そして、月日は流れて…。


蘭が24歳になる今日、2人は結婚する事になり内輪だけのパーティを開いた。
その参加者は服部平次とその婚約者の遠山和葉、そして蘭の親友鈴木園子であった。
もちろん、蘭と新一の両親も参加していた。


「と言う話があったのよ…。」

有希子は今までの話を皆に話して聴かせた。
全てを聴いた園子は心底関心した顔で呟いた。

「さすが、語る男は違うわね…。新生児でも奥さんの危機を感じ取れるなんて…。」
「あのな…。こんな与太話信じるなよ園子…。偶然に決ってるだろ?」
「いや、工藤やったら在りえん事ないで。何しろ、ちっこなったり大きなったりしとったんやから…。」
「服部…、お前本当に西の名探偵と言われる男か?常識で考えろよ!!新生児の俺にそんな真似できねーよ!!」
「あら?そうかしら?あの後、私が新ちゃんの事に気が付いたら、新ちゃん安らかに眠っていたのよ?今まで激しく泣いて私をうろたえさしたのは一体何だったのと思わせるぐらいに。」
「奥さんの元気な産声を聞いて安心したって言う訳ね…。」
「単に泣きつかれて寝てしまったんじゃねーのか?」
「ふーん…。どうあってもとぼける気なのね?じゃあ新ちゃんこれはどうかしら?」

そう言って取り出したのは旧式の小型ビデオテープ…。
それを早速デッキにセットして再生した。

「これはね、新ちゃんの成長の記録を撮っておこうとしたテープの一つなの。当時は未だ長時間撮れるテープが無いから大した事は映って無いけど、とっても面白い事が映されているわよ…。」

そう言って有希子はテープを再生した。
そこにはいわゆる親以外の人間が観ても何も面白くない赤ちゃんが動いたり、ぐずったりする映像であった…。
それを見た新一は心底呆れた顔になりこう呟いた。

「赤ちゃんが動く様子なんて見せてどうすんだよ…。ましてや俺自身のを…。」
「確かに、他の者がみてもおもろい事もなんも無い映像やな…。」
「重要なのはこの後よ、看護婦さんにお願いして撮ってもらったの…。」

そこには、新一を抱いた有希子が映し出されていた。

『さぁ、新ちゃん。今日は蘭ちゃんと初めて会うのよ…。と言っても、ガラスごしだけどね。』

そう言って、有希子は新生児室に居る看護婦に蘭を抱いてもらい、見せてもらった。
その時、新一は明らかに蘭を観て微笑んでいるような様子が映し出されていたのだ。
それを見た一同は皆同じ意見を持った…。(新一と蘭、そして毛利夫妻を除く)

「決定的やな…。」
「工藤君てこんな時から蘭ちゃん命なんやな…。」
「さすがね…。」
「あのな。偶然だよ!ぐ、う、ぜ、ん!!」
「あら新ちゃん、私は絶対確信犯だと思っているわ。」
「何でそう言いきれるんだよ?」
「だって、蘭ちゃんが産まれて始めて認識した異性って新ちゃんなんですもの…。」
「えっ?!」(/////)
その言葉に思わず真っ赤になる蘭…。
それに対して新一はますます呆れた顔になった。

「はぁ?!何言ってんだよ?母さん!!」
「あら、新ちゃん。私の話を聞いてなかったの?私と英理の担当医は女医だったのよ?」
「それで?」
「あら?未だ気付いてないの?あの時いたお医者さんはもちろん、その時の助産婦や看護婦も全部女性だったのよ?」
「だから、なんだよ?」
「工藤、お前未だ気付かんか?」
「だから、何を?」
「出産の時から新ちゃんに出会うまで、誰一人男の人と出会ってないのよね。」
「ま、マジ?」
「何しろ、実の父親である小五郎さんでさえ会ったのが産まれて3ヶ月も後だったんだから…。」
「さすが工藤君よね。あの時しっかり口説いていたんでしょ?」
「園子、バカな事言ってんじゃねーよ!ガラス越しで新生児の俺がどうやって口説くんだよ?」
「私もそんな気がしていたのよ。あの時絶対“俺、工藤新一って言うんだ。オメーの事ずっと守ってやるからな。”って言ったと今でも信じてるのよ。」
「ったく!みんな揃って映画やテレビの見過ぎだぜ!!おばさん…、じゃなかったお義母さんも何とか言ってくださいよ!!」

そう言って、新一はさっきから考え込むような顔をしている英理に振った。
彼女はその声にハッとした顔になり、こう答えた。

「ねぇ、有希子。貴方この話を真実だと信じているの?」
「ええ!もちろん。世の中には科学では説明できない不思議な事があるのよ。」
「そう…。だとしたらあの時見たのも夢じゃなかったのかしら…?」
「夢って…?」
「実は…。」

そう言って、英理は天井を見つめる様にしながらあの時の事を話し始めた。