Side-S



Byドミ



第1話 殺人犯、工藤新一



は、ハックション!

ったく。
風邪引いちまってるのに、湖に落っこちたりして、エライ目に遭ったぜ。
おまけに、新一の体に戻ったせいで、服は破けちまうしよ。


オレの名前は工藤新一、高校生探偵だ。
だが今のオレは、謎の組織に毒を飲まされ、子供の姿になっちまい、江戸川コナンと名乗っていた。

・・・筈だったが、つい今しがた、突然元の姿に戻っちまった。


まあ、濡れた服を着たままの方が、体を冷やしちまうから、とりあえず裸なのは、まあ良いとしても(誰もいねえしよ)。着替えがねえのが困る。

携帯も水没してオシャカになっちまったから、服部に連絡も取れねえし。
確か、あの山小屋には死羅神様の衣装があった筈。少し気が引けるが、それを拝借するか。


小屋の中に・・・誠人さんはいねえな。
会って話をしたかったんだけど。



オレの写真が・・・切り刻まれている。
やっぱり、誠人さんはオレの事、そこまで憎んでるって事なんだな・・・。
オレが憎まれるのは別に構わねえが。
一体、何があったんだ?


そもそも、オレを小屋に閉じ込めたのは、どう考えても、誠人さんだよなあ。
やはり、事件の真実の重みに耐え切れなくて信じられなくて、オレの事を恨んでいる、って線だろうか?彼が推理ミスと言ったのは、一体?


とりあえず、服、服。
あった、これだ。
誠人さんとは背格好もほぼ同じだから、サイズも合うな。


ふう。
とりあえず、裸じゃなくなって一息ついたぜ。


それにしても、突然新一の姿に戻るとは。阿笠博士から貰ったあの風邪薬が、本当は風邪薬ではなく、おそらくは灰原の作った解毒剤の試作品だったってとこか?
どうりで全然風邪が良くならねえと思ったぜ。

にしても、灰原も薬の隠し場所、もうちっと考えろよな。
うっかり博士が飲んだり少年探偵団の誰かに飲ませてたりしたら、どうなっちまってたと思うんだよ?
せめて「劇薬注意」の札を貼っとくとかよ。
あいつも、しっかりしてそうで、意外なとこで結構抜けてんだよな。

けど、灰原のヤツ、研究は進めてくれてたのか。
前のが確か、36時間くれーだっだから、今回のは2日位か、もうちょっと位効く筈だよな?
早く蘭に会いてーけど、この格好じゃあ、あんまりだし。先に服部に会って、服を借りるか。


とにかく、村に向かおう。


ん?あの騒ぎは何だ?
妙に人だかりがしてるが・・・。

「工藤新一が湖に浮かんでたぞ!」

村人の誰かが叫んだ。
何だって!?
オレはまだ、誰とも会って・・・。


何だあいつは!?
オレと同じ顔してやがる!


一体何者!?って、たぶん、誠人さんだよな?
オレを山小屋に閉じ込めたのが彼だから・・・にしても、あの顔は!?

彼には、お金も時間もたっぷりあったから、おそらく整形したんだろう。
にしても、一体何の為に?

彼が何を考えてるか、すげー気になるが、この騒ぎの中、迂闊に出て行けねえぞ。村人達だけじゃなくて、蘭達まで駆けつけて来てるしよ。


皆、あいつの事、オレだと信じ切ってるな。
まあ、当たり前か。


服部達があいつを連れて行く。
とりあえず、気付かれないように後をつけよう。


皆で事件のあった家に向かってるな。
誠人さんは、あの家で一体、何をしようとしてんだ?
って、考えてみりゃ、あそこは元々彼の家か。


お、出て来たぞ。


げっ!
誠人さんの背中、あの膨らみは・・・拳銃か!
やばい、今オレが出て行くと、彼は何をすっか、分かんねえぞ。


しゃあねえ、暫く様子を見っか。

コナンの不在に関しては、服部が何とかしてくれるだろう。
服部も彼の事を工藤新一と思い込んでるだろうから、コナンから何らかの事情で元の姿に戻った事は、検討をつけてる筈だ。


時間はある筈だし、明日が勝負だな。


オレが、時間的見通しの甘さを思い知らされるのは、翌日の事になる。




続く





 第2話「新一の正体に蘭の涙。」に続く。