湖畔の怪異



byドミ



(4)



ペンション「レイクサイド」での、3日目の朝。


「・・・あの2人・・・出来たわね」
「うん、間違いなさそうね」

園子と絢は、新一と蘭の2人と同じテーブルに着いた事を、心底後悔しながら、言葉を交わしていた。
今朝の新一は、昨日の朝と違い、とてもスッキリした顔をしていたし。
2人一緒にいると、別にひっついている訳でもないのに、ラブラブイチャイチャオーラが全開で、近くにいると火傷しそうだった。


「まあでも、結果的に、旅行を企画した園子のお手柄じゃない?」
「あ〜。そうかもしれないけど・・・な〜んか、複雑・・・」
「・・・園子。もしかして、工藤君に焼きもち?」
「あ〜、違うわよ。別に、蘭が取られちゃったとか、そんなんじゃ。だって、蘭は小さい頃から、新一君のもんだもん。たださあ。あそこまで出来上がっちゃうと、からかう醍醐味もなくなっちゃうじゃない?」
「う〜ん。それは確かにそうかも・・・」

今の2人なら、からかわれても、どこ吹く風で、2人だけの世界を作っていそうである。
園子には、それが何となく寂しかった。

「まあ、でも、イイ旅行だったわ。今回、何もない山奥で退屈すんじゃないかと思ってたけど、それもなかったし」
「そうね。あの2人の歴史的瞬間にも立ち会えたし」
「そうそう」

旅行が終わったら、後は受験一色の高校生活に戻る。
高校3年生に、夏休みはない。

園子は、椅子に座ったまま、う〜んと伸びをして言った。

「あ〜あ。2年生の夏休みが、懐かしい。色んなとこに遊びに行ったし。真さんとも会えたし」
「工藤君は、休学してたんでしょ?」
「あ〜、まあ。休学してたって言うか・・・まあ、そうなんだけどね。事件にかまけて」
「わたしは、高校が別だから、工藤君がマスコミに出始めた時は、そりゃもう、ビックリしたわ。その後、蘭のお父さんまで『眠りの小五郎』で有名になっちゃって、更にビックリ。コンビニで蘭と園子に助けてもらった時って、工藤君は休学してたんだよね?」
「でも、蘭は自分の推理に自信がなくて、実はあの時携帯で、新一君に助けを求めたんだよ」
「もう、本当に昔から、夫婦してたもんねえ、あの2人」

園子と絢の会話は、そこまで小声という訳ではないのだが。
新一と蘭の耳には全く入っていないだろう事が、一目瞭然だった。
2人だけの世界を作って会話を繰り広げている。

「ねえ、新一。出発まで、まだ少し時間あるでしょ?湖の傍を散歩しない?」
「オメーは、昨日散々歩いたんじゃねえのか?」
「うん、でも新一は、ろくに何も見てないでしょ?とっても綺麗な景色のとこがあったんだ。新一に見せたいの、駄目?」

新一は、綺麗な景色にさして興味がある訳ではなかったが、蘭がせっかく「新一に見せたいの」と言ったのだから、それを無碍にする筈もない。
2人は、食後のコーヒーを飲み終わると、立ち上がった。

「園子、絢。今からちょっと散歩するけど、一緒に行かない?」

蘭が突然園子達の方を向いて言ったので、園子も絢も、蘭に自分達が見えていたのかと逆にビックリした。

「いい。わたし疲れたし、出発までゆっくりしてるわ。ねえ、絢?」
「うん、2人で行っておいで?」

園子と絢は2人とも、「たとえ散歩する気があっても、絶対アンタ達にひっついては行かないわよ」と、内心で突っ込んでいた。


   ☆☆☆


「あ〜。風が気持ちイイ〜!」

蘭が、両手を広げて空気をいっぱいに吸い込む。
山中でも、真夏の今は暑いけれど、まだ朝の時間帯、湖を渡る風はさわやかだった。

「ああ。そうだな」

そう言いながら新一は、景色ではなく蘭を見詰めて、目を細めた。

「新一?」

蘭が、新一の視線を感じてか、振り返る。
その動作にも、風になびく髪にも、ときめいてしまう新一だった。

「どうかしたの?」
「あ・・・いや・・・」

物心ついた時から、見飽きる位ずっと、傍にいるのに。
どうしてこうも、蘭の全てに見惚れてドキドキしてしまうのか。
新一は少し苦笑しながら、数歩先に行っている蘭の傍まで歩いて行った。
そして、並んで、湖面とそこに続く山々を見る。

湖の水は、どこまでも碧く澄んでいて。
空も、どこまでも青く光溢れていて。
この水の中に、多くの命が失われたなどと、信じがたい。

もしも、想いを残して死んでしまった者の魂が、幽霊となってその場に留まってしまうのならば。
あの洋館に閉じ込められていた桜の魂は今頃安らいで、あの世に向かっているかもしれないけれど、アザミの魂はいつまでもこの湖に留まっているのだろうかと、新一は考えてしまい。
頭を振って、その考えを頭から追い出した。

「あ!鳥!」

蘭が指さす。
種類までは分からないが、木陰になっている湖面を、数羽の水鳥が滑って行く。

新一は、湖面を指さし微笑む蘭の姿に、またも見惚れる。


蘭ほどに、光が、命が、ふさわしい存在はいないと、新一は思う。
そして、新一にとっては、蘭の存在が、光であり命でもある。

昨夜、新一は確かに、長年の想いを遂げ、蘭と一つになった筈なのに。
蘭は、今迄通り、汚れを知らない少女のままだ。

新一に愛された事で、艶を増してはいるけれど。
それでも、純で可憐な美しさはそのままだ。

『エンジェル・・・』

蘭を天使に例える人は多い。
人である新一に、捕まえる事など、叶わないのではないか?
捕まえたと思っても、手の中をすり抜けて飛んで行ってしまう。

新一は、頭を横に振って、埒もない夢想を追い出した。

蘭は、湖に突き出した木製の桟橋を見つけ、軽やかにその上を駆けて行く。

「新一!」

桟橋の端で、振り返って新一を呼ぶ蘭に、手を挙げて応え、新一も桟橋に足をかけた。


   ☆☆☆


「あ。おはようございます!」

食堂に姿を現した柏木に、園子と絢が声をかけた。

「昨日は、ありがとう。こちらが逆に、すっかり世話になったね」
「ああ、いや、そんな。わたし達は、新一君・・・工藤君と、蘭とに、ひっついて回っただけだから。ねえ、絢?」
「そうですよ。工藤君は探偵だし、蘭は・・・工藤君のパートナーだけど、わたし達は、ねえ?」
「いやいや。あなた達皆のお陰だよ。・・・ところで、その探偵君とパートナーは?」
「ああ、2人なら、湖の方に散歩に・・・」

園子の言葉に、柏木は難しい顔つきをした。

「湖に?2人で?」
「ええ。何か?」
「ああ、いや。桜がいたのは、あの湖ではなかったが、アザミが死んだのは間違いなくあそこだったから・・・」

柏木の言葉に、園子と絢は、顔を見合わせた。

「実際に、カップルで訪れて、女性が足を取られたケースは、今迄にもあったからね」
「昨日、ツアーの時は、結構湖の際まで行ったけど、別に何ともなかったですけど?」
「工藤君は、ツアーには同行してなかっただろう?」

園子と絢は、再び顔を見合わせた。
嫌な予感がして、立ち上がる。

そして、柏木・園子・絢の3人は、湖に向かった。


   ☆☆☆


桟橋の端で。
運動神経抜群の筈の蘭が、くるりと振り返った拍子に、足を滑らせ、桟橋の上に尻もちをついた。

「おい。何やってんだよ?」

新一が笑って近付いてくる。

「うん、何か滑っちゃって・・・」

蘭は、ぺろりと舌を出し、苦笑いして、立ち上がろうとした。が。


「えっ!?」

何か、冷たくぬるりとしたものに足を掴まれて、蘭は動けなかった。

「ちょっ・・・いやっ!何?」

湖の方を振り返った蘭は、水膨れした女が、ドロリと腐りかけた目で蘭を睨みながら蘭の足を掴んでいる姿を見て、思わず大きな悲鳴をあげた。


「蘭っ!?」

新一が叫んで駆け寄る。
何か強い力で湖に引き込まれようとしている蘭は、必死で桟橋にしがみついていた。

「蘭!」

駆け寄った新一が、必死で蘭を掴んで自分の方に引き寄せた。


「いやあ!やあああああっ!!」

蘭は恐怖のあまりパニックを起こしていた。

「蘭!」

新一は、しっかりと蘭を抱き締め、踏んばるが、湖の中から引っ張る力も、信じられない程に強かった。

「アザミさん、お願い、止めて!」

蘭が泣き叫ぶ。

「アザミだって!?」

新一が驚いて蘭の足先を見たが。
新一の目には、蘭が見ているらしいものは、何も見えない。

「蘭!錯覚だ!幽霊なんか、いやしねえ!」
「いるの!わたしの足を掴んで、引っ張ってるの!新一には見えないの!?」
「蘭!霊なんか怖がるな!オメーが怖がらなきゃ、幽霊は何の力も持てない!」

新一が叫ぶ。
新一の言った事は、一面真理ではあったのだが、いかんせん、パニックを起こしてしまっている蘭の耳には届かない。

「いや、いやああああっ!」
「蘭、蘭!お願いだから!オレの事だけ考えてくれ!オメーがいねえと、オレは・・・!オレの為に、生きようとしてくれ、頼む!」

新一は、死んでも離すまいと蘭を抱き締めながら、必死で言い募った。
恐怖に囚われている蘭だったが、新一の必死の言葉が、蘭の琴線に触れた。

『わたしは・・・今ここで、死ぬ訳には行かない!』

足に触れる冷たくおぞましい感覚、目に映る水膨れした遺体への恐怖、それに打ち勝つ為の勇気を、振り絞る。
パニックで動けなかった蘭が、自分の力で、足を引っ張る何ものかに抵抗を始めた。


不意に、蘭の耳に、優しい声が聞こえた。

「彼を助けてくれて、ありがとう。あなたは、あなたの大切な人と共に、生きて」

恐怖のあまり、いつの間にか目をギュッと瞑っていた蘭が目を開けると。
生前の美しさそのままで、あの帽子とワンピースをまとった、桜が。
蘭の足にまとわりついている水膨れの指を、ほどこうとしてくれていた。

「桜さん・・・」

幽霊だと分かっていても、蘭はもう、桜の事は、怖いと感じなかった。

「わたしは・・・新一の為に、生きなきゃ!」

蘭が完全に恐怖に打ち勝った時、蘭の足を掴んでいたものが、するりとほどけた。




ようやく、蘭を安全な所に引き上げた新一は、肩で息をしていた。
普段はおよそ、恐怖というものを知らないこの男が、震えながら蘭を抱き締めていた。

「蘭・・・蘭・・・蘭っ!」

蘭も新一にギュッと縋り付いた。
新一が、蘭を失うかもしれないと恐怖した事を、蘭は正しく理解していた。
これ程までに深い愛を蘭に注いでくれている新一に対して、どうして「新一が抱いている気持ちは恋愛感情じゃないのかも」なんて、疑う事が出来たのだろう?

「新一・・・ごめんね・・・ありがとう・・・」
「はあ。マジ、寿命が縮むかと思った・・・」

ようやく落ち着いたらしい新一が、そう言った。


「ら〜〜〜ん!」
「お〜〜い、無事かあ」

園子達と柏木の声が、聞こえて来た。
3人が駆け寄って来る。

蘭は、新一に助け起こされて、立ち上がろうとしたが、足がガクガクして力が入らなかった。
おまけに、ミュールは湖の中に落ちてしまった。

「きゃっ!」

新一に横抱きに抱えあげられて、蘭は思わず小さな悲鳴をあげる。

「お、降ろしてよ!自分で歩けるわよ!」
「裸足で歩くと、怪我すっぞ」
「で、でも・・・重いでしょ?」

蘭が、赤くなって消え入りそうな声で言った。

「別に何てこたねえさ。今迄だって、何度もこうやって抱えた事あるし」
「ええっ!?ウソ!?」
「まあ、蘭の意識がある時にこうするのは、初めてだけどな」

蘭は、それ以上突っ込むのが怖い気がして、押し黙った。


   ☆☆☆


「だからな!オレには何にも見えなかったって!」


一同は、ペンション「レイクサイド」の食堂でお茶を飲んで、ようやく人心地ついていた。

蘭が、1人の幽霊から足を引っ張られ、もう1人の幽霊から助けられた話をしたら。
新一は憮然としながら「オレには見えなかった」と言った。

園子達は、遠くから、桟橋で何か起きているらしい事は見えていたけれど。
蘭を引っ張っていたものが何だったのかまでは、見えなかった。


「まあ、近くにいても、わたしらには見えなかったかも、しれないけどさ」
「うん。あの洋館でも、蘭以外誰も彼女の姿を見てないしね」

園子と絢がそう言い合った。
彼女らは決して、蘭の言葉を信じていない訳ではなく、自分達は「見えない人」なのだろうと、解釈している。

幽霊でも良いから、会いたいと願っていた柏木は、30年間、桜の姿を一度も見た事がないが、蘭はここ3日の内に、数回に渡って見た事になる。
柏木は、苦笑いしながら肩を落として溜息をついた。


蘭の目には、足に残る赤い痣が、くっきりした指の跡の形に見えて仕方がないのだけれど。
他の人の目には、「そう言われれば、指の跡かも」程度にしか見えないと聞かされて、いささか複雑な気分だった。

「わたし、怖がりだけど、今迄『見た』事なんてなかったのに。何で、ここでだけ何度も見えたんだろう?」

蘭は、怖いやら、他の人には見えてないと聞いて悔しいやら、複雑な気分だった。

「新一君。いかに現実主義者でもさ、愛しい彼女の言う事なんだから、もうちょっと信じてあげても良いんじゃないの?」

園子が、新一を半目で見ながら言った。

「あのな。幽霊がいたと信じたところで、何の事態解決にもなんねえぞ?」

新一が、吐き捨てるように言った。

「どういう意味よ?」
「オレは、霊能者じゃねえ。幽霊相手に戦う術は持たねえ」
「新一?」

新一の言葉に、蘭は目を見開いた。

「だったら、幽霊なんかいねえって思った方が、良いんだよ」
「確かに、工藤君の言う通りだね」

柏木が、苦笑いをしながら言った。

「幽霊は、よほど力のある悪霊でもない限り、直接人を殺す事など出来ないんだ。大抵、人の心の弱い部分に付け込んで、引きこもうとして来る。悪霊と闘う力を持つ霊能者でもない普通の人が、霊に対抗しようと思うのなら、霊の存在なんか信じずに、気を強く持つ事が大事なんだ」
「えっ?そんなもんなんですか?」

園子が、驚いて柏木に聞き返した。

「ああ。そんなもんだよ。現実世界を生きようとする者だったらね」

新一は、黙ってコーヒーを口にし、それ以上言及しようとはしなかったから。
本当のところは、霊に関してどう考えているのか、蘭も含めて聞く事は出来なかった。

蘭は、湖に引き込まれようとした時に、新一が叫んでいた事を思い出す。
確かにああいう場合には、恐怖に負けないで、生きようと強く願う事が大事なのだろうと、思った。


「それと。興味本位で心霊スポットに出かけたり、面白半分に降霊術や百物語をしたりなんか、しない方が良いよ。あれは本当に、悪いものを呼び寄せる可能性が高いからね」
「柏木さん!それって酷くないですか?柏木さん自身が、心霊スポットツアーで客寄せしたりしてるじゃないですか!」

蘭が思わず少しきつい口調で、そう言った。

「ああ、そうだね。私自身、そうやって客寄せして、このペンション経営を成り立たせている。私は、桜がいなくなったあの日から、生ける屍同然だったから、別に良いが。お客さん達には、悪い事をした」

柏木が、悲しげな顔で言った。

「桜が、君にだけ姿を見せたのは、きっと君にシンクロする部分があったからだろうと思う。
桜も、幽霊が嫌いだったし。優しい女だったが、私が間違った事をしようとしている時は、今の君のように、ピシッと怒ってくれたものだ」

柏木の言葉に、蘭は胸を突かれ、それ以上何も言う事が出来なかった。

「もう、心霊スポットツアーは、止めるよ。今予約を受けている分には責任があるし、アルバイトの子も雇っているから、その期間は続けるけれど、それで終わりにする。
アザミさんなのか他の誰かなのかは分からんが、性質の悪い幽霊があの湖に居るのは、確かなようだし。
それに、私の目的の半分は、工藤君のお陰で果たせたしね。残り半分は・・・いずれ、私が天寿を全うした時に、果たせるのだろう」



「蘭。・・・園子、七川。そろそろ、時間だ。帰ろうぜ」

新一が口を開き、一同は魔法が解けたような顔をした。

4人は、荷物を持って、送迎用のマイクロバスに乗り込んだ。
オーナーの柏木が、玄関口まで出て、一行を見送った。

「あっ!」

見覚えのある帽子とワンピースの柄が、柏木の傍らに見えて。
後ろを振り返っていた蘭は思わず声をあげた。

「蘭?どうした?」

蘭の隣に座る新一が、蘭を見詰めて言った。

「柏木さんの隣に・・・」

新一も振り返って、柏木の方を見る。

「柏木さんの隣に?」
「・・・あ・・・ごめん・・・何でもないの」

やはり新一には見えていないらしいと察して、蘭はもうそれ以上は言おうとしなかった。

桜は、ずっと30年間、柏木の傍にいたのかもしれない。
けれど、悲しいかな、柏木には見えていないだけなのだ。
お互いに「会いたい」と強く願っているのだろうに。

「蘭?」

新一が、何かを感じて案じたのだろう、蘭の手を握って来る。
蘭は、新一の手を握り返し、新一に笑顔を見せて言った。

「新一。わたしはずっと、生きて新一の傍にいるからね」
「あ、ああ・・・」

新一が、頬をうっすら染めて、頷いた。

「その代り!新一も、約束して?」
「蘭?」
「死んでも戻って来るとか、そんなの、ナシだからね!」
「・・・ああ。オレも、ずっと生きてオメーの傍にいるよ」


「結局、わたしらって何だった訳?」
「園子、拗ねないの。キューピッドをやったと思えば」
「まあ、そりゃ、そうなんだけどさあ」
「何よ!園子にだって、ちゃんとイイ人がいるんだから、まだ良いじゃん。わたしなんかねえ!」

2人だけの世界を作っている新一と蘭を横目に、園子と絢が、不毛な会話を繰り広げていた。


いつの間にか、新一と蘭の会話が途切れたので、園子と絢が恐る恐る様子を見てみると。
2人ともいつの間にか、寄り添って眠っていた。


「やれやれ。帰ったら、受験勉強が待ってるわ」

園子が深く溜息をついて言った。
絢が、苦笑して頷いた。


ずっと、窓外に見えていた湖も、いつの間にか山に隠れて見えなくなってしまった。


こうして。
新一と蘭にとって、生涯忘れられない高3の夏の旅は、終わりを告げたのだった。



湖畔の怪異・終


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<後書き>

「夏らしく、怪談で、新蘭」というコンセプトで。
いつものドミが書くものとは、少しだけ毛色の変わった話になったと思いますが、如何でしょうか?

あんまり怖く描けなかったけど、あれが精一杯です。
私自身、怖いのが駄目なんで(汗)。

突貫工事だったので、細かい詰めが出来てなくて、すみません。
オリキャラの昔話をあんまり細かく書き込むのもどうかなあと思ったので、ステロタイプになってしまいました。
毎回、オリキャラには名前で苦労します。
柏木さんは適当、桜さんとアザミさんは、「花の名前」にしました。

個人的に、新一君は、幽霊を見たり信じたりしちゃいけないと、思っています。
その理由については、作中で、オリキャラの柏木さんに代弁させてます。


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