黒衣の騎士は姫君の為に・・・



By 月白奈哉様



中編



「本当ですか!?」

新一は思わず会話に入ってしまった。迫った事よりも行くなら工藤と言う言葉にひかれたのだ。

「黒衣の騎士!?」
「し、新一様?」
「新一・・・まさかっお前ッ」

快斗が仮面を取ろうとするが、新一は素早かった。

「その反応はビンゴ?工藤帝国の皇子様だろ?」
「さぁ?どうでしょう?違うんじゃないですか?」
「さぁって自分の事だろーがッ」
「正体は明かさないと決めたんで。」
「んなっ」
「それより、帰らなくて良いんですか?やられてますよ?」

黒羽公国の軍は全滅。快斗王子は焦って引き上げた。まぁ隣国、中森王国の青子王女が物凄い顔で下から、睨んでいるのを見てしまったからというのもあるが。

「新一様、貴方は皇子様なのですか?」
「・・・そうですよ。工藤帝国の皇子です。」

chu☆

頬にキスをして、

「なっ(///)」
「突然ですが、僕と結婚して戴けませんか?返事は、また会った時までに。」

気障っぽく言ってから、帰って行った。

「私なんかで本当に良いのかしら?」

新一が帰った後、独り言の様に呟いた。



  ☆☆☆



工藤帝国では・・・



「新一ッ大変だったのよ!すぐ戻るのかと思ったら、なかなか来ないんだもん!何してたのよ?」

凄い剣幕で有希子が怒鳴ってくる。

「別に。何だって良いだろ?出てけよ。」

有希子が出ていった後、新一は、変装をして、城を飛び出していった。だが、

「新一、お客様よ。あらっ?居ないわ。」

何処の誰だが分からないが女が新一を訪ねてきた。

「そうですか。では、失礼します。」

城を出た所で女は、上から降ってきた男とぶつかった。

「「うわっ/きゃっ」」

てててと新一が起き上がると、女も起き上がり

「すみませんッって蘭様!?」
「えっ新一様!?」
「様付けなくて良いですよ。身分同じですし。僕には、敬語使わなくて良いですよ。」
「身分が同じなら私にも様付けなくて良いし、敬語使わなくて良いからね?」
「わっーたよ。」
「新一ってそんな口調なんだね・・・」
「どうゆう意味だよ?」
「べっつにぃ」
「それより、此処に来たって事は返事考えてくれたって事?」

コイツはかなりの意地悪野郎だった。

「うっ・・・分かる?私しか毛利王国には、子供居ないのよ?」
「そうだな。」
「だったらっ」
「とにかく、俺の部屋に行こうぜ。」

2人は、隠し通路を通り新一の部屋に行った。


「うわー綺麗な部屋ねー。」
「そうか?」

一通り片付けられていると言うか、物が無いと言うか。

「一人娘だって話だけど、うちに吸収・・・」
「駄目ッ吸収は駄目。」

新一は例えで言ったわけで、本気では無い。

「または、うちの管理下に置くか。まぁ2つに1つだな。」
「なら、管理して貰う方が良いな。」
「俺等に子供が出来たら、分けりゃ良いじゃん。工藤継ぐのと毛利継ぐのとでさ。」

ニッと笑って付け足す。
「子供って。(/////)」
「で?姫様のお気持ちは?」
「わ、私は・・・す、好きだよ、新一の事。でも、お父さんがなんて言うか・・・」

一番心配しなくて良いところだ。

「それは、俺が何とかするさ。問題はお前の気持ちだから。工藤帝国に来てくれるか?」
「うん。」

今度ははっきりと言った。優作と有希子は、盗み聞きしていたワケでもないが(と言うより、壁が厚くて盗み聞きしようにも出来ない。)毛利王国に使いを出した。工藤帝国に蘭様をくれ、とね。



  ☆☆☆



「く、く、工藤帝国に蘭を!?」

案の定、飛び上がっていた。

「くれるんなら、何だってするって・・・」

英理と小五郎はかなり、とまどっている。そんな2人の元へ、いつの間に帰ったのか、蘭が来た。

「お父さん、お母さん。私、工藤帝国の皇子の所に行きたいの。」
「「ええっ」」

珍しくはっきり自分の意見を言った。

「お願いッそれ、その話なんでしょ?」
「だけどね、蘭。貴方がお嫁に行っちゃったら誰が此処を継ぐの?」
「取り敢えずは工藤帝国で管理して貰って、後継ぎはつくれるでしょ?」

蘭が此処まで考えているとは思わなかったらしい。2人共戸惑っていた。

「ねぇ、お願いッ」
「分かったわ。貴方がそこまで言うのなら、明日工藤帝国に行きましょう。」
「おいっ英理っ俺は許さねーぞ!」

英理が折れたのに小五郎は駄目らしい。

「良いのッ」

英理の一括で小五郎は引っ込んだ。









翌日・・・



国王一家は護衛無しで工藤帝国へ向かった。

「すみません、国王様と妃様、皇子様にお会いしたいのですが・・・」

何処の王族でもそうだが、別の国の王室を訪ねる時は、身分を隠して行く。

「何故、国王様達に会いたいのだ?」

門番が聞くと、英理達が答える前に、

「ちょっと待て。失礼だろうが。誰だか分かってるのか?」
「皇子ッまたそんな格好で抜け出して。国王様と妃様が見たら何と言うか。」

門番は、嘆く。

「それより、こちらのお客様を早くお通ししろ。」
「ですが、国王様のお許しが出ないと門は開けませんが。」
「これだろ?」

新一は、工藤帝国の王族の証の‘K’と入ったペンダントを取り出す。

「ですが、誰なのかはっきりしないと・・・」
「良いから開けろッ」
「ハッ」

キレかかっている新一には、逆らってはならないのだ。

「申し訳ありません。中へどうぞ。小五郎様、英理様、蘭様。」

この台詞で自分がとんでもなく失礼な事をしたと気付いた門番でした。



  ☆☆☆



王室・・・



優作と有希子の隣には、逃げようとしたのがバレた新一が居るはずだったのだが、またアイツは逃げた。多分書庫だろう。

「英理、小五郎君。久しぶりね!」
「本当ね。有希子、優作君」

英理と小五郎、有希子と優作は隣国の王族だから、知り合いだった。

「蘭ちゃん、初めまして。工藤有希子よ。」
「は、初めまして。」

がちがちに緊張しているようだ。

「あら?新一君は?さっき門番さんに色々聞かれてたのを助けてくれたんだけど。」
「え?さっきまで入り口に居たような気がしたんだけど・・・逃げたわね。」

有希子は、お付きに新一を探させようとしたが

「申し訳ありません。我々では、皇子は探せないんです。逃げ足だけは速いので。」
「書庫を念入りに探しなさい。但し、バレないようにしなさい。」

優作が言った。

「御免なさいね。新一いつも居ないから・・・」
「いつもって?」
「ほらここら辺の王室は皇子と王女が16歳になったら、帝王学または、女王学を学ばせるでしょ?」
「えぇ」
「その時も軽ーく覚えたら、逃げるのよ。さすがに皆怒っちゃってね。テストして100点取れたら、サボって良いって言ったのよ。何点だったと思う?」
「分からないわ。何点だったの?」
「100点よ。なんでか知らないけど完璧に覚えてたのよ。多分、書庫に帝王学の本があるから、自分で勉強してたのね。」

教師の思惑が外れ、新一が自由になったのは言うまでもない。

「まぁうちの馬鹿息子と違って蘭ちゃんはちゃんと勉強してるわよね?」
「一応は、仕込んであるわよ、女王学。」

さすが英理である。

「やっぱり?真面目じゃないのは、うちだけね。ねぇ優作。」
「え?あ、その、そうだな。」

優作様?冷や汗だらだらですが?

「まさか、あなたッ」
「え?ま、ま、まさかって?」
「とぼけても無駄よ。遺伝だったのね!新一のサボり魔は。」

有希子の勝ちだ。

「国王様。新一様書庫には居なかったのですが。」
「気付いてたか。」

王室でこんな話がされている中で新一は、見つかった。木の上で読書中だった。

「皇子ーッ下りてきて下さいッ」
「ヤベッ見つかった。」

苦い顔をして、城へ飛び移る。

「お、皇子ッ」

さぁ追い駆けっこの始まりだ。

「煩いわね。さっさと捕まるような奴じゃないから、大変なのよねぇ。」
「(そんな奴の所に蘭は嫁に行くのか?)」
「捕まるまで待てないし、話を進めましょうか。今日、3人そろって来てくれたのは、この前の返事よね?」
「えぇ。蘭が行くなら、此処が良いって聞かなくてね。」
「まぁっ有難う、蘭ちゃんvv」

有希子は、喜んだ。

「では、我が国に来てくれるのかい?」
「それなんだけど、うち、一人娘でしょ?私達が身を引いた後うちの後継ぎが居なくなっちゃうじゃない。どうしようかなーって思うんだけど。」
「それなら心配いらないわ。新一と蘭ちゃんに子供を2人以上つくって貰えば良いのよ。」

有希子は笑顔で答える。

「それもそうよね。後、うちの国って弱いじゃない?だから、条約を結んで欲しいのだけど駄目かしら?優作君が駄目なら、無理にとは言わないわ。」
「条約?そんなの結ばなくてもうちが保障して毛利王国を守るわよ。」
「でも、正式に結べば攻め込まれなくなるだろ?」

けろりと言った有希子に新一(!?)が言った。

「やっと捕まる気になったのかい?」

思わずそっちかよ、と突っ込みたくなる反応だ。

「ちげーよ。」
「ま、新一が言う事も分かるし。もっとも、新一が決めて良いしね。」

何やら、意味深かなお言葉。

「はぁ?どういう意味だよ?」
「だって、貴方の結婚式は、貴方が国王に即位する日でしょ?」
「んなっ」
「もう、王室に縛られてたくないからな。お前にそろそろ王座譲ろうかと。」

あんたは、18年王室に縛られたくらいで嫌になるのかいっ

「蘭ちゃん?うちの馬鹿息子と国を宜しくね!」
「あ、はい。」
「・・・」

新一は、もう呆れてモノが言えなくなっている。

「小五郎君。と言うワケで蘭ちゃん頂戴するわ。」
「あ、あぁ」

とんとん拍子に話が進み、結婚式の日取りまで決めて、英理達は帰った。









翌日には、国中に広まり、その次の日には、世界各国に知れ渡った。

「くっそー工藤帝国め。姫様を取りやがって。」
「最悪ぅ毛利王国なんて大ッ嫌い」

新一は、蘭に求婚していた、たくさんの王子に妬まれ、蘭は、新一に求婚していた、たくさんの王女に妬まれた。只の嫉妬である。









結婚式当日・・・



「キャー蘭ちゃん可愛いvv」
「新一君だってかなり、はまってるわよ?黒と白で対だし。」

新一も、蘭も似合っている。まぁ元が良いからかもしれないが。

「どうせなら、白のタキシードが良かったんだけど、しきたりだからコレばっかりはねぇ。」
「工藤帝国の正式な衣装がいくら黒だと言っても、結婚式まで黒とは思わなかったわ。」

英理もビックリだ。

「でしょー?私も出てきた優作見て驚いたわよ。」

有希子と英理が談笑している中、新一と蘭は、脇で話していた。

「新一凄いはまってる・・・」
「うちって変わってるよなー。結婚式まで黒なんてさ。でもまぁ蘭が白だから、対になって良かったかな?」
「それより、新一。今日から国王様よね?」
「あぁ。オメーは工藤帝国の王妃様だぜ?」

はっきり言うと、この2人は、凄く位の高い人である。

「良いのかなぁ?私がそんな所に居て。王妃様だよ?」
「おいおい。オメーがそこに居なきゃ意味ねーだろ?俺のたった一人の姫様なんだからな。」
「あらあらお熱いわねぇ。それより、時間よ。」
「分かった。(いきなり出て来んなよな。)」
「今の台詞冗談じゃないよね?」
「あぁ。」


こうして結婚式は無事(!?)終わり、新国王の即位式も終わった。

一方新一はというと、優作がかなりの仕事を残していったのでは連日多忙しだった。。

「くそーっ何でこんなに残していくんだよッ絶対貯めてったぜ。あの野郎ッ」

国王様はご機嫌斜め。蘭しか近寄りたがらない。

「文句言う暇あったら早くやりなさいよッ」

怒られるのもしばしば。たまに新一は消えてしまうが大体書庫に居た。しかし今日は蘭共々居なくなってしまった。

「国王様ーッ妃様ーッ」

総出で探すが見つからない。それもその筈。だって城外脱出してしまったんだから。2人は、毛利王国との国境に建つ喫茶店ポアロに居た。結局見つかり、新一だけ怒られた。(蘭は新一のお守りの為逃れた。)



to be countinued…….




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