BLACK
By 茶会幽亮様
第10話 THE DUEL__(開戦編)
未明、志田工場跡にて・・。 囚われの身の蘭はドラム缶の焚き火の傍で寒さに耐えていた。 ここ数日間の天候で体力を奪われてしまい、目も虚ろだった。 蘭はただただ、新一の名前ばかり呟いていた。 キャンティ「ビフィーター、あんた大丈夫なのかい?人質が死んじまうんじゃないかい?」 これまで蘭の監視をさせられてきたキャンティは蘭の衰弱ぶりをいやでも見せられてきた。このままじゃ絶対に死ぬ。犯罪者でもそんなことは分かっていた。 ビフィーター「心配するな。これくらい俺には考えがある。」 ビフィーターは薄気味悪く笑った。
工藤亭にて・・・ 一同はリビングに集まっていた。 探「いよいよですね・・・。」 平次「そうやな・・・。」 全員暗い面持ちだった。 阿笠「これが真君専用の武器じゃ・・・。」 真「ありがとうございます。」 真がもらったのはパンチンググローブと黒のヘッドバンドだった。 阿笠「このグローブはパンチ力増強じゃ。このヘッドバンドは頭の回転力を高める。つまり咄嗟の瞬発力や思考力が上昇するんじゃ。」 快斗「今までの奴と比べたらなんかすごい性能だな・・・。」 自分の『武器』と比べながら快斗は呟いていた。 新一「じゃそろそろ・・・。」 新一達は拳を作ってぶつけあった。 和葉「絶対に蘭ちゃんを助けて帰ってくるんやで。」 青子「みんな無事に帰ってきてよ。」 園子「蘭になんかあったら私達、あんた達を呪ってやるわよ。」 平次は和葉に、快斗は青子に、真は園子に「必ず帰ってくる」まがいな事を添えて彼女達の頬へキスをした。 とそこへ深刻な面持ちをした紅子がやって来た。彼女は持っていたカードをジョニーに手渡していた。そこには死神が描かれていた。 探「紅子さん、これは?」 探がジョニーに渡したカードについて尋ねた。 紅子「これはタロットカードです。その死神は『なにかとてつもなくよからぬ事が起きる』という意味です。ジョニーさん、お気をつけを・・・。」 ジョニー「は、はあ・・・。」 いきなり未来のことを予想されてもいまいち実感が持てないジョニー。しかし、このカードの予想は実際に的中してしまう・・・。 紅子は探に悲しみの目を見せた。新一には赤紙が来た若者を見送る愛人に、ジョニーには「真珠湾攻撃(パールハーバー)」で後に愛人を亡くしてしまう女性に見えた。
女性陣に一時の別れを告げ、いざ志田工場跡に行こうとしたとき、ジョニーは志保がいない事に気付いた。 ジョニー「あれ、そういや志保は?」 新一「博士んとこじゃねーか?」 ジョニー「うーん、どうかな・・・。」 ジョニーは少しの間考えた。まさか待ち伏せしているんじゃ・・・。少なからずそう心配していた。
徒歩で約一時間後。ようやく工場跡にたどり着いた。正門だったと見受けられる場所に.....志保は立っていた。 ジョニー「やっぱりか・・・。」 言う通りにしてしまった志保に呆れるジョニーだった。 志保「お願い、私を・・・。」 志保がそう言い終わる前にジョニーは志保の前に立った。 ジョニー「志保・・・、わりぃがそれは無理だ。」 と言って志保の溝内に一発パンチを入れた。 志保「うっ・・・。」 志保は気を失い、ジョニーは志保を担いで傍の茂みに座らせた。 新一「ジョニー・・・。」 ジョニー「これでいいんだ、これで・・・。」 ジョニーは志保が作った特性弾を何発か取り出した。 そして暗い面持ちで新一達の元へ戻った。 6人は中へ・・・
午前7時20分。 新一達は一番広いフロアにたどり着いた。この工場は6つのフロアに分かれており、このフロアは南側、入口から一番近いところにある。 新一「どこだ!!さっさと出てきやがれ!!!」 新一は声を荒げた。するとどこからか不気味な笑い声が・・・ 瞬間、新一達がいる場所から10メートル離れた場所にライトの光が差した。そこには男が4人、女が2人・・・。そして・・・蘭がとても力なくイスに座っていた。 新一「ら、蘭!!」 新一は叫んだ。しかし、本人にはその声は届いていなかった。いや届いていたかもしれないが答える気力さえ彼女には残されてなかった。 新一「てんめぇ!!!蘭に何しやがった!!!!!!!」 新一は蘭の変わりように憤慨して黒ずくめの6人組にものすごい剣幕で怒鳴った。すると真ん中にいたビフィーターがまた不気味に笑い始めた。 新一「なにがおかしい!?」 ビフィーター「いやいや、気障で有名な東の名探偵も愛妻の事になるとこうまで取り乱すとは・・・見ていただけでおかしくてね・・・。」 新一「なんだと、テメェ!!!!」 新一はこれ以上にないぐらいに怒り心頭だった。得体の知れない奴らに自分が狙われ、しかも愛する蘭にまで手を出し、あんな目に合わせた。死んでも化けてあいつらを叩き潰すと言いかねないような表情だった。 ビフィーター「まあそんな怒るな。条件を飲めばすぐにでもこいつを解放をしてやるから・・・。」 平次「ほんまやろなぁ!?ほんまにねーちゃん離すんやろなぁ!?」 ビフィーター「嘘をついて何になるんだ、関西人。」 ビフィーターはタバコを口にくわえ、火を灯した。 ビフィーター「さて、条件を述べさせてもらおうか・・・。」 新一達6人は息を飲んだ。 ビフィーターは煙を吐き出し、言った。 ビフィーター「条件は・・・工藤新一、お前の命とだ。」 新一「なっ!?」 ビフィーター「いやとは言わせないぜ?それとも、まさか自分の命が惜しくなったか?へっ。」 新一「・・・。」 ビフィーター「早く決めねーとなー、この小娘が永遠に眠っちまうぜ。」 ビフィーターは悪魔のように薄気味悪く笑った。 新一は考え込んだ。自分が死んで蘭が生き残っても奴らは蘭を開放しないだろう。仮に生きていられたとしても、蘭は必ず後を追ってくる。だが何も言われなければ蘭は死んでしまう。そんな事を新一自身が許すはずがなかった。二者択一、しかし結果は同じと言うなんとも残酷な選択肢である。
だがそんな脅しは新一には効かなかった。 ビフィーター「ああ、言い忘れてた。俺達は目撃者は抹殺するんでな・・・。そこの5人も一緒にだ・・・。」 そう言うと後ろにいた5人組は全員武器を出して構えた。 ジョニー「サイレンサーに剣、日本刀にスナイパーライフル、あとは拳銃か・・・。あのライフルの尼は任せろ!!」 ジョニーは肩に背負っていたスナイパーライフルを手にして突っ込んでいった。それを見たキャンティはジョニーをひきつけるように後ろへ走っていった。 ジョニー「待ちやがれ!!」 ジョニーは北側に走り去っていった。 平次「日本刀はワイがかたしたるわ!!!」 平次も『日本刀』を手にして突っ込んでいった。今度はバーボンが東側に走っていった。平次もその後を駆けていった。 続いて快斗・探・真が構えて飛び込んでいった。これを見てビフィーター以外の3人はそれぞれ散らばっていった。 南側のフロアには新一とビフィーターと蘭だけとなった。 ビフィーター「やれやれ、抵抗しなければ苦しまずにすんだものを・・・」 新一「俺は生きて、蘭を助けるんだ。絶対に!!!」 新一はビフィーターに向かって叫んだ。 ビフィーター「ま、せいぜい足掻いてるんだな。どうせ結果は同じ事。」 新一「言わせておけば!!!!」 新一はビフィーターに突っ込んでいった。
遂に始まった決戦。新一の運命やいかに!!!?
第11話に続く
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