黒衣の騎士は姫君の為に・・・



By 月白奈哉様



前編



今から、18年前の5月4日の日、工藤帝国で、一人の男の子が生まれた。彼は、将来この工藤帝国を、しょってたつ身。つまり、皇子だ。皇子の姿を見た国民達は口々に言った。

「国王様にそっくりだ。これは、将来が楽しみだなぁ。」

と。その国王とは、若干20歳にして王座についた、工藤優作。そして、すぐのちの工藤帝国国王になる一人息子、“新一”が生まれた。

時は同じく18年前。毛利王国では、新一皇子より、少し後に女の子が生まれた。彼女は毛利王国の一人娘となった王女だ。彼女の名は“蘭”と言う。
此処の国王も若干20歳にして、王座についた。彼の名は小五郎。妃は英理。美しい妃だった。









それから、17年の月日が経った。まだ生まれたばかりだった工藤帝国皇子もやっと王座を継げる年になり、優作似の格好良い青年になっていた。。しかし、肝心の皇子はと言うと・・・?

「新一ッいい加減にしなさいッ」

妃の有希子が木に向かって怒鳴る。新一皇子は、昼寝中だった。

「うっせぇな。」
「煩くて悪かったわね!だったら、ちゃんと勉強したらどうなの!?」

面倒くさそうな新一に言った。

「帝王学はもう良いだろ?薬草も教わったぜ?他に何を学べっつーんだよ?」

彼は、さすが皇子と言うか、一回で全てを飲み込む為、16歳の誕生日の次の日から、始めたというのにもう教える事が無い。
有希子は、ある事を思い出し言った。

「だったら、戦い方でも学びなさいよッ」
「戦い方ぁ?俺に騎士団に入れと?」
「そうよ!18歳の誕生日まで国を出て修業してきなさいッ」

実は物覚えの早かった歴代皇子(つまり、歴代国王)達は、全員妃に(母親)修業の旅に出されていた。

「優作だって行ったの。新ちゃんも行きなさい。」

強制的に旅に出される。歴代と同じように、黒衣をまとい、工藤帝国の王族の証の‘K’と入ったペンダントを持ち、隣国の毛利王国へと放たれた。(工藤帝国の正式な衣装は黒だった。)



  ☆☆☆



毛利王国の王女と言うと、新一と違い真面目に勉強していた。そして、美人な姫になっていた。結婚を申し込んで来る国は、後を絶たないが、蘭王女を溺愛している国王が全て断っていた。

「絶対に蘭はやらんッ」
「ですが、王女様がうちに来て下さったら、こちらと条約を結び帝国などから、毛利王国をお守りいたします。」
「断るッさぁ帰れ、帰れッテメーんとこじゃ、工藤帝国からは逃れらんねーよ。」

隣国なので強さが手に取るように分かる。優作が即位してから17年。工藤帝国は、ずっと戦争で負け無しなのだ。

「お父さん、いくら工藤帝国が凄いからって今のはひどいんじゃない?」
「そうね。貴方、言いすぎよ。」

英理も言った。

「本当の事だから、仕方ねーよ。あーあ。あそことなら条約結びてーなぁ。」

そりゃそうだ。工藤帝国は、この世界で一番大きく、権力もあるのだから。

「優作君は他の国とは、全然条約結ばないわよね。何故かしら?」
「俺が知るかよ。」









新一が旅立ってから、約1年後の18歳の誕生日・・・つまり、現代だ。

「お帰りなさいませ、皇子。」

新一は、世界中に知られる騎士になっていた。周りから、“黒衣の騎士”と呼ばれるようになっていた。しかし、正体は秘密のまま。知っているのは工藤帝国の城内の奴等のみ。

「只今。」

クールに言うと両親は、

「何か悔しいわね。泣き付いてくると思ったのに。あーあ残念ねー。」
「私は正体がバレてしまったのに。ここまで上手くやるとは。」

別の所で関心していた。
この1年間で新一には、好きな女の子が出来た。毛利王国の蘭王女である。

「これで良いだろ、父さん、母さん。」
「「あ、あぁ/え、えぇ」」

すたこらと自分の部屋へ戻ってしまった。

「(蘭、か。可愛かったよなぁ。)」

毛利王国に行った時に目にした、王女に一目惚れしたのだった。新一だって格好良いのだから、結婚を申し込んで来る国は多い。この1年間は特に凄かったが、優作が全て断っていた。どこと結婚しても、損するのは、工藤帝国なのだから。ましてや毛利王国となると、経済状況がヤバくなるのだ。しかし、新一の腕なら、それをも越す金が入るだろう。

「新一、入るぞ。」

優作がやって来た。

「んだよ?」
「毛利王国の姫様と結婚しないか?」

不機嫌そうな新一に、さらりと述べた。嫌だと言うかと思いきや考え込んでいた。今のが聞こえなかったのかと思い、もう一度言った。

「毛利王国の姫様と・・・」
「それは、うちの経済状況を悪化させるんじゃないか?条約結びは決まりだろうし。」

さらりと皇子らしい事を言う。

「嫌じゃないのか?」

逆に気になってしまう。いつもなら・・・

「別に。」
「(蘭君に惚れたな。)そうか、なら小五郎君に頼んでこよう。」

笑いながら言うと、やはり新一で。

「勝手に決めるな。」
「蘭君に惚れたよな、新一?」
「うっ・・・(/////)」

分かりやすい奴だ。

「なら、良いじゃないか?」
「・・・服部公国で喧嘩売ってきたんだよ、俺」

急に何を言いだすのかと思っていたら、

「そしたら、あそこの王子が『俺とお前で勝った方が、毛利王国の姫様の結婚相手に相応しい男を連れてくるちゅーんはどうか?俺んトコの隣の、王子毛利の姫様に気があるみたいなんや。どうや?』って言ってきてて、近いうちに毛利王国、攻め込まれるぜ。」
「そ、その賭けOKしたのか!?」
「してねぇよ。だが、断る前に行っちまったんだよ。」

可哀想な蘭様。

ドタドタタタタッ

「国王様ッ皇子様ッ大変ですッ」

かなり、慌てた様子だ。

「何だね?」
「も、毛利王国に服部公国が攻め込みました。如何致しますか?」
「ほらな。あいつだぜ。平次王子だ。」

面倒くさそうに言う。

「新一、用意しなさい。黒衣の騎士が毛利王国を守るんだ。」
「えー俺がぁ!?」
「取られても良いのかね?私は構わないが、君の結婚相手は勝手に決めさせてもらうよ。」

ひどかった。

「わーったよ。やるよ、やりゃぁ良いんだろ!ったく。」
「頼むよ。」

優作は部屋を出ていってしまう。

「おい、俺が陣頭指揮するが、“皇子”って呼ぶなよ?」
「で、では、何と・・・?」
「この格好の名だ。」

いつの間にか着替えおわっていた。

「き、騎士様で宜しいですか?」

軽く頷いた。

「では、他の者にも言ってきます。10分後には、行きますよ?」
「分かった。」



  ☆☆☆



20分後・・・


工藤帝国の青い集団は、毛利王国の城前に居た。服部公国を視線で、戦っていた。

「はぁー」

新一は、ずっとため息を尽きっぱなしだ。

「行くか。王室に。あちらさんが、動かないように足止めしとけよ?」

命令を下し、いざ王室へ。


王室では・・・

「姫様、平次王子が見えていますが、如何致します?」
「お通しして。」

スッと家来は下がり、平次が入ってきた。

「初めまして、やな。」
「何故我が国を攻め込むのですか?」
「えっ?」
「うちは何もしてないのに何で攻めてくるの・・・?」

泣きだしてしまった。

「や、そのなぁ・・・」
「姫様、大丈夫ですよ。姫様の大事なこの国は、我々工藤帝国がお守り致しますから。」
黒衣の騎士もとおい、新一皇子の登場だ。
「騎士様・・・?」
「野蛮な服部公国はうちの兵が追い返しますので、ご安心下さい。」
「さっきから聞いてれば勝手な事をぬかしよって・・・」

紳士的な態度の騎士に平次が切れた。そして、下に向かって

「お前等、工藤帝国の奴等を蹴散らせー!!」
「皇・・・ッ騎士様我々は如何致しますか?」

下から新一に聞かれる。

「頼んだ通りにやってくれ。」
「了解しましたッ」

頼んだ通り、それは・・・服部公国の軍を蹴散らすのだが、自然と花壇は壊すなである。

「平次王子、引き下がれよ。テメーんトコの軍はおしまいみてぇだぜ?」
やられっぱなしだった。
「くっ」

捨て台詞も残さず帰って行った。

「一度ならず二度までも、我が国をお助けになる貴方はいったい誰なのです?ああ・・・黒衣をまとった名も無き騎士殿・・・私の願いを叶えていただけるのら・・・どうかその漆黒の仮面をお取りになって素顔を私に・・・」(25巻FILE.9手負いの探偵団参照)

そんな蘭に、新一は

「私は工藤帝国の者。蘭様に名乗るような者ではありません。」
「しかし、お礼くらいは・・・」
「お礼なんてとんでもない。お気持ちだけで結構ですよ。」

新一は頑として折れなかった。が、

「お願いします。その漆黒の仮面をお取りになって?」

あまりの可愛さについに折れた。

「ふぅ、仕方ないですね。」

仮面の下から黒衣の騎士の素顔が、工藤帝国皇子の顔が・・・

「私は工藤帝国の新一です。蘭様にお会いできて光栄です。それでは、失礼します。」

仮面を被り直して城へ帰って行った。

「(新一様。素敵だった。)」

蘭も一目惚れしたようだ。これで両思い。しかし、2人は国をこれから背負って行く身。これからどうなるのだろうか。



  ☆☆☆



工藤帝国・・・


「新一、結婚の話はどうするのかね?」

と優作が言いながら新一の部屋に入ると、新一は黒衣をまとって、出掛ける用意が。

「その話は俺が帰るまで忘れてくれないか?」
「どこへ行くのかね?」
「ちょっとな。じゃ行ってくる。」

行き先も告げずに新一はまた、旅立ってしまった。

「我々は少しの間旅行に行きたかったのだが。まぁ国々を廻っていれば我が国のピンチぐらい分かるだろう。」

優作と有希子も出掛けてしまった。今工藤帝国に王族は誰も居ない。そんな中、今毛利王国を攻め込めば必ず落せる事に気付いた人がいた。

「一週間後、毛利王国を攻め込むぞ!」
「ハッ快斗様が陣頭指揮を取ってくださるのですか?」
「勿論♪」

黒羽公国の快斗王子だ。









一週間後・・・


毛利王国はピンチに陥っていた。

「こんな小さな国じゃ兵が足らないッどうしましょう?」

英理はかなり、困っていた。そのお付きは、

「大丈夫です。工藤帝国が味方ですから。」
「でも・・・」
「大丈夫です。」

このお付き、実は、優作と有希子だった。

新一は、たまたま寄った喫茶店で毛利王国が攻め込まれてるのを知った。

『黒羽公国は毛利王国の兵を次々と倒していきます。我々工藤帝国はどうするのでしょう!?優作国王様は今留守の様です。城には王族が誰一人として居ないのです。』

「あの野郎ッ」

新一は急いで会計を済ませ、城へ向かった。

「皇子ッどうしましょう!?」
「さっさと兵の用意をしろ!」
「ハッ」

新一は皇子用の戦争着に着がえた。

「本当はコレ着たくねーんだよな。」

しかし、王族命令じゃないと、兵は出せないのだから、仕方がない。

「皇子、用意出来ました!」
「行くぞ。」

新一皇子の指揮で工藤帝国の青い集団は、毛利王国へ向かって行った。



  ☆☆☆



「!!(あのクソ親父!)」
「皇子どうしました?」
「あー父さん達が居るから、俺は着替えて、此処譲るから。」

新一は黒衣の騎士になって英理の部屋まで飛んでいった。

「失礼致します、英理様。」

礼儀正しく入る。

「こ、黒衣の騎士!?」
「ちょっと宜しいですか?お付きに用があるのですが・・・」
「え、えぇ。」

廊下に出た新一は、

「俺は、陣頭指揮官降りるからな。だから、テメー等が行けよ。」
「ちょっとーそれは無いんじゃない?」

有希子の抗議には耳を貸さない。

「逃げた奴が抗議する権利はねーだろ?母さん。」

新一の方が上だった。

「ちぇっ仕方ないか。」

2人は、英理に断って、指揮をする為に下へ。新一は、快斗が居ないのに気付き蘭の部屋へ。


「俺の国に来よーよ、ねぇ姫様。」

快斗が話して居るのが聞こえた。

「い、嫌です。もし行くとしても、工藤帝国の方が良いです!」



to be countinued…….




 中編に続く。