The Romance of Everlasting 〜異聞・白鳥の王子〜



Byドミ 原案協力:東海帝皇



(1)魔女の呪い



昔々ある所に、人の良い小五郎王様と、しっかり者の英理王妃様が治める、毛利王国という国がありました。
国土は豊かな上、民は働き者で農作物もたくさん取れ、気候も穏やかです。
王侯貴族は贅沢をせず、民達から厳しい取立てをしたりしませんので、国民も豊かで平和に暮らしておりました。
国王夫妻は仲が良すぎて始終喧嘩もしていましたが、10男2女に恵まれ、まずまず幸せに暮らしておりました。



ここは毛利王国の首都・帝丹京、その中心にある帝丹城です。
今日も、毛利王国国王夫妻の長男である参悟王太子が、国王夫妻に朝の挨拶をしていました。

「両陛下には今日もご健勝そうで・・・」
「ああ、堅苦しい挨拶は良い。仮にも一応俺の息子だろうが」
「は。ですが父上、けじめは付けませんと・・・」
「おめーは良くやってくれてるよ、いずれ俺なんぞよりずっと立派にこの国を治めるだろう。なのにいつも過ぎる位に謙虚だな。おめーが俺の息子って言うのは、なんだか変な感じがするぜ」
「私は尊敬する方の息子で、本当に光栄であります」
「ねえ参悟、蘭の具合はどうなのかしら?」

英理王妃が今1番心に引っ掛かっている事を参悟王太子に尋ねました。
国王夫妻の次女である蘭王女は、女の子という事もあって夫妻からは1番可愛がられていましたが、先頃健康を損ね、森の中にある小さな家で、侍女のヒカルに付き添われて療養中だったのです。

「田舎の良い空気を吸って、随分元気になったと聞きました。ヒカルが良く面倒をみてくれてるようです。後もう少しすれば、また都に戻れるでしょう」
「そう。それは良かったわ。ところで参悟、お前はそろそろ妃を娶る気はないの?」
「私はまだまだ修行中の身ですし・・・」
「そんな事言ったって、お前ももう25歳。王太子たるお前には、妃を娶り跡継ぎを作るのも大切な仕事ですよ。私達が結婚したのはお互いに15歳の時。この時代にしては、お前の年齢だと決して結婚に早いという事はない、むしろ遅い位だわ」

そう、国王夫妻の子供達はこの時代としてはそろそろ適齢期を過ぎていたのですが、揃いも揃って皆独身なのです。

「大体あなたが結婚しないものだから、他の者達も皆『兄上が妃を娶るまでは』と遠慮して、結婚出来ないで居るじゃないの。もう、蘭でさえ私達の結婚した年を過ぎてるのよ。跡継ぎたるお前とその補佐をしている重悟王子以外は、そろそろ独立も考えてもらわないといけないし・・・」

子沢山にはそれなりの悩みがあり、最近の英理王妃はずっとその事で頭を痛めていたのでした。

「私の親友・有希子が嫁ぎ先の工藤王国で王子を産んでいるわ。いずれ蘭を娶わせる約束をしてるけど、あんまり待たせてたらその内別の女を妃に迎えてしまうかも知れないし」

その英理王妃の言葉を聞いて、蘭王女を目の中に入れても痛くないほどに可愛がっている小五郎王が、叫び声を上げました。

「何〜〜〜〜っ!?蘭は絶対に嫁になんかやらんぞ!!」
「あなた・・・蘭ももう17歳、そんな事仰ってると嫁き遅れてしまいますよ?それに相手は1人息子、という事は、蘭は嫁いだら工藤王国の王太子妃、いずれは王妃です。これ以上の縁はないじゃありませんか」
「だ、だがまだ上の由美も嫁いでないし・・・その工藤王国に由美ではどうだ?」
「相手も蘭と同じ17歳なんですよ。姉さん女房も悪くはないでしょうが、やはり年が近い方が・・・。参悟や、お前が早く妃を迎えないと、他の者達が適齢期を逃してしまって大変なのですよ」

自分に再び矛先が向いて、参悟王太子は苦笑して答えました。

「ハア、わかりました。考えておきます」

小五郎王がにやりと笑って言います。

「参悟、今度うちの魔法師団長に就任したベルモットはどうだ?有能な上に凄い美人だぞ」
「・・・自分はどうもあの女は苦手でして・・・」
「勿体ない事を言うなあ。だったら俺が側女に・・・いてててて!!」

小五郎王は、英理王妃からつねられて、文字通り飛び上がりました。
英理王妃の額には青筋が浮かび上がっています。

「英理、冗談だって!」
「女好きのあなたが言うと冗談には聞こえないわ」

何のかのと言っても、小五郎王は今まで本当に浮気をした事はないのですが、いつも綺麗な女性相手に鼻の下を伸ばしては英理王妃に怒られるのです。

国王夫妻が痴話喧嘩をしている間に、参悟王太子は退出しました。


参悟王子は難しい顔をして考え込みます。
先頃王国に現れた美貌の魔女ベルモットは、その素晴らしい力であっという間に毛利王国の魔法師団長に上り詰めました。
しかし参悟王子は、ベルモットに禍々しいものを感じ、いずれこの国に大きな災いをもたらすような気がして仕方がなかったのです。

「この勘が当たらなければ良いのだが・・・」

参悟王子は呟きました。
しかし残念ながら、こういう悪い予感というものは、えてして当たってしまうものなのです。



  ☆☆☆



「お母様、庭で熟れた李の実ですわ」

由美王女が英理王妃の私室に飲み物と果物を持って入って来ました。

「ああ、ありがとう。丁度喉が渇いていたのよ」

由美王女はクスリと笑いました。
小五郎王と痴話喧嘩をした後の英理王妃は、喋りすぎた為にいつも喉が乾いていて、果物などを欲しがる事を由美王女は知っていたのです。

「由美。あなたももう23歳。嫁ぎ先を早く決めないといけないけれど・・・近隣には手ごろな年頃の王子達も居ないし・・・」

英理王妃の言葉に由美王女は目を伏せます。

「そんな・・・畏れ多い・・・私などが・・・」
「何を言うの?たとえ私が産んだ娘でなくとも、あなたは正式な私達の養女。それに世が世なら、元々、宮本王国の王位継承権を持つ身じゃないの、卑下する事など何もないのよ」
「けれど宮本王国は簒奪者の手に渡り、王太子だった父は亡くなりました。孤児同然の私を、本当のお子様達と分け隔てなく、この毛利王国の王女として育てて頂いた事には本当に感謝しています」
「由美。蘭が生まれるまでは男の子ばかりの兄弟で、大変だった私達を、あなたは良く手助けしてくれたわ。お礼を言わなければならないのはこちらの方よ」
「お母様、そんな・・・それ位では大切に育てて頂いたお返しにはなりませんわ」
「ああ、でもね、最近時々、やはりあなたを私達の養女にしない方が良かったかも知れないと思う事があるの。むしろ、参悟か重悟の妃となってもらえれば、そちらの方が良かったかと・・・そうだわ!今からでも、考えてみてくれないかしら?」
「お、お母様、そんな・・・!めめめ、滅相もない!わ、私などがお兄様方のお妃になど・・・」
「そうね、そんなの、こちらの勝手過ぎるわね・・・。あなたが心から想う相手でないと。ねえ由美、あなた、どなたか好きな殿方は居ないの?」

由美王女は目を伏せ頭を横に振りました。
本当は由美王女には、ほのかに思い慕う相手が居たのですが、一生涯それを隠し通して生きるつもりでした。
流石に鋭い英理王妃も、わが子として可愛がって育てて来た娘の秘められた思いに気付く事はなかったのです。



  ☆☆☆



所変わって、ここは毛利王国の首都・帝丹京から、少し隔たったところにある森の中。

「蘭姫様〜、そろそろ中に入ってください、風が冷たくなってまいりました」

蘭王女に付き添って来た侍女のヒカルが、森の中で遊んでいる王女に声をかけました。

「平気よ、もう随分と体の調子は良いのだもの」

蘭王女はそう返事をします。

「でも姫様、日が暮れますと狼などが出てあぶのうございます。もし姫様の身に何かありましたら・・・」
「わかったわ、ごめんなさい。ヒカルさんを困らせては、智明兄様に怒られるわね」
「ええ?姫様、そ、そんな・・・」

ヒカルは真っ赤になって口ごもりました。

蘭王女はそんなヒカルを楽しそうに見て、仲良しになった森の動物達――兎や栗鼠(りす)や鹿、小鳥達と別れの挨拶をして小屋の中に入りました。
本当は、蘭王女には仲良くなった4人の森の妖精たち、アースレディースがついている為、森の獣が蘭王女を傷つける事など有り得ないのです。

それでも、心配性のヒカルのために、蘭は小屋へ入りました。

「ヒカルさん、ごめんね。私に付き合わせてこんな森の中に来たから、智明兄様にも会えなくて」

夕食を食べながら、蘭王女がそう言いました。

「まあ、蘭姫様、そのような。大体、私とあの方とでは、身分が違いますし」
「身分なんて・・・古来貴族の出でなくてもお妃になった例なんてたくさんあるし、ましてや智明兄様は6男で、まず王位を継ぐ事もないわ。拘らなくっても良いと思うの。大切なのはお互いの気持ちでしょ?」

蘭王女は、薬師としての修行を積んでいる智明王子を一生懸命に補佐しているヒカルの事が大好きだったので、出来れば想い合う2人が結ばれて欲しいと心の底から願っているのでした。



  ☆☆☆



蘭王女は、ベッドに向かいました。
骨折した足の指も殆ど痛まなくなっています。

「まったくもう、みんな心配性なんだから・・・」

蘭王女は苦笑いしました。

今回の「病気」とは、蘭が王侯貴族のたしなみとして習い覚えている空手の練習中にぶつけてしまった右足小指の骨折で、城にそのまま居て治るものだったのですが、国王始め、兄達まで大騒ぎして療養の為にここに連れて来られたのでした。

けれど、確かに森の空気は体に良く、傷の治りも早いようでした。
この分だと、後数日もすれば帰れそうです。

蘭は布団にもぐり込みました。

「今夜もあの方の夢を見られたら良いな・・・」

実は、空手の腕が教師も舌を巻くほどに上達している蘭王女が練習中に怪我をしてしまったのは、「恋患い」の所為だったのです。

「でも、あの方はどこの誰なのか・・・そもそも実在しているのかどうかさえわからないのよね・・・」

そう、蘭王女が恋する相手は、このところ毎晩夢に現れる青年だったのでした。




夢の中で蘭王女は、夢では何度も訪れた事があるけれども現実では見た事のない宮殿に来ていました。
蘭が生まれ育った城とは建築形式も微妙に異なっています。
月の光を浴びて、騎士が身に付ける黒いマントを羽織った青年が立っていました。
蘭が毎晩夢に見る青年です。
その青年が振り返って蘭を見詰めました。
そして口を開きます。

「やあ。また会えたね」

深みのあるテノールに、蘭はうっとりと聞き惚れました。
蘭王女が青年の声を聞いたのは初めての事でした。
夢の中で毎晩会っていましたが、いつもは言葉を交わす前に目を覚ましてしまっていたのです。

「私、蘭っていうの。あなたは?」
「俺は、新一。工藤新一だよ」
「工藤・・・?」
「工藤王国の王太子なんだ。君はどこに居るの?現実に存在しているんだよね?」

工藤王国の名は、確かに耳にした事があります。
蘭は、この方は実在するのかも知れないと思い、心が震えました。

けれど、蘭が更に言葉を継ごうとした時、宮殿も新一王子の姿もぼやけてしまい、気が付くと朝の光の中で蘭は目を覚ましていたのでした。





「おい、お姫さん、てえへんだ!」

この近くに住む木こりの剣崎が、蘭たちが朝食を摂っている所へ息せき切って駆け込んで来ました。

「剣崎さん、どうなさったの?」
「城が・・・魔女に乗っ取られた・・・!」
「えっ・・・?」
「魔女が、ベルモットが本性を現しやがって・・・王様やお妃様や王子様達はどうなったのかわからねえ!この国も、もうおしめえだ!魔女による暗黒の支配が始まるんだ・・・!!」

蘭王女は顔色を変えて飛び出し、そのまま走って王城へ向かおうとしました。

しかし、それを阻む者達が居ました。
森の妖精、森の乙女達であるアースレディースの4人です。

「いけない、姫!あなたが今行った所で、あの魔女の餌食になるだけよ!」
「今は辛抱して、時期を待って!」
「あなたまでやられてしまったら、誰も王国を救えなくなる・・・!」

妖精達は必死に蘭王女に取り縋りました。

「はなしてぇ!!お父様達が・・・!!」

蘭王女は暴れて4人を振り払おうとします。
侍女のヒカルは、真っ青になってその場に座り込んでいました。



そこへ、突然白鳥達が空に現れ蘭の所に舞い降りて来ました。
全部で11羽の白鳥です。
蘭は暴れるのを止めてじっと白鳥を見詰めました。
白鳥達も綺麗な瞳で蘭王女を見詰めます。
蘭王女がハッとして、

「兄様たち・・・?」

と問い掛けると、白鳥達は頷きました。
蘭王女には、それが兄達の変わり果てた姿だという事が一目でわかったのでした。
白鳥達が蘭王女に擦り寄り、蘭王女は白鳥達を抱き締めて涙を流しました。
白鳥達の中に黒鳥が1羽混じっています。どうやらそれは蘭の三つ子の兄・真王子のようです。
首の周りに優雅な黒い襟模様がある白鳥が1羽いるのは姉の由美王女、そして、小白鳥が2羽居るのは、蘭の弟達である元太と光彦の双子の王子達のようでした。
白鳥の1羽がヒカルの所に寄って行きます。

「智明様・・・?」

その白鳥は頷いてヒカルに身を摺り寄せました。
ヒカルは涙を流してその白鳥を抱き締めました。







「魔女の呪いだわ・・・」

森の乙女の1人、沖野ヨーコが呟きました。

「何とか、元に戻す方法はないのでしょうか?」

蘭が縋る様な眼差しで魔法も使える森の妖精達を見て尋ねました。
2人目の森の乙女、星野輝美が首を横に振って答えます。

「ベルモットの魔力は強力過ぎて、私達の力ではどうにも・・・」

3人目の森の乙女、草野薫が言います。

「呪いは、必ず解く方法はある筈よ。けれどそれは、そう簡単には判らない様になっているの」

そして4人目の森の乙女、岳野ユキが言いました。

「蘭王女。あなたが呪いを逃れたのは不幸中の幸い。王子様達の呪いを解いて毛利王国を救うのは、きっとあなたにしか出来ないわ」

蘭王女はその瞳に、きっと兄達や父王と母王妃を救い出すという決意を込めて頷きました。











ところ変わって、こちらは工藤王国の都・米花京。



そこにある米花宮で、有希子王妃は今日も頭を痛めておりました。

「くぅぅ、美和子にも全く興味を示さなかったか・・・新ちゃんったら、本当にどこか体が悪いのじゃないかしら?はっ、それともまさかもしや、いつもつるんでいる平次くんと禁断の・・・」

優作王が、(本人達が聞いたら怖気を振るいそうな)あらぬ妄想を始めかけた王妃に声を掛けます。

「有希子、そんなに焦らなくても・・・新一はまだ若いのだから」
「若いと言っても、もう17歳よ!私達が結婚した時より年上になってしまったのよ!あんなに女に興味を持たないなんて・・・このままだと跡継ぎが望めなくて、工藤王国は潰れてしまうわ!」

優作王は、自分も有希子姫と巡り会うのがもっと遅かったら似たようなものだったろうし、新一王子はまだそういった相手と巡り会っていないだけだと内心思いましたが、焦っている有希子王妃にそう言ってもかえって興奮させるだけだとわかっていた為、それ以上は何も言いませんでした。

結婚してから9年を経てやっと1人息子を授かった有希子王妃が、まだまだ女性に興味を示そうとしない王子の事で焦るのも、ある意味無理ない事だったのです。

「新一には、毛利王国の王女と娶わせるという約束がしてあったのではないのかね?」
「ええ。でも、もうお互い17歳になるのに音沙汰ないから、英理もきっとその約束忘れてるわ。それに、絶対にその子じゃないと駄目だって訳でもないし、とにかく早く誰か良い娘と結婚してくれれば、私はそれで良いわ」

優作王は苦笑しました。
最近の有希子王妃が、自分の手元にいた選りすぐりの侍女達を、次々と王太子付きにしていたのを知っているのです。

最初は工藤王国内の半独立国である服部公国の貴族・近衛師団長遠山の娘である和葉を、次に諸国をまたにかける大商人である鈴木カンパニーの会長・鈴木史郎の娘である園子を王太子付きの侍女にしました。
この2人は、行儀見習いと修行の為に、有希子王妃が預かっていた娘達で、有希子王妃のお気に入りでした。
新一王太子のお手付きになれば即結婚式とまで思い定めて送り込んだ娘達でしたが、それぞれ、新一王子との間に信頼感と友情は育んだものの、恋愛関係には一向に発展しなかったのです。
同じ年頃だと駄目なのかも知れないと思い、可愛い年下の娘をと思って13歳の歩美を送り込んでみましたが、文字通り「妹」みたいな存在になっただけでした。
ならば年上をと思って先程送り込んだのが23歳の美和子でしたが、王宮内にファンが多い美和子も、新一王子の心を異性として惹き付ける事は出来ませんでした。

「ああ、どこかに居ないものかしら、新ちゃんの心を揺り動かす事の出来る女性が・・・」

有希子王妃は深い深い溜息を吐きました。







米花宮内にある王太子の私室に、工藤王国内の半独立国である服部公国の公子・平次が訪ねて来ました。

「工藤、心ここにあらずって顔しとるで。最近のお前、何やおかしいんちゃうか?」
「ああ・・・服部か・・・」

新一王太子は、学友であり親友である平次にボーっとした目を向けました。
平次公子は眉を顰めました。
新一王子がこんな風に覇気のない眼差しをする事など滅多にないのです。

新一王子は、昨夜の夢で初めて言葉を交わした少女の事を考えていました。

『蘭、か。あの子に相応しい良い名前だ・・・それに、可愛い綺麗な声だったな。現実に居るのだろうか?いつか、会えるだろうか?』

工藤王国の新一王太子が生まれて初めて心を奪われた女性は、夢の中でのみ出会った事のある乙女だったのです。







(2)に続く



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(1)の後書き座談会

新一 「今回はまたえらくぶっ飛んだ話だな・・・」
蘭  「童話が元になってるからね」
英理 「私、12人も子供が居るの?頭が痛いわ・・」
参悟 「自分は、尊敬する毛利探偵の長男になれて、光栄の極みであります!!」
小五郎「俺は、おめえのような息子が出来ても嬉しくねえよ」
参悟 「そ、そんな・・・!毛利さん!」
重悟 「兄貴、あんたの弟というのはまあ順当だと思っているが、探偵風情の息子というのは、俺も承服出来ねえな」
参悟 「重悟、毛利さんに何て失礼な事言うんだ!」
新一 「やれやれ・・・横溝刑事の方がおっちゃんよりよっぽど優秀なのにな」
小五郎「新一、貴様〜〜〜〜!!」
新一 「ててて!おっちゃん、俺、この話ではまだ何もしてねえだろ!」
小五郎「これからするんじゃねえか!蘭にあんな事やこんな事を・・・!」
蘭  「え?あんな事やこんな事って?」
小五郎「蘭を磔にしようとすんだろうが!許せ〜ん!!」
蘭  「そっか・・・新一、私が悪い魔女だって讒言を信じてしまうんだね・・・」
新一 「俺が蘭相手にそんな事する訳ねえだろ!蘭、俺を信じてくれ!」
小五郎「新一、貴様あ!」
英理 「あら、アンデルセン童話の通りだったら、私は死んで、あなたがベルモットさんを後添えにするお話になるわねえ・・・」
小五郎「な、何言ってんだ英理、俺が英理以外の女と結婚するなんて、そんな事がある筈は・・・」
英理 「説得力がないわね、覚悟はいい?」

小五郎が逃げ出し、英理がそれを追って退場する。

平次 「せやけど、この台本見たら、アンデルセン童話とは色々と設定が違うてるんやな。英理はんも最後まで無事なようやし」
蘭  「そっか、良かった・・・」
和葉 「でも早よ教えてあげへんと、毛利のオッチャンやばいんちゃう?」
新一 「もう手遅れかも・・・」



 (2)旅立ち・海を越えてに続く。