C-K Generations Alpha to Ωmega



By 東海帝皇(制作協力 ドミ)



第二部 勇者激闘編



Vol.6 頑張れ!小さな勇者達



1月28日土曜日の夜、東京湾上のクイーンセリザベス号にて……。



「ガルルルルルル……。」

闇の魔法陣から出現した後、殺気に満ちた目で、少年探偵団や武琉を睨み続けるサーベルタイガー型の巨獣人。

「くっ……!」
「「「あわわわわわ……。」」」

恐怖感を感じつつも武琉は、巨獣人相手に構えを崩さずに対峙していた。
その後ろでは、探偵団が巨獣人への恐怖で震えている。

その時、

「お前、シャドウエンパイアのシャドウドールか!?」

武琉が巨獣人に尋ねる。
それに対し、

「如何にも。私はシャドウエンパイアのロイヤルドール、暗黒獣神ゲインズボロースミロドンだ。」

と答える。

「ロイヤルドール!!?て事は、お前はシャドウマリアと同じ、大幹部なのか!!?」

武琉は驚愕の目で、ゲインズボロースミロドンに更に問うた。

「だ、大幹部!?」
「い、いきなり大幹部が来たんですか!?」
「ちょ、ちょっと待てよ!!コイツが俺達の初めての対戦相手なのか!?」

更におののく探偵団。

「ん、そう言えば、貴様等の様な子供が、何故に私と対峙しているのだ?」

今度はゲインズボロースミロドンが問い返してきた。
これに対し、

「お、お、俺達はC−Kジェネレーションズのメンバーなんだから、オメーのようなバケモンと対決すんのは当然だろ!?」

と元太が答えた。
すると、

「対決?…………フフフフフフフ…………ハーッハッハッハッハッハッ!!」

ゲインズボロースミロドンが大笑いした。

「な、何がおかしいんですか!?」

今度は光彦が尋ねる。

「これが笑わずにいられるものか!貴様等のような塵の如き者がこの私と対決しようとは、笑止千万この上ないわ!!」
「「「ムカッッッ!!!」」」

ゲインズボロースミロドンの物言いに、カチンと来る探偵団。

「な、何て失礼なの!?」
「バカにしてもらっては困りますよ!!」
「俺達はな、これでもグランマザーに選ばれた勇者なんだぞ!!」

探偵団は恐怖心も忘れ、ゲインズボロースミロドンに怒りの罵声を浴びせる。
が、

「ほう、貴様等の様な塵の如き者を勇者に選ぶとは、グランマザーも耄碌したものだな。グワッハッハッハッ……!!」

ゲインズボロースミロドンは、更に高笑いをする。

「ムッカー!もう許せないわ!!」
「僕達をバカにした事を後悔させてやりますよ!!」
「行くぜ!!」

完全に激昂した探偵団は、光の腕輪を装着した。

「ちょ、ちょっと待って下さい、みんな!」

武琉が静止しようとするが、

フォースウェポンセットアップ、リトルピクシー!
フォースウェポンセットアップ、リトルドリアード!
フォースウェポンセットアップ、リトルドワーフ!

探偵団はそれを振り切り、フォースウェポン装着呪文を唱えた。

次の瞬間、歩美の目の前と、元太や光彦の足元に光り輝く魔法陣が出現した。

歩美が魔法陣に右手を突っ込むと、魔法陣は歩美の腕に絡み付き、銀色に輝く鎖へと変化した。
そして元太の足元からは銅色のハンマーが、光彦の足元からは緑色のフレイルが魔法陣からせり出すように出現し、二人はそれらを手に取った。

「こ、この鎖……。」
「うっわー、すっげーハンマーだな!!」
「このフレイルなら、あのサーベルタイガーとも渡り合えそうですね!」
「よっし、じゃあ勝負だ!!」
「負っけないわよお!!」
「さあ、覚悟なさい!!」

マジカルウェポンを装着した少年探偵団は、勇ましげにゲインズボロースミロドンに対して身構えた。

「みんながこんなにやる気を見せるなんて……僕も負けてられないぞ!
アデアット、ストライクナックル!!

武琉も続いて、マジカルウェポンを装備し、身構えた。


「ハッハッハッ、度胸だけは満点のようだな……だが!」

パチッ!


ゲインズボロースミロドンが指を鳴らした瞬間、

ボンッ!
ボンボンッ!


黒猫の獣人達が多数出現した。

「なっ、何だよ、こいつ等!?」
「どうやらあのサーベルタイガーは、僕達とやる気が無いようですね。」
「なら、こいつ等を先にやっつけてやるわ!」
「でもみんな、絶対に油断しないで!!」

対峙する探偵団と武琉。

「さあ、殺れ、ヘルキャットどもよ!」
「フーーーーーッッ!!」
「フニャアーーーーーッッ!!」


ゲインズボロースミロドンの号令の下、うなり声を上げながら探偵団や武琉に迫る、イエネコ型のシャドウソルジャー・暗黒怪猫ヘルキャットの大群。

「ニャオーーーーッッ!!」

その内の一体が、探偵団に飛び掛ってきた。
が、

「とりゃあーーーーっっ!!」

バシュッ!

「グニァウッ!!」


歩美が、右腕に巻きついているエアロチェーンをヘルキャットに向けた瞬間、エアロチェーンはヘルキャットを貫き、爆散させた。

「おおっ!」
「す、スゲー!」
「こ、これが私のフォースウェポン……。」

感心したようにエアロチェーンを見つめる歩美。

「やはりグランマザーがこの子達を選んだのは、正しかったんだ……。」

武琉は改めて探偵団を見つめる。

「グルルルルル……!」
「フーーーーッ!!」


探偵団や武琉を警戒するヘルキャット

「よーし、今度は俺達の出番だ!」
「僕達も負けてられませんよ!」

歩美に続けとばかりに、元太はランドハンマーを、光彦はフォレストフレイルを構えた。

「フニャアーーーーーッッ!!」
「ニャオーーーーッッ!!」


数体のヘルキャットが、元太や光彦に飛び掛った。
が、

「とりゃあーーーーっっ!!」
「てぇぇぇーーーいっっ!!」

ボカッッ!!
ドカッッ!!


「グニァウッ!!」
「ニァオウッ!!」


あっと言う間に二人に破壊されてしまった。

「おおっ、すげーや、このトンカチ!」
「いやそれトンカチじゃないですって……。」
「二人ともやるじゃん!」
「ホントですねー。」

互いに称えあう一同。

「む……、こやつ等、意外と侮れんか……!」

ゲインズボロースミロドンは、探偵団の健闘に少なからず驚いた。

「だが、まだ数の上ではこちらが有利だ。さあ、行け!」
「フーーーーーッッ!!」
「フニャアーーーーーッッ!!」
「ニャオーーーーッッ!!」


ゲインズボロースミロドンは更に多くのヘルキャットを呼び寄せ、探偵団や武琉への攻撃を命じた。

「へっ、望む所だぜ!」
「まだまだいけますよ!」
「私達は光の勇者だもん!!」
「さあ、行くぞ!!」

探偵団や武琉は、ヘルキャットの大群に攻め込んだ。






同じ頃、船内メインフロアでは……。



ボワッッッ!!

「ん?」
「な、何アレ?」

メインフロア内に、突然闇色の魔法陣が出現したのに気づく蘭と園子。
それを見たコナンは、

「なっ、アレはまさか!?」

何かヤバい気配に気づく。
その瞬間、

「フニャアーーーッッ!!」
「ニャオーーーーッッ!!」


その中からヘルキャット達が次々と出現した。

「なっ、何やアレ!?」
「気をつけろ、みんな!アレはシャドウドールの召喚ゲートだ!!」
「シャ、シャドウドールやと!?」


「わーーっ、ば、化け物ーーーーっっ!!」
「た、助けてーーーーーっっ!!」

ヘルキャットの出現で、メインホールはたちまち阿鼻叫喚の大騒ぎに陥った。
その時、

「フニャアーーーッッ!!」
「うわあっ!?」

一体のヘルキャットが、修からパープルストリームを奪い去り、そのまま一気にメインフロアから駆け出して行った。

「あっ、待て!!」

後を追おうとするコナンだが、

「フーーーーーッッ!!」
「フニャアーーーーーッッ!!」
「ニャオーーーーッッ!!」


他のヘルキャット達が行く手を遮った。

「ちっ、しゃあねえ!みんな、フォースウェポンを呼び出すんだ!」
「でっ、でも新一!みんながいる前でウェポンを呼び出すのは……。」
「心配いらねーよ。ウェポンを呼び出そうとすると、フルオートでジャミングフィールドが全身に張り巡らされるから、正体がバレる心配はねーぜ。」
「そっか。なら行くぜ!フォースウェポンセットアップ、キッドジュニア!
フォースウェポンセットアップ、ブループリンセス!

まずは快斗と青子がフォースウェポン召喚呪文を唱えた。

フォースウェポンセットアップ、グランドコナン!
フォースウェポンセットアップ、ファレノプシス!
フォースウェポンセットアップ、メガスマッシャー!
フォースウェポンセットアップ、ライダー・ザ・ソード!
フォースウェポンセットアップ、バトラー・ザ・ウエスト!
フォースウェポンセットアップ、ライトシェリー!

コナン達も二人に続いて、フォースウェポンを装着した。


「ウチらも行くで!アデアット、ピースメーカー!
アデアット、イーグルウィング!
アデアット、クイーンビュート!

初音達アルファトゥオメガも、マジカルウェポンを装着した。


「蘭!園子!」
「え?な、何?新一?」
「このホールはオメー達に任せる!」
「ええ!?新一君、二人だけでぇ!?」
「エンジンルームや操舵室、それに船倉も守らなければ船が沈む!だから!」

コナンと、蘭・園子のやり取りに、桐華が割って入った。

「ワタクシも、ここで蘭さん園子さんとご一緒に皆様をお守りしましょう。」
「それはありがたい、頼む。園子もそれで良いか?」
「ええ。わかったわ、頑張る。」
「ああ。服部と和葉ちゃんは、エンジンルームを頼む!」
「よっしゃ、合点や!」
「任しとき!」
「黒羽と青子ちゃんは、操舵室を!」
「ラジャ!」
「わかったわ、まかせて!」
「初音さんと陽介さんは、船倉に行ってくれ!そこをやられたら、いつぞやのアフロディーテ号の二の舞になる!」
「コナン……アルファトゥオメガにまで指示してくれよったな。まあ、ええけど。」
「ああ、絶対に守ってみせる、任せてくれ!」

皆が、自然にコナンの指示を受けて、それぞれの持ち場へと向かって行った。

「新一は?どうするの?」

不安そうに訊く蘭。

「俺は、甲板へ行く。あいつらの事が心配だ!灰原は、俺と一緒に!」
「ええ、わかったわ。」
「武琉さんの事、頼みますわね。」
「新一も、気をつけて!」

コナンと哀は、蘭達にその場を託すと、甲板へと向かって行った。

桐華は、胸元からお札を取りだしながら、蘭と園子に声をかける。

「さあ、参りますわよ、お二人さん!」
「ええ、桐華さん!」
「合点承知よ!」
「さあ、お行きなさい!『百鬼夜行桐華組』の皆さん!」

桐華がホールにお札をばらまいた瞬間、お札は妖怪達に変化した。

「おおおーーーっっ!!」
「うらあーーーっっ!!」
「てぇぇーーーい!!」

妖怪達は直ちにヘルキャットの大群を攻撃し始めた。

「おお、あの妖怪達は!?」
「確か、みなとみらいで蟻の化け物を倒した者達では!?」
「ああ、助かった!」

安堵する乗客達。

が、

「フニャアーーーッッ!!」
「フーーーーーッ!!」


数体のヘルキャットが、史朗や綾子達の前に飛び移ってきた。

「きゃあっ!?」
「綾子さん!」

綾子を守ろうと、婚約者の雄三が彼女を庇う。

「な、なんなのだ、こいつ等!?」
「何故このような怪物達が……!?」
「い、一体これは……!?」

雄三の叔父の修や、史朗・朋子夫妻も眼前の大騒乱に驚きを隠せない。
その時、

「ニャアーーーーーッッ!!」
「「「うわあっっ!!」」」
「「きゃあっ!?」」

一体のヘルキャットが史朗達に飛び掛ってきた。
が、

「とりゃあああーーーーっっ!!」

ぶわきっっ!!

「グニャウッ!!」

間一髪、園子が飛び込んでヘルキャットを撃破した。
更に、

「てえいっ!たあ!!やあーーっっ!!!」
「ギャウッ!」
「フワウッ!!」
「グワニャウ!!」


史朗達を囲んでいた残りのヘルキャットを次々と葬っていく。

「おお!」
「あ、あれは!?」

園子の動きに目を見張る史朗達。

「ふうー、危ない所だったわ……。」

一段楽した園子は、大きく息を吐いた。
そこへ、

「あ、あの、危ない所をありがとうございました!」

綾子がお礼を言ってきた。

「へ?(あ、そうか、ジャミングフィールドを張ってるから、姉貴達には私の姿が判らないんだっけ。)」

一瞬目を丸くした園子だったが、すぐに状況を理解し、

「いやいや、別に礼には及びませんよ。」

他人風で返礼した。

「所であなた方は一体何者なのかしら?」

との朋子の問いに、

「え、えーと……あ、私達は光の勇者隊『C-Kジェネレーションズ』です。」

園子はほんの少し言葉を詰まらせながらも、直ぐに力強く答えた。

「ほう、『C-Kジェネレーションズ』ですか。何とも頼もしいですな。」
「い、いえ、ハハハハ……。(何か家族相手に、こう他人行儀になるのもなんだかなあ……。)」

園子は思わず苦笑いをする。
その時、

「あれ、園子はどこに行ったのかしら!?」

綾子が周囲を見回す。

「(ぎくっ!?)あ、彼女達なら、別の場所で私達が既に保護してますから、どうかご安心下さい。」
「おお、そうでしたか。それはありがとうございます。」
「では、一先ずこれにて!」

園子は史朗達に一礼すると、すぐさま蘭達の加勢に出向いた。

「もしかしたら、あのC-Kジェネレーションズが、みなとみらいのアリの怪物をやっつけたんですかね?」
「それは間違いないだろう。」
「けど、どうしてあの化け猫達が、私達のパーティーに出現したのかしら?」
「さあな。まあ、あの手の怪物を繰り出すような連中の思考など詮索しても意味無いからな。」
「それはそうだけど、はあ……、何か散々な婚約パーティーになっちゃったわね。」

ため息をつく綾子。

「まあまあ。ともかく、彼等のお陰でこうして無事にいられるのだから、それだけでも良しとしようじゃないか。」

史朗達は、多数のヘルキャット達を次々と破壊していくC-Kジェネレーションズを頼もしそうに見ていた。






その頃、クイーンセリザベス号甲板デッキでは……。



「ハア、ハア……。」
「フウ、フウ……。」
「ヘエ、ヘエ……。」
「フーッ……。」

ヘルキャット達を全て撃破した探偵団や武琉が、肩で大きく息をしていた。

「ほう、なかなかやるではないか。」

感心するゲインズボロースミロドン。

「さあ、今度はオメーの番だぞ!」
「覚悟しなさい!」
「負けないから!!」

呼吸を整えた探偵団達は、勇ましげにフォースウェポンをゲインズボロースミロドンに向ける。

そこへ、

「フニャオッ!!」

一体のヘルキャットが、何かを銜えて戻ってきた。

「おお、ご苦労。」

ゲインズボロースミロドンにある物を渡したヘルキャットは、再び船内へと向かって行った。

「んっ、何だアレ?」
「あっ、アレはもしや!?」
「ビッグジュエルなの!!?」
「パープルストリーム!!?」

探偵団や武琉は、ゲインズボロースミロドンが受け取ったものを見て驚く。

「……ふむ、これはパンドラではないな、つまらん。」

パープルストリームを月明かりに翳して見たゲインズボロースミロドンはそう呟き、そしてパープルストリームを無造作に投げ捨てた。

「危ないっ!」

歩美は間髪いれずに、エアロチェーンでパープルストリームをキャッチした。

その時、

「ぬうんっ!」
「えっ!?」

ゲインズボロースミロドンがエアロチェーンを掴み、

「ふんっっ!!」
「きゃあーーっ!?」

チェーンを一気に引き寄せ、歩美を掴んでしまった。

「あ、歩美!?」
「「歩美ちゃん!?」」

真っ青になる一同。

「グフフハハハハハ……この私に対してここまでやるとは、本当に大したもんだ。だか、ここまでだ!!」
「ひいっっ!?」

歩美は恐怖で蒼白になる。

「こっ、このおーーーっっ!!」
「歩美ちゃんを放せえ!!」
「やめろーーーーっっ!!」

怒った元太と光彦、武琉がゲインズボロースミロドンに飛び掛った。
だが、

「ぬうんっっ!!」

ドガッッッ!!

「ぐはっっ……!」
「がはっっ……!!」
「ごはっっ……!!!」

丸太の様に太いゲインズボロースミロドンの腕の一撃で、三人は叩き飛ばされてしまった。

「みんなあ!!」
「ぐ、歩……美……。」
「あ……ゆみちゃん……。」
「ぐ……。」

元太と光彦はあまりにも強烈なダメージを喰らって気絶してしまい、武琉は意識こそあったものの立ち上がれずにいた。

「さあ、まずは貴様から喰らうてやろうか。」

ゲインズボロースミロドンは、その巨大な牙で歩美を噛み砕かんと、大顎を一気に開いた。

「いっ、いやあーーーーーーっっ!!」

悲鳴を上げる歩美。

「や……めろ……。」

立ち上がろうとする武琉だが、ダメージが抜けない為、中々立ち上がれない。

「たっ、助けてーーーっっ、コナンくーーーーーんっっっ!!!」

歩美が絶叫したその時!


ドガッッッ!!

「ぐおっっ!!」

歩美を掴んでいたゲインズボロースミロドンの右手にサッカーボールがヒットし、その衝撃で歩美を放した。
そこをすかさず一対の籠手が歩美を抱え上げ、そのまま探偵団や武琉の所まで運んでいった。

「歩美ちゃん!!」

彼女の無事を喜ぶ武琉。

「ええい、一体何奴!?」

怒ったゲインズボロースミロドンが周囲を見回すと、

「テメエの相手は俺達だぞ、ゲインズボロースミロドン。」
「みんな、遅れてごめんなさいね。」

サッカーボールを左手人差し指の上で回転させているコナンと、歩美を抱えた籠手――リトルアームズを目の前に浮遊させている哀の姿があった。

「コ、コナン君、哀……ちゃん……。」

安堵のあまり、歩美も気絶してしまう。

「武琉君、元太や光彦は!?」
「大丈夫、二人とも無事です!!」

ようやく立ち上がった武琉は、コナンと哀に向かって、手を振った。


「ほう、貴様が江戸川コナン、いや、工藤新一か。」
「フッ、知ってくれていて光栄だぜ。」
「それよりあなた、円谷君達をあんな酷い目にあわせて、よもやただで済むと思ってないわよね?」

皮肉たっぷりに問う哀。

「ほう、さすがはシャドウマリアと互角に戦っただけの事はあるな。だが、この私にそのような口を叩くとは、なんと命知らずな事よ!」
「!」

コナンの視界から、ゲインズボロースミロドンの姿が消えた。

「なっ、ヤロー、どこに!?」

周囲を見回すコナン。
その時、

「コナン君、上!」
「えっ!?」

武琉の言う通りにコナンが上を向くと、

「てえええい!!」

ガシッッ!!


「ぐうっっ!?」

ゲインズボロースミロドンが上空から急降下して、コナンの首を掴んだ。

「工藤君!」
「コナン君!」

思わず目を見開く哀と武琉。

「ぐぐ……!」
「フッ、普通なら簡単に首の骨が折れる所だが、貴様が纏っているマジカルフィールドがダメージを軽減したようだな。ならば!」
「ぐあっっ!!?」

ゲインズボロースミロドンは、コナンを高く締め上げ、手の力を更に強めた。

「ぐ……が……。」
「フフフハハハ、如何にマジカルフィールドが展開されようとも、このゲインズボロースミロドンの握力を完全に防ぐ事は不可能。このまま絞め殺してくれん。」
「があっっ!」

コナンの顔から血の気が段々失せていった。

これを見た哀が、

「そうはさせない!」

と叫びながら腕を交差させる。
すると、

ボカッッ!!

「ごふっっ!!」

リトルアームズがゲインズボロースミロドンの顔に一撃を喰らわせた。
更に、

ボカッ!バキッ!!ドカッッ!!!

「ごはっ!がはっっ!!ぐふあっっ!!!」

リトルアームズはゲインズボロースミロドンに次々とパンチをお見舞いしていく。
それに耐えられず、ゲインズボロースミロドンはコナンを掴んでいた手を緩めた。

「おわっっ!」

解き放たれたコナンはすかさずゲインズボロースミロドンから離れた。
その直後、

どがっっっ!!

「がはっ……!」

リトルアームズのアッパーカットを喰らったゲインズボロースミロドンが吹っ飛んだ。


「げほっ、げほっ……。」

たまらず咽るコナン。

「工藤君!」
「大丈夫ですか、コナン君!?」

駆け寄る哀と武琉。

「ああ。お陰で助かったぜ……。」

感謝するコナン。

「良かった。」

安堵する武琉。
その時、

「お、おのれ……。」

立ち上がったゲインズボロースミロドンは、怒りで血走った目でコナン達を睨みつけ、

「こ、この私を……ナメるなあーーーっっ!!」

コナンや哀に飛びかかろうとした。
だが、

ガシッッ!!

「んぐっっ!?」

その首や全身に突然鎖が巻きつけられ、動きを完全に封じられた。

「そうはさせないわ!」
「これ以上の好き勝手は許しませんよ!!」
「俺たちをなめんなよ!!」

その鎖――エアロチェーンでゲインズボロースミロドンを封じたのは、気絶から覚めた歩美・光彦・元太の少年探偵団だった。

「オイ、オメーら大丈夫なのか!!?」
「私達ならもう大丈夫よ!」
「それよりコナン君、灰原さん、武琉さん、今の内にこのサーベルタイガーを!!」
「とっととやっつけちまえよ!!!」

激励する探偵団達。

「ありがとう、みんな!」
「じゃあ、行きましょう、二人とも!!」
「ああ、ここでケリをつけてやるぜ!!」

身構える三人。

「ええい、小癪なあ!!」

激高したゲインズボロースミロドンは、エアロチェーンを一気にちぎろうとした。
だが、

「そうはさせないわ!
エアロボルトスタン!!

バババババ……。

「ぐっ、がああっっ!!」

歩美が足止めの技を詠唱すると、エアロチェーンから強烈なスパークが発せられ、ゲインズボロースミロドンは更にダメージを受けた。

「よし、行くぞ!たあっ!!」

初めに武琉が、両手のストライクナックルに魔力の気を纏わせ、ハイジャンプをし、

「ストライクカノン!!」

ドガーーーーン!!

「ぐおっっ!!」

ゲインズボロースミロドンの顔面に魔力の気を思いっきり叩き付けた。

「ぐっ、お、おのれ……。」

その衝撃に顔をゆがませるゲインズボロースミロドン。
が、

「これで終わるなんて思うなよ!」
「みんなを痛めつけた礼はたっぷりしてあげるわ!!」

コナンは膝をついて、右手で右足のキック力増強シューズのダイヤルをMAXにし、左手でボール射出ベルトのスイッチを入れ、哀はリトルアームズの指をゲインズボロースミロドンに向けた。
同時にフォトンスパイクの光がボールに、リトルアームズの指に光がそれぞれ集結した。
そして、

「フォトンドライブシュート、READY……GO!!」
「リトルスパルタン、ファイヤァーーーーーーッッ!!」

コナンはボールを力強く蹴り、哀はリトルアームズの各指先から強烈な光の弾丸を発射させた。
そして、

ドガッッッッ!!
ドガーーーーンッッ!!


「ゴハッッッ……!」

必殺技がゲインズボロースミロドンを直撃し、それと同時にエアロチェーンが解かれると、ゲインズボロースミロドンの巨体は倒木の如く倒れ伏した。

「やったあ!」
「コナン君、哀ちゃん、凄ーーい!!」
「武琉兄ちゃんもやるじゃねーか!」
「三人とも、ホントカッコいいですよ!!」

勝利に沸き立つ探偵団達。

「灰原、なかなかやるじゃねーか。」
「あなたもね。」

互いの健闘を称えあう二人。


「ぐ……ま、まさか貴様等にこれだけの力があったとは……何ともうかつだったわ……!」

体中の至る所から火花を散らしながら倒れ伏しているゲインズボロースミロドンは、怒りと屈辱で満ちた目でコナン達を睨み付けた。

「へん!見たか俺達の力を!!」
「僕達を完全になめ切った報いですよ!!」
「光の力は無敵なんだから!!」

胸を張る探偵団。

「フッ……貴様等の健闘に免じて、今回は失敬しよう。だが!!」

その直後、ゲインズボロースミロドンは足元に闇の魔法陣を展開させた。

「次に会った時が貴様等の最期だ!!」

そう言いながらゲインズボロースミロドンは、魔法陣の中へと吸い込まれるように退散した。

「あっ、アイツ逃げやがった!」
「待ちなさ〜い、卑怯者!」

思わず駆け出そうとする、元太と光彦。

「待て!深追いするな、もう無駄だ!」
「コナン、何で止めるんだよ!?」
「そうですよ、ヤツは尻尾を巻いて逃げたんです、チャンスだったじゃないですか!」
「敵の力を侮るな!今回は、力を合わせて何とか勝てたが、まだ、止めを刺せるだけの力は、もうこっちにはねえ。」
「えっ、それどう言う事なの、コナン君!?」
「そんなの、やってみなきゃ、わからねえじゃないか!」
「そうですよ!せっかく優勢だったのに!」
「逃げるが、勝ち。」

哀がボソリと言って、元太と光彦は振り返る。

「灰原?どういう意味だよ?」
「あのサーベルタイガーは、今回そう判断して引いたのよ。本当に追い詰められたのなら、それこそ捨て身でかかって来るわ。追わなくて正解だったのよ。」
「でも、灰原さん!」
「あなた達。自分のエネルギーがどれだけ残っているか、分かっているの?」
「えっ!?」

元太と光彦は、慌てて光の腕輪を見た。

「ゲッ、な、なんだこりゃ!?」
「何か光が少ないですよ!?」

エネルギー量を示すエナジージェムには、わずかの光の輝きしかなかった。

「その状態で、後追いしたら、間違いなく返り討ちに遭っていたわね。」
「そ、そうだったんですか……。」
「あ、危なかったぜ……。」

哀の言葉に、ようやく光彦と元太は、興奮状態から脱して来た。
その時、

「あっ、そうだ!それよりもビッグジュエルは!?」

パープルストリームの事に気付いた武琉が叫ぶ。

「あっ、それならここに。」

歩美がハンカチで包んで保護してあるパープルストリームを見せた。

「ああ、良かった。」
「無事だったんですね。」
「けどよー、それ結局パンドラじゃなかったんだな。」
「そのようね。」
「まあ、これで園子さん達も一安心ですよ。」

安堵する一同。

「ところで元太君に光彦君。もし、あの魔法陣に吸い込まれてたら、もしかして罠に引っ掛かってたかも知れないわ。何だか、すごく嫌な感じがしたもの!」
「歩美ちゃんの言う通りだ。敵に続いて魔法陣に飛び込んでも、同じ場所には出られねえのが、こういう場合のお約束ってこった。」
「小嶋君、円谷君、あのサーベルタイガーが引いたのは、それもあるのよ。血気にはやった誰かさん達を、誘いこんで罠にはめようっていう、魂胆がね。」

2人は、項垂れた。
ようやく、とても危険な事を仕出かそうとしていた事に、気付いたのだった。

「血気にはやって、すぐに深追いしようとするようでは、まだまだね。」

哀の言葉に、愛をにくからず思っている光彦は、唇を噛んだ。
自分がまだまだ、哀に釣り合う器の男ではないと、突き付けられたような気がした。

(どうしても、僕は、コナン君には敵わないんでしょうか?)

哀と並んで立てる男は、やっぱりコナンなのだろうかと、光彦は悲しく思っていた。


「でもまあ、今回、大幹部を退けただけでも、素晴らしいじゃないですか!アルファトゥオメガの古参のメンバーでも、苦戦する相手なんですから!」

武琉がそう言って、皆の労をねぎらいつつ、フォローした。

「え?えへへ、やっぱそうだよなあ。俺達って、大したもんだぜ!」

そう言って、元太が胸を張る。

「ははは……。(単純なヤツ)」

コナンが、乾いた笑いをもらした。

「でも……コナン君と灰原さんがいなきゃ、何も出来ませんよね……。」

光彦のうち沈んだ声に、コナンは

(拙いな……謙虚になるのは良いが、マイナス思考になっちまってるぞ。さて、どうしたもんか……。)

と頭を捻る。
と、そこへ。

「いや、そんな事はあらへんで、光彦!」

声が響き、皆がそちらを見る。

「「「初音さん!」」」
「初音お姉さん!」
「服部警視長!」
「初姉ちゃん!」

現れたのは、陽介を伴った、服部初音だった。

「少年探偵団は、5人揃って力を最大に発揮でけるんや!今回、後から加わったのがコナン達やったっちゅうだけで、コナンと哀哀二人だけやったら、あかんかった思うで〜!」
「そうだぜ、みんな。少年探偵団は、5人揃ってこそ。誰が欠けても駄目なんだ。けれど、5人力を合わせれば、大の大人でも出来ない事でも、やってのけられる。だから、自信を持ちな。」

「そ、そうですよね。5人揃って、少年探偵団。分かりました、服部警視長、陽介さん!」

光彦が、笑顔になって大きく頷き、コナンはホッと息をついた。

(それにしても、良くも悪くも、光彦に対しての灰原の影響は、大きいよな。これについては、灰原ときちんと話す必要があるかもな。もっとも、灰原には余計な御世話と機嫌を悪くさせそうだが。)

「あっ、そうだ、これ!」

歩美は初音に、パープルストリームを渡した。

「あっ、無事だったんだな。」
「いやいや、ホンマにお手柄やで、お前ら。」
「い、いやあ……。」
「そ、それほどでも……。」
「て、照れるぜ……。」
「ハハハハ……。」

またまた呆れるコナン。
そこへ。

「コナンく〜ん。」

済んだソプラノの声が響き、コナンの表情は見る間に、照れたようなものになる。


「ら、蘭!……姉ちゃん……。」

あまりにも分かり易いコナンの言動に、哀はふうと溜息をついた。

(どうでも良いけど……吉田さんを泣かせるんじゃないわよ、工藤君……。)

歩美は幸い、今のコナンの表情にまでは、気付かなかったようである。
初音が、満面の笑顔で、駆け付けた一同を迎えた。

「おー、御苦労さん、みんな!」

ちなみに、駆けつけて来たのは。

蘭、園子、平次、和葉、快斗、青子、桐華の7人である。


「よお。坊主達、結構頑張ったようやな〜。」

平次が、片手をあげて、笑顔で言った。

「任せて下さい!5人揃えば、少年探偵団は、無敵です!」
「こんなの、お茶菓子サイサイだぜ!」
「元太君ったら。それを言うなら、お茶の子さいさいでしょ!」

光彦と元太が胸を張り、歩美が元太に突っ込みを入れた。
快斗がさらに一言付け加える。

「それにしても、散々なパーティだったな〜。敵の大幹部が現れて、戦闘になるわ、船は滅茶苦茶だわ。」
「バ快斗!本当に大変なのは、パーティを主催した鈴木財閥の方達でしょ!」
「まあ、確かにそうだけど、こればかりはどうしようもないもんねえ。ある意味、天災みたいなもんだし。」
「園子ちゃん、大物やなあ。流石に鈴木家の令嬢や!」

園子の太っ腹な言葉に、和葉が感心して言った。

「あれ?ところで、工藤探偵は、どうなさったんですか?」
「蘭お姉さん、一緒じゃないの?」
「ま、まさか、やられたのか!?」
『ぎくっっ!!』

光彦・歩美・元太の言葉に、一同は慌てた。
まさか、「紙だから心配してない」とも言えない。
そこへ、

「俺がどうしたって?」

式神新一が、少年探偵団の背後から、現れた。

「あ、工藤探偵!」
「新一お兄さん!」
「新一兄ちゃん!心配したぜ!」

3人は、ホッとした顔で叫んだ。
平次が小声でコナンに耳打ちする。

「工藤、さすがやな。咄嗟に瞬間移動も出来るようになったんか?」
「ああ。突然出現する場面を、あいつらに見られたら拙いから、背後から現れるようにした。」
「それにしても、工藤がおらへんかったらいたく心配する筈の姉ちゃんが、平気な顔しとる姿を晒したら、あの3人にばれてまうんも、時間の問題やで。」
「ああ。あいつらも、意外と鋭い。侮れねえからな。後で、蘭に話をしとくよ。」
「それにしても、確かに、戦力になるんは間違いあらへんけど。あいつらを仲間に加えて戦うんは、別の意味で神経をすり減らしそうやなあ。」
「ああ。初音さんがあいつらをメンバーに加えたのは、そのリスクを押してでも、得られるものが大きいからか、それとも……。」
「それとも?何や?」
「……いや、あの初音さんの事だ。単に面白がってる可能性も高そうだって思ってよ。」
「ああ、確かにそうかも知んねえな。」

いつの間にか傍に寄って来ていた快斗も、大きく頷いた。

「んな訳あらへんやろ!と言えへん辺りが、オレも怖いわ……。」

平次が苦笑いした。






そうこうしている内に、クイーンセリザベス号は、堤無津港に近付いていた。
港の岸壁には、初音からの連絡を受けて出動した沢山のパトカーや救急車が並んでいた。


船が着岸し、タラップが降りると、高木警部補と佐藤警部が真っ先に駆け込んで来た。


「初音さん、大丈夫ですか!?」

高木警部補が初音の元に駆け寄って言った。
それに対して初音は、

「高木警部補、出迎え御苦労!」

と、敬礼する。
高木警部補も慌てて敬礼を返した。

「は、はいっ!服部警視長殿、任務遂行、ご苦労様でした!」

佐藤警部が後ろでぼそっと呟く。

「初音、あんたって人は……このパーティへの参加は、確か公務じゃなくて私的なものの筈……渉君をからかって、面白がってるわね……。」
「佐藤警部。実は、この船には、パララケルス王国のレオン王太子が乗船あそばされており、その為、うち……私の乗船は、私的なものから公的なものに……かわ……アタッ!舌噛んだ!慣れへん言葉は、使うもんやあらへんな!」
「まったく、もう……。でも、どうやら、あなたの言った事は、本当だったみたいね、初音……いえ、服部警視長殿。」

パララケルスシークレットサービスにガードされたレオン王太子が通り過ぎる姿を見て、美和子は言った。

レオン王太子は、初音達に向かって軽く会釈して、下船した。

「ところで怪我人は!?被害はどの程度ですか!?」
「器物損壊はそこそこあるけど、人的被害は軽傷者が数名いる程度や。」
「そうですか、それは不幸中の幸いですね。」

高木警部補がホッとしたように言った。

「けど、それもこれも、あいつらの活躍があったからや。」

そう言って、初音は、C-Kジェネレーションズのメンバーを視線で指し示した。

「で、では!?」
「初陣の幼いもん達も含めて、大活躍やったで。最初は面白そうや思うて、軽い気持ちでメンバーに加えたんやけどな。」
「へっ!?は、服部警視長!?」
「渉。冗談やがな、冗談。」
「は、はは。そうですよね……。(本当に、冗談かな?)」

怖くて、それ以上の追及は止める高木警部補。


「ま、これから現場検証や。けど、大活躍した面々は休ませてやらなアカンな。」

初音は笑顔でそう言った。
それには誰も異存がない。

少年探偵団のメンバーを含めた、C-Kジェネレーションズとアルファトゥオメガの面々は、下船して。
初音と、警視庁関係者は、船に改めて乗り込んで、現場検証をする事になった。



下船してホッとする間もなく、その場にいきなりフラッシュが焚かれ、一同は足を止めた。

「わわっ、な、何やのん!?」

突然のフラッシュで、思わず手で顔をブロックする和葉。

「工藤探偵!服部探偵!この船で何が起こったんですか!?」
「シャドウエンパイアの怪物が現れたそうですが、陽介さんは大丈夫でしたか!?」

その場を取り囲んだのは、マスコミの群れであった。
そういう扱いに全く慣れていない、元太・光彦・歩美は心細そうに身を寄せ合い、哀とコナン、そして武琉が、3人を背後に庇うようにした。

「ちよ、ちょっと皆さん、落ち着いて下さい!」

桐華がマスコミを制しようとするが、

「あの、虎姫桐華さん!!一体何があったのですか!?」

なおもマスコミの質問が続く。
そこへ、

「お待ち下さい、皆さん!」

陽介が朗々とした声を張り上げ、マスコミの注目が陽介に集中する。

「皆さん、この船にシャドウエンパイアの化け物が現れましたが、光の勇者隊『C-Kジェネレーションズ』が現れ、服部警視長と共に、撃退しました。」

報道陣から、おおという感嘆の声が上がる。

「ですが、これ以上の事は、警察からの公式発表を待って下さい。我々は疲れています。幸い、魔法戦士の活躍で、大怪我をした者はいませんが、それでも早く帰って体を休めたいのです。」
「で、ですが。探偵達も居る事ですし、せっかくですから、そのC-Kジェネレーションズの事をもうちょっと……。」
「そうですよ、そのC-Kジェネレーションズはもしかして、先日横浜みなとみらいや大阪住之江公園でシャドウエンパイアの怪物を倒したのでしょう?」
「お気持ちは判りますが、その探偵達ですら、まだ18歳に満たない少年なのですよ。しかも、見ての通り、幼い子供達も居ます。マスコミに取り囲まれてフラッシュを焚かれる事態には慣れていなくて、怯えています。今日のところは、もうお引き取り願えませんか!?」

陽介の言葉には、ある種のオーラも籠っており。それ以上ごり押しする事は、さすがのマスコミの面々も、出来なかったのである。

「すげえな。陽介さんは、かなりのカリスマ性を持ってる。」
「ま、工藤も負けてへん思うけど、このちっこい姿じゃ、そうは行かんな。さすがに、式神にそこまでのカリスマは出えへんし。」
「買い被るな、服部。にしても、ここに陽介さんがいて助かったぜ。正論だが、他の者ではマスコミへの抑えは効かなかっただろうよ。」
「工藤、俺も同感だぜ。いやあ、良かった良かった。」
「黒羽。オメーもその気になれば……って言いたいところだが、とりあえず素顔のオメーは無名だし。俺に顔が似てるってんで、変に勘ぐられるのも困るしな。」
「そうだよな〜、親戚でもねえのに顔が似てるってのも誤解の元で困っちゃうよな。」
「でも、良かった。色々突かれたら、私だって『毛利探偵の娘』って事で、矛先が向いたかも知れないし。」
「青子も、中森警部の娘だから、キッドが狙いそうな宝石がある所に、中森警部の娘が!って勘ぐられたら、困った事態になったかも。」
「まあ、陽介さんに感謝、言うこっちゃな。」
「で、話がついたようだから、退散しましょうか。」

陽介のお陰で一同はマスコミの追及から逃れ、堤無津港から出る事が出来た。






とりあえず、一同は、堤無津港近くの海浜公園に、腰を落ち着けた。

「やれやれ……今日も、散々だったな……。」
「シャドウドールのみならず、マスコミにまで追われるとは……。」
「でもまあ、何とか、C−Kジェネレーションズとアルファトゥオメガで力を合わせて、危機を乗り切ったな……。」
「工藤。やっぱお前がリーダー格やな。」

一応、念の為に、式神新一に向かって話しかける平次。

「平次、おチビちゃん達の手前、ちゃんとやってんのやな。」

感心する和葉。
ところが。

「違いますよ、リーダーは、コナン君でしょ!?」

光彦から、別方向で突っ込みが入る。

「あ。せ、せやったな、ははは……。」

誤魔化す平次。

「そうね。コナン君がリーダー格よね。ね、コナン君?」

蘭がにっこり笑って、そう言った。

「ありがと、蘭姉ちゃん……(気の所為か?蘭、単にフォローしているっつーより……何か、こええぞ?)。」
「誰がどこに行くのが適任か、咄嗟の采配が、素晴らしかったものねえ。」
「そ、そうかな……?(やっぱ、蘭、怒ってる?でも、何で?)」
「うん!コナン君が助けに来てくれて、歩美、とっても嬉しかったよ!」
「灰原さんも、ありがとうございます。」
「やっぱ、コナンと灰原は、少年探偵団の仲間だもんな。」

歩美と光彦と元太の言葉に、蘭がハッとしたような顔をして、次いで本当の笑顔を見せた。

「ええ、そうね。コナン君と哀ちゃんが、少年探偵団の仲間を真っ先に助けようと思うのは、当然だものね。」

その場にいた者で、コナンと園子以外に、蘭の様子がおかしいのに気付いた者はいなかった。
いや、コナンすらも、蘭が改めて見せた満面の笑顔にホッとして、違和感を忘れてしまった。


コナンが、快斗や平次達と色々な事について話し合っている時。
園子が、蘭に小声で話しかけて来た。

「蘭。アンタさ……もしかして、焼き餅妬いた?」
「え!?そそそ、園子!?や、焼き餅なんて、私……!」
「ふう。図星か……。ま、蘭が思わず妬くのも、わかるけどさ。あの場合、新一君が哀ちゃんと一緒に行ったのも、私達をあそこに残したのも、仕方がないと思うよ。だって、ホールも守らなきゃだし、おチビちゃん達も助けが必要だったんだし。」
「う、うん……わかってる、わかってるの。でも……私って、心が狭いよね。そこで何で、連れて行くのが私じゃなかったのかって……。」

蘭は、少し泣きそうな顔になって言った。

「だってさ、蘭。考えてみてよ。私と哀ちゃんと2人であそこに残されたらさ、悲惨だったと思うよ。連携もうまく取れなかっただろうし。遊びの鬼ごっこ程度なら、良いだろうけど、バトルでチームを組むのは、ちょっとねえ。」

園子の言葉に、蘭は少し考えこみ、そして、恥ずかしそうな笑顔を見せて言った。

「そっか……うん、そうよね。私、そこまで考えてなかった。ゴメンね、園子。」

コナンが、「戦いの場で」冷静に、戦略を練った結果が、あのチーム分けになったのだろうと、蘭は理性で了解した。
けれど、心の奥底で、尚も割り切れないものが燻っていたのである。


そこへ。

「よお。お疲れさーん!」
「「うわわっ!」」

いきなり、蘭と園子は、背後から初音に抱きかかえられたのだった。

「は、初音さん!まだ、現場検証の最中だったんじゃないの!?」
「何言うてんねん、園子。警視長ともあろうものが、現場検証やなんてする筈あらへんやろ?」
「……自分が興味があれば、現場を引っ掻き回すクセに。さては、今回はもう、興味がある部分は見終わって、後処理を高木刑事達に押しつけましたね?」

蘭が、呆れたように半目で初音を見て言った。

「にゃはは、蘭々、鋭いなあ。こういう時には、階級の権力っつーもんを、最大限使わせて貰うとるで。」
「つったく……。」

初音が出現したのを見て、傍に来たコナンが、初音の言葉を聞いて呆れ声を出していた。

「ま、初姉の公私混同は、今に始まった事やあらへんけどな。」
「公私混同言うな!公務に置いて、必要と思う方を選択しとるだけや!」
「……とか言って、面白い事にだけ首を突っ込んでるクセに……。」

平次と快斗も、初音に突っ込みを入れたが、初音はどこ吹く風で漂漂としていた。

「ねえねえ、初音さん、何でここに?」

青子が無邪気に聞いて来る。

「あ、せやせや。肝心の事を忘れるところやった。アンタら、この前大使館で、C‐Kジェネレーションズとアルファトゥオメガのメンバーで円陣組んで、光の誓いっつーんを、やったそうやな?」
「ああ。そうだけど……。」

初音の問いに答えるコナン。

「え!?何ですかその、光の誓いって!?」
「光に遠いとか近いとか、あんのか?」
「元太君、それは意味が違うと思うわ。」

少年探偵団の面々も、好奇心に目を輝かせる。


「ああ。こないだは、初音さんは警視庁に行ってたし、陽介さんは打ち上げ、そしてオメーらは、まだメンバーじゃなかったからな。」
「光の誓いってのは、俺達光の力を授かったメンバーの、チームワークを高める為に行った誓いだよ。」
「私達の誰か1人が危機に陥ったら、必ず他の誰かがそれを救う。」
「ワン・フォア・オール、オール・フォア・ワン、1人はみんなの為に、そしてみんなは1人の為に。」
「お互い、力を合わせて、シャドウエンパイアを倒そうと。誓い合ったんだ。」

皆が口々に、説明する。

「悔しいなあ。ウチがおらんところで、そないな誓いを交わしとったなんて。」
「それは、くど……いや、こ、こ、こ、コナン……君の、リーダーシップのたまもんや。」

初音が、悔しそうに言うのに、平次が妙に自慢げに答えた。

「それじゃあ、俺達も改めて、その誓いに加わりましょうよ。」

と提案する陽介。

「さんせーい!あたし達も、仲間に加えて!」
「1人はみんなの為に、みんなは1人の為に。いい言葉ですね!」
「そうか、俺達みんなが力を合わせるから、近くなるって事なんだな。」

微妙に1人、意味を取り違えているようだが、大筋に置いてわかっているようなので、良しとしようと、皆が内心思っていた。

「よっしゃ!じゃあ、改めて、光の誓い、行くでぇ!」
『おう!』

アルファトゥオメガとC-Kジェネレーションズのメンバーは、円陣を組んだ。

そして、手を重ね合わせた一同は、

「C-Kジェネレーションズ、アンド、アルファトゥオメガ、ファイト、ゴー!!!」
『ファイト、ゴー、YEAHーーーー!!!』

コナンの号令の元、一斉に気勢を上げた。


夜空の月が、彼等を祝福するかのように、ほんのりと光っていた。



To be continued…….





Vol.5「東京BAY-Dancing night」に戻る。  Vol.7「三人娘の家庭の事情」に続く。