探偵戦隊ディテクティブ・アイズ



Byドミ



第1章



(6)終わらない明日へ



生徒達は、ドブロクが居なくなった為か、アルコール成分が切れた為か、徐々に正気に戻った。
生徒達が目覚めた時には、探偵戦隊たちはとっくにその場を去っていた。

「そうか・・・仲間に消されてしまったか・・・」
「はい・・・」

探偵戦隊のメンバーは、本部に戻り、戦いの詳細を阿笠司令に報告していた。
囚われていた生徒達には一人の怪我人もなかったし、どさくさ紛れに黒タイツ軍団もかなりの人数を救い出す事が出来た。

けれど、ドブロクを仲間に消されてしまったと言うのは何と言っても痛い事実であった。

「新一。気に病むな。君の所為じゃない」

阿笠司令がそう言った。
しかし、新一の胸のしこりは消えない。

ウォッカはともかく、ジンは一目で格が全く違う事を思い知らされたのだ。
自分にまだまだ力がない事が、その為に目の前でドブロクが殺された事が、歯がゆくてならなかった。

そして今、工藤邸で慰労会が開かれていた。
但し、未成年である上、事件が事件だっただけに、ノンアルコールである。
しかし、酒が入っていないとは信じられない位に盛り上がり、夜遅くまでどんちゃん騒ぎが続いた。
明日は休日ということもあって泊り込みである。

服部家、遠山家、中森家、それに何故か黒羽家も、それぞれ親には探偵戦隊の事が伝えられている。
だから身代わりロボットを使うまでもなく、存分に慰労会を楽しむ事が出来た。

毛利小五郎には、蘭が新一の家に泊まるとだけ伝えられている。
新一と二人きりなら小五郎は絶対に許さなかっただろうが、友人四人と一緒だというとあっさり許可が下りた。
そこら辺は嘘の吐けない蘭が信用されていると言うべきか。

「ねえ新一」

一人ベランダで星を見上げている新一の所へ、蘭が来て声を掛けた。

「んあ?んだよ、蘭」
「ううん、何でも・・・」
「・・・変な奴」

蘭も新一も、お互いに解っていた。
ドブロクを死なせてしまった事が心に引っ掛かっているものの、お互いそれをどう口にしたら良いのか解らないのだった。

「蘭。俺は大丈夫だからさ、心配すんな。蘭こそ大丈夫か?」
「ん・・・みんなが居てくれるから、一人じゃないから、だから・・・」
「そっか・・・」

そして二人並んで暫らく黙って星を見詰めていた。

「あ、あの・・・新一・・・」
「ん?あんだよ」
「あ、あ、あの・・・酔っ払ってた時の事だけど・・・」

蘭が頬を染めて言った言葉に、新一もかあっと頭に血が上る。

「え?あ、あの・・・わりいな、蘭。俺、あん時の事全く覚えてなくてよ、ははははは。何か失礼な事、言ったか?」
「え?あ、ううん、じ、実は私もね、全く覚えてなくて、何か変な事言わなかったかなあって・・・新一も覚えてないなら、良いの!」
「な、何だ。オメーも覚えてねえのかよ、ははは、やっぱ、酒なんて飲み過ぎるもんじゃねえな」
「もう、あの時は強制的にアルコールを注入されただけで、別に飲んでた訳じゃないでしょう?」

本当は・・・お互いに覚えていた。
甘い囁きも、お互いの体の熱さも、もう少しで触れ合う筈だった唇から漏れる吐息も・・・。

『アルコールの勢いなんかじゃなくて、素面の時、きちんと伝える。いつか、きっと・・・』

その「いつか」がいつになるのかはわからないけれど。


快斗と青子、平次と和葉の間で似たような会話が繰り広げられたのは、言うまでもない。
まだ三組とも、今は、幼馴染のまま。


「な、何だとおおおおおっ!!」

次の朝、遅い朝食を食べながら朝刊を読み出した新一の雄叫びに、他の五人は飛び上がった。思わず新一の所に集まると、新一は朝刊を握ってブルブルと震えていた。朝刊の一面トップの見出しを見て、他の五人も何とも複雑な表情をした。

《謎のコスプレ集団、謎の怪人を倒す!》

流石に上から報道規制が掛けられているらしく、写真は女の子達も顔がわからないようになっていたし、剥き出しの肩や胸や足もあまり写っていなかった。
男性陣三人の衣装も何となくイメージが掴める程度にぼやかされている。

しかし、いくら秘密部隊だからといって、流石に「コスプレ集団」と呼ばれると・・・まあそう呼ばれるのも無理ないとはわかっているが、皆、胸中は複雑であった。




ひとつの戦いが終わった。
しかし、これは始まりに過ぎない。

地球の未来は、君達の肩にかかっている。


頑張れ、負けるな、我らの探偵戦隊ディテクティブ・アイズ!


探偵戦隊ディテクティブアイズ第2章に続く


<探偵戦隊ディテクティブ・アイズ第1章後書き座談会>

博士「今回の後書きは、登場人物たちの座談会だそうじゃ」
蘭 「ところで、第1章って事はこの話って続くのよね」
和葉「続くっていつまでなん?」
青子「全部で何話になるかはわかんないけど、『Black Organization』が倒されるまでって聞いたよ」
新一「倒せるのか?そもそもどんな組織かもまだわかんねえのによ」
快斗「倒せないと困るだろ?」
平次「結局未完のまま言うのだけは勘弁して欲しいで」
哀 「今回ばかりは何とも言えないわ。何しろドミさんが作ったのは設定だけで、ストーリーは最初しかできていないらしいし」
博士「やれやれ・・・見切り発車なんじゃな」」
平次「何やて!?ほたら俺らほったらかしのままなんかいな?」
哀 「しかも、他に出したい本があると言う話だから、いつになるかわからないわよ」
蘭 「でも、次の話では仲間が増えるんだって。最終的には十人になるって聞いたよ」
青子「お友達が増えるの?」
新一「敵の設定も固まってないくせに、戦隊のメンバーが増えんのか?収拾つかなくなりそうだよな」
博士「まあ先の事は置いといて、ここらで裏話なぞ」
哀 「あの呼び出しの馬鹿馬鹿しさはどこから?」
新一「普通ワープロソフトで『しんらん』と打てば『親鸞』と変換されるが、新蘭作家がパソコンを手なずける内に『新蘭』と変換されるようになるって聞いたけど、それを逆手に取ったやつだな」
平次「せやけどドミはんは、親鸞聖人が浄土真宗で『南無阿弥陀仏』の方と言う事かて忘れとった位無知やったんやで。それでようネタに使う気になったもんや」
和葉「ドミはんは新蘭命で、親鸞聖人はどうでもええらしいからな。けど、真面目な信者はんからは怒られそうやな」
蘭 「真面目な信者の方はこのような二次創作の本なんか多分読んでないと思うけど、もしもおられたらその時はごめんなさい」
快斗「快青も、普通に打てば『快晴』に変換されるんだよな」(※注:快青はかいあお読みが本来の姿でしょうが、かいせい読みをしている人も多いです)
青子「ねえ、『本日は晴天なり』って、昔、本当に、マイクのテストに使われてたの?」
快斗「昔々の話だよ。何にしろ作者の年齢を窺わせる様なエピソードだな」
平次「黒羽、ドミはんの年齢に触れるとは、命が惜しゅうないんか?で、平和はどう打っても『平和』と表示されるんが普通やけど、俺らの呼び出しが一番恥ずかしいかも知れへんな。歌、いうんが何ともくさ過ぎるで」(※注:平和の読みは本来へいかずでしょうが、へいわ読みをしている人も多いです)
和葉「せやな。それにしたかて、あの歌、誰が作詞作曲したんやろか?」
新一「さあ?WMOの誰かじゃねえのか」
青子「実際にある歌じゃないの?」
快斗「実際にある歌は著作権に引っ掛かるだろうから、それはねえだろ。けど、似たような歌詞ならきっと五万とあるだろうぜ」
新一「ところで、ドミさんは戦隊物に萌えると言いながら、実は詳しくないらしいよな」
快斗「って言うより、ゴレンジャーに端を発した特撮戦隊物シリーズをあまり見てねえんだろ?」
蘭 「ドミさんが生まれて初めて嵌った漫画が『パーマン』なんですって。あと、ガッチャマンにも嵌っていたとか」
平次「せやから複製ロボットが出て来たんやな。戦隊物言えん事もないけど、特撮シリーズとは違うやんけ」
和葉「で、戦隊物特撮シリーズの資料に思うて『タイムレンジャー』のビデオを借りて見たら、別の意味で嵌ってもうたと」
青子「そっちのネタは、いずれタイムパラレル物になる予定だって。青子が実は○○君と××ちゃんの子供だとか」(※注:そういうパラレル話の予定がありましたが実現しておりません)
快斗「ゲゲ!って事は、○○が俺の義父になんのかよ!?」
青子「・・・何で○○君が青子の親だと、快斗の義父になっちゃうの?」
快斗「う゛・・・あ゛・・・え゛・・・」
博士「ええい、話が脱線しておるぞい!今は探偵戦隊の話じゃろうが」
新一「この話では俺達最後まで幼馴染のままなのか?」
哀 「それは作者の気まぐれ次第ね」
蘭 「と言う訳で、いつ出るか判らないけど、次のお話でまたお会いしましょう」



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<作者後書き>

10年前に書いたお話を今更ながら読み返してみて、クラクラしているドミです。
いやあ、よくもこんなのを書いたもんだよな、自分(ほめている訳ではありません。よくもまあ、こういうノリの話を書いたもんだと半ば以上呆れています)。

書いていて、とっても楽しかったのは覚えています。
1年半以上たって、ようやく2巻の発行にこぎつけました。
しかし、完結させられなかったのが、何とも心残りです。
web上で、何とか完結させたいと思っていますが、設定をもう一回根底からやり直さないと、どもこもならないので・・・少しお待ちください。

10年前に書いたお話なので、蘭ちゃんの一人称「私」、新一君快斗君の一人称「俺」、三点リーダは……ではなく・・・です。
それを全部手直しするのは膨大な手間暇かかるので、このシリーズでは、もし続きを書くとしても、それで押し通すことにします。



2003年11月3日初出
2014年8月18日一部改訂脱稿





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