・・ところで僕はどうするんですか?」
「高木君、君には事務員としてM学園に入ってもらう。工藤君と協力して調査にあたってくれたまえ」
「分かりました」
「後、M署の国友刑事を補佐として付けるから彼とも協力してくれ」




「・・・という訳なんだよ」
「じゃあ、ウチの学校に売春組織が存在するかもしれないって事?」
「ああ・・・頼むから危険な事に首を突っ込まないでくれよ」

国友は無駄だと思いながらも一応、夕里子に忠告する。

「分かっているわよ、心配性なんだから」

もちろん夕里子は分かっていなかった。
あわよくば工藤新一に近づき捜査に加わろうと決意していた。



to be countinued…….




〜第一章・江戸川コナン症候群〜に戻る。  第三章に続く。