恒例のお、ま、け…。(その1)
同じ頃、会場近くの居酒屋にて…。
「はぁ…。」
其処をきりもみしている女将はもう数え切れない程のため息をついていた。
と言っても、別に店に閑古鳥が鳴っている訳ではない…。
客は大入り満員でしかもお酒をぐいぐいと(文字通り自棄酒の様に)飲んでいたのだ。
しかも、自分に絡んで来たりもしないのである。
では、何故ため息をつくのか…?
それは客達の雰囲気の暗さであった…。
「聞いてくれますか?毛利さん、遠山さん…。青子は男手1つで育てたとは思えない程、明るくて気立ての優しい子に育ってくれたんですよ…。ワシがこんな仕事をしているから構ってやれないにもかかわらず文句一つ言わない良い子でねぇ…。」
酒を煽りながら涙ながらに青子の昔話を続ける銀三…。
「判ります。判りますぞ、中森警部殿。蘭の奴も幼い時に英理と別居しましてねぇ…。」
そう言って相槌を打つ小五郎…。
「そうですなぁ…。警官ともなるとなかなか家にも帰れませんよってに、和葉の奴も寂しい思いをさせてしもたやろし…。」
そう言って2人と共に酒を煽る遠山…。
3人は…、いやこの店に居る全ての客が愛する娘を花婿に奪われた父親であった…。
彼等は口々に娘の昔を思い出し、すっかり綺麗になって幸せそうな彼女達を見て自分の使命が終わった寂しさを酒で紛らわしていた…。
彼等のどんよりとした暗い宴会は彼等の妻(小五郎は別居状態の、そして銀三は快斗の母親が)迎えに来るまで続いたそうな…。
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