忘れられない、忘れたくない、大切なひと



by white‐bear様



第二章 一人たりない少年探偵団



「あれ?少年探偵団のみんなもトロピカルランドに来てたの?」

少年探偵団の4人がトロピカルランドのミステリーコースターの列に並んでいると、突然声をかけられた。
顔をあげるとそこには蘭と新一、そして大阪2人組の顔があった。
新一はうんざりっといったような表情だ。

「あーっ!!蘭お姉さんに新一さんっ!!」

歩美が叫んだ。

「お二人もトロピカルランドに来られていたんですか?」
「そっちの黒いにーちゃんとねーちゃんは誰だ?」

光彦と元太も反応する。

「おいっ。黒いはよけいや!」
「でも、その通りなんやからしゃーないんとちゃう?」
「なんやと!?」

大阪2人組が痴話げんかを始めてしまったのでかわりに蘭が説明する。

「この2人はね、大阪から来た私と新一の友達で、お兄ちゃんの方が服部平次君、お姉ちゃんのほうが遠山和葉ちゃん。服部君は新一と同じ高校生探偵なんだよ」
「あっ。そう言えば聞いたことあります。関西の方で大活躍している頭の切れる高校生名探偵。」

光彦が平次を見上げて言った。

「なんや、坊主。よぅ、しっとるやないか」

平次がうれしそうに光彦の頭をぐりぐりと引っ掻き回した。

「わぁっ。」
「おい、服部、やめろって」

新一が呆れたように言う。

「坊主たち、名前は何ていうんや?」
「オレは小嶋元太!!少年探偵団のリーダーなんだぜっ!」
「私、吉田歩美!」
「僕は円谷光彦です。」
「・・・・・・」

哀は何も言わなかった。

「嬢ちゃんは何ていうんや?」
「・・・灰原哀よ。」
「えっ。」
「なんやの、平次?」
「あっ。いや」

和葉が不思議そうに平次の顔をのぞいた。

(この子が灰原さんか。こないな美少女が半ズボンはいてコナンのふりをしとったんかいな。)

平次は直接哀に会ったことはなかった。
学園祭の時、哀はコナンの格好をしていた。
コナンから哀のことは聞いていたが
姿を見るのはこれが初めてだった。

「蘭ねーちゃんたちはWデートかよ?」

元太が聞いた。元太が「Wデート」なんていう単語を知っていたなんてびっくりだが。

「えっ?えーと・・・そんなようなものかな・・・?」

蘭が顔を赤らめて答える。和葉も照れくさいのか顔が真っ赤だ。
新一たちも服部たちも最近付き合いはじめたばっかなのだ。
新一はというと、元太たちと1年近くも一緒にいたのでマセた元太のセリフに動じたりしない。
相変わらずマセてんな、おめーら、という感じだ。

「元太君たちこそWデートなんとちゃう?」

お返しに、と和葉が聞く。すると、今度は元太と光彦が赤くなった。

「そ、そ、そんなんじゃねーよ。な、なぁ?光彦。」
「え、ええ。そんなんじゃ・・・ないですよ。」
「んー?怪しいなー。」
「そんなんじゃないよっ!!」

突然、歩美が大声で言った。
全員がびっくりして歩美を見る。

(歩美?

「歩美ちゃん?」
「だって、本当は4人じゃないもんっ。本当に本当は・・・コナン君がいるんだから!!本当は5人なんだからっ!!」

(歩美・・・。)

かつて一緒に探偵団をやっていた女の子。
自分よりも10歳年下だが、時にはコナンよりもしっかりしていた。
しかし、危なっかしいところは年相応、好奇心旺盛で目が離せない。
ついつい守ってあげたくなるような女の子だった。
歩美だけじゃなくて、元太や光彦もそれぞれいい面をいっぱいもっている。
コナンが、コナンになっても楽しく過ごせたのも彼らのおかげだろう。
新一でもコナンでも受け入れられるとは何とも嬉しい話だ。
逆にどとらにとってもつらいことはたくさんだが。

「そ、そうだぞっ!ほんとはコナンがいるんだからなっ」
「そうです。コナン君をいれて、5人そろって初めて少年探偵団と言えるんですから。」

元太と光彦も口をそろえて言う。
新一は複雑そうな顔をして、哀はうつむいた。

(私は工藤君や彼女だけでなく、歩美ちゃんたちまで悲しませているのね・・・・・・。)

ただ一人事情を知る平次だけが二人の顔を交互に見つめていた。



to be countinued…….




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