探偵戦隊ディテクティブ・アイズ



Byドミ



第2章



(4)新しい仲間



「私は、杯戸高校の京極真です。鈴木園子さん、あなたの事は、以前から知っていました。応援席から毛利さんの試合をいつも力いっぱい応援しているあなたの姿を、私はいつしか追い求めるようになっていた。あなたは、この私が命をかけてお守りします!」

色黒で精悍な美貌の男・京極真に、そう言われて。元々惚れっぽい園子だが、この一瞬で恋に落ちていた。

「は、はいっ・・・♡♡」

しかし、さしもの格闘技の達人である京極真でも。怪人の力に、生身で対抗するには限度があった。

「ぐわっ・・・!!」

大きな衝撃を受けて、思わず声を上げてしまうが、今ここをどいたら園子に危険が及ぶ為、必死で踏み止まる。

コピー蘭が傍まで駆けて来て、ともかくも他の帝丹高校生にその場から逃げ出すよう指示を与えた。
園子も、今のままでは真が危険なのが分かっている為、必死で逃げようとするが、やはり手足がいう事を聞いてくれなかった。


その時。

空に円盤が現れ、近づいて来たのに、コピー蘭は気付いた。
そしてコピー蘭も、真の相手であり女性隊員候補となるのが園子である事を知る。

怪人は不審そうに円盤を見上げ、真は身構え、園子は恐怖で目を見開き・・・そして、円盤から放たれたビームの中、真と園子は意識を失い、円盤の住人となった。

それを見届けた上で。
三十六計、逃げるに如かず。

コピー蘭は、体育館に向かって駆け出して行った。
目の前の怪人から逃れ、まだ体育館の中に居る生徒達を助ける為に。

そのコピー蘭の視界に、新一が操縦する飛行艇が映り。
コピー蘭の顔には、安堵の微笑が浮かんだ。


赤の他人ならともかくも、帝丹高校の中で。流石にベレー帽だけでは、ディテクティブレッドこと毛利蘭の正体は、ばればれである。

「ええ!?蘭!?あなたが謎のコスプレ隊の隊員だったの!?」
「そっちの人は、劇でやった黒衣の騎士姿だから、工藤君よね!?」

しかし幸い、その場にはコピー新一がいたし、すぐにコピー蘭が駆け付けて来たので。
帝丹高校の面々は最初驚いたものの、「他人の空似」とすぐさま納得してくれた。

「私達は元々変装の名人なの。たまたま毛利さんの顔をコピーしちゃってて・・・」

蘭がにっこり笑ってそう言うと、帝丹高校生徒達は、更に納得顔で頷いた。

「そりゃそうだよな、素顔を晒すとは思えないし」
「蘭に双子の生き別れが居たって話も聞かないしね。世の中には、怪盗キッドみたいな人がたくさん居るんだね」

帝丹高校の生徒達が、それぞれに納得している頃。

「ハックシュン!」
「快・・・ホワイト、風邪?馬鹿は風邪引かない筈なのに、変ねえ」
「ただ鼻がむずむずしただけだよ。それよりまだまだ助けが必要な人はたくさん居るんだ、行くぞ、アホブルー!」

青子ことディテクティブブルーは、むうと頬を膨らませながらも、再び作業に取り掛かった。


   ☆☆☆


蘭が、きょろきょろと見回した後、切羽詰った表情でコピー蘭に問いかけた。

「ねえ、園子はどこ!?」
「・・・大丈夫。安全なとこにいるから」

コピー蘭は短くそれだけ答えた。
蘭は安堵した顔をしてほうと息を吐いた。

「そう。コピー蘭ちゃんがそう言うなら、大丈夫ね。良かった・・・」

体育館の入り口には、いつの間にか数人の怪人が集まって来ていた。

全身緑色で水掻きがある他は、形は全く人間そのもの。
しかしその皮膚が、両生類のようにぬるついた印象を与え、大半の生徒達が生理的嫌悪感を覚えていた。

「我らは、ミード。Black Organization様にこの素晴らしい体を与えてもらった、人間以上の存在」
「そうさ。この水掻きと、ホラ、エラが付いているだろ?このお陰で、我々は水陸両方で生存可能」

その怪人――ミードが、首の両側に付いているエラを動かして見せたが、それは見るものに生理的嫌悪感を引き起こし、女生徒達の悲鳴が上がった。

『なあブラック、ちょおええか?』

突然平次から通信が入って、新一はマイクに向かって応える。

「グリーン、どうしたんだ?」
『今迄会うた怪人達は、皆酒の名前やったけど、ミードって酒の名、聞いた事あるか?』
「・・・今それどころじゃない・・・って言っても、確かに気になるな」
『せやろ?ホワイトは、何ぞ心当たりあるか?』

話を振られて、快斗も通信に加わる。

『さあ?俺も聞いた事ねえな・・・お互い同年代の連中よりそういった雑学知識には長けてる筈だけど』

「ちょっとしんい・・・ブラック、それどころじゃないでしょう」
『せや、あの気持ち悪いの、はよ何とかせんと、蘭ちゃん可哀想や』
『いや~ん、青子、小さな蛙さんなら良いけど、山椒魚は駄目なの~』

『なあ、あれって山椒魚か?』
「さあな。両生類には違いねえけど」

「何をごちゃごちゃ言っている。さあ、我らと共に来て、仲間になるのだ。さすれば、悩みも苦しみもない至福の時間と、我らのような素晴らしい体とが約束されるのだ」
『ヤダ!青子、山椒魚には、死んでもなりたくない!』

ミードの言葉に、青子は画面から見える画像だけでも生理的嫌悪感に反射的に身を震わせて叫んだ。

『せや、そんなヌルヌル、アタシかて嫌や!』
「第一、エラ呼吸が出来ても、東京湾や堤無津川の汚れた水で呼吸なんかしたくないわ!」

和葉と蘭が叫んだ。
怪人に聞こえたのは、蘭の叫びのみであろうが。

「はは・・・イヤ、お見事。生理的嫌悪感は、理屈も何も吹っ飛ばしてしまうもんらしい」

新一がちょっと乾いた笑い声を立てて言った。

『せやけど・・・女性隊員は口だけは威勢がええけど、あれじゃ姉ちゃんは戦闘は無理やで。おそらくあのぬるついた皮膚には触れへんやろ』
「ふむ。特にレッドは直接攻撃が主体だからな」

新一の言葉を裏付けるように、蘭は怪人に近寄れないで居る。
新一は、試しにボール射出ベルトから出したサッカーボールを怪人に向かって蹴ってみているが、あのヌルヌルした粘液が保護しているのか、行動はとりあえず暫く止めるものの、さしてダメージを与えられないようだ。
しかも今回の怪人は何人も居て、倒れても交代で向かって来る。

ふと新一は、視界が揺れるような違和感を覚えた。視界が霧のようなもので黄色く染まっている。そして、強いアルコール臭が充満し始めた。

「らん・・・レッド!アレが来るぞ!アルコール分解酵素の準備だ!」
「了解!」

そう、Black Organizationの怪人が繰り出して来る攻撃は、その場にいる全員を一斉に急性アルコール中毒にしてしまう事なのだ。

酒は、様々な方法で強制的に体に注入される。
今回は霧の中にアルコールが含まれているらしい。
基本的に避けるのは不可能だ。

WMOはいつも酔っ払って苦戦する探偵戦隊の為に、新兵器を編み出していた。
隊員達の奥歯の間に仕込まれたアルコール分解酵素入りカプセルである。

黄色い霧の中で、帝丹高校の生徒達は次々に泥酔して倒れて行く。
その中で、オリジナルとコピーロボット双方の新一と蘭だけが、普段と変わらぬ顔をして立っていた。

「ふう。丸っきり大丈夫という訳ではなさそうだが、かなりマシだな」
「それにしても、何だか甘ったるい匂いね」

蘭の言うように、アルコール臭に混じって強烈に漂っているのは、蜂蜜の匂いであった。

「そうか!やっと思い出したぞ!」

新一が叫び、他の五人+ロボット二人は、何事かと新一に注目する。

「ミードって、蜂蜜酒の事だ!」

固唾を呑んで新一の言葉に耳を傾けていた一同は、一斉にずっこけた。

『おい!そんな場合じゃなかったんじゃねえか!?』
『場の変化を読めんやっちゃな!』

快斗と平次がブーブー言って、新一は「自分達も拘ってた癖に」と少しむくれた。
けれどすぐに気持ちを切り替える。

「なあ、奴は両生類だよな」
『ああ、まあ・・・それがどうかしたのか?』
「なら、弱いのは、あれとあれだよな」
『まあ、せやろな。けど、アルコールが充満しとるさかい、あっちは使えへんで。下手したら、ここに寝そべっとる帝丹高校生達が、皆一緒に火だるまや』
「そんな危険な事、するものかよ。黒羽、服部、今度時間を作って戦闘服の機能を色々と調べておいた方がいいぞ。女性隊員の分もな。教えてもらってない、様々な機能がついてっからな」
『はあ?』
『工藤、そりゃ一体・・・』

マイクの向こうの快斗と平次の声を無視して、新一は蘭を手招きした。

「蘭、いや、レッド。頼みてえ事があんだ」
「ええ!?何、しんい・・・ブラック」
「女性隊員のベレー帽には、男性隊員が使う武具が作れる機能が備わっている。俺が蹴る為の、空気の塊を作って欲しい」
「えええ!?急に言われても・・・で、出来ないよ、そんな事!」
「蘭になら作れる。蘭にしか、作れねえ。イメージするだけで良いんだ、そしたらベレー帽が勝手に作ってくれる。真夏の炎天下、中学最後の大会となった、あの時の暑さと日照りをイメージして・・・頼む」
「わ、分かった・・・」

蘭は目を瞑った。
新一にとって中学最後の試合となってしまった、都大会決勝戦。
新一の活躍で逆転しながら、PK戦で負けてしまった、あの時の試合を、空気を思い出す。
あの逆転のゴールの、そのボールを。

ふいに、蘭の目の前が真っ白になったと思うと、ベレー帽から飛び出したものがあった。
それは、空気の塊でありながら、確かにあの炎天下の試合を具現した、ボールでもあったのだ。

「蘭!良くやった!」

飛び出して浮き上がったそのボールを追って、新一は体を浮かせ、宙返りし、オーバーヘッドキックをした。

「行くぞ!最強転技・スペイドプロミネンス!!」

そのボールは弾丸の速さで次々と怪人達をなぎ倒して行った。

「うぎゃあああああ!!!」

見る見る内に、怪人達の体が干からびて行く。
ぬるついた皮膚がカサカサに変化する。

新一が蹴ったボールは、乾いて熱がこもった空気の塊。
容赦なく怪人達の水分を奪い取り、皮膚を保護している粘液すら奪ってしまったのだった。

「さて、また奴らに抹殺されない内に、急いで怪人達を回収しなければ・・・」

一息吐いた新一が言った。
そう、探偵戦隊は怪人を生け捕るのも目的の一つなのだが、今迄戦った怪人は、最後に逃げられたり怪人の所属するBlack Organizationに抹殺されたりしていたのだった。

その時。
上空に、探偵戦隊の飛行艇の一つが現れた。

「あ、富士の樹海での救出作業が終わったのかしら?」
「いや、あの飛行艇は、色が違う・・・」

実は、隊員達の飛行艇は、それぞれに色分けがされたラインが入っているのだ。

新一ことブラックと、蘭ことレッドが乗る艇は、黒と赤。
快斗ことホワイトと、青子ことブルーが乗る艇は、白と青。
平次ことグリーンと、和葉ことオレンジが乗る艇は、緑とオレンジ。

今回現れた飛行艇には、茶色と黄色のラインが引かれていた。

「じゃあ、あれは・・・?」

その飛行艇から策的ビームが放たれて、倒れた怪人・ミード達は回収された。
そして飛行艇はゆっくり帝丹高校の校庭に着陸した。

「ハ~イ。ディテクティブイエローの、登・場・で~す!」

そう言って飛行艇から降りて来たのは、黄色を基調とした隊員服を身につけた女性。
それに続いて出て来たのは、空手の胴衣とほぼ同じ形で茶色のものをまとい、その上に茶色のマントを羽織り、茶色の忍者頭巾をかぶった男性だった。

「園子!?それにあなたは・・・!?」
「ちっちっち。今の私は、鈴木園子ではなくて、ディテクティブイエロー。そしてこちらは、ディテクティブブラウンよ。よろしく、レッド。ブラック隊長も、以後宜しくね♡♡」

幸いと言うべきか、新一と蘭以外の帝丹高校生達は強制的に吸わされたアルコールのせいで昏倒中で、誰もこの光景を見ていないし言葉を聞いていない。
蘭は園子を指差したまま口をパクパクさせ、新一は苦笑いした。

「はははあ、園子が探偵戦隊の隊員になっちまうとは。それにしても、順応力の高い奴。考えようによっちゃ、一番の大物かも」


   ☆☆☆


「兄貴。奴ら、ミード達を回収して行きましたぜ」
「フン。まあ今回は、一時的にぬか喜びさせてやろう。今の我々の活動は、いずれ来るべき時の為の小手調べに過ぎん。全世界に戦隊は結成されているが、日本のチームは隊員の能力の高さに加え、チームワークも良い様だ。どうやら最終盤までコマを進める可能性があるのは・・・」

遠くから探偵戦隊を観察しながらそう呟いているのは、Black Organizationのメンバーであるジンとウォッカであった。


   ☆☆☆


富士の樹海で救出作業を続けていたメンバー達も、作業を終えて戻って来た。そして、全員本部に集合して、改めて新隊員との顔合わせとなった。

本部でブラウンが頭巾を脱ぐ。
その素顔を見て蘭が驚きの声を上げた。

「え?ええ!?もしかして、杯戸高校空手部主将の京極さん!?」
「ハイ。女子空手都大会優勝者の毛利さんと、このような形でご縁があるとは夢にも思いませんでした」

蘭と京極真とのやり取りを、面白くなさそうに見ている新一に、平次が横から茶々を入れた。

「何や工藤、焼き餅は嫌われるで~」
「だ・・・誰が妬くかよ、バーロ!第一、京極さんの相手はもう決まってんだろが」

そう、新一の言う通り、京極真と鈴木園子は、傍から目も当てられない位のラブラブぶりを発揮していた。

「探偵戦隊初で、かつ、今のところ唯一のカップル誕生だな・・・」

新一がちょっと苦く、そう呟いた。
その新一を、平次は怪訝そうに、快斗はちょっと苦笑いして、見ている。

真と園子は、幼馴染故の歴史がない分、逆にカップルとしての成立はし易かったと言えるかも知れない。

言葉には出さないが、新一は今回の事で、探偵戦隊の隊員になる条件をほぼ正確に推察していた。
その理由の一つは、チームワークの為であろうと新一は考えている。
女性隊員を巡って男性隊員同士で争うような事になれば、一緒に戦う事など出来なくなるだろうから。

快斗も、おそらく気付いているだろうが、平次は、多分気付いていないだろう。
探偵能力では新一に引けを取らない筈の平次であるが、自身の気持ちを自覚していないからだ。

蘭を始めとして女性隊員達は、全くその事には気付いていないらしい。
新一は、この先の長さと困難さを思い、溜息を吐きたくなった。
探偵戦隊のリーダーは、色々な意味で苦労が多かった。

園子は、生来のサバサバした性格で、すぐに和葉や青子とも仲良くなり、女の子達は四人でお喋りに花を咲かせていた。
真は隊員の中で一番年長であるが、空手の実力への揺るぎない自信と同時に、腰の低さも併せ持っており、男性隊員達との信頼関係を築くのはすぐだった。

ともあれ、探偵戦隊は新たな隊員を二人迎え、戦力強化されたのであった。

その夜は、歓迎会を兼ねて工藤邸で再び夜を徹してのどんちゃん騒ぎとなった。
蘭は今回、親へのアリバイにコピーロボットを使ったが、園子にはその必要がなかった。
何故なら、園子の父親である鈴木史朗は、WMOのメンバーであり、園子の探偵戦隊入りを知っていたからである。


   ☆☆☆


「お父さん。最近起こっている不可解な事件は、デマゴギーや集団パニックと片付けるのには、大いに無理があるのではないですか?」

白馬警視総監の一人息子である白馬探は、このところ様々な手段を駆使して調べものをしていたが、今日、父の元に赴いてそう告げた。

「ほう。探、調べていたのか。結構結構。実は、今迄の常識では解決出来ない不可解な事件が頻発しているのは事実なのだよ。社会不安を招き世の中が大混乱になるのを避ける為に、報道管制がされているのだがね。我々警察上層部が掴めている事実も、実はかなり限られている。それに、たとえお前にでも、今は打ち明けられない事が多い。ただ・・・正直、怪盗キッドどころではない大変な世の中になりつつあるという事だ。警察の力では、それを解決出来ない。私としても打てる手は全て打つ積りだが、探、お前のような優れた若者達の助けが必要なのだよ」

父親の執務室を出て、探は大きな溜息を吐いた。
父が自分へ大きく期待していながら、今は事情を打ち明けてくれない理由が、分からなかったからである。


   ☆☆☆


「何故・・・?何故、何も見えないの・・・?」

赤魔法の担い手である小泉紅子は、世の中で起こっている事・怪盗キッドと黒羽快斗の事について、何度も占おうとしたが、邪神ルシュファーに尋ねても、魔法の鏡に尋ねても、結果は混沌として見えなかった。

占いが出来ないのには、いくつかの理由がある。
この先どちらに転ぶのか、可能性が二分されていて定まらない時。
紅子の占いの力が及ばない位に大いなる力が妨害している時。
そして、紅子自身が関わる事態である時。

「まさか、わたくしが・・・!?この私が世の動きや黒羽君と関わって行くと言うの!?」

一時は自分の虜にしようと必死だった黒羽快斗だが、最早魔力で彼を自分のものにするのは諦めている。
怪盗キッドこと黒羽快斗が中森青子に形無しである事も理解していて、なお彼への想いは消せないでいた。

その彼と、個人的な形で今後自身の運命が関わって行くなど、とても思えない。
この事態が何を指し示しているのか・・・紅子には到底予想も付かなかったのである。


   ☆☆☆


「諸君。ある意味めでたいが、少しだけ残念な知らせがある」

阿笠司令が探偵戦隊メンバーを前にして告げた。

「この前生け捕りにしてきた怪人達の事だが。彼らは、何故か完全に普通の人間になって・・・というより戻っていたのじゃ。身元も判明した。怪人だった時の記憶は全く失っており、改めて健康チェックも兼ねて調べてみたんじゃが、怪人だった痕跡は何一つ残っておらんかった」

そう。探偵戦隊が怪人を「生け捕り」にするのは、勿論人道的見地も大きいが、怪人を調べる事でBlack Organizationについての解明を進めるという目的もあったのだ。

「そうか・・・だから今回は、抹殺も妨害もしなかったんだな・・・」

新一がそう呟いた。

「ただ逆に、一つ分かった事がある。それは、奴等が普通の人間を怪人に改造する事が出来るという事じゃ。そして同時に、痕跡をも残さず元通りにする力もあるという事じゃ。あるいは、Black Organizationの奴らはそれを我らに知らしめる為に、わざと生け捕らせたのかも知れん」

新一達は、少し苦い思いで阿笠司令の言葉を聞いた。
探偵戦隊は必死に力の限り闘っているのに、Black Organizationの方には悪意ある遊びや余裕が感じられるのである。

この先の戦いの厳しさを思い、いつも明るく前向きな彼らも、少しばかり気持ちが落ち込まずには居られなかったのだ。




ひとつの戦いが終わった。
しかし、「Black Organization」との戦いはまだ終わらない。

地球の未来は、君達の肩にかかっている。


頑張れ、負けるな、我らの探偵戦隊ディテクティブ・アイズ!




<探偵戦隊ディテクティブ・アイズ第2章後書き座談会>
新一「恒例になってしまった座談会、始めるぞ」
快斗「ここら辺のノリも『創○伝』の後書き座談会に似て来たな」
探 「ドミさんがファンだそうなので」
快斗「って!なんで白馬がここにいるんだよ!?」
探 「次回から僕がメンバーに加わる筈だったからですよ、10年経ってまだ実現していませんが」
真 「しかし良いのでしょうか、私は探偵ではないのにチームに入れさせて頂いて」
園子「良いのよお、戦隊名に『探偵』とついてるからって、別に探偵活動をする集団じゃないし」
紅子「わ、わ、私は!そのようなタワけたものに入る気は、サラサラありません事よ!」
快斗「まあまあ紅子、そういきり立つなって。ははは~、俺が探偵戦隊のサブリーダーなんて、そこからそもそも間違ってるよなあ」
探 「ふっ・・・。まあ本家ルパンも探偵をする事があったそうだし、怪盗が探偵をやるのもあながち間違いとは言えませんね」
快斗「・・・だ~か~ら~、俺はキッドじゃねえって言ってんだろお?」
新一「今更何を白々しく」
平次「本編中では博士と灰原さんしか知らへん事になっとるけどな」
蘭 「ところで、哀ちゃんって、本当に七、八歳の子供なの?いくら天才的頭脳を持ってるといっても」
哀 「それは、ご想像にお任せするわ」
平次「けど、黒羽はホンマは、元から隊員候補やったんには、驚かされたで」
和葉「意外とこの話、奥が深いんやろか?」
新一「いや。いかにも最初から伏線張ってましたという風に誤魔化して書いてっけど、実は行き当たりばったりだ。ドミさんのいつものはったりだ。騙されるな」
快斗「そうだな、元々、二章では隊員が十人になってる筈だったんだし」
紅子「だから私は!絶対に入りません事よ!」
探 「けれど、一番驚いたのは、隊員たるべき資格ですね」
平次「・・・何の話や、俺は知らんで」
新一「俺も」
快斗「俺も」
探 「まあ、本編の中で僕達は知らない事になってるんですから、この件についての追求は避けましょう」
快斗「・・・話題をふったのは、オメーのくせに」
新一「で、次はいよいよ、白馬達が探偵戦隊に加わると」
蘭 「それだけじゃなくて、哀ちゃんの過去も出て来るとかで」
快斗「七、八歳の幼児の過去~!?」
新一「・・・灰原の設定自体、この話でどうなってんのか、俺は知らねえんだけどよ」
平次「パラレルなんやけど原作設定そのままっちゅー部分も多いさかいな。ちっこい姉ちゃん、この話でもホンマはちっこくないんちゃうか?」
新一「う~ん、可能性はあるような気がしてきた。でも、いつになったら続きが出るのか、わかんねえな。1章と2章の間は1年半空いて、そのあと10年近く経ってるんだしよ」
真 「そんなに空いて、次に何を書く予定か、忘れないのでしょうか?」
平次「心配せんでも、次の話なんてこの作者は考えてへんで」
園子「散々な言われようね」
新一「まあ、事実だからな。予告に打ったその部分『だけ』しか考えてなくて、後で辻褄合わせるらしい」
探 「成る程。風呂敷広げて、後から悩むタイプですね」
快斗「ドミさんの最初の構想は『コナンまじ快ミックスパラレル戦隊もの』を書きたい、それだけだったんだからな」
真 「最終盤、どうやって決着をつけるお積りなのでしょう?」
園子「それ以前に、きちんと終わらせられるのかしら?」
蘭 「ドミさんの愛が続く限りは、何とか終わらせようとしてくれると思うわ。たぶん・・・」
和葉「当てにはならへんけどな」
青子「という事で、またお会いしましょうね」


探偵戦隊ディテクティブアイズ第3章に 続く・・・?



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<作者後書き>

そして、月日は流れ・・・彼らを9年以上、ほったらかしなんですねえ、はっはっは。
我ながらひどいと、思います。
やっぱり、何らかの決着をつけてあげなければと、思っておりますです、はい。

若干補足ですが、このお話はもちろんパラレルですけれども、「名探偵コナン」「まじっく快斗」の原作と、世界設定背景は(組織の部分を除き)おおむね同じです。
新蘭トロピカルランドデートの後、原作の新一君はコナン君になっちゃいますが、こちらのお話では探偵戦隊のリーダーとなってしまいます。

昔、こちらの本を手に取っていただいた方々には、色々な意味で、本当に申し訳ないと思っています。
いずれweb上で完結させたいと思います。

他にも色々お待たせ中のお話があるため、いつとお約束することはできませんけど。
それでは、また。


2005年5月3日初出
2014年8月18日一部改訂脱稿



  に続く。