黒衣の騎士は姫君の為に・・・



By 月白奈哉様



後編



「新一。ちょっと聞いて欲しいんだけど・・・」

結婚式から、約半年がたち、新一も蘭も19歳の誕生日を先日迎えた。

「何?入って来いよ。」

蘭は新一の部屋(仕事部屋)のソファーに座って話しだした。

「あ、あのね。跡取りが出来たよ。」
「えっ!つまり・・・」

新一は、蘭の顔をマジマジと見てしまった。

「子供だよ。3ヵ月の双子だって。」
「マジかよ!良かったじゃん!」

新一は、飛び上がらんばかりに喜んだ。

「て事は、10月には生まれるな。」
「うん。」

蘭のお腹の中に子供が居ると知った英理や、有希子は喜んだ。

「こんなに早く初孫が見れるなんて夢みたいvv」

新一としては、一生夢見てろだが。





しばらくして、双子は男の子と女の子両方だと判明した。

「名前どうする?」
「片方ずつ決めようか?生まれた当日に発表。それまで内緒って事でどう?」
「良いよ。私は男の子が良いな。」
「分かった。」

2人の間では、こんな話もでた。









10月も半ばのある日、工藤帝国と毛利王国の跡取り達が生まれた。。

「じゃぁ名前発表な。」
「一哉(かずや)。工藤一哉よ。」
「蘭凪(らんな)。工藤蘭凪だ。」

互いの名を入れるにはコレしか無かったのだ。

「一哉君と蘭凪ちゃん。凄い名前ねぇ。」

有希子と英理が来ていた。

「どっちが工藤の後継ぎ?」
「毛利の後継ぎはどっちかしら?」
「まだ分かりません。本人しだいですから。」

そりゃそうだ。









やはり、新一の子供。一哉は書庫に出入りするようになった。7歳の時だ。そろそろどちらを継ぐか、決めることにした。

「一哉、蘭凪。お前等は2人共国を継ぐんだがどっちが良い?」
「はぁ?何言ってんだよ?ここ継ぐのは俺だろ?」
「決まってるでしょ?」

何も知らない2人は反論する。

「今、隣の毛利王国に国王が居ないのは知ってるだろ?」
「あぁ。母上がこっちに来たからだろ?」
「そう。俺達が結婚する時に1つだけ条件があったんだ。俺達の子供の片方が毛利王国を継ぐ事。」
「「なっ/えーっ」」
「どっちが工藤継いで、どっちが毛利継いでくれる?」

蘭が優しく問うと、

「俺は、工藤を継ぐ。」
「私は、毛利を継ぐよ。女でも良いんでしょ?」
「勿論。本格的な勉強は16歳の誕生日の次の日から。だけど今から覚えとけば楽だぜ。俺は散々怒られたけどな。」









新一と蘭が話してから、9年が過ぎ去り、双子の皇子と王女は16歳の誕生日を迎えた。

ドサッ

20冊近い本の山を2人の前にそれぞれ置いた。

「な、何だよ、この山・・・」
「す、凄い量・・・」
「これは帝王学と女王学の資料。一哉は来年の今日、蘭凪は再来年の今日にテストをする。それまでは教わっとけ。」

新一が言った。

「何で俺のほうが1年みじけーんだよ!?」
「やる事があんだよ。」

確かソレは物覚えが良かったからでは?

蘭凪は、サボり魔の血より蘭の血の方が濃くサボりはしなかった。だが一哉は、新一の血が濃かったらしく、サボり魔化した。そして、一哉の約束の日・・・

「遺伝ですね。国王様と一緒です。」
「変なトコばっかり遺伝なのよねぇ。」

蘭が冷ややかな目で新一を見ながら言った。

「ま、まぁこれで決定だな。あの衣装が必要だ。」

家来の1人が持ってきたのは、。黒衣の騎士の衣装だ。

「皇子、これを着て行ってらっしゃいませ。」
「何だよ、この服。」
「100点でしたので、戦いのお勉強でございます。新一様も優作様も歴代国王は全員が行ったのですよ。1年後の18歳の誕生日までです。頑張って下さいね。」
「た、戦いの勉強ってなんだよ〜!!」

一哉の抵抗も虚しく、黒衣の騎士化して毛利王国に放り出された。









翌年・・・



「あ、お帰り〜。無事だったか・・・」
「何だよソレ。まるで死んだ方がマシだったみたいじゃねぇか。」

帰国早々憎まれ口。

「そうじゃないって。後継ぎが居なくなっちゃうでしょ?」
「なっ俺はその為だけかよ?」
「そうねぇ。」

2人が憎まれ口を叩きあっている間に新一と蘭は、一哉の後ろに来ていた。

「普通、帰ったら、国王に報告だろーが。」
「そうでした。残念ながら生きて戻りました、父上、母上。」

その台詞に蘭が、

「残念ながらってどういう意味なの?」
「ジョークだって。」

笑う息子に、新一は、言った。

「ま、歴代国王と同じだな。正体バレてるし。」
「何それ。父さんは上手くやったのかよ?」
「勿論。つぅか馬鹿なんだよ、テメェが。」

帰ったばかりの息子に言う台詞じゃないだろう、国王様よ・・・

「んなっ。父上が上手すぎるから、俺が下手に見えるんだよッ」
「あたしなら、一哉兄より上手くやったけど〜?」
「蘭凪の方が頭良いからな。そうなったかもな。」

素直に認めずフォローするのが父親だろう。

「ま、どっちもどっちよ。双子なんだから。」
「とにかく、一哉、嫁は見つけてきたか?」

・・・その為の修業!?

「あ、や、その・・・(/////)」
「どこの娘だ?」
「鈴木帝国の昊第一王女。」(昊=そら)

毛利挟んで隣だ。ここの女王は、蘭王妃の親友だ。

「確かあっちは、王子が居たな。園子くれると思うか?」
「頼んでみる?って言ってもソレしかないじゃない。」
「だな。」

次は蘭凪。

「あたし的には、黒羽の神奈君かなぁ。」(神奈=かんな)
「快斗んトコか。アイツは、来るんじゃねぇ?」
周りは双子だらけだった。









翌日・・・



朝から、新一と蘭は出掛けた。

「久しぶり〜!元気だった?」
「当たり前よ!今日はそろってどうしたのよ?」
「単刀直入に言うね。昊ちゃん、うちの馬鹿息子に頂戴。」

ば、馬鹿息子!?

「良いわよ。昊も蘭達になら譲れるわ。」
「有難う。じゃぁまた日を改めて来るわね。今日はこれで。」



  ☆☆☆



3時間後・・・



「よぅ快斗。」
「何々?蘭凪ちゃんくれる?」
「やらない。神奈くんねぇ?」

なんつぅ会話・・・

「そうだなぁ。あ、神奈。毛利行くか?」
「へっ?・・・あぁ蘭凪第一王女?」
「そ。」
「ここを翔兄が継ぐなら、行こうかな。」(翔=かける)

みんな兄貴が継ぐらしい。

「神奈、来いよ。」
「新兄がそう言うなら。蘭凪可愛いし。」

ちょっと照れながら言った。

これで嫁と婿は決まった。共に自らの国を出る2人の国で式は行なう。一哉と蘭凪は即位し、新一と蘭はどこかへ。次に彼等に会えるのは初孫誕生の時だろう。



END




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